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第3話 初めての友達

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

「おい、片付けておけといったよな?」



「す、すみません。今すぐに。」



「たく、これだから平民育ちは。」



2回目の人生では貴族が平民を見下すというのは当たり前の文化だった。家族の中で最下層にいた私にも使用人たちは媚びへつらっていた気がする。お兄様や両親がそうしていたのをよく見ていたから私はそれが当然なことなのだと思っていた。




「ユークス様!

 春から高等部に在籍されるのですから、もっとシャキッとしてください。」



「マリー、そんな事言ってると顔にシワができちゃうよ。

 笑って笑って。」



「あの、いくら王子様でも起こりますよ。」



「いや、すでにもうお怒りのような。」



こんな感じでこの家族、特にユークスは使用人との距離がもの凄く近い。まるで友達と話しているよう。道端に捨てられてた私に躊躇無く話しかけてくるような人だからおかしくはないけど、権力に興味がないのか何も考えていないのか見ていて飽きることがない。



「ローズ、今日隣の王国のお姫様が来るらしいぞ。

 仲良くなれるといいな。」



「う、うん。楽しみだなー。」



ユークスは全然分かっていないようだけど、私はゴールド家の養子という形だ。だから、酷い扱いを受けてもおかしくない。仲良くできるなんて夢のまた夢だろう。なぜ私がお相手を務めることになったのか。それは隣国シルバー王国の王女、ドーラ様が大の男嫌いだから。本当は王妃様がお相手する予定だったのだが、国政の仕事で時間が取れず私が代わりにということに。もちろん反対意見も多く出たが、私に友達がいないことを心配したユークスと王妃様が熱心に皆を説得してしまった。



お昼になり、ついにその時間が来た。

「ローズ様、ドーラ様がいらっしゃいました。」



「は、入ってもらってください。」



どんな人でも粗相のないようにしなければ、この国に迷惑をかける訳にはいかない。


ガチャ。

入ってきた少女はシルクのように綺麗な白い髪にルビーのような赤い目、佇まいからも上品さを感じられ、物語に出てくるお姫様といった印象だ。



「初めまして、シルバー国第1王女 ドーラ・シルバーです。」



「初めまして、ゴールド国第1王女 ローズ・ゴールドです。」



ドーラ様はいきなり私の顔をじっと見て、使用人になにか耳打をした。


「ですがドーラ様、彼女は元は平民。ドーラ様に何かあっては。」



「あなた、平民だからなんだというの?

 私は自国の民を平民だからと見下すような王族になるつもりはありません。

 さっさと出て行きなさい。」



「し、失礼しました。」



その使用人は急いで外に出て行った。これで部屋には二人きり。悪い人ではなさそうだけど、凄い緊張する。



「あ、あのドーラさんはおいくつなの?」



「10歳です。」



「じゃ、じゃあ私と同じ歳ね!

 それなら敬語は無しにしない?私今まで同年代のお友達とかいたことなくて。」



「は、はい。じゃなくて、うん。」



「やった!よろしくローズ。」



私は差し出された手を握る。

第一印象とは違ってとても可愛いらしい人みたい。生まれてきて、いや3回の人生において初めて私は友達になれそうな人に出会った。



それから私たちは色々な話をした。好きな食べ物、本やお洋服、お花や音楽。気が合うのか話が凄い弾んでしまい、いつの間にか夕方になっていた。


「え?もうこんな時間?

 泊まりたいくらいだけど、いきなりそんな我が儘ご迷惑よね?」



「ううん、そんなことないよ。頼んでみる。」


私は王妃様へ確認をしに行き、無事許可をもらってドーラの元へ戻った。



「いいの?やった!」



「でも、ドーラのお母さんとかには連絡しなくていいの?」



「大丈夫大丈夫、お昼に使用人に泊まるかもって連絡しておくよう言っといたから。」



「そ、そうなんだ。」


あの時はその事言ってたんだ。でも初対面でいきなりそこまで。



「どうして、そこまで私と、、、。」



「え?」



しまった、口に出てた。



「あなたは辛い経験をしてきたっていう顔をしている。

 でもそういう人は暗い目をしてることが多いのにあなたの目からはとても温かさを感じた。」



「温かさ?」



「きっと素敵な出会いがあったのね。」



「あ、うん。そう、だね。

 私、救われてたんだ。お兄ちゃんに。」



「お、お兄ちゃん?

 そっか、兄弟が全員男なんだっけ。」



「うん、ドーラはどうして男の人が苦手なの?」



「昔、隣国の王子様に襲われそうになったことがあって。力じゃ適わなくて私はただ助けを求め

 ることしか出来なかった。その時は使用人が来てくれて何とかなったんだけど、それから男の

 人に近寄れなくなっちゃって。お父様やお兄様にもあまり会いたくないの。」



その辛さを私は少し知っている。



「大丈夫だよ、ドーラの事は私が守るから。」



ついそんな事を言ってしまった。



「ふふ、ありがと。じゃあ私もローズの事守るわ。」



コンコン。


「夕飯持ってきたぞー。」



「あ、私が取ってくるわね。」



「あ、私が。」



「いいからいいから。」



そのままドーラが扉へ。

ん?待てよ、この声。


「だめ、ドーラ開けちゃ。」



「へ?」


扉を開けるとそこにはユークスの姿が。


「あ、君がドーラちゃんか。

 初めまして、ユークス・ゴールドです。」



「ど、どうも。ドーラ・シルバーです。」



「これ二人の夕食。じゃ、ゆっくりしていってね。」



「は、はい。ありがとうございます。」



そのままユークスは帰って行った。



「ドーラ、男の人だめなんじゃ。」



「そ、そのはずなんだけど。なぜか全然嫌な感じがしなくて。

 ユークスさん、か。」



この時、私は自分の心が少し痛んだような錯覚を覚えた。理由は分からないけど、嬉しそうなドーラの横顔を見ているのは辛かった。



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