三人の勇者
フォト、フレンが並ぶ。
魔法以外の遠距離攻撃の手段を持っていないフォトとフレンには、精霊の力を使って攻撃を行ってもらう。
そのためにドロップ、ヴール、ソイル、シエルの四人を二人の元に行かせたのだ。
「精霊スキル『バーストエレメント』……本当に出せるのでしょうか?」
二人に撃ってもらうのは、ミネラル鉱山でナイアドを倒した時に使った技『バーストエレメント』のようなものだ。
「楽勝だ。というか、それを越えてくれないと困る」
『バーストエレメント』の威力では、あのタイタンゴーレムを後退させることはできないだろう。
そのため、二人には『バーストエレメント』を越えてもらう必要がある。そもそも二人で撃つのだからスキルも変わってくるだろう。
合体スキルになるのだろうか。
「知りもしないスキルを越えるんですのっ!?」
「そうだな、今ここで作り出すんだ。とりあえず次のリュートに繋がるように、失敗してもいいから撃ってみろ」
幸い、まだ俺たちには余裕がある。
何度も練習を繰り返していけばそのスキルは次第に威力を強めていき確立するだろう。
「二人での『バーストエレメント』……『ダブルバーストエレメント』と言うべきでしょうか」
「だな。期待してるぜ。手でも剣でもいい、とにかく精霊と魔力を込めて剣先を標的に向けるんだ」
もうリュートのクールタイムが終了する。魔力を無駄にするのは惜しいし、そろそろ撃ってもらおう。
フォトとフレンが剣を抜く。フォトにはドロップ、ヴールが。フレンにはソイル、シエルがそれぞれ補助に入る。
「「『ダブルバーストエレメント』!!」」
剣を前に突き出し、二振りの剣先が重なる。
すると、フォトからは青と赤の光が。フレンからは黄色、緑の光が放たれた。
ウィンディーネ、サラマンダー、シルフ、ノームの魔力も合わさり、その威力は絶大なものとなる。
「出た!」
思わず声に出てしまう。やはり実力があるのだ、いとも容易くスキルを修得するとは。
既にその威力はナイアドを倒した時の『バーストエレメント』を大きく上回っている。
が、まだ足りない。
タイタンゴーレムが一瞬受け止めるような姿勢にしたのみで、そこからは変わらず前進を続けている。
「くっ、まだ足りなかったか」
それでも構わない。きっと次にはさらに威力が上がっているはずだ。
次はリュートか。同じ威力の攻撃が定期的にできるのは大きいな。
もしかして俺、固定砲台の方が向いてるのでは? 勇者が固定砲台ってなんだ。
「よーしお前ら!!! 二発目いくぞおおおおおおおおおおお!」
「ウム、ヨカロウ」
「次も私の美しいブレスを見せてあげましょう」
「うるせーぞ、バカ」
「近くで叫ばないでくださいな。鬱陶しい」
「フォレストの言う通りです。暑苦しい」
「叫んでないで早うチャージせよ」
それぞれ、インフェルノ、アクア、デザート、フォレスト、アイス、ライトニングの言葉だ。
え、リュートってドラゴンと仲いいんだよね? なんか下に見られてない?
ま、ドラゴンから人間に対する態度なんてそんなもんか。インフェルノがおかしかっただけだ。ライトもずっとそんな感じだったし。
「『七竜の大咆哮』ッッッ!!!」
相も変わらず絶大な威力のブレスがタイタンゴーレムに直撃する。
二回目だが慣れないな。だがフォレストドラゴンのブレスで精神面……気持ちを癒すことができるのはありがたいな。弱気な心を消し去ってくれる。
もちろん魔力が流れ出してしまい気分が悪くなってしまっている俺の体調が癒えるのも嬉しい。
その後もヴァリサさんの『風魔鬼斬』による攻撃、完成度が上がり多少押し返せるようになった『ダブルバーストエレメント』を繰り返した。
* * *
攻撃を繰り返ししばらく経った頃。フォトとフレンは『ダブルバーストエレメント』を安定して出せるようになっていた。
だが、ここで問題が起こった。ある程度安定した、それはいい。しかし途中から威力が上がらなくなってしまったのだ。
押し返すだけの威力は辛うじてあるものの、リュートやヴァリサさんのエクストラスキルよりも効果は期待できない。
「集中しろ。大丈夫、まだいけるぞ」
まだまだ威力は上がるはずだ。元気づけるために俺は顔を上げてフォトとフレンの顔を見た。
フォトは真剣な顔で前を向いていた。フレンは、変わらず暗い顔をしていた。
……まだ、何か思うところがあるのだろうか。
「……わたくしのせいですわ」
「フレン?」
ふと呟かれた言葉。同じタイミングでリュートの『七竜の大咆哮』が放たれ大きな風が起こる。
「こんな、中途半端な気持ちで戦って……わたくしには、これ以上はもう……」
「フレン!」
魔力の供給を続けながら、フレンの元へと歩く。
身体を動かすと不快感が襲ってくるが、今は気にしていられない。
なにせ、仲間であるフレンが立ち止まってしまったのだから。
「何故そう思う。なんでこれ以上は無理だと諦める」
真っ直ぐ目を見つめながら言葉を発した。
フレンは、そんな俺から目をそらし眉間にしわを寄せた。
「……わたくしは、皆様と長い間共に戦った仲ではないのですわ。連携も、それに比べたらできておりません。だから……」
なんだ、そんなことかよ。
そんな単純なことで悩んでいたとは。いや、単純だから悩むんだよな。
ずっとそうだった。俺も、その道を通ってきた。気持ちは理解できる。
「隣に並べない? はっ、ふざけんなよ。俺だって最初はそうだったよ。ここにいていいのかってな。フォトもそうだ」
「そうですよ! わたしも、キールさんと一緒にいていいのか、ずっと悩んでいました。自分にそんな資格はないんだって。でも、そこで止まってしまったら終わりなんです!」
「止まる……わたくしは、止まってしまったんですの?」
止まっている。その先に行こうとしていない。このままでいいんだと決めつけて逃げている。
俺もフォトも長い子と悩んだ。でも、踏み込まないと何も変わらない。流されたっていい、俺はそうやって溶け込んで、受け入れるようになった。
フォトは、自分一人で戦うことで俺に認めてもらおうとした。それらすべて、行動によるものだ。
もし俺がフォトやリュートたちと一緒に居ようとせず離れていたら、この関係はなかった。
「そうだ。隣に並べないって思うんなら、隣に並べるように前に進め。お前は勇者だろ、勇者が止まってどうする」
「勇者……そう、ですわね。勇者なら、立ち上がらねばなりません」
「その意気だ。どうせなら、俺もさらに魔力を込めよう。光と闇のな」
光と闇の精霊は存在しない。だが、精霊との契約をした俺ならば、精霊と同じだけの高位の魔力を流すことができるはずだ。
この身体でさらに魔力を操作するのは大変だが、補助ならばなんとかなるだろう。
ヴァリサさんの『風魔鬼斬』がタイタンゴーレムの胴体を抉る。
この攻撃でさらに抉ってやろうじゃないか。
二人が剣を構える。俺も剣を抜き、月光剣と暗黒剣を通して魔力を送る。存在しない精霊の魔力だ。
「まだ自信はありません。ですがせめて、せめて一歩を……!!!」
「いくぞ! はああああああああああーーーーっっ!!!」
全力で魔力を流す。すると、驚くほどすんなりと俺の魔力はフォトとフレンに流れていった。
全員、勇者の魂を持っているからだろう。六色の、六属性の光が剣から放たれる。
「「「『トリプルバーストエレメント』おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
『ダブルバーストエレメント』からさらに進化した『トリプルバーストエレメント』。
六属性の光が螺旋を描きながらタイタンゴーレムの中心部分に直撃する。
手ごたえあり、これ以上ない威力だ。次のエクストラスキルに向けて準備を進めていたリュートやドラゴンたちも、その光景を見守っていた。
砂埃が晴れる。そこには、腹に風穴の空いたタイタンゴーレムが立っていた。




