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キール復活

 解魔の剣による呪いが解けたことに気付いたフォボスは、警戒心を解いた。

 そして、キールがいるであろうタイタンゴーレムの正面側。遠くで複数人が集まっている場所を見る。


「勝った、か」


 安心したからか、それとも魔力が抜けてしまったからか。フォボスは剣を地面に突き刺しその場に座り込んだ。

 そこに、少し離れた場所にいたナイアドが駆けつける。


「お疲れ様ですフォボス。キレーネはどうしますか」

「もし見つけても、勝てねェだろうしオレ様はここで見守るぜ」


 フォボスは魔力がほとんど抜けてしまっているし、ナイアドもヒューレも長時間のエクストラスキルの使用で魔力が少なくなっている。

 今からキレーネを探して戦うよりも、復活したであろうキールに後を託すという流れが妥当だろう。


「……そうですね。貴方はどうします?」

「勇者様たちのところに行くよ。ディオネを連れていきたいし」

「ふむ、ではそうしましょうか。フォボス、お先に行かせていただきますよ」

「おー行け行け」


 座り込んで天を仰ぐフォボスを後目に、ナイアドは用意してあった吸魔(きゅうま)の手枷をディオネに使う。

 過去に、自分に使われた道具を自分が使うという状況に何とも言えない気分になりつつ、ぐったりとしたディオネを担ぐ。

 そのまま、ナイアドとヒューレはキールたちが集まるタイタンゴーレムの正面に向かった。


* * *


 タイタンゴーレムに風穴を開けてから、身体に活力が漲ってくるのを感じる。

 身体から流れ出てしまっていた魔力も、今は放出されず溜まっていく一方だ。

 つまり、ディオネが倒れて呪いが解除されたということ。俺、完全復活である。


「あれ、お前なんか顔色良くね?」

「ああ、どうやら呪いが解除されたらしい」

「マジで!?」


 俺の言葉に、その場にいた全員が安堵する。

 ここまでタイタンゴーレムの進行を止められたのは皆のおかげだ。

 ここからは、俺が率先してあのデカブツをどうにかしてやる。


 タイタンゴーレムを倒すには、コアを壊す必要がある。

 風穴を開けたのは確かだが、コアは体の中心にはない。コアがあるのはその少し上、人間で言う心臓付近だ。

 今のタイタンゴーレムはディオネを失い力が弱まっているはずだ。そこに強力な一撃を加えれば、コアを破壊することができるかもしれない。

 そこまで考えたところで、あることに気が付く。


 タイタンゴーレムの目が光っている。

 同時に、複数の魔法陣がタイタンゴーレムの表面に浮かぶ。


「攻撃モード……ってとこか」


 タイタンゴーレムがあまり攻撃を仕掛けてこなかったのは、その防御力を維持するためだ。

 ディオネは俺たちがタイタンゴーレムの防御力を上回る攻撃をしてくると仮定し、俺たちを邪魔をしながら弱らせようと考えたのだ。


「おいおいおい、こいつはヤバいんじゃねーの!?」


 リュートの声にタイタンゴーレムを『千里眼』で視る。

 あの魔法陣から出される魔法の一つ一つはそうでもないが、全ての魔法陣から同時に魔法が出されると考えるとエクストラスキルの領域に足を踏み入れているほどの威力になるだろう。

 そして、その魔法のチャージはもうすぐ完了する。このままではまずい、吹き飛ばされる。


「っ! リュート! 撃ち落としてくれ!」

「おっ? おお! 任しとけ!」


 こんな高出力の攻撃を出すとは、このままでは勝てないと悟ったか、ディオネが倒されコントロールが効かなくなったか。

 そんなこと、今はどうでもいい。魔法陣は複数個ある。数は……六つか。合体するまでのゴーレムの数と同じだな。

 そう考えると六つの魔法陣が同時に発動するのも頷ける。感心している場合ではない。

 タイタンゴーレムの魔法発動と同時に、リュートのエクストラスキル『七竜の大咆哮』が放たれる。


 結果は……


「相殺……だと?」


 空中には砂埃が舞うばかりで、リュートの攻撃がタイタンゴーレムにダメージを与えたようには見えなかった。

 リュートのエクストラスキルで相殺となると、俺の普通のスキルでは防げないか。流石は最終兵器と言ったところ。

 そして次の魔法までの時間も短いときた。

 初めからあれだけの攻撃を出されていたら、本当の本当に短期決戦になっていただろう。


「ヴァリサさん! 次の準備お願いします!」

「任せときなー!」


 かっこいい。

 ってそうじゃない、その次はどうする。ヴァリサさんのエクストラスキルで相殺できたとして、このままじゃ決定打は入れられない。

 今からコアを破壊するとなると、魔法を放った瞬間の防御力が薄くなったタイミングを狙うしかない。


「フォト、フレン。次の魔法に備えてくれ。俺はエクストラスキルで一気にカウンターを狙う」

「りょ、了解しました!」

「キール様!」


 フレンもフォトと一緒に了解してくれるかと思われたが、何か言いたいことがあるらしい。

 もう弱気なことは言わないはずだ、なら何が気になっているのか。


「なんだ?」

「キール様の協力無しでの『ダブルバーストエレメント』では相殺しきれない可能性がありますわ。なので、わたくしの『信託の騎士(オラクルナイト)』で盾を発動させる。という作戦はどうでしょう?」


 そうだ、俺が魔力を送り込んでいたから威力が上がっていたのだ。

 確かにリュートのエクストラスキルの威力が下がっていると思った。だから相殺されていたのか。


「そうだな……確かに『ダブルバーストエレメント』じゃ足りないか。よし、それで行こう。フォトと一緒に盾を張ってくれ」

「ええ、了解しましたわ」

「頑張りましょう!」


 そうして、俺は魔法陣の中心に。二人は先程と同じく俺の少し前に立つ。

 俺は、エクストラスキルの準備のため魔力をチャージする。フォトとフレンが魔法を防ぐタイミングで放つためになるべく急がなきゃな。


「『風魔鬼斬(ふうまきざん)』!」


 ヴァリサさんのエクストラスキルが、タイタンゴーレムから放たれたビームのような魔法を相殺する。

 魔法というよりも、ゴーレムの使う高出力の魔力砲だろうか。それの、タイタンゴーレム版。なるほど異常な威力になるわけだ。

 それを相殺しているのだから、リュートもヴァリサさんもすごい。五年間、旅をしながら修行をしてきた甲斐があった。


 そして再びチャージが始まる。その間に、俺もチャージを進める。

 この一撃でタイタンゴーレムを倒すことができるはずだ。

 本物のタイタンよりも苦戦したぞ。おれだけ、ディオネの魔法技術があるということだろう。

 フォト、フレン。頼んだ。

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