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1話 全てが終わり始まった日



 これは、4年程前の出来事だっただろうか。


 思えばこの日、この瞬間が全ての始まりであり、その少年の終わりだったのかもしれない。


 夕暮れ、そこは病室だった。なんということもない、普通の病室。


 その病室のベットには1人の少年がからだを起こして座っていた。


 そのベットの傍には1つの人影があった。


 少年の髪は黒と白が入り交じり、くすんだ灰色のようになっていた。


 少年の左手首と首には包帯が巻かれていた。


 少年は完全に光が消え、焦点の合っていない瞳を人影へ向け、一言、言葉を発す。


「……ねぇ、おれを、ころしてよ」


 そんな少年の言葉に、人影は──



─────────────────



(これまたずいぶんと懐かしい夢を)


 そう思いながらその人影はベットからからだを起こす。時計を見ると、そこでは短い針が7を指していた。朝の7時である。


(……あ、お弁当と朝ごはん作るの忘れた)


 だが、自分が体調を崩して寝坊するのはたまにある事なので、おそらくなんとかしているだろうと考え、とりあえず起きようとベットから降りようとすると、


(あれ?ベットこんなに広かったっけ?)


「わわ!?」


 次の瞬間、ドン!という音をたて、床に落ちる。


 見事におでこから落ちたはずなのに、痛みに顔をしかめる様子も無く、顔を上げると、視界に白いさらさらとした髪が映る。


(あれ?俺の髪こんなに白かったっけ?もっとくすんだ灰色だったと思うけど)


 そこで寝ぼけていた頭がようやく覚め、現状がおかしいことに気付く。


 いつもより広く感じるベット。さらさらとした白い髪、そもそもこんなに長くなかった。よくよく思い出してみると先程の自分の声もおかしかった。


 少し視線を下げると、ぶかぶかになっている自分のパジャマが見えた。さらに左手を見ると、いつも付けている黒いリストバンドが緩くなっている。しかも元々日にあたる機会が少なかったので白かった肌がさらに白くなっている。


(……まさか)


 一つの可能性に思い当たり、急いで部屋から飛び出し、階段をかけ下りる。


 途中、部屋を出る前パジャマのズボンの裾を踏んずけて転びそうになったり、階段を下りる際に踏み外したので、壁を蹴って一回転し、着地する。


「よっと」


 体操選手もびっくりのアクロバットである。少なくとも寝起きにやるような動きではない。


 リビングを横切り、洗面所に駆け込む。


 リビングには全員揃っており、


「あ、しろおはよ───は?」


「「「───は?」」」


 大体こんなかんじの反応だった。


 ばたばたと洗面所に駆け込み、鏡を覗きこむとそこには、


「…………」


 白髪を腰を過ぎたあたり、ちょうど座った時にぎりぎり踏まない程度に伸ばし、頭上でアホ毛がおどる。血のように紅い目を少し、驚いたように見開き、首の黒いチョーカーの左側が少しずれている少女がいた。


 というか階段をかけ下りて来たあたりからほぼ確信していたが、身長が縮んでいる。


 元は160手前はあったはずだが、今はどう見ても150にも届かない。


「……なんでや」


 この日、この瞬間がこの少年、否、少女の人生で二度目の全てが終わり、そして始まった日であった。



─────────────────



「…………」


(よーしおちつけおちついた。俺の名前は紅月 白夜(あかつき びゃくや)。現在16歳の高一、のはずだけどここ数年不登校児やってます。やってることはほぼ専業主夫(?)だけど。よし、自己紹介終了。記憶問題無し。あとは夢かどうかの確認……ほっぺたつねる? やるだけ無駄か、夢にしてはリアルすぎるしさっきベットから落ちたし)


 それに、


(俺、男だったはずだよな?)


 そう、この少年、白夜の記憶では自分は生まれた時から男のはずであり、断じてこんな美幼女ではなかった。


「しろ──だな。どうしたその格好」


 白夜が鏡とにらめっこしながら悩んでいると一人の男が洗面所に入ってきた。よく見るとその後ろにさらに四人の男女が顔を覗かせている。


「ん、あぁ父さんか。あと後ろ、見えてるから」


 現在白夜が父さんと呼んだのは白夜の父親、紅月 研仁(あかつき けんじ)である。


 後ろにいるのは母親と、同居中の幼なじみ兼親友三人である。姉も一人いるのだが、今どこの国にいるのかも分からない。昨日まで日本にいたはずなのに次の日にはブラジルにいるような人間だからしょうがない。


 親友三人が同居しているのにはわけがあるのだが、それは後々説明する。


「俺をパパリンと呼ぶのは現在世界で二人だけだな。で、どうしたその格好。俺には息子と娘がいるが、今家にいるのは息子だけだったはずだが記憶違いか?」


「俺も姉ちゃんもパパリンって呼んだことないけどね? 俺も昨日まで男だったはずなんだけど気のせいか? あとたくみとりく、そら抑えといて」


「「完了した」」


 了解した、ではなくすでに完了していたらしい、ちなみに今呼ばれたのが親友の三人である。


 三人とも同じ制服を身につけており、拘束しているうちのがたいが良く、背が高い方が先程りくと呼ばれた少年が、如月 陸斗(きさらぎ りくと)という。


 もう一人陸斗より少し背が低い眼鏡の少年がたくみと呼ばれていた睦月 拓海(むつき たくみ)である。


 そしてそんな二人に拘束されているポニーテールの少女がそらと呼ばれていた、望月 美空(もちづき みそら)である。


 ちなみに今までの会話から分かるように普段、白夜はしろと呼ばれている。


「ねえしろ、ちょっと抱っこしていい?」


「だめ」


「そっかぁー」


 なにやら美空が寝言を言っているのを流しつつ、白夜は違和感を覚えていた。


(あれ? 今の会話どこかで……)


 思い出してみるが、どこにもそんな記憶は無い。


 だが、次の瞬間何が起きるかが視えた。


「ならば!」と美空が言うのと同時に美空が拘束から抜け出し、白夜へ迫る──


 が、そこにはすでに白夜はいなかった。


「!?」


(なんで躱せたんだろ。どこからか記憶が……)


 白夜はしばらく不思議そうに考え込んでいたが、これ以上考えない方がいいと考え、その思考を放棄した。懸命な判断である。


「まぁ、こんな所で話すのもなんだし、とりあえずリビング行かない?」


 と言ったのが白夜の母親、紅月 由美(あかつき ゆみ)である。


 由美の一言でリビングに移動した一同だったがそこには、


 結局捕えられたのが一人、捕えて膝の上に乗せてご満悦なのが一人、変わり果てた親友を見て笑いを堪えてぷるぷるしているのが二人、それを微笑ましげに眺めているのが一人、ちょっとでも真面目な雰囲気になるかもと考えた自分がばからしくなったのが一人、


 と、とても自分の息子、もしくは親友が変わり果てたとは思えない程の呑気な雰囲気が流れていた。全員驚きを誤魔化しているのでもなく、本心からのこの反応である。


「で、しろそのからだどうした?」


「朝起きたらこうなってた」


「あやに変な薬でも飲まされたか?」


「姉ちゃん信用ねぇな。たしかにやりそうだけど多分違うと思う姉ちゃんここ一週間は帰ってきてないし。」


 白夜から姉と呼ばれているように、先程研仁からあやと呼ばれたのが白夜の姉である紅月 愛夜華(あかつき あやか)である。


「んー、分からんならこの話はまた今度にするか。とゆうかそのからだアルビノじゃないか?」


「多分ね」


 そう、先程血のように紅い目、と表現したが、おそらく血のように(・・・・・)ではなく血の色である。


「後天性のアルビノとかあんの? メラニン色素どこやった?」


「遺伝子レベルで書き換わってるって事でしょ? 姿も性別も変わってるのに今更でしょ」


「それもそうか」


「というかこの姿で俺って一人称違和感あるな。わたし? ボク?」


「適応早すぎね? あとチョーカーとリストバンドずれているぞ」


「そりゃちっちゃくなったなら緩くなるでしょ。てか学校はいいの? 時間そろそろヤバくない?」


「「「「「あ」」」」」


「とりあえず白夜、包帯(これ)巻いときなさい」「えー、別にいいよわたし気にしてないし」「「「「「少しは気にしろ! そして適応が早い!」」」」」「先生、担任権限でなんとかならない?」「なんとかする。任せろ」「「「やったぜ」」」「帰りにいろいろ買ってくるわね。またあやにチョーカーとか頼まないと」「はいよ」「今日金曜日だし今日中に病院行くわよ」「はーい」「あと明日にでも服とか買いに行くから」「え?」


「「「「「いってきます」」」」」


「いってらっしゃい」


 と、怒濤の勢いで家を出て行く五人を見送る白夜。その後、言われた通り慣れた手つきで手首と首に包帯を巻き、


「とりあえず片付けするか」


 朝ごはんの片付けに取り掛かった。

 どうも! ただいま学校に向けて全力疾走中、望月美空です!

 突如ロリったしろの最初の疑問は「そもそもこのからだどこまで動くの?」というわけでいろいろ試してみよう! という話です

 ていうかあの見た目……名は体を表すってまさにああいう事だよね。ピッタリじゃん

 話がそれましたね、次回予告でした


 次回:『身体検査』


 次回もお楽しみに!!

 え? しろを襲うなよって? ……それは約束しかねる

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