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プレクストンに戻ろう

 マキシムとミニムの二人にドロップを紹介し、リュートの元へ向かった。

 既にポイズンフロッグの死体はそこら中に転がっている。目標の十は超えてるんじゃないかな。


「んじゃ回収頼むな」

「おうよ」


 二人に回収を任せ、リュートに近づく。戦闘中に炎系の魔法を使っていたようで、周囲はやけに熱かった。


「知り合いか?」

「まあな」


 二人と会話をしていたのを見たのだろう、リュートはそう聞いてきた。


「へー、キールっていつも女の子と一緒にいるクソ野郎だと思ってよ」

「ひでぇな」


 まあ、フォトと一緒にいる印象があったのだろう。というか実際一緒にいたからな、仕方ないと言えば仕方ないか。

 少女といつも一緒にいる大人、しかも兄妹ではない。これはいけませんね。


「んでさ、そこの妖精さんはどなたで?」

「ああ、こいつも知り合いだ」

「よっろしくねー」


 左目の前で横向きのピースを作りながら挨拶をするドロップ。何その挨拶、あざといな。


「お前やっぱ敵だ!」

「なんでだよ……」


 なに、もしかしてドロップのこと好きになっちゃった? 確かに顔はいいもんな。一緒にいて楽しい奴ではあるが、そういう感情を持つのはやめといた方がいい。

 精霊ってのは基本的にきまぐれだから、急にこっちに興味なくなったりするし。


「よし、積んだぞ」

「お疲れ。この後ってどうすればいいんだ? さっきのギルドで依頼達成できちゃうの?」

「いや、依頼を受けたところじゃないと報酬金はもらえないよ。湖畔のギルドではモンスターの確認だけして、プレクストンに戻って報酬金を受け取る。って流れかな」

「そうなるのか。まあ報酬金は依頼主から預かってるだろうし当然と言ったら当然か」


 依頼主がギルドに報酬金を渡して誰かが依頼を受けるのを待つ。そして達成したらその預かっていたお金を冒険者に払う。別の街で受けた依頼をまた別の街で達成したらお金の管理が面倒なことになるからそうしたんだろうな。


「なら一旦ここのギルドに行って仮達成しないとだな」

「そゆこと。なあ、どうせだしこの二人について教えてよ」

「そうだなぁ……数日前の話なんだけどな?」


 俺はリュートに二人と会った時のことを話した。

 その後も話をしながら帰る。俺とフォトがギルドの仕事をしている間に、マキシムとミニムはブロンズランクになったらしい。めでたいことだ。このままシルバーランクのお手伝いになるのでは?


「思ったんだけどさ、リュートの攻撃って炎とか出るじゃん? あれも魔法なのか?」

「そうだね。と言っても僕の家系しか使えない技らしいけど」

「お前だけ? ちなみにどんな名前なんだ?」

「炎の竜技。戦闘中に使ってたのは『フレイムスピア』だね」

「『フレイムスピア』……なんか聞き覚えあるんだよな……」


 なんだったか、旅の途中でそんなスキルを使う奴らがいる集落があったような。火山地帯のすぐ近くだ。

 ダメだ思い出せない、もしかしたらこいつはその一族の子孫なのかもな。


「そんなことよりもさ、あのすげー速く動くヤツ、あれ何なんだよ! 魔法には見えなかったぞ!」


 リュートがそう聞いてきた。もう話をしてもいいだろう、この世界にスキルが無くなったわけじゃない。今はスキルと呼ばれていないが、確実にスキルであろう技を使う者がいることは知っている。


「『神速』っていうスキルだ」

「スキル?」

「ああ、魔法とは別でそういう技があるんだよ。違う可能性もあるが、お前の炎の竜技もスキルかもしれない」

「嘘は言ってない、か。変だとは思ってたんだ。魔法よりも魔力は使わないし、使った後に一瞬動かなくなるし……」

「んじゃ確実にスキルだな。消費魔力が少ないに硬直時間があるのがスキルの特徴なんだ」


 まさか限定的とはいえスキル使いに会えるとは思わなかった。

 500年前から続いてきた数少ないスキル使い。他の国にも沢山いそうだ。


「なあ、お前ってなんでそんなこと……それも秘密の中にあったりする?」

「するね、バリバリに」

「そうかー、ってことはキールもとある一族の子孫ってことだよね。なんか親近感湧いちゃうな」

「やめてくれよ気持ち悪い」

「なんでだよ! 仲良くしようとしてるんだからいいだろ!?」


 俺も直接は言えないがそれなりに親近感が湧いている。同じくらいの年齢で同じくスキルを使える人間なのだ、いやでも興味が湧く。

 地道に頑張りながらこいつと一緒にいれば退屈しない。向こうも暇なのは嫌なようだし、組んでくれると言うのだからありがたく組ませてもらおう。


「なあ、最近魔獣が暴れてるって話、聞いてるか?」

「なんだよ藪から棒に。まあ僕もそれなりに目を付けられてるからね、ギルマスから聞いてるよ」


 最近冒険者になってもうシルバーランクなのだ、当然リンクスの昇格対象になるか。


「なら話が早い。俺の今の目標がその事件の解決なんだ。それでな、もしまた事件が起こったらギルドの命令に限らずその事件の解決に向かうと思う。その時にさ、手伝ってくれないか? 嫌なら嫌って言ってくれて構わない」


 これは俺のわがままだ。リュートだってやりたいこともあるだろう、当然だが強制はできない。

 精霊には散々嫌なことをされてきたがそれ以上に過去に恩がある。魔王討伐の旅に協力してくれた精霊には頭が上がらない。

 ドロップはいたずらが多すぎて相殺されて頭上がりまくるけどな。


「んー、いいよ。それでランクアップできるかもだし」

「マジで? んじゃ頼むわ」

「軽いな!?」


 解決解決、後は馬車がプレクストンにつくのを待つだけだ。


「キールはこういう人だからねー」

「ねえドロップちゃん、昔からあんななの? あいつ」

「昔のキールはねー」

『昔の話は気を付けろよ』

『分かってるって』


 ドロップに俺が元勇者だと気づかれないようにしろとくぎを打ちつつ、空を見る。これは帰るころには夕方になってるな。夕食は酒場で食おうかな。

 ああ、平和だ。俺が旅をしているときはこんなにまったり移動はできなかった。この平和を作ったのが俺なら、この平和を保つのも俺の役目なのかもな。

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