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ドロップの決断

 あの男がギルドから追い出されたことにより全体からのフォトの評価も変わってくるだろう。

 だが、それはそれとしてゴールドランクまで独立は修行なので別だ。これも苦渋の選択なのだ、親心だ。親いないけど。


「みんなに集まってもらったのは他でもないにゃ。キーにゃんやフォトにゃんはにゃんとにゃく予想ついてると思うにゃ」


 え? なんて? ちょっと後半聞き取れなかった。リラックスするのはいいが聞き取りやすい喋り方にしてくれませんかね。


「えっ、お前キーにゃんって呼ばれてるの!?」

「お前黙れマジで」


 なんとか触れないように話を進めようと思ってたのに触れてきやがった。絶対に許さない。

 幸い、リュート以外の人はキーにゃんに反応しなかった、ありがたや。


「あたしもわかるよ。この前の、でしょ?」

「その通りにゃ。怪しい男が巨大なサウンドジュエルを複数個購入したという報告が入ったにゃ。確証はにゃいけど、みゃーはこの男を犯人と仮定したにゃ」


 サウンドジュエルは大きくなければ音量は出ない。そんなものを準備するのは一部の音楽団体か、犯人かだろう。それか騒音を気にしない一般人な。

 それによそ者と来た、それにより犯人という確率が格段に上がる。


「サウンドジュエルを置かれて回収してだといたちごっこだもんな。できれば置かれる前に、それか置かれた後でもいいから犯人を捕まえたい」

「そのためにはできるだけ早く出発する必要があるにゃ。男が購入したのは今日、なら明日には出発したいにゃ」

「明日? 今日じゃないのか?」


 今日出発して、今日探せば犯人を止められるのではないだろうか。

 確かに相手は未知の魔法を使うため注意が必要だが、強ければそれなりに名前が売れているはずだ。

 ……ああ、それも人間だったらの話か。魔族だったら情報が入ってくることはほとんどない。相手が人間とは限らないのだ。


「サウンドジュエルに精霊が入ってるはずにゃ。その精霊を外に出す方法をみゃーは知らないにゃ」

「それじゃあ、精霊にそれを知らせるまでの準備期間か」

「そうなるにゃ。精霊に会えるとは限らにゃいから、もしかしたら明後日、それよりも後になる可能性もあるにゃ」


 準備期間、明日になったらもう犯人は逃げているかもしれない。今すぐとはいかなくても、今日中に出発したいが……。

 精霊王にサウンドジュエルから精霊を出す方法を聞けばいいのだが、ここからでは聞くことができない。俺が直接泉に行って聞いてくるか? いや、それだとみんなに怪しまれるし、移動に時間がかかる。


「それなら、わたしが何とかしてみる!」


 その場にいない女性の声が部屋に響いた。全員の視線が俺に集まる。いや、俺からそんな可愛い声は出ない。

 なんてボケてる場合ではない。声が出ているのは魔石のペンダントだ。そのまま水と一緒にドロップが現れ、ふわふわと浮いた。


「にゃっ!? い、今どこから出てきたのにゃ!?」

「あれっドロップちゃん!? えっ、なんだ今の……だって妖精はあんなことできないし……」


 リュートが困惑している。それにヴァリサさんと、リンクスもだ。

 俺とフォトは知っているので驚きは少ないが、俺はこのタイミングで精霊だということを明かしたという事実に困惑している。


「初めましてだね人間のみんな。わたしはドロップ、水の大精霊だよ」

「精霊!? ちょ、キール! 詳しく説明はよ!!」

「なんで出てきちまうんだよ……」

「だって、隠してる場合じゃないでしょ? なら、わたしがスールス様に直接聞いてみる! ちょっと時間は掛かるかもだけど……」


 精霊界まで行き、精霊王であるスールスに会いに行く、か。

 確かに人間界のように各地の水場へするする移動するってのができないから時間は掛かるだろう。それでも、俺が直接森の泉から話しかけるよりは早い。


「ドロップ、頼んだ。リンクス、各自今すぐ最低限の準備をして出発するぞ」


 ドロップは無言で頷き、ペンダントから精霊界に入った。俺たちが移動している間にスールスから聞き出すことができるはずだ。帰りはネックレスから直接来ればいい。


「分かったにゃ、話は後にゃ。ほらほらみんな一旦解散だにゃ!」

「帰ってきたら詳しく話せよー!!」

「わ、わたしも道具を持ってきますねっ!」


 リンクスの指示によりリュートとフォトがドタバタと部屋から出ていく。リンクスも、馬車の手配などをするためか出て行ってしまった。ところでどこに行くのかまだ聞いてないんですけど。

 残ったのは俺とヴァリサさんだけ。気まずいな。


「キールは準備しなくてもいいのかい?」

「まあ他に準備することなんてないからな。ヴァリサさんは?」

「あたしも。前回本当に悔しくてね、あれから常に戦えるようにしている。気は抜かないさ」

「気張るのはいいが、ほどほどにな」

「もちろん」


 ここで会話が途切れる。これ以上話すこともない、ここから先は本格的な戦いだ。

 あのサウンドジュエルが魔獣の多い場所に、しかも街の近くに設置されたらどうなる? その被害は予想もできない。城の兵士の実力はよく知らないが、あの強化された魔獣を簡単に倒せるとは考えにくい。

 一刻も早く対処すべき事件なのだ。そう、言ってしまえば小規模の魔王軍のような、そんな存在。

 俺も落ち着くべきかもしれない、あとヴァリサさんと一緒の部屋で二人きりは色々と危ないので外に出て空気でも吸ってこようかな。

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