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29話裏 黒幕

前回からまた1ヶ月……まあ、今年中に3話書くってのは達成できそうだけど……。

ところで皆さん、セレナとシャロどっちが好きですか? Twitterでアンケートでもやってみようかな。やり方知らんけど。

答えて何か変わるのかって? ……変わるかもしれない。


追記 できましたわ

https://mobile.twitter.com/RyuunoNia


「おい」


「……なんだい?」


 久美子が愛夜華と電話していた頃、病院の屋上では長い白髪に紅い瞳が特徴的な和服の少女が、銀髪にアメジストのような瞳に銀縁の眼鏡をかけた、白衣の男に詰め寄っていた。


 二人の間にはただならぬ空気が流れており、互いに明らかな殺意を向け合っていた。


 和服の少女の手には紅く光を反射する黒い刀身の直刀、白衣の男の手には青いチェンソーが握られており、鍔迫り合いのような状態になっている。


「1ヶ月前、先祖返り候補、いや、もう先祖返りは起こしているようだな。そのわたしの子孫の中にある、わたしの因子が急激に増殖、活性化した」


「ほう、それは初耳だ。是非とも調べてみたいものだねぇ」


「白々しい……。まあ、そこまではまだ良い。すぐに沈静化したからな。問題はその後だ」


「沈静化したならいいじゃないか。早く帰ってくれ」


 そう言いながら男は電動チェンソーのトリガーを引く。


 刃が高速回転をし始めたことにより鍔迫り合いをしていた少女の刀が弾かれるも、刀身には傷一つつかない。


「……ちっ。これでも駄目か」


「普通、この刀と打ち合えばそのチェンソーが壊れるはずなんだが……」


「同僚が同じ刀(サンプル)を持っているものでねぇ。見せて欲しいと言ったら見せてくれたよ。アプローチは違えど、強度と切断力までは再現できた。それの破壊にまでは至らなかったが」


「なんでチェンソー? 戦闘には向かないと思うのだが……?」


「私の趣味だ。いいだろう?」


「………」


 なにもおかしなことはないと言わんばかりの清々しい笑顔に、少女はツッコミを放棄して話を聞かせるためにとりあえず1回殺すか、と考えながら男に斬り掛かる。


 少女が男に飛びかかり、刀を振り下ろすと、男はそれを左手で受け止める。

 だが、その刀は止まることなく手のひらからまっすぐ肘あたりまで斬り裂く。


「それに、全く戦闘に向かないわけじゃない」


 男はチェンソーのトリガーを引きながら肩に担いでいたそれを少女の頭目掛けて無造作に振り下ろす。


 少女は余裕を持ってチェンソーを躱すが、長い髪がチェンソーに巻き込まれ、強制的に動きを止められる。


「なっ!」


 男は少女の腹部に前蹴りを放つ。

 直前で左手の手刀で髪を切断した少女は、左腕に刺さったままだった刀を引き抜き、前蹴りを受けて吹き飛ばされる。


 チェンソーが戦闘に不向きとされているのは、髪や衣服、肉片などが絡まって巻き込み事故を起こすことが主な理由である(他にもいろいろあるが、とりあえず縦に切ることはおすすめしない。血肉を全て浴びることになる。やるなら木を切る(本来の用途)みたいに横向きで)。


 ならば、戦闘を有利に運ぶためにその巻き込み事故を起こしてしまえばいい。と男は言っているのである。


 納得してはいけない。答えは「は?」が正解である。

 事故を起こすから駄目だっつってんのにじゃあ事故を起こせばいいはおかしい。

 チェンソーは対人武器ではない。


「くくっ、はァ──ッハッハッハ! 前回殺られまくった分にはまだ足りないが、とりあえずやり返せて私は満足だよ。もう帰っていいよ。次までにお前を滅ぼす方法を見つけることにしよう」


「ぐっ……。女の子の髪を引っ張るとは、親の顔が見てみたいわ」


「それは生みの親かい? それとも育ての親かい? どちらも確定で野垂れ死んでいるが。いや、そもそもどの口で女の子とか言っているんだい? お前、私の倍以上の年齢だろう?」


 そんな軽口を叩き合っている間に、いつの間にか少女の髪は元の長さまで戻り、男の左腕の傷も消えていた。


「そんなことより、わたしの子孫だ。3年と少し前の方は仕方ない。命の危機だったからな。それ(・・)そのもの(・・・・)には(・・)お前はほぼ(・・)関係していないのも分かっている。それより、1ヶ月前に沈静化した因子が、昨日再び活性化した。お前のゲームが原因のようだが?」


「なんでもかんでも私のせいにするのはやめて欲しいねぇ。私が一体なにをしたと言うんだい?」


「この時代のもう一人の先祖返り候補を誘拐、それと今話している方の子孫の精神から一部抜き取っただろ。忘れたとは言わせん」


「誘拐したのは他人だし、一部を抜き取ったのは当人の姉ではないか。どちらも私にとっては顔見知り、同僚程度の関係だ。私は関係ない。それに誘拐された方は今は記憶を失って別人として幸せに生きているし、もう片方は昨日死んだ。もう、お前が出る幕じゃない」


「まだしらを切るか。まあ、いまだに証拠の一つも出ないんだが……」


「当然だ。やってもないことの証拠が出るはずがない」


「はぁ………。消えた記憶の方も使っているらしいな」


「ああ。今は私の助手として働いているよ。礼は言わないとね。素材提供どうもありがとう。お前は嫌いだが、紅月の血は優秀だからね。落ちていたら拾うくらいには」


「はぁ〜………。もういい」


 これは以上話しても無駄だと考えた少女は、再び刀を構える。


「──《瞬転》」


 タンッ、という、軽い足音が響くと同時に、少女の姿は消え、そこには四肢と首を切断された男の身体が散らばるのみとなった。


 ──紅月流体術奥義《瞬転》

 白夜や愛夜華、千里や陽向といった者たちを始め、最も使い手の多い奥義である。

 あらかじめ入力しておいた行動を瞬時に出力する。一切の予備動作がなくなる部分が強みである。


 白夜たちは主にそれを、高速で距離を詰める、納刀状態からの抜刀術、高速の抜き撃ちなど、一つの行動だけを行っている。

 距離を詰めるにも、基本的に最初の踏み込みまでで、千里の抜き撃ちも、銃を抜いて構えるところまでで、狙って撃つのには使っていない。


 手順が増えれば増える程入力する内容が増え、難易度は桁違いに跳ね上がっていく。それが《瞬転》である。


 だが、今の少女は男へ近づき、四肢と首を切断し、姿を消すまでを一度の《瞬転》でやってのけた。恐るべき技量である。


 そして、血溜まりと男の残骸が散らばるのみとなった屋上にて、一つの声が響き渡る。


「ずいぶんと面白い格好になったね。パパ」


 屋上へと繋がる扉、その屋根の上には黒に近い紫の髪、アメジストのような瞳を持ち、黒い革製のトップとショートパンツの上から明らかにサイズの合っていない袖の余った白衣を羽織り、首にガスマスクを掛け、太ももや腰のベルトには色とりどりの液体の入った試験管をぶら下げた少女が、先端がスペードの形をした細い尻尾をゆらゆらと揺らしている。


 小悪魔のようなイメージの、先程の二人と競っているかのような奇抜なファッションの少女である。


『見てないで繋ぐのを手伝ってくれないか? あと、私は君の父親ではない。お前はただの助手だよ』


 地面の残骸から声が聞こえる。どう考えても異様な光景だが、少女は気にした風もない。


「え? やだよ? 自分でなんとかして。パパって呼ぶことを認めるなら手伝うけど」


 そう言いながら、少女は転がっていた手足を拾い上げ、ぽいぽいと雑に袋の中に放り込んでいく。


「ならいい。あと、私は父親にはならない」


 見れば、白衣の男は血溜まりからむくりと起き上がり、ゴキゴキと首を鳴らしていた。

 切断された首は血の痕こそあるが綺麗に繋がり、手足はまだ少女の持つ袋の中にあるはずだが、元に戻っている。胴体には血がべったりと着いているのに、白衣の袖には汚れ一つない。


「ああ……私の頭が……」


「私のだが?」


 ちょうど頭を回収しようとしていた少女が悲しそうな声をあげるが、男は眼鏡をかけ直しながらごく真っ当な返しをする。……いや、そもそもこの会話がどこかおかしいのだが。


「素材……せめて眼球だけでも……」


「……私が言うのもなんだが、私に似てきたねぇ」


「子は親に似るものでしょ」


「親じゃない」


 男はため息を吐きながら、アメジスト色の虹彩を持った眼球を放り投げる。


「わーい、パパ大好き! ……ごめん。大好きは嘘」


「ああ、一瞬寒気がした。あとパパじゃない」


「酷くない?」


「お前も大概だろう」


 それもそうか。と少女はふわりと屋上の柵の手すりに飛び乗り、特にバランスをとるような仕草も見せずにその上を歩き始める。


「というか、さっきの人に蹴り返しただけで良かったの? ちっせぇ。前にボコボコにされたんでしょ? ざまぁ」


「本音を隠せ。まあ、1回蹴るのも1回殺すのも変わらない。そして、1回殺すのも100回殺すのも変わらない。どうせいつか滅ぼすんだし、そのあたりは誤差だね」


「ふぅん……」


 少女は適当に返事をし、手すりの上で逆立ちをし、そのまま進み始める。

 白衣が盛大に捲れ、背中に小さな蝙蝠のような翼が見える。


「というか、寒くはないのかい? 知らないのなら言っておくが、今この国は真冬だ」


 少女の格好は白衣を羽織っているものの、お腹も脚も丸出しである。この2月の日本では正気の沙汰ではない。


「おしゃれは我慢って言うでしょ?」


「その格好をおしゃれだと──いや、見ている方が寒いからやめてくれという話だ」


 男は一瞬何かを言いかけたが、すぐにやめた。

 年中白衣の自分が言えたことではないし、言ったところでうるさくなるだけだ。

 例えそれが事実でも、周囲から「服着ろバカ」と言われていようとも、本人がいいならそれでいいのだ。


「ああ、そういえばパパは半分トカゲだったね。冬眠でもする?」


「………今回は見逃そう。次は氷漬けにするからね? あと、父親じゃない」


「は〜い」


 聞いているのかいないのかわからない返事をする少女にため息を吐きながら、男は屋内へと続く扉に手をかける。


「それでは、私は『地下』に戻る。まだ、やることがあるのでね。お前も早く帰りなさい」


「地下? ああ、冬眠か。うん、またねパパ──あ゛」


 バタン、と屋上へ続く扉を閉め、男はそのまま階段を降りる。


「まったく、父親にはならないと何度言えばわかるのやら……」


主人公たち気づかれることなく、物語に大きく関わることなく主人公たちに多大な影響を与え、そして気づかれていないがために主人公たちに裁かれることもなく暗躍する、ある意味完璧な黒幕。

しかも本人にその自覚はなく、ただやりたいことをやっただけ。それが他人の人生にどれだけの影響をもたらしたかなど考えもしないし、興味もない。

そんな、倒すルートが存在しない裏ボスのお話でした。


ちなみに、悪魔っ娘の翼と尻尾はただの飾りです。この日本にそんなもん生やした生物が存在するわけないですよね?


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