魔法学
魔法ミステリス
神秘科学、神秘現象における魔力の法則。
魔力について
魔力は、我々が認識する物質世界と表裏一体の関係にある精神世界に存在するエネルギーのこと。
魔力は、正と負の性質どちらか一方を有し、それは生命体の欲望に影響される。歓喜や慈愛といった欲望により正の性質が、憎悪や悲嘆といった欲望により負の性質が、それぞれ魔力に与えられる。
このエネルギーは、精神世界における量子、霊子の作用によって発生している。この霊子で構成された我々の精神を霊体と呼称する。
霊体は、肉体における心臓部に魔力炉心という魔力の生成器官を有し、さらに血管部に魔力回路という魔力の循環器官を有している。
魔力炉心の性能によって、魔力量の多寡は変動し、魔力回路の性能によって、魔力出力の高低は変動する。魔力量が多く魔力出力が高いほど、魔力圧と呼称される精神的圧力が増す。この魔力圧が、魔術師の実力の指標となっており、また、ある程度の魔術干渉を妨げる効果がある。
なお、魔術として消費された魔力は、物質化し魔素と呼称される。そして、この魔素を溜め込み変質すなわち魔化した動植物その他が魔物である。魔物の体内には、魔素の結晶である魔石が存在する。精霊が顕現する際の仮初の肉体も、魔素で構成されている。魔素の性質は不明だが、その由来からして魔力に関係するのは確かである。
精霊について
霊体単体で存在する精神生命体。魔力同様、欲望に影響を受け、正の性質のモノを天使、負の性質のモノを悪魔と呼称する。影響された欲望によって、属性を宿し、その属性に応じた魔術を本能的に行使できる。受肉した天使は妖精、受肉した悪魔は妖鬼、と呼称する。
また、屍鬼や骨鬼、幽鬼などの屍霊と呼称される魔物は、生前の未練すなわち怨念に影響された精霊の亜種とされる。
属性について
属性とは、魔術の発動に重要なイメージを体系化したものである。
現代の魔法学において主流な属性論は、魔術王が開発した七大属性説である。それまでの属性論では、火、水、土、風の四大元素説と、木、火、土、金、水の陰陽五行説の二説が主流であった。しかし、この二説は、非常に曖昧な概念上の属性論であったため、新たな魔術師の卵がこれを理解することは困難であった。
それに対して、魔術王の提唱した七大属性説は、世界の法則を七つの属性に大別し、さらに、細分化された無数の派生属性を個々人で設定する革新的な学説である。
七つの属性は、炎、氷、嵐、地、樹、光、闇とされる。
炎は、運動の加速を司り、それに伴い燃焼や熱のある物の操作などを発動する属性。
氷は、運動の減速を司り、それに伴い液体操作や凍結などを発動する属性。
嵐は、物質の破壊を司り、風化や電解などの現象に由来し、気体操作や放電などを発動する属性。
地は、物質の創造を司り、それに伴い個体操作や錬金などを発動する属性。
樹は、生命の概念を司り、植物操作や治療、精神干渉などを発動する属性。
光は、時間の概念を司り、光操作や時間干渉による加減速などを発動する属性。
闇は、空間の概念を司り、重力操作や転移などを発動する属性。
以上の七つの属性を基本として、魔術師は、星、聖、邪、血、夢、影、鏡などの派生属性を設定することで、属性の理解を深め、魔術発動のイメージを明確にするというのが、七大属性説のアプローチである。
魔術について
魔術とは、魔法に則って発動する神秘のことである。
これもまた、現代魔法学において主流なのは、魔術王の開発した七大魔術体系である。
七大魔術体系は、
精霊魔術、錬金魔術、神聖魔術、死霊魔術、
武仙魔術、心霊魔術、占星魔術の七つに分けられる。
精霊魔術は、自然現象を発生させる魔術体系である。属性論と深く関連し、一つの属性に由来する自然現象の魔術を研鑽することが定跡とされる。また、高位の魔術師となれば、精霊と契約することで魔術の性能を飛躍的に向上させる。学派によっては、元素魔術と呼称されることもある。
錬金魔術は、物質への干渉、さらに魔道具の作成を行う魔術体系である。物質への干渉を究めれば、生命体にさえも干渉可能であり、そちらを特に錬命魔術と呼称する。また、フィールドワークのために修める地形操作や即席の魔動人形作成を行う傀儡魔術も、基本的にこれに含まれる。
神聖魔術は、正の魔力を利用した魔術体系である。治療や強化、結界、浄化などの聖なる効果を発揮する。また、その知識の多くは、教会に独占されている。
死霊魔術は、負の魔力を利用した魔術体系である。死体操作や屍霊創造、呪いなどの邪なる効果を発揮する。ただし、その手法は大きく分けて二つあり、専ら対話法が正統であり、呪縛法は禁術指定となっている。対話法は、対話によって契約した精霊を死体に憑依させることで屍霊とする手法であり、呪縛法は、無理矢理に契約した精霊を強引に屍霊とする手法である。呪縛法の危険性は、屍霊の暴走にあり、暴走した屍霊は無差別に周囲の生命体を害し、さらに、強力になる。
武仙魔術は、肉体に働き掛ける魔術体系である。肉体の強化、弱体をはじめ、それに伴う変身などを得意とする。究めれば、不老不死を達成できるとされている。
心霊魔術は、霊体に働き掛ける魔術体系である。念力や透視、心霊療法などの超能力と精神干渉を得意とする。究めれば、霊体改造によって魔力量を飛躍的に増加させることも可能である。
占星魔術は、星を媒介する魔術体系である。星の記憶から過去と未来を知り、星の力で運命を変えるなどの効果を発揮する。また、転移などの効果がある時空魔術を含み、特に異界の存在を呼び寄せる魔術は、召喚魔術と呼称する。
以上の七つの他に、幻影魔術や音楽魔術などの七大魔術体系から抽出・再構成した複合魔術体系も存在する。
魔術用語
契約:魔術的な繋がりのこと。
魔道具:魔術的効果を発揮する道具。
魔動人形:魔力を動力とする人形。魔道具の一種。
禁術:禁止されている魔術。国家によって、禁術指定の基準は異なる。なお、死霊魔術の呪縛法は、世界全体で禁術指定を受けている。また、禁術を犯した者もしくは魔術により犯罪を為した者は、禁術師と呼称する。
呪術について
呪術は、原始的な魔術の発動方法であり、魔術の基礎的な術式である。
呪術は、類感呪術、感染呪術、契約呪術の三類型に分かれる。
類感呪術は、似姿を媒介する術式である。例えば、放火の魔術の場合、赤い物から火を連想して魔術を発動する手法である。
感染魔術は、縁を媒介する術式である。例えば、放火の魔術の場合、火傷したことから火を連想して魔術を発動する手法である。
契約呪術は、意思を媒介する術式である。例えば、放火の魔術の場合、火の知識を学び、火を観察し、火のイメージを明確にした上で、火を連想して魔術を発動する手法である。
魔術言語について
魔術言語は、呪文とも呼び、術式を言語化したモノ。
発音による詠唱と文字による魔法陣の二種類の手法がある。言語パターンは一定ではなく、術式と主観的に結びついた言語であれば、何でも良い。そのため、言語パターンは、魔術師の数だけ存在する。
なお、これは魔術発動の簡易化を目的として開発された理論であり、一流の魔術師には無用の長物である。
魔術の発動について
魔術の発動は、魔術師の力量に左右される。
発動速度は、呪術での発動が最も速いとされ、詠唱が最も遅いとされる。
同時発動は、どの手法でも可能だが、複数の魔法陣を一つの魔法陣として発動する手法が最も安定する。呪術の場合は、イメージが粗くなり、詠唱の場合は、発動速度が冗長になる。
術式について
術式とは、魔術の構成イメージである。様々な術式が存在し、呪術はその代表格である。以下に記すのは、一部特徴的な術式である。
結界術式バリア
領域を設置して、その領域内または領域外との境界線に効果を発揮する術式。
呪歌術式セイズ
音を媒介して、それを聞いた者に効果を発揮する術式。音楽魔術の基礎術式。
魔眼術式ミスティックアイ
眼を媒介して、視認した対象に効果を発揮する術式。ごく稀に、これを先天的に宿す存在がいる。
魔剣術式ミスティックソード
武術を媒介して、その動作によって効果を発揮する術式。ごく稀に、ただの武人が極めた技がこれと化す。
付与術式エンチャント
物質に効果を固定する術式。強化や魔道具作成に使用される。
呪詛術式イヴィルエンチャント
一般に呪いと称される術式。正確には付与術式の一種であり、その中でも害悪的効果を発揮するモノを指す。
防護術式プロテクト
他者の術式に干渉する術式改竄に対抗する術式。主に、付与術式と共に使用される。
解呪術式ディスペル
術式改竄の術式。封印や呪い、他者の強化などの効果を無効化する。
反言術式カウンター
他者の魔術に対抗する術式。正確には、術式ではなく、魔術戦における技術。
魔装について
魔装は、魔術師の装備のことである。ただの発動媒体なこともあれば、魔道具の場合もある。一般的な物としては、指向性をイメージするための杖や呪符だろう。特に、占星魔術で用いられる呪符の一種である星札は、街角の占星術師がよく用いている。星札は、星の力を宿すことで、その特性上、星々の見える夜でなければ、本領を発揮できない占星魔術において、星の代替品となる魔装である。
魔術師について
魔術師とは、魔術を行使する者の総称。俗称として魔法使いがあり、同義といって良い。
魔法学会の定義によれば、魔法を研究する者は魔道士、魔法を教導する者は魔導師である。また、七大魔術体系のどれを得意とするかで呼称が変わり、精霊魔術ならば精霊術師、錬金魔術ならば錬金術師、神聖魔術ならば法術師、死霊魔術ならば死霊術師、武仙魔術ならば仙術師、心霊魔術ならば心霊術師、占星魔術ならば占星術師となっている。
さらに、魔法学会が規定する魔術師の実力指標である魔道階級は以下の七段階。
徒弟級アプレンティス
見習い魔術師。魔導師に師事し、その管理下にある者。
術士級クラフト
一般の魔術師。魔導師から卒業資格を認められた者。
導師級マスター
魔導師資格を持つ魔術師。弟子をとることを認められるほどの知識がある。
老師級エルダー
番外の魔道階級。事実上、導師級と賢者級の間に位置するが、正規のモノでは無い。多くは老成した凡百の魔術師に贈られる称号であり、政治的配慮の産物。ごく稀に、研究成果に乏しいが、教導成果に優れた者にも与えられる。
賢者級セージ
そのほとんどが魔道士である魔術師。才能があれば、新たな魔術を開発できるほどの知識がある。
賢君級ロード
学派の第一人者である魔術師。その学派においては、他の追随を許さないだけの知識がある。
偉人級グレート
偉業を成し遂げた魔術師に贈られる名誉階級。
冠位級グランド
魔術王にのみ贈られた名誉階級。魔術王のあまりの偉業に、急遽、新しく規定された。
隠者について
寿命を超越した魔術師。その多くが、世俗との関係を絶ち、秘境にて魔術研究を続けているため、この呼称が用いられる。
呪医について
医療魔術を専門とする魔術師の俗称。魔法学会としては、魔術体系に基づいた分類を正式なモノとしている。都市部であれば、聖天教会の聖職者に治療してもらうことが通常であるので、やはりこの呼称を用いることはない。この呼称は、辺境固有の土着魔術の独学継承者で医療魔術を家業とする者たちに対するモノとのイメージが主流で、都市部でこの呼称を用いた場合は、蔑称となることがある。
軍属について
魔術師の軍属は、一概に出世とは言えない。研究テーマを軍事利用に指定され、思考を放棄した一定の魔術行使を指示されるため、魔法の深淵を覗くことができないためである。優秀な魔術師の多くは、研究気質でそのような自由の無い立場を望まないので、軍属の魔術師で優秀な者は稀少である。しかし、魔術の威力を鑑みれば、軍事利用において平凡な魔術師で充分であり、また、特殊技能である魔術を修める魔術師の人件費は高いため、需要が低く、その数は安定して供給される。
魔道士団・魔法兵団について
どちらも軍属の魔術師集団のことを指す。ただし、魔道士団は研究機関、魔法兵団は実戦部隊である。
騎士について
騎士は、騎馬戦技術を修める軍人のことであり、準貴族的階級のことでもある。金銭的に余裕があるため、魔導師を雇い、簡易な魔術を修めている者は多い。特に王族の護衛を任務とする近衛騎士は、導師級の魔術の腕前を採用条件としていることも珍しくない。
また、教会所属の聖騎士は、神聖魔術を修めている必要があり、そうでなければ、修道騎士と呼称される。