ゴーレムの倒し方
フレンと別れ、再び戦場へ向かった。
やはりと言うべきか、六体のゴーレムは普通ではなかった。意思を持っているように学習し、土魔法を扱う。パワーも桁違いだ。それに加え、黒いゴーレムまで召喚しやがる。
そんな巨大なゴーレムが六体もいるのだからたまったものではない。
いつの間にかリュートはキレーネとの戦闘を終え、ゴーレム討伐へ移っていた。勝ったのだろうか、そうだといいのだが。少なくとも負けてはいないな。
「……順調、だな」
ゴーレムは確かに強い、だがこちらが押されるほどではないのだ。
俺やリュートがいなくてもやっていけるくらいには楽勝。全世界から実力者を集めた甲斐があった。
さて、各ゴーレムに実力者が振り分けられてるわけだし俺も早いとこ倒しますかね。
「どおおおおおおおお!!!!???」
なんて思ってたら、遠くから別のゴーレムが走ってきた。え、何。なんで?
そういえば誰か叫んでんな。あれは……フォボスか。フォボス!?
「は、ちょっ!? こっちくんな馬鹿!」
「うるせェ! 止めろこれ!!!」
それが人に物を頼む態度ですかぁ!?
といってもこのままだと危ない、止めるか。止まるのか、これ?
「『ハイグラスバインド』!」
地面からツルが生える。巨大なツルはゴーレムの足に巻き付き、身体を拘束した。
数秒、しかし十分すぎる時間を稼いだ。止めたかと言われれば答えに詰まるが、まあ結果的には無事なのだからいいだろう。
「よくやったキール!」
「お前何してんの? 馬鹿なん?」
「うっせェ! 急に突進してきやがったんだよ! オレは悪くねぇ!」
突撃ねぇ。確かにあの巨体で突進されたらたまったもんじゃない。
大きければ大きいほど強い、いくらこちらが強くても、莫大な質量の前には手も足も出ない。
ま、それさえ覆せる力ってもんがあれば話は別だがな。
「ちなみに、あのゴーレムに心当たりは?」
元魔王候補のフォボスならばあのゴーレムに心当たりが合ってもいいはずだ。
「ねェな」
「うわつっかえね」
「はァ!? 別にいいだろうがあんなの! なんも知らなくても倒せるっつーの!」
「それはそうだけどよ」
今も正に周りの戦闘員たちが頑張ってくれているが、決定打は与えられていない。
ゴーレムの倒し方はコアを壊すこと。コアをコアす……ふふっ、何考えてんの俺死ねよ。
「ンじゃ、やるかァ」
「おう」
フォボスはそのままの状態で、俺は『魔力開放Ⅱ』を発動させている状態で戦闘を開始する。
飛びながら剣で斬ってみる、が、硬い。この黒い塊は、最初は石だと思っていたのだが金属のようだ。金属なら、熱でどうにかならないだろうか。
「『サウザントフレイム』ッ!」
無数の火球が一体のゴーレムに直撃する。一部が赤く溶解するが、それもすぐに戻ってしまう。
自己回復能力が高いな。なら、腕を切り落としたらどうだ。剣を鞘に収める。
「『ガードブレイク』『真刹那斬り』」
空中から地上へ落下しながら、『真刹那斬り』をゴーレムの肩の部分に当てる。
着地と同時に、綺麗に切断されたゴーレムの肩が斜めにズレる。これで右腕は使えなくなったはずだ。
「……ん?」
地面に落ち、バラバラになってしまった黒い塊が動き始めた。
そして、ふわふわと浮きながら元の位置に戻り再び右腕を生成していく。
おいおい、そこまで回復すんのかよ。
「どけェ!!! 『テラフレイムバースト』!!!」
さーて次はどうするかと思っていると、フォボスが両手に魔力を集めていた。
『テラフレイムバースト』高出力エネルギーの炎がゴーレムの中心に向かって放出された。
ゴーレムは土魔法で盾を作るが、それも次々と破壊されていく。ディオネとの戦闘を思い出すな。
「わぁ」
棒立ちで見守る。いや、確かにそうすれば倒せるけども。
溶けていく身体、炎の奥にキラリと光る何かが見えた。コアだ、あれを破壊すればゴーレムは死ぬ。
「トドメだ! 『エクサフレイムスピア』!!!」
フォボスの作り出した炎の槍がコアに向かって真っ直ぐ飛んでいく。当然、露出していたコアは強烈な一撃で砕けた。
『エクサフレイムスピア』? エクサか、初めてかもしれない。
威力を見るに、テラの上かな。こんなに強い魔法があったのか。もしかしたらまだまだ上があったりするのだろうか。
「……まだ足りねェか」
ボロボロと崩壊していくゴーレムを見ながら、フォボスはそんなことを呟いた。
倒せたじゃん。まさかこれでも復活するのか? いや、もうただの黒い塊だな。
「何がだよ、倒せたじゃん」
「こっちの話だ。オメーももう片方倒せよ」
「はいはい」
コアさえ壊せばいいんだ。簡単なことじゃないか。
剣を掲げ、大精霊を強制召喚する。四つの光が剣の周りにふわふわと浮く。四人とも何か言っているが聞こえない。またかーとか聞こえてない。
「『フルバーストエレメント』」
四色のビームが放たれた。
魔力の柱とも言えるその精霊のビームは、ゴーレムの中心に直撃し続ける。
ガッガッガッと三回ほど後方に押された後、コアを貫通してビームは天に昇っていった。
巨体が押されたのはおそらく土魔法での防御と、コアそのものの防御機能によるものだろう。
「なんつー威力だよ」
「いいんだよ勝てば」
力こそ正義ってね。『バーストエレメント』をさらに進化させたこの技。それなりに魔力を使うので連発はできない。こういう一体の敵と戦う時によく使うな。
今回は相手があの程度のゴーレムだったので倒すことができたが、キレーネとディオネには避けられちまうかもな。その後の隙が大きすぎる。
後は周りの黒いゴーレム掃除だけど、それは俺とフォボスを見て怖がってる他の戦闘員に任せよう。
『こちらリュート、一体討伐!』
この後どうすっかなと思っているとニンファーから声が聞こえてきた。リュートか、よくやった。
さて、俺も報告するかね。
「えー、こちらキール。フォボスと共に二体討伐」
『こちらフォト。一体討伐です!』
『こちらヴァリサ。一体討伐だよ』
お、みんな順調に倒してるな。
周りを見ると、確かにゴーレムが崩れ黒い塊の山がいくつかできていた。楽勝だな。
『今、全てのゴーレムが討伐されましたわ』
遠くに水で倒されているゴーレムがいた。あれはナイアドか?
とにかく、全てのゴーレムは倒し終ったのだ。これでお終いか? それにしてもキレーネとディオネはどこに行ったんだ。
「お、おい! なんか動いてるぞ!」
「気を付けろ! まだ何かあるぞ!」
だよな。
これで終わるわけがない。あまりにも簡単すぎる。
周りの人が言う通り、黒い塊が突然動き始めた。ニンファーからも気を付けてくださいましと指示が聞こえてくる。
観察しながら、何か嫌な予感がして空を見た。
黒い球体が、少しずつ降りてきている。