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その覚悟

「――――――――ってことなんだ」


 全員が集まった家の中で、俺は火口にいた敵の戦力などを説明した。

 落石に関しては、インフェルノが空で守ってくれている。落石に関してはそれで対応できるのだが、そのうち溶岩がこの里を襲い始める。やはり早く対処をしなければ。


「僕は嫌だね」

「っ……」


 いつもなら、怖がって賛成してくるものだと思っていたのに。


「さっきも言ったけど、もう覚悟してきてるの。相手がどれだけ強くても、戦うしかないんでしょ今は」

「あたしも。絶対に負けるわけじゃないんだし、戦うよ」

「ヴァリサさんまで……フォト、フォトはどうだ?」


 チラリとフォトを見る。


「わたしも……戦いたいです」

「そんな…………死ぬかも知れないんだぞ」

「キールさんがわたしたちを逃がしたいのは危険だから、ですか?」

「……嫌なんだ、みんなが死ぬのは。考えたくもない」


 考えるだけで恐ろしかった。

 初めてこんなに親しくなった仲間。友達。そんな存在がいなくなってしまうのが恐ろしい。


「それを言ったら、ミネラル鉱山の時も全員が死にかけていました。あの時は、そうは思わなかったんですか」

「俺だってわかんないんだ。こんなの初めてで、なんで、こんな……………………」


 ミネラル鉱山の時は、どうだったのだろうか。相手が一人だからと油断していたのはあったが、あの時はこんな気持ちにはなっていなかった。


「キール。僕達は全員覚悟ができてるんだ。確かに修行も途中で万全じゃないかもしれないけど、ここで戦わなかったら魔族が他の街を襲っちゃうでしょ」

「だから、俺が!」

「キールがなに。まさか一人で戦うの。それで絶対に勝てる方法があるならいいけど、そうじゃないんでしょ?」

「それは、そうだけど」


 俺が一人で勝てるかは分からない。フォボスも、近くにいた高位の魔族も、圧倒できる自信はある。だが囲まれたときに、対処できる術を俺は持っていない。

 いや、正確には持っている。が、この状況では使えないのだ。せめて、他の魔王候補も一度に倒せる状況でないと。


「キールさん。わたしたちのことを大切に思ってくれることはとても嬉しいです。でも、わたしたちの意思を尊重してくれたら、もっと嬉しいです」

「意思…………?」

「はい。わたしたちは、とっくに覚悟を決めていました。それに、わたしたちも、キールさんを失うのは、嫌なんです。確かにキールさんが全力を出したら勝てるかもしれません。わたしたちが邪魔で戦えないと言うのであればそれも作戦に加えてしまえばいいんです。離れて戦いますから」


 そうだ。あの時、偵察に行く前にフォトはこう言っていた。『必ず、戻ってきてください』と。

 そう言った時のフォトの気持ちは、俺の今の気持ちと同じものだったのだ。


「ずっと一人で戦ってきたんですから、慣れていないんですよね。どうか、わたしたちを頼ってください」

「おうフォトちゃんの言う通りだ! 相変わらずお前の実力よくわかんねーけど!」

「キール、みんなそういう気持ちで戦っているんだよ。みんながみんな、失いたくないから戦っているんだ」


 みんなの言う通りだ。この話は俺の、エゴでしかなかった。

 自分勝手で、仲間の頼り方を知らなくて、みんなを信じることができなかった愚かな俺の我が儘だ。

 失いたくないから、戦っている。その気持ちを俺は500年の時を経て知ったのだ。あの魔族も、あの村人も。勇者の旅の最中に剣を交わした魔族や人々はそのような気持ちで戦っていたのだ。


「みんな、ごめん。俺、間違ってた」

「おお間違ってるわ。大馬鹿だお前。ばーかばーか!」

「こいつ…………終わったら俺の特別修行の餌食にしてやる」

「何気怖いこと言わんでください……」


 修行以外にもあの技が使えるかとか、そういう確認のカカシにしてやろう。

 そうと決めたらやる気が湧いてきた。よーし勝とう。勝ってリュートをシめよう。


「みんなで戦おう。それで、勝とう!」

「はいっ!」

「もちろんだ」

「よっしゃ!」


 四人で拳を合わせる。仲間か。いいもんだな、仲間って。なんかこういうの仲間っぽい。よくわかんねーけど! 落ち着け脳内リュート。


「とりあえず簡単な作戦を決めたい。族長への報告もあるしな」

「それなんだけどさ、さっきフォトちゃんが言ってた僕らが邪魔になる? 云々について説明してよ。そんな大技があるの?」

「大技というか、全部大技になるというか…………まあとにかく、周りを巻き込む戦闘になるときは言うよ。そうしたら離れてくれ」

「了解、離れればいいんだな」


 話を聞いていたフォトとヴァリサさんも頷いている。説明しようと思えば『魔力開放Ⅰ』の説明もできるのだが、あれは底上げするだけだから攻撃スキルではないんだよな。結局は強いスキルがどんなものなのかは説明できない。

 だからこのくらいが丁度いいのだ。全員の戦い方は把握している。


 こうして、簡単ではあるが作戦会議が始まった。既に決まっていた作戦もあったため会議の時間は短く、お互いの戦力などから戦闘中の担当を変えるという結論に至った。俺とインフェルノに乗ったリュートが前衛、フォトとヴァリサさんが後衛だ。

 だが序盤の戦闘は基本的に雑魚戦のような戦いが予想されるため、序盤だけは全員で一気に攻める戦術に決定した。そして、その作戦にも名前を付けた。


「作戦名。とりあえず目の前の敵を倒す」

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