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魔物図鑑〔改訂版〕  作者: 龍崎 明
魔道事典・派生
30/35

蘇生術

 魔術には、確かに蘇生術式が存在する。その理論説明にはまず、生命体の構造について記す必要があるだろう。


 生命体は、物質世界に干渉する肉体(マテリアル)と精神世界に干渉する霊体(アストラル)によって構成されている。そして、核となる魂魄体(ソウル)が霊体の一部として存在する。魂魄体は人格骨子パーソナル・コアとも称される生命体の精神構造の中核であり、その精神活動の源泉でもある。すなわち、魔力炉心に相当する。


 魔術における死亡状態とは、肉体と霊体の乖離状態にある。この状態では、生命体は魂魄体を霧散させていない、それすなわち完全消滅した状態ではない。つまり、肉体と霊体を再び接続すれば生命体は蘇生されることになる。


 これを利用したのが蘇生術式であり、霊体を魔力膜で閉じ込め、その間に肉体を再生させることで、霊体を死霊魔術の応用で再び肉体に封じ込めることが基本的な手順となる。ただし、肉体が原形を留めていなければ、肉体を再生させることが叶わないばかりか、霊体の自己認識も死亡であるがために急速な霧散が開始されるため、状態の良い死体でなければ、この術式は機能しない。神聖魔術【復活祭】が天寿を全うしたモノに効果を示さないのも、霊体の強固な死亡認識によるものだとされている。


 一方で、擬似的な蘇生術式も存在する。これらの手法の場合、どれも複製であるがために原型オリジナルとの齟齬が発生する危険性が存在する。


 一つは、【複理甦生クローン】肉体の複製を予め用意し、死亡状態になった際に乖離した霊体を複製肉体に封入する蘇生術。複製肉体があるという認識が、死亡認識を弱めるとされる。


 一つは、【自識遍在シュレディンガー生命規模ライフ・スケールの分割。簡易に言えば、事前に魔力の最大値を削って、その削った魔力で死亡した場合に新たな肉体と霊体を再構成する蘇生術。


 一つは、【環魂創塞フィラクテリー】魂魄体の隔離。人格骨子である魂魄体が無事であれば、本質は変化しないという思想に基づく蘇生術。魂魄体の情報を元に、霧散した霊体の残留思念を収拾、霊体を再構成し、さらに、肉体を再構成するという力業である。


 これら三つの擬似的蘇生術は、上から順に、肉体消滅、霊体消滅、魂魄体消滅への対策となっている。魂魄体については、現行技術では複製できず消滅すれば完全な終わりであるため、隔離によって干渉を無効化する手法が取られている。

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