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ランクアップ!

 朝、一緒のベッドで目覚めた俺達はお互いに顔を合わせずに朝食を食べた。流石に多少の会話はしたが、目を見て話すことはできていない。

 ギルドに向かい、全員が集まるまで待つ。その間もお互いの顔を直視できなかった。


「おっすー、ってお二人さんどしたの。気まずそうだけど。何かあった?」


 少し遅れてリュートが来た。触れないでくれ。


「いや、なんもねぇよ」

「そうですね、何もなかったというか、あってほしかったというか……」

「ふーん、まあいいや。今日はあのナイアドって奴に話を聞くんだろ? 質問しまくろうぜ」


 そうだ、俺達は質問をしに来たのだ。情報を集め、更なる対策を立てなければならない。もしあの場に俺がいなかったらどうなっていたか、それを考えるだけでも恐ろしい。


「そうだな、ついでにヴァリサさんとリュートの関係も質問しようかな」

「話してもいいけど、大したことじゃないぞ?」


 なんだ、聞いてもよかったのかよ。帰りに聞けばよかった。

 でもリュートに直接聞くと若干隠したりしてきそうだし、やっぱりヴァリサさんに聞こうね。


「そうか。でもまあ気になるから聞くわ」

「そか」


 しばらく待つとヴァリサさんが到着する。集合時間よりもずっと早い。

 やはり全員昨日の戦闘が忘れられないのだろう。フォトと寝たのもあるが、昨日は熟睡できなかった。

 あくびをしながら待っていると、リンクスが裏の扉から出てきた。予定よりも早い時間に全員集まっているのを見て呆れつつも、背筋を伸ばして話を始める。


「おみゃーら早いにゃ……どうせだしさっさと始めようかにゃ? いつも通り裏に集まるにゃ」

「了解」


 いつもの部屋……かと思ったが、さらにその奥の広いスペースに案内されるようだ。戦闘訓練などができる場所らしい。

 その部屋に行く前にリンクスが話を始めた。


「あー、ごほんっ。今更にゃけど、おみゃーら、よくやったにゃ!」

「……あれはキールさんが」

「ばっか、俺一人でどうにかなる状況じゃなかったからなあれ。倒せたのはみんながいたからだ」


 本来ならば俺一人で倒せなければならないのだが、あの音のせいでほとんど力を出せなかった。勇者として恥ずかしい限りだ。


「とにかく、全員よくやったにゃ! 当然ランクアップもするにゃ、カードを出すにゃ」

「ん」


 皆それぞれギルドカードを取り出し、リンクスに渡す。スタンプが押され、カードがキラキラと光る白に変わった。え?


「ちょ、これ。ゴールドじゃないんだけど」

「んにゃ? だって一番活躍したのはキーにゃんにゃんでしょ?」

「そうだけど……」


 そうか、一番活躍しちゃったからか。精霊も関わってくるから俺が本格的に関わるのは仕方のないことだと思っていたのだが、それでも名前が広がってしまうのはなんだかなぁ。


「わたしが、ゴールドランク……!」


 ゴールドランクになったフォトがギルドカードを抱きしめた。

 そんなに嬉しいか、そうか。嬉しいか。よかった。


「フォトにゃんもよく頑張ったにゃ! 移動の時はどうにゃることかと思ったにゃ」

「それは、すみません。なんとか成果を出さなきゃと思って焦ってたんです」

「うむ、これからも頑張るにゃ」

「はいっ!」


 何それ知らない。そうか、やっぱり焦ってたんだ。昨日のフォトは好戦的に魔獣や魔物をバカスカ倒していたのでいつもと違うなと思っていたのだ。

 あの時、魔人バルカンが現れた時に勇気を出せたのはそれもあるのだろう。全員が固まって動けなかったあの瞬間に、止まった時間を動かしたのはフォトだった。


「よっし! 念願のプラチナランクだあ!」

「ダイヤの次はプラチナなのか」


 どうでもいいが金属質になってからカードがすごくかっこよくなった。なにこのカード、宝石みたいだ。いや宝石モチーフの色なんだろうけど。


「僕もついにゴールドランクだ。まあ当然なんだけどね」

「うわ、うざっ」

「別にいいでしょ!?」


 おっと、思わず声に出てしまった。だがウザいのだから仕方ない。

 そういうキャラを演じて自信を高めるのは悪いことじゃないが、こういうときくらい素直に喜んでもいいのにな。


「そういえばフォトちゃんがゴールドランクになったってことは僕の部屋に来る回数も減るってことだよな……よっし! 僕は自由を手に入れたァ!!!!」

「ん? これからも普通にリュートの部屋に遊びに行くけど?」

「クソが!!!!!」


 リュートがギルドカードを床に叩きつけた。するとパッキーンと割れた。え、割れるの? 紙でしょ? 材質まで変わるの?

 しかし部屋に遊びに行ってはいけないわけではないだろう。鍵まで作ってくれたじゃんか。つまり、そういうこと、だよな……。悪いけど俺お前のこと友達としか見てないんだ。ごめんな。


「おいギルドカード投げるにゃ! ちゃんと大切にしないとぶち殺すぞ?」

「語尾! 語尾ににゃを付けてくれませんかね!? 怖いよ! って、ああどうしよう! 割れっちゃったよおおおお!!」

「残念。リュートの冒険者人生は今日幕を閉じたのだった」

「閉じませんけど!?」


 え、閉じないの? ギルドカード壊れちゃったし初めからでしょ?


「はぁ……もう一度取り出せば戻るにゃ」

「おっ、ほんとだ。助かったぁ……」


 リュートは割れたギルドカードに触れ、体内に入れると、再び取り出した。すると新品のような綺麗なカードが現れる。

 なんだ、戻るのかよ。


「つまらん」

「あんた最低だ!!」

「まあとにかく、これで全員がランクアップしたね。今回みたいに事件があったらみんなを頼っていいかい?」


 ヴァリサさんとは今後も仲良くしていきたいな。純粋な火力なのでサポートがあれば主力として活躍できるだろう。

 いや、手を抜かなくなったからサポートがなくても無双するか。とにかく強い人と知り合いになれるのはありがたい。


「もちろん」

「もちろんです!」

「……まあ、頼まれたら」


 素直じゃない奴だ。それは俺も同じか。ダメだな、リュートと俺は似てるところがあるらしい。

 あまり馬鹿にしすぎると自分にも帰ってくる。だからこそ仲良くなれたのかもしれないが。


「さ、ここからが本番にゃ。ナイアドにはまだ拷問はしていないにゃ。情報が引き出せるかは分からにゃいけど、実際に戦ったみんなが話してみてほしいにゃ」

「そうだな。聞きたいことは山ほどある」


 さて、いよいよナイアドへの質問が始まる。

 この扉の先に拘束されたナイアドがいるのは分かっている。拘束されて手は出せないと理解しているが、それでも警戒してしまう。真面目に敵と話をするのは……魔王が最後だ。

 緊張しつつ、扉を開ける。

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