表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶望的実力者の日常  作者: 棒王 円
過去的日常
13/21

白銀等級の実力・エルムZERO





凄く笑っているカーフに、どう答えるか悩む。


「手合せを願いたいね、エルムくん」

「どうしてエルムなんですか」

グレイブが聞くが、カーフは笑っているだけだ。

新人たちが不穏な雰囲気を感じ取り、俺に言ってくる。


「おい、お前何かしたのか?紅玉等級になんて敵う訳がないんだから、謝っちまえよ」

「御免なさいすれば、いいだけだから」

何故なにもしていないのに、謝るのが前提なのか。


「何で俺なんですかね?」

「それは君が良く知っているだろう?」

疑問に疑問で返されたよ。

しかし、恨まれることなんてした覚えがないんだけどな。


「分かりませんね。恨まれることはしてないと思います」

カーフが少し怒った顔をした。

「君がフレイに媚びて、白銀等級になったのは知っている」

「は?媚びた?俺が?」

むしろ言いくるめられた感じですが。


カーフが腰から剣を抜いた。

おいおい、それはちょっと困るぞ?

「正式に入ったらすぐに言いがかりとか止めてもらいたい」

俺が言っても薄く笑うだけか。なるほど。


「良いから手合せしなさい。先輩を困らせるんじゃないぞ?」

「ああ、そうですか」

俺はカーフと同じ、土が引いてある少し高い場所に上がる。


「獲物は無いのか?」

「…言っとくけど、俺は手加減が苦手だからな?」

「ほう?俺に手加減?」

俺は溜め息を吐く。


「今まで、殲滅しかしたことが無い。だから対人戦は足を千切るか腕を千切るかしか出来ないと思う」

「…は?」

カーフが変な声をあげた。


「フレイにも街中で殺人は駄目だって言われている。魔力が多すぎるんだ。普通の使い方は多分できない。それでも良いんだな?」

少しだけ魔力を開放する。

カーフの動きが止まった。俺をじっと見ている。


「これで物凄く頑張って押さえている状態だ。やるんなら、冒険者人生を諦めてくれ。俺はそれしか言えない」

「分かった。そこまで言うなら見せてみろ」

剣を構えた。

言ったからな?


俺の指先から光が走った。カーフの手が飛んだ。血が吹きあがる。

「あああ!?」

俺が指先を下げる。魔力も抑えた。

けれど、カーフの腕は戻らない。


外野の新人君たちが悲鳴を上げている。

俺は振り返って、青い顔をしているが叫んでいないグレイブに話しかけた。

「フレイを呼んできてくれ」

「あ、ああ。分かった」

グレイブが一階に走っていく。一分もしないうちにフレイとアイシンが走って来た。


俺の前で腕を握って呻いているカーフを見た。

「バカな事を」

アイシンが呟いた。


「やったのは俺だよ」

「分かっている」

「加減できないとは伝えたけど」

「良いのです、エルムさん。愚かなのはカーフです」

青い顔をしてフレイが言っているが、ギルドのメンバーを傷つけたのは事実で。


「ああ、そうだ。もうそういう事しないなら、治すけど」

「……は?」

アイシンが俺を見た。

俺は溜め息を吐きながらアイシンの顔を見る。

「治せるよ、千切れても。ただ、都合のいい様に使うとか、土下座すれば何とかしてくれるとか思われたくないから、使いたくないんだけど」

「ああ、そうでしたね。エルムさんなら」

フレイがそう言うとアイシンが変な顔をした。


「え、なに。フレイは何か知ってるのか?」

「私の神に誓いましたので他言できません」

「フレイの神って、無理じゃん」

どうやら厳格な神らしい。


「どうする?」

「治るなら治してくれよ!?」

カーフ本人が言ってくるが、俺はアイシンを見ている。


「そういう便利だなあってのをしないなら、治すよ。するつもりなら治さない」

俺の顔を見ているアイシンは、カーフを見降ろした。

腕を抱えて泣いているカーフは、剣を握っている方を狙ったから利き腕が無くなったんだと思う。


「しないから、治してやってくれ。ただし完治しなくていい」

「何で俺に加減しろって言うかな。出来ないんだよ加減が」

怒って俺が言うと、アイシンが口を閉じる。


「俺がやると完治しちゃうから、そっちでペナルティ付けてよ」

「分かった」

俺はカーフを見て指先を動かす。

「〈再生〉」


光が渦巻き、光が消えると治っていた。

泣いて鼻水まで出していた男は自分の腕を見てきょとんとしている。握って開いて確かめた後に。

「夢だったのか?」

と言った。違うよ、バカじゃないのかこいつ。


「お前の前の腕は、あそこにあるよ。今の腕は再生したやつだから別物」

俺が指差す先に、俺の魔法で切られた腕が残っている。

もちろん取り込んで再生もできるけど、今回はこいつが信用できなかったから、分からせるために別で再生した。だから現物が残っている。


驚いて動きが止まったカーフをフレイが殴った。

え、殴った。


「愚かにも程がある。あなたは等級を下げます。反省しなさい」

「え、なんだよそれ、俺が何で降格しなきゃいけないんだよ!?」

アイシンが溜め息を吐いた。

「嫌なら追放だ」

アイシンが言った言葉に、カーフの動きが止まる。


「なんでだよ?後輩にちょっと手合せしただけだろ!?」

フレイが物凄い冷えた声で言った。

「そもそも、演武は講義に入っていません。あくまで新人に知識を教えるだけのはずです」

ああ、やっぱりな。

武器の使い方とかは別だろうと思っていたけど。

「そんなのサービスだろ!」

フレイが俺以外の新人たちを見る。

「皆が怖がっています。私達は新人を怖がらせるために講義をしているのではありません。恐怖を少なくするために講義しているのです」

「それだって、降格とか横暴だろ!?」


「なら出て行け」

再度、アイシンがそう言った。

カーフがアイシンを見る。見返すアイシンの眼は冷えていた。

「お調子者が、これ以上しでかしてくれるな。嫌なら俺のギルドから出て行け。止めはしない」

カーフは何度か口を動かしたが、何も言わずに地下練習場を後にした。降格を受け入れるのか冒険者を止めるのかは俺には分からない。


「すまなかったな、エルム」

渋い顔のままアイシンが頭を下げた。

俺がなにも言わないのを怒っていると判断して、まだ頭を下げている。


「…できれば魔法使いは自分の手の内をさらしたくないんだよ。それをこういう事態とはいえ、一つ公開したんだから」

俺が言った事に新人たちがハッとしていた。魔法使いは使える魔法がばれるほど弱体化する。だから手の内はパーティメンバーにも言わない人の方が多い。

それは常識の様で。


「買い取り額、倍で」

「は?」

アイシンが顔を上げた。

「ギルドが責任もって倍で」

「お、お前の持って来る討伐証明を?」

「そう。倍で」

物凄い渋い顔で、アイシンが値切ってくる。

「1.5倍じゃ駄目か?」

「しょぼいこと言うなよ。倍でいいじゃん」

「い、嫌、しかしお前のは」


まあ、ケルベロスさん、大金貨3枚だったしねえ。

この国でのお金は銅貨、銀貨、小金貨、金貨、大金貨。それから金の板がある。

つまりまた、ケルベロスを持って来たら、えらい出費だという訳で。


「エルム、頼む」

「俺ばっかり損するのは嫌だな」

そう言いながらグレイブを誘って一階に昇る。他の新人も上がってきて、何故か一緒に食堂にやって来た。

これは仕方がないかも。


「じゃあ今回の皆に、お昼奢ってくれ。それでいいよ」

そう言ったらアイシンがほっとした顔になり、訝しげだった新人たちが嬉しそうな顔で注文を始めた。


誰が敵か。

愚かな事で俺の足を引っ張るのか。分からないけれど。

少なくとも今は、この時間は気を張らなくてもいいかと思いながらグレイブと一緒に、メニューを選んだ。


後日、今回の講義は返金された。

一緒に学んだ白銀等級の冒険者たちは、随分得したなあって羨ましがられたらしい。

グレイブが教えてくれた。


この間の事は俺にとっては良い事なんか何もなかったのだけど、他の人にはまあまあだったらしい。

なるほど。やっぱり世間とは違う感覚らしいな、俺。




そしてやっぱり、嫌な話が持ち込まれた。

一緒にいた奴が漏らしたのか。カーフがどこかで言ったのか。


「手足が千切れても治せるって本当かい?」

貴族っぽい馬鹿が目の前に立っている。周りは甲冑を着た騎士がずらり。

お前ら全滅って言葉を知ってるか?


「知りませんけど」

「ミーリヤ様に向かってなんて口の利き方をするんだ!」

そう言って槍を突き付けられる。

ハア、さようで。


煌びやかな服を着た若い男は金髪で青い目をしている。しかし鍛えているようには見えないし、何処も身体を壊しているようにも見えない。

「貴族様が何の用ですか?」

喉元に槍の先が近付いているが、金髪の男を見たまま話す。

「バラバラでも治せるって本当かい?」

「それが本当だったら、何ですか?」

そう答えたら実に分かり易く笑った。


「私のものになるがいい」

「え、断るけど」

きょとんという顔をしても、いう事は聞かないけど。


「貴様!ミーリヤ様に向かって」

「ああ、二回も聞かなくていいよ。俺は知らない人のいう事を聞く必要性が無い」

槍を手でどかして言うと、騎士たちが全員武器を構える。

だから全滅って言葉を知ってるかって事なんだけど。


「なぜだ?何故私の誘いを断るのだ?」

「え?俺の利益が無いから」

「私に仕えられれば幸運だぞ?」

「幸運かどうかは俺が決めることで、お前が決める事じゃない」

またきょとんとした顔だ。

ちゃんと教育受けてるのか?


「私に仕えるのは幸運ではないのか?」

「俺には違う。他の人は知らない」

「貴様!逆らうのなら家族がどうなるか」

「……は?」

俺が黙った事に何を勘違いしたのか、騎士が勢いづいて話す。


「貴様の様な平民の家族など」

「死ねよ」

俺が言った途端に話していた騎士の首が飛んだ。

派手に血しぶきを上げて地面に倒れ込む。

他の騎士が武器を構えなおすが、取り敢えず警告する。


「俺の家族に手を出すなんてもう一回言ったら、全員殺す。お前たち俺が魔法使いだって知って来てるんだよな?それも奇跡が起こせるほど強いって聞いて来たんだろう?それなのに不機嫌にさせて何もないとか思ってたのか?」

俺が全くもって低い声で言うと、騎士たちが一歩下がる。

金髪の男は血だまりを見て、震えて泣きそうな顔をしていた。


「こ、これは私に長く使えてくれた者で」

「知らない。俺の家族に手を出すとか下種な事を言ったのはそっちだ。力尽くならこっちもそうするだけだ」


騎士の一人が金髪に近付く。

「ミーリヤ様。やめましょう。これは手に負えません。本当に我々全員殺すつもりです」

嘘で言わねえよ。

「回復してくれる、善なる者ではないのか?」

涙目で言われても知らねえよ。善人は家族が殺されても笑って自分に仕えるとか本当に思っているのだろうか?

教育やりなおせ。


騎士に宥められて、金髪が馬車に乗り帰って行った。死骸は二台目の馬車に担ぎ込まれた。さすがに目の前で消去するほど怒ってはいなかったが、家にもう少し防御魔法をかけよう。


ギルドに行って、貴族名観を借りる。

そんなものを俺が見ているのが珍しいのか、数人がちらりと見ている。


ミーリヤ。

ああ、これか。

クラータ王家、第七皇子。なるほど。

バカって事だな。また来たらどうするかな。

溜め息を吐いたらフレイに聞かれた。相談してもいいけど、どうしようか。


貴族に詳しい人っているかな。


「あなた、何を探しているの?」

俺の横に真っ赤な色が立った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ