8話 ロクなのがいないんですけどこの世界 ①
作「………」(土下座)
白「言い訳は?」
作「……マギレコでバレンタインなぎさちゃん復刻すると聞いて」
白「……結果は?」
作「大爆死」
白「ざまぁ」
追伸 2話に分けました。
抵抗する愛夜華をなんとか送り出した後、現在白夜は自室にてVDCを引っ張り出してゲームのセッティングをしていた。
どうやって送り出したか? 前回の次回予告を見てくれ。(次回予告の宣伝とはこれ如何に?)
白夜の部屋は、木製の本棚と机、その上にあるデスクトップパソコンとベットとクローゼットだけ、という飾り気の無いものだった。
本棚の空いたスペースには、白塗りに黒い丸を描かれた鞘に、黒い柄に白の柄紐のものと、黒塗りに桜の花が散りばめられた鞘に、薄い桃色の柄に黒い柄紐の二本の小太刀が飾られていたが、模造刀かなにかだろう。
隣にはこの二本のためと思われる持ち運び用のベルトがあったり、白夜が出かけている間はこの小太刀たちはこの部屋から消えていたりするのだが、気のせいだろう。
ゲームのハードであるVDCはヘッドホンにVRゴーグルを足したような見た目をしている。
このVDCは正確には2種類あり、愛夜華がどこかから引っ張り出してきた理論で作ったのがフリティブ専用機である、今目の前にあるものだ。
もう一つはフリティブサービス開始前からあった、愛夜華が電子レンジ作る感覚で作ったという白夜がビー○セイバーとかやるのに使っていたのはこちらである。
フリティブ専用機の方は、フリティブがあまりにもリアルであることから、正式名称はワールド・ダイビング・システム、略してWDCらしい。中身以外はほとんど同じなので、こちらで呼ぶ人はいないらしいが。
そんな、先程愛夜華に教えてもらった知識を思い返しながら、白夜はパソコンとWDCを無線LANで繋ぐ。
ゲームの起動はパソコンとWDCを繋ぐと同時にやっていたのであとはWDCを被るだけである。
白夜は接続の終わったWDCを着け、ヘッドホンで言うアームの部分に付いていたゴーグルを下ろし、目元に合わせる。
そのままベットに横たわり、しばらくすると、今までのVDCでは感じたことの無かった魂が抜けていくような浮遊感を感じ──
次の瞬間、白夜は白亜の神殿のある真っ白な世界でたたずんでいた。
◇ ◇ ◇
まともな人間なら長時間いるだけで気が狂いそうな白い景色の中、しばらくきょろきょろと辺りを見回していた白夜は、
「………あ、チュートリアル的な?」
誰も何も言わなくても勝手に理解していた。説明が省ける楽な娘である。
白夜はそのまま神殿の方へ歩き出し──
「…………っ!!」
瞬間、膝を落とし、飛び跳ねながら腰を捻り、背後にいつの間にか立っていた者の首筋に回し蹴りを叩き込む。……だが、
「声をかける前から攻撃をされたのはあなたで2人目です。あたっていれば死んでいましたよ?」
白夜の回し蹴りは背後にいた人物の手に掴まれていた。
そこにいたのは、正に神によって造形されたとしか表現出来ない、腰まで伸ばした輝く銀髪に、同色の瞳に、白い修道服を着た絶世の美女だった。
「……じゃあとりあえずその殺気引っ込めてくれる? そんな敵意全開で人の後ろに立つのが悪い」
本来なら死んでいたような攻撃を出会い頭にしたというのに本人は全く悪びれること無く言い放つ。
そのまま、掴まれたままの足を軸にして再度回し蹴りを仕掛けるが、銀髪美女に無造作に放り投げられ、空中で体制をたてなおし、ふわりと猫のように身体をしならせて着地する。それを見ていた銀髪美女は先程の白夜の言葉に返答する。
「私はそんなものを出した覚えはありません。気のせいでは?」
「『親の仇にそっくり。でも完全に無関係だってわかってるからなんともできない』って感じの敵意だったけど?」
「………私に感情はありません」
「……あっそ」
今の一言で白夜は完全に銀髪美女から興味が失せたらしく、それ以上何も言うこと無くそこで話を区切った。
銀髪美女の方もこれ以上この話をするつもりは無いらしく、
「それでは、あらためまして。私はアンクル、神の使いとしてここでプレイヤーの補佐などをしています」
(神の使い? 要は天使? その見た目で?)
白夜は銀髪美女あらためアンクルが天使と名乗ったことに納得がいかないらしい。
たしかに正に神に造形されたかのような美貌だが、天使というよりは女神、三歩譲って戦乙女である。つまり白夜が何を言いたいかというと、
「天使と言うには可愛げが足りない。これを機に戦乙女にジョブチェンしてみない?」
「私は主より天使として造られた存在。今更変わることはありません」
半分以上本気の白夜の提案に、表情を変えること無く淡々と答えるアンクル。
神の使いというだけならまだ戦乙女の可能性もあったのだが、それだと神の兵士だとかそういう言い方をするだろうという、半分以上勘で天使と言った白夜だったが、どうやら天使であっていたらしい。
◇ ◇ ◇
「それでは初期設定を開始します」
どこか険悪な(片方は既に興味を失っている)空気を切り替え、アンクルが本来の仕事を始める。
「まずはアバターの見た目を決めて下さい。性別や体格の大幅な変更はできません。誤差は数センチまでです。髪や目の色等はいくらでも変更可能です」
そう言って白夜の目の前に開かれた複数のウィンドウには、白夜自身の3Dが表示されている。
自分を上下前後左右360度眺めたところで何も面白くはないが、とりあえず様々な方向に回して遊んでから側面でピタリと止めると、そこには上から下までストン、と引っかかることの無いまっすぐなシルエットが──見えたあたりですぐにまた適当にぐるぐる回して別のウィンドウに視線を向ける。何も見なかった、いいね?
視線を移した別のウィンドウには、様々な数値が表示されており、上から身長体重手足の長さスリーサイズなど──また数値が目に入る前にすぐさま完了ボタンをタップする。
ちなみに書かれていた数値は、身長ひゃくよんじゅう──
「だまれ」
……最後の一桁をなんとか死守する白夜、どうやらここは地雷が多すぎたらしい。何も見なかった! いいね!?
「良かったのですか?」
アンクルが言っているのは何も見なかったことにして良かったのか、ではなくリアルの見た目をそのままアバターにして良かったのか、ということだろう。
余談そのものだが、リアルの見た目そのまま、もしくは髪や目の色を変えただけのアバターをリアルモジュールと言う。大多数のプレイヤーは、顔の形などもシステムで許されるギリギリまでいじっている。
「……うん、もういい……」
一瞬のことであったにもかかわらず、どこか疲れが見える白夜。
ちなみに本人は記憶を偽装しているようだが、現在の身長は元の身長と十数センチ程度しか変わっていない。見た目年齢では大体2歳程しか変わっていない。本来の年齢からなら5歳くらい下がっているが。
「そうですか。それでは次はジョブ選択です。これは特に注意点などはありませんし……まあ、見れば分かるでしょう」
急にアンクルの説明が適当になった。ちゃんと働けやと思うものの、白夜は機械なども少しいじれば問題なく使えるようになるタイプなのであまり困らない。
ジョブ一覧に書かれていたのは、【剣士】【拳士】【槍術士】【闘士】【銃士】【錬金術師】【火術師】【水術師】【風術師】【土術師】【光術師】【闇術師】【空術師】etc。
正直、やるなら慣れている近接型。魔術とか訳分からんものは慣れてからやりたくなったらやればいい。だが、武器と言ってもぶっちゃけ剣だろうが素手だろうが槍だろうが銃だろうがなんでもできる。
そのため、これといったものが思いつかないので、説明欄いわくあらゆる武器に対応している代わりにそれぞれの武器におけるステータス上昇率が低めに設定されている【闘士】を選ぶことにした。
(……今気付いたけど説明欄あるならアンクルいらなくない?)
気付いてはならない事に気付いた気がしてすぐに思考をそらす白夜。先程から無表情で白夜の方を見ていたアンクルの気配が一瞬変わった気がしたので正しい判断だったのだろう。
「次は武器選択です」
既に初期武器選択画面は出ていたのだが、わざわざ説明したのは仕事してますアピールだろうか。
「……多くない?」
白夜が思わずそう言葉を零したのは、その言葉通り、あまりの武器の種類の多さに驚いたためである。少しアンクルが可哀想になったとか、そういう感情は一切無い。
「はい。我々も正確な種類は把握してはいませんが、数千種類はあるかと」
アンクルもどこか呆れたような雰囲気で言う。
二人がそう言うのも、剣や刀の種類だけでもいくつかの分類に分けてあり、長剣、大剣、短剣、直刀、太刀、小太刀、大太刀、斬馬刀から大鎌、トンファー、チェーンソー、ピコピコハンマーなんてものまである。
「ちなみに、画像などのデータがあれば、そこから新しく作ることもできます」
「……ってことは『ヤシロ』や『ヨザクラ』の写真撮ってきたらそれもコピーできるのか……。初期武器に凝りすぎじゃない?」
「製作者の趣味では? どうします? あなたがリアルで写真を撮って来るというならどうぞご自由に」
「……わかった。ちょっと行ってくる」
その答えを聞いたアンクルは、なにやら手元の画面を操作すると、白夜の前に『ログアウトしますか?』と書かれたウィンドウが現れたので、そのままログアウトした。
ログアウトしてすぐに本棚の方へ向かい、そこにある二本の小太刀(残念ながら模造刀ではなかったらしい)の写真を撮っていると、
「……思い出した。このゲーム前に見た」
大体一年程前、このゲームが発売される前に、愛夜華に連れられ、データの収集という名目で変な機械にかけられたことがあった。
他にも何人かいたが、よく覚えていない。
(そういえばフレアがいなくなったのもそのあたりだっけ? 変な機械のせいで消えたのかね?)
たかが機械にかけられた低度で死ななそうな人格たちを思い出し、それは無いなと首をふる白夜。
そんなことを考えつつも、写真を撮っていたスマホをパソコンに繋ぎ、ゲームの方に写真を移す作業を終わらせたので、もう一度ヘッドギアを被ってログインする。
「やっと戻って来ましたか」
「……そんなに時間かかってないと思うけど?」
「あぁ、そういえば説明していませんでしたね。この世界は現実の3倍の速度で時間が進んでいるのですよ。なのであなたが5分で作業を終わらせたとしてもこちらでは15分が経過していることになりますね」
「へ〜」
白夜としては今までしていたフルダイブ型ゲームの中にも時間加速機能付きのものがいくつかあったので大して驚かない。
ただ、時間加速機能は脳への負担がかかるらしく、大体のゲームは3倍に設定されている。
人それぞれの脳の演算能力によって限界は違うものの、大体の人間は5倍までが安全、10倍からは人によっては危険。と言われており、5倍を超える加速機能を使う場合、自己責任ということになっている。
VDCの初期設定時に大まかな限界を測る手順があり、そこで出た限界以上は加速できない、という機能もある。測定データは脳波とともに保存され、他のVDCを使用しても自分の設定されたもの以上は加速できない。
ちなみに白夜は150倍を超えたあたりでめんどくさくなったのでやめた。愛夜華は200倍まで粘ったらしいが、時間の無駄だと気付いてやめたらしい。
閑話休題
とまあ、大して必要でもないどうでもいいことを紹介している間に、白夜の小太刀が完成した。
白塗りに黒い丸を描かれた鞘に、黒い柄に白の柄紐のものが『ヤシロ』、黒塗りに桜の花が散りばめられた鞘に、薄い桃色の柄に黒い柄紐のものが『ヨザクラ』である。抜き放つと、どちらもつや消しの黒い刀身をしている。
それぞれを右手と左手に持つ小太刀二刀流スタイルで白夜が振り心地を確かめていると、アンクルがどこか引いたような目で白夜(正確にはその武器)を見ているのに気付いた。
「? どしたの?」
白夜に尋ねられたアンクルは、奇妙なものを見たとでもいうような雰囲気で、
「……その小太刀、右手のものはなにか怨念のようなものが宿ってますし、左手のものにいたってはなにか憑いているように見えるのですが……」
「………? そんなわけないじゃん。ここはゲーム内なんだし」
ありえないと否定しつつも、リアルの小太刀には宿っているし憑いているのを否定しない白夜。この小太刀の銘を知っている陸斗たちならば納得するのだが、生憎とアンクルはその銘も由来も知らない。
その後のアンクルの説明によれば、初期武器は全て本人のレベルが上がるごとに攻撃力が上がるらしい。
「まあ、ステータスごとに装備できる武器を買うなりしたほうがいいと思いますけどね」
ついでに耐久値が設定されておらず、無限に使えるらしい。
「弓は矢を拾ってまた打てばいいですけど銃弾では意味がありません。遠距離武器は最初は特にこれといった補整が無いのでプレイヤースキルが求められますね。よく勘違いしたプレイヤーが弓を使って、当たらないので最終的に矢で刺してますね」
「それ確信犯では?」と思ったものの、めんどくさかったので白夜は何も言わなかった。
「それと、初期ステータスですが、最低値を10として、リアルでの身体能力に合わせてあります。なのでリアルよりも身体が動かないという事はありません。ちなみに、10がリアルでの成人男性の平均くらいですね」
言われて見てみると、ステータス画面には、
HP:50
MP:10
SP:10
筋力:10
速度:30
防御:10
魔攻:10
魔防:10
といった感じに表示されていた。
「………」
ほとんどのステータスが成人男性以下、それは当然である。だって幼女だもん。
問題はHPと速度である。生命力が成人男性平均の5倍、速度が3倍。これはどのくらいなのか、といった目線でアンクルを見ると、
「HPが50、まあ……ゴキブリみたいなものですね。速度が30、これも大体ゴキブリですね」
どうやら白夜はゴキブリだったらしい。酷い言われようである。ちなみに白夜は虫が大の苦手である。ゴキが出現した瞬間には無意識でその場からドロンするくらいには。
「…………」
「……いえ、その……そんな顔されますとこちらとしても罪悪感が湧いてくるのですが……」
白夜の表情は光源的にありえないはずの目元の影によって隠れて見えないが、なんとなくどんよりとした雰囲気が伝わってくる。見た目が幼女だけあって半分冗談として言った側としては罪悪感が半端ではない。
「…………」
ちなみに白夜は、自分がゴキになってカサカサしているのを勝手に想像して気持ち悪くなっているだけである。完全に自業自得である。
その後、白夜をさっさと放り出したいのか、残っていた設定をさっさと終わらせたアンクルは、さっさとゲームの世界に放り込んだ。
「…………」
白夜がいなくなった白い世界で、アンクルはしばらく本人が言うような人形のような表情でたたずんでいた。しばらくすると口を開き、
「……もう二度と、会うことがなければ良いのですが……」
脳裏に浮かぶ、先程までここにいた少女とよく似た少女を思い出し、
「もし、あなたがこの世界でも我々を邪魔するのであれば……」
脳裏にフラッシュバックする記憶、否、記録を振り払いながら、
「──その時は、私が殺します」
話を分ける際に次回予告は次回に移動しました。




