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後輩のお味噌汁

作者: 香双狐

 私、本間悠衣(ほんまゆい)は、新入社員の佐野紘(さのひろ)君の教育係を任された。教育を始めてすぐ、私は彼を飲みに誘った。酒好きな私とは対照的に、あまり飲まない紘君。そんな彼の存在に安心したのか、かなりのハイペースで飲み進めてしまった私は、不覚にも酔いつぶれてしまった。

 目覚めて目に入った天井で、自宅ではない事を理解し飛び起きると、頭がガンガンした。見知らぬ部屋のベッドの上。自分がどうしてここにいるのか分からず、懸命に記憶を遡る。

「そうだ。私、飲みすぎて…!」

その時、ふと美味しそうな香りに気付いた。香りに引き寄せられるように部屋のドアを開けると、紘君がキッチンに立っていた。

「あっ、本間さん。おはようございます。大丈夫ですか?」

状況を理解しようとして、脳がフル回転を始める。しかし、二日酔いの頭痛で強制停止した。

「おはよう…。えーっと、どういう事?」

紘君は、混乱している私をテーブルに座らせると、正面に座って話し始めた。

「昨日の夜は、どこまで覚えていますか?」

「えっと、紘君の好きなタイプを聞いたところくらいまでは…。」

彼によると、そこで私は寝込んでしまったらしい。どうやって帰したものかと悩んだが、連れ帰るしか無かったようだ。彼曰く、鞄の中はさばくれなかったとか…。そして、帰宅後に私をベッドに寝かせてくれたようだ。後輩を誘ったのに泥酔し、寝込んだ挙句に介抱され、恥ずかしさで縮み上がりそうな私に、彼はこんな提案をしてきた。

「とりあえず、朝ご飯食べますか?」

私が頷くと、彼の作った朝食が運ばれてきた。今朝は、消化に配慮したお粥に近いご飯と味噌汁だった。

「なんか、気を遣わせちゃってごめんね。」

私としては恐縮するメニューだが、紘君はいつもの延長線上だと言って謙遜する。ちゃんと自炊している事に感心しながら、味噌汁を飲んでみる。口の中に出汁と味噌の味が広がり、体がリラックスするような感覚になる。恥を浄化されたような気持ちになった時、目尻から一筋の水滴が流れ落ちた。

「本間さん?お口に合わなかったですか?」

私は、泣くことに引き摺り込まれる手前で踏み止まり、精一杯の笑顔で顔を上げた。

「すごく美味しい!ありがとう!」

紘君は少し驚いたものの、立ち上がって私の隣に来ると優しく肩を抱いてくれた。この時、彼に心と胃袋を鷲掴みにされた私は、完全に虜になった。

お読みいただきありがとうございます。

本作は、同サイトに掲載中の完結済み小説「泥酔上司を介抱したら懐かれた」の冒頭部分を、なろうラジオ大賞に向けてリメイクしたものです。完結済みの小説では、本作と視点を変えた続き部分も掲載していますので、興味のある方はチェックしてください。よろしくお願いします。

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