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仲間

「ええっ!? あんたが勇者なのかにゃ!?」

「ああ」


 ギルドの奥の部屋、つまり俺たちが話し合いをするいつもの場所だ。そこで、俺は自らが勇者であることを打ち明けた。

 もちろん全員驚いていた。打ち明けたことに対してフォトが驚き、衝撃の事実にヴァリサさんやリンクスが驚いた。

 しかしリュートは驚いていないようだった。いつもならこいつが一番驚くのに。


「リュート、もしかして知ってた?」

「まあ。なんか、ヴールが勇者がーとか言ってたから、もしかしたらってさ」


 そういえば、口止めするのを忘れていた。あいつの性格なら、勇者勇者連呼していただろう。

 あいつは何かにつけて俺を引き合いに出すのだ。やれ勇者ならあーだとか、勇者はここがダメだから元気出せとか。そういうことを言いまくってる。多分リュートもそんな感じで知ったんだろうな。


「でも、今いる勇者の子孫はどうなるんだ? ……まさか本当に子孫!? 子持ち!?」

「ちげーよ! あれは偽もんだ。多分俺が死んだら不都合だから王国が嘘ついて代理の勇者を作ったんだろ。あと、俺には子供も奥さんもいねーよ」

「ですよねっ! そうですよ!」

「う、うん。そうだね。そんな感じするしね」


 おいそれは俺が結婚できなさそうって言いたいのか?

 泣くぞ? 魔王を倒した勇者が結婚できなさそうって言われて泣いちゃうぞ?

 まあ冷静に考えてみたら、結婚とか想像できないよな。つい最近まで普通の生活すら知らなかったのに、結婚とかもっとわからんし。


「むむむっ、最初は驚いたけど、改めて考えてみたら納得できるにゃ。いくら500年前の人間でも、それだけ強かったら名前くらい残るはずにゃ」

「でも、キールの名前は残ってないよね。これはどういうことなのかな」


 フォトがヴァリサさんの言葉に反応する。メガネも掛けていないのに。目元がキラーンと光った。ような気がした。


「いい質問ですヴァリサさん! 勇者様について伝わっていることなのですが、まず勇者様は自らを勇者と名乗っていて、本名は名乗っていなかったらしいのです! なので、今伝わっている伝説などにはキールさんの名前がほとんど載っていないんです!」

「なるほど。だから聞き覚えがなかったんだ」


 俺について記されている文書で、幼少期の話にちょっとだけ名前が載っていたりする。頭の片隅でそれを覚えていた人は俺の名前を聞いてチラッと勇者を思い出すのだろう。

 そして頭の片隅ではなく完全に覚えていたフォトは俺の名前を聞いてすぐに勇者の名前と同じだと思った。流石だ。わざわざ石像を買って庭に飾るだけのことはある。


「それでさ、えーっと、これまで通り接してくれるか? 隠してたことが許せないって言うのなら、謝る」

「そんなこと言うか。いやまあ、確かに衝撃的だったけどさ。僕も子供の頃、自分が竜の一族の血を引いてること隠してたから、なんとなく気持ちわかるよ」


 リュートも同じ気持ちになったことがあるのか。竜の一族の血を引いている、子供ならばそれだけで不気味に思われたりするだろう。だから隠す。なるほどな。

 俺が隠していた理由も、嫌われたくないからだった。あと、王国からこれ以上利用されたくない。とかな。


「ま、ここにいる人たちは隠し事くらいじゃ怒らないさ。ね、ギルドマスター!」

「うええっ!? と、当然にゃ! にゃははは!」

「そりゃよかった。じゃあ、王国との話し合いとか、頼むな」


 おそらく、王国との繋がりのあるギルドマスターは今回のことについて話し合いをすることになるだろう。そこで、俺の正体について話さないように、そしてなるべくはっきりと俺の戦力などを伝えなければならない。

 それはとても難しいことだろう。俺の戦力は普通におかしい。500年前の人間だと言っても信じてもらえるかどうか。信じてもらえても、勇者なのでは? と思われてしまう可能性もある。


「……いや、それは流石にキーにゃんも参加してもらうにゃ」

「マジかよ…………あ、数日後の招集ってそれも兼ねてるのか」

「そうにゃ」


 今回のクリム火山について。いや、もしかしたらミネラル鉱山についても詳しく話すことになるかもしれない。

 根掘り葉掘り聞かれるんだろうなぁ、うっわぁ、初めてだから緊張してきた。旅をしているときに王国と関わってたのって数えるほどしかないからね。何度かパーティーみたいなのに参加したり、それ以外は普通に泊まったり師匠の道場で訓練したりだったから本当に関わっていない。


「じゃあ僕達も参加するってことすか!?」


 リュートの言葉にヴァリサさんも頷く。あ、そういやみんな招集されてるんだっけ? ならみんなも話し合いに参加することになるな。


「そうにゃ! だからはっきり説明できるように準備しておけにゃ!」

「ぼ、僕は何を説明すればいいんだ…………」

「もうインフェルノさんの説明は終わったんですから、リュートさんはそれほど説明しなくていいのではないでしょうか?」

「あっ確かに。キールざまぁ!!!」


 インフェルノの説明が終わった、ということはインフェルノは近くまで来ているのだろうか。

 プレクストンにインフェルノが、ドラゴンが来たら大騒ぎだからな。連れてくるときに説明をしたのだろう。


「エクストラスキルについてとか、説明しないとだよなぁ……あの二人がいつ攻めてくるか分からないわけだし。それについての説明とか………………」

「おおっ、キールが気弱だ。珍しい」

「だって色んなことが起こりまくったんだもんよ。さっき目を覚ましたばかりだし、まだ整理できてないんだ」


 キレーネとディオネについてとか、フォボスについてとか。………………石化についてとか。

 そういやフォボスはどうしたんだ? ああもう、またこんがらがってきた。仕方ない。召集までの数日は状況整理に使おう。

次回、2章最終回となります。

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