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ゴールドランクへの道

 馬車の中で焼いたクッキーで茶会をして、時間を潰す。

 途中馬の水分補給ということで休憩もかねて一旦馬車を止めた。キールとリュートは御者の手伝いを、フォトは素振りをして戦う準備をしている。


「おっ、気合入ってるにゃ」


 素振りをしているフォトにリンクスが話しかけた。リンクスにとって、フォトは重要な戦力だ。伸びしろも十分にあるし、他の冒険者の刺激にもなるだろう。

 しかし、振り返ったフォトは暗い顔をしていた。自信の無さ、フォトの欠点の一つだ。


「リンクスさん……あの、今回の任務を達成したらゴールドランクになれますか?」

「うーん、それはフォトにゃんの頑張り次第にゃ。実力は十分だし、危険を冒してまで今回頑張る必要はないと思うにゃ。にゃんせ相手の実力は未知数にゃ」

「そう、ですか。でも、それなりに功績を残せればランクアップできるんですよね」


 普段は見せない真剣な表情。数日前からフォトはこのような表情を時たましていたなと思ったリンクスは、何か悩んでいることがあるのだと予想した。


「…………どうしたにゃ? 今までランクにはこだわっていにゃかったのに」

「いえ、キールさんと一緒にいるためにランクを上げたいんです。実は――――――」


 フォトは数日前にゴールドランクになるまでキールと一緒に依頼に行かないという約束をしたことについて話した。

 実力は確かにある。だが、フォトは周りから見たらぽっと出の冒険者だ。今日のあの男ほどではないが、良く思わない者もいるだろう。それに対しての対策なのだろうが、それによって暗い顔をしているフォトを見るのはリンクスは嫌だった。


「ふむ、今何ポイントにゃ?」

「ええっと、3900Pですね」


 カードを確認するフォト。冒険者ポイントは3900P、ゴールドランクになるには5000Pが必要だ。

 数日でこれなのだから、今回の任務と合わせてまた数日頑張れば5000Pを集めることができる。

 のだが、フォトは焦ってしまい、またも不安になっている。


「順調にゃ。それなら普通にやっててもランクアップするんじゃにゃいかにゃ?」

「でも、ランクアップするにはシルバーランクのモンスターじゃダメなんですよね」

「それはそうにゃけど……とにかく、今回の任務はゴールドランク以上にゃ! みんなを選んだのはみゃーが全員がランク以上の実力を持っていると思ったからにゃ! 活躍すればゴールドランクににゃれるし、できなくても別の機会にランクアップできるはずにゃ!」


 この発言は本当だった。リンクスはフォトの実力を少なくともゴールドランク以上あると思っているし、リュートやキールにも同じことを思っている。

 他にも、これから先戦える冒険者が増えるという予想もしているのだ。そのために今いるトップ層には頑張ってもらわなくてはならない。


「わかりました。ありがとうございます」

「ほどほどににゃー」


 そう言って話は終わる。馬の水分補給が終わったのか、キールとリュートが二人を呼びに来た。


「フォト、リンクス。馬車の準備が整った。出発するぞ」

「はいっ!」

「あれ? サーにゃんはどうしたにゃ?」

「サーにゃん……ああ、ヴァリサさんか」


 キールはサーニャという名前の人が出てきたら何て呼ぶのだろうと思った。

 色々思考を巡らせた結果、『サーニャにゃん』になるという結論が出た。とてつもなくどうでもいいことだったため、キールがこの話を他人に話すことはないだろう。

 あと、ヴァリはどこに行ったのだろうとも思った。


「ヴァリサなら馬車で寝てるよ。全く、せめてこっちを手伝ってくれればよかったのにさ」

「お前も全然手伝えてなかっただろ」

「しょ、しょうがないだろ馬の扱いとか知らないし」


 二人は御者の手伝いとして馬の面倒を見ていたが、ほとんど手伝っていたのはキールで、リュートは隣で話をしながら見ているだけだった。

 キールは長い旅の途中で何度も馬に乗ったため知識があったが、リュートにはその知識はない。

 全員が馬車に乗り、再び出発する。このまま休憩なしでミネラル鉱山へ一直線。寝ているヴァリサ以外全員が気合を入れなおした。


* * *


 再出発してしばらく経った頃、俺のペンダントが光った。

 そこからドロップが出てくる。額に汗を掻きながら現れたので、相当急いできたのだろう。


「どうだった? って、大丈夫かよ」

「はぁ、はぁ……だ、大丈夫。わたしだけで何とかなるって」

「そうか。お疲れ、まだ到着までもう少しあるから休んでていいぞ」

「うん、ありがと」


 それだけ会話をするとドロップはペンダントの中に戻った。ペンダントの中ってどうなってるんだろうな、快適空間? 俺良く知らないんだよね。今度聞いてみよう。


「ってことは、後は向かうだけだな!」

「向かうだけって、リンクスは向こうのギルドに説明とかするんだろ?」

「街についたらみゃーだけ降ろしてほしいにゃ。そうしたらそのまま全員で鉱山を探索にゃ!」

「なるほどな。リンクスを待ってる暇もないってこか」


 流してしまったが、街があるのか。500年前は採掘のための村があったが、採掘ができなくなって街に発展した? 休山になるまでの流通ルートのおかげで街が大きくなったのかな。山も川も、森もある。鉱山以外の資源もたくさんある。

 それに、山では石も採掘できるのだ。建材として売ることもできる。


 そりゃあ500年も経てば変わるよななんて思いながら、遠くから見る分には全く変わらない山を眺めるのだった。

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