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水の召喚

 強烈な吐き気と頭痛に耐えながら魔獣を倒していく。既にいた魔獣は残り数体になっており、敵のほとんどが何もない空間から現れる魔物になっていた。


「くっ、キリがないな。お前もう限界だろ、少し休憩しろって」

「そんな暇ない、だろっ!」


 ザシュッと飛び込んできた魔物を真っ二つにする。

 倒す度に次の魔物が襲ってくるため休んでいる暇など無いのだ。フォトとヴァリサさんが来るまでに決着を付けたかったのだが、こりゃ無理だな。


「なかなかやりますね。ではこれで、どうですか!」

「なにっ!?」


 文字通り高みの見物をしていた仮面の男が両手を広げた。

 すると、辺りに真っ黒な魔物……影の魔物が現れた。数がさらに増えたことにより処理が追い付かなくなっている。このままではジリ貧だ。

 一気に攻めるか? いや、あの男を倒す力を残せないかもしれない。


「待たせたねえっ! はあああああああああ!!」


 声と共に、巨大な剣が多くの魔物を薙ぎ払った。

 空中で魔力となって溶けていく魔物たち。大剣の持ち主はヴァリサさんだ。


「ヒュー! 相変わらずの馬鹿力だぜヴァリサ!」

「お二人とも大丈夫ですか!?」

「こっちは平気だ! 気を付けろよ!」

「はいっ!!」


 これで四人、相手は一人だ。形勢逆転だな。


「何人増えようが関係ありませんよ!」


 次々召喚されていく影の魔物たち。魔力に余裕があるのだろう、こっちの魔力を削って消耗戦にするつもりなのだ。

 だが俺の魔力はまだまだある。元の魔力が少し多いのと、スキルによって消費魔力が抑えられているのが理由だ。むしろ相手の魔力が無くなるほうが早いのではないだろうか。

 なんて想像をしているが、そろそろ限界だ。吐きに頭痛に身体の重さ、フルコンボだ。


「悪い、少し任せていいか?」

「おう任せろ。ずっと休んどけー」


 壁に寄りかかる。短期決戦のつもりだったのに身体は言うことを聞かない。

 フォトはスキルを使い影の魔物を次々倒している。ヴァリサさんは……一振りで目の前の魔物を一掃している。なんて攻撃力とリーチだ、魔法掛けまくってるな。


 リュートは……一人で大丈夫だろうか。壁を背にしているとはいえ槍で多方面から来る魔物を抑えられるのか。目の前で槍を構えているリュートを見守る。


「竜槍術其の四『暴れ竜』ッ!」


 そう叫ぶと、槍が勢いよく燃え始めた。その炎は竜の形に変わり、リュートの目の前の空間を縦横無尽に暴れまわる。

 燃え盛る竜に焼かれ、影の魔物たちは次々に消えていく。ヴァリサさんの薙ぎ払いなんて目じゃない、あれぞスキル、魔法で再現することのできない技だ。


「どーだ見たか! 槍だからって範囲攻撃が無いと思うなよ!」

「少しはやるようですねぇ。ですが、お仲間の方は随分苦しそうではありませんか。もしや魔族のお方ですか?」

「はっ、そういうお前はどうなんだよ。この音を聞いても何ともないってことは人間なんだろ?」

「ふん、期待して損しました。せっかくですし名乗っておきましょうか」


 仮面の男は小さく呟くと、仮面を外し始めた。わざわざ顔を明かしてくれるとは有り難い。

 そう思った次の瞬間、心臓が跳ね上がる。目を疑った。


 二本の角に、黒……いや、紫色の肌。白目と黒めが反転した目。四つの牙。

 魔族、それも上位種族の悪魔だ。


「私の名はナイアド。次の魔王になる男です」


 ニヤッと笑いながら、ナイアドは剣を取り出した。

 期待して損した、と言いながらも戦闘態勢になっている。いつ襲ってくるかわからないため、常に気を付けなければならない。戦いにくくなったな。


「魔族だと!? 何が目的だてめー!!」

「魔王になると言ったじゃないですか。ふむ、まあ明確な目標は、人間界を征服することですかね」

「お前が魔王? ははっ、やめとけって。その程度の実力で務まる役割じゃないぞ?」

「っ! 貴方に魔王の何が分かると言うのですか!!」


 触れてはいけない話題だったのか、キレて魔物を召喚しまくるナイアド。

 こいつが魔王なら道具なんか使わずにもっと多くの魔物や魔獣を従えて戦うはずだ。それなのに道具を使っているということは、魔王に憧れ、真似をして魔王になろうとしているということ。


「行けっ! 魔獣たち! あの生意気な人間を八つ裂きにしなさい!」


 滝つぼ付近でやったことと同じように腕輪に指を重ねサウンドジュエルを発動させるナイアド。すると、残っていた魔獣やモンスターが暴れ始める。狂化の上にさらに狂化を重ねたか。

 冷静に分析しようとするが、再び強烈な痛みが頭の中を駆け巡る。立っているのがやっとだが、気合で上を見続けた。

 魔獣はみんなに任せよう、俺はナイアドの相手をする。


「おいおい真似事しかできないのか? 魔王ならサウンドジュエルなんか使わずにもっと大量に呼び出して暴れさせてみろよ!」

「何故貴方がそれを……! いいでしょう。この私を怒らせたこと、あの世で後悔させてあげます」


 ナイアドが右手を上に掲げた。

 すると、右手が青く光った。そして飛び降りながら右手を構える。

 なんの攻撃が来ても対抗できるようにスキルを使えるようにしておく。さあ来い、ボロボロの身体でも全力の一撃くらいなら威力を落とさずに食らわせることはできるぞ。


「来なさい――――――魔人バルカン!!!!」


 ナイアドが飛び降りた先にあったのは四つ固まって置かれているサウンドジュエルだった。

 青く光る右手をサウンドジュエルの中心にぶつける。次の瞬間、洞窟が青い光に包まれた。


「なんだぁ!? に、逃げたのか!?」

「いや、あれは……まさか……!」


 バルカン、奴は確かにそう言った。

 その名前が確かならば、俺ができる予想はたった一つ。水の四天王バルカンの召喚だ。


 光が消え、サウンドジュエルを確認する。だが、下には何もない。

 ならば上ならどうだろうか。恐る恐る顔を上げていく。


 ――――――そこにいたのは、蒼い、蒼い水の巨人だった。

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