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初めての依頼

 最初の依頼はやはり大物から狙いたかった。魔獣や強力な魔物の集団。

 ドラゴンだっていい、フォトのサポートをしながら戦えればそれでよかったのだ。

 なのに。


「なんで採取なんだっ!!」

「こればっかりは仕方ないです。低ランクお断りの依頼は多いですから」


 俺たちは今、街から少し離れた草原に来ている。

 子供の頃に修行をしたり遊んだりするために来たことがあるのだが、地形はほとんど変わっていない。

 そのせいで「ああ、本当に500年後なんだなぁ……」と実感してしまう。ほとんど変わっていないとはいっても、大きな岩が無くなっていたりして寂しさはあるのだ。ここは間違いなくあの草原だ。


「それにしてもハチミツねぇ。最近数が少なくなったんだっけ? 俺はそっちの原因をどうにかした方がいいと思うんだけど」


 俺たちが受けた依頼は『最近ハチミツがなかなか手に入らないので採取してきてほしい』という内容だ。

 ハチミツを生産している養蜂家に頼めばいいだろと思ったのだが、天然のハチミツじゃないと同じ味にならないのだとか。食へのこだわりがすごい。


「確かにそうなんですが、多分それはそれで依頼が出ているのかもしれませんよ」

「そっか。じゃあ駆け出しの俺らは素直に採取しますか」

「ですねっ」


 しばらく森の中を歩く。開けた場所に花畑があり、その周辺の木にハチの巣があるのだとか。

 森に入り、花が多くある場所を探す。こうして花を探していると蝶にでもなった気分だ。

 あんなにキラキラ輝きながら飛んでいた蝶もこんな感じに死んだ目で花を探してたのかな。なんか蝶を綺麗だと思えなくなってきた。マイナスでしかない。この思考はやめよう。


「あ、花畑ですよ!」

「おっ、やっとか。次はハチの巣だな」


 色とりどりの花が咲いている開けた場所を発見した。綺麗だ。

 あ、蝶もいる。あれは綺麗じゃない。だって今の俺と同じだから。


「ハチ、いないですね……」

「なんでだろうな。いればそいつを追って探せるのに」


 ハチを見つけたら追いかけてハチミツゲット、という作戦だったのだが、見つからないのなら仕方がない。普通に木の隙間や木の枝にくっついているハチの巣を探そう。


 見つからない。本当に見つからない。

 普通歩き回ればハチの一匹や二匹見つかるものなのだ。それなのに本当に見つからない。


「あっ!」

「あった?」

「いえ、もうすでに無くなっていて……」


 フォトが言った枝には確かにハチの巣の欠片がついていた。

 そこには数匹ではあるがハチも残っている。つい最近採取されたか、それとも他所から来たハチが壊れた巣を利用して巣作りをしているか。


「このハチを観察するか」

「えっ、今からハチミツが作られるのを待つんですか!?」

「そんなわけないだろ!? 他に方法がないからな。もしかしたら、ここにあったハチミツを採取した人がいるかもしれない。分けてもらえなくても、ハチミツが手に入る場所を教えてもらえるかもしれないしな」


 他に方法がない。魔物や人と違ってハチは『索敵』に引っかからないし、ハチの生態とか詳しくないし。

 まあとにかく、今はハチの観察だ。

 一匹のハチを追いかける。花に止まった。こいつは違う。

 二匹、三匹目も花に向かう。こいつらも普通だ。


 四匹目が、花畑で止まらずにどこかへ向かった。あれだな。


「あのハチを追いかけるぞ」

「はい!」


 小さな小さなハチを見失わないように追いかける。

 『千里眼』で観察しながら追いかけているのでハチには気づかれていないはずだ。俺達から逃げているというわけでもない。確実にどこかに向かっている。


「同じような巣の残骸がいくつかあります……これって」

「周囲に似たようなハチがいた。同じ方向に向かってる。森の奥に向かうってことは奥にまだハチミツを採取した奴がいるのかもな」


 いくつかということは一つではないということ。森の奥に行くにつれてフォトの報告してくる巣の数も増える。


「この数を一度に採取したとなると、国の決まりに抵触していますよ!」

「生態系が崩れるから大量の採取は禁止してるんだったか。それなら懲らしめないとな」


 採取の数が少なくなったのも大量採取の影響だろう。

 依頼されていなくても子悪党を懲らしめるのは冒険者の仕事だ。報酬は出ないが、再び依頼主が困らないように行動しなくては。


「それにしても、この先には崖しかないが……」

「ということはもうすぐですね!」


 ハチは崖のある方向に向かって真っすぐ飛んでいる。その先には崖があるのみ。

 ということはここから崖の間までにハチミツを採取した人がいるということ。


 なんと崖まで辿り着いてしまう。ハチは崖に向かったようだが、木が邪魔して見えない。まあいいだろう、どうせ崖まで行けば何があるか分かるんだ。


「だ、誰かっ、助けてくれええええええええええーーーーッッ!!」


 野太いが怯え切った声が響き渡る。

 それと同時に、明らかにハチのものではない唸り声が聞こえた。この反応は……魔獣と、人。

 人が襲われているのか。なら、助けねばなるまいよ。


「魔獣だ! フォト、離れるなよ!」

「はいっ!!!」


 こんな状況だというのにフォトは頬を赤らめて若干嬉しそうに返事をした。

 フォト、実は魔獣と戦えるからと興奮しているのでは? 戦闘狂なのかな、それはそれで戦闘を教えやすいから助かるけど、あんまイメージなかった。

 などと思いつつも崖へ向かう。崖には洞穴があり、中にはひげ面のおじさんと怯えた顔で腰を抜かしている背の小さな男が。そしてその二人の逃げ道をふさいでいるのは、巨大なクマの魔獣だった。

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