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言霊円~Border of the mankind~  作者: 羽葉世縋
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終焉の足音

アイちゃんには内緒でギリス様に指示を飛ばして例の打開策を練らせる。グズグズするようなら頭を叩けば拗ねながらも頑張ってくれる。

「あのなぁ、アダム兄さん…。さすがに厳しすぎやしないですか?」

「なにがです?」

「たしかに怒るのもわかるけどさ…。ギリス様が少し可哀想だろ。」

「どこがです?ギリス様好みの顔をした私たちがずーっと付きっきりで見守ってるんですよ?ギリス様にとっては嬉しいんじゃないでしょうかねぇ?」

つむじをグリグリと指先でいじると痛そうにこちらを見た。

「…そりゃ、ちょっと嬉しいけど…。」

「ほら、ギリス様もこう言ってますから。」


「ある程度できたから聞いてくれ。」

ギリスはアダムに向き直って言った。

「ふむ、図面はそれらしいので説明してみてくださいな。」

「よし。…やっぱり都の全員を閏に変えた爆弾の仕組みを利用する他ない。しかし、その爆弾を作るとなると、相当な技術を要する。」

「つまり海の国の力が必要なのですね。」

「そうなる。しかも、あの日光線を浴びた物、灰を被った物以外で出来た物はヒビを通り抜けられないから地上の損壊を最小限にしつつ穴を開けるしかない。」

「なるほど。穴はどうにか彼らに開けてもらいましょ。イオタさんならできなくはないかも…。」

「そして恐らく、裁の都に蓋をしている岩盤には木の根が張り巡らされている。それを傷つければきっとアイツの手下が現れる。それが厄介だ。」

「とはいえ、やるしかないですしね。」

「そうだ。」

ため息が出そうだが、本当にやるしかない。ギリスは深刻そうな顔で呟く。

「…勝とう。」

「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。勝ちますから。」

対してアダムはふんわりとした笑顔でギリスの頭を撫でた。




カレットはまた別の墓を掘り返していた。ここまで1本も骨が見つかっていない。寿老人の仕業だということはわかる。だが、それしかわからない。

イオタにも寿老人について聞いてみたが、首を傾げただけだった。

「…こんなことってあるかよ…。」

しゃがみ込んで深い溜息。

跡形も無い彼らのいた場所に手を合わせ、祈ることしか出来なかった。




「煙斬、僕たちハ早めに出ようネ。イオタの家まで遠いンだからサ。」

「わかってるよ。2日前くらいに出ればいいな。」

「ソウダネ。」

魅空は1つため息をついた。それは煙斬の耳にも届く程大きいものだった。

「ん?なんか不満でもあるか?」

「…イヤ、すごく寂しいなって思ったんだヨ。ネェ、戦争が終わってもココに住んじゃダメカナァ?煙斬やみんなの思い出がいっぱいデ、手放したくないナァ。」

「いいんじゃねぇのか?それなら荷造りもあんまりしなくていいか。」

「エ、煙斬は街で暮らすデショ?」

「荷造りくらい、戦争が終わってもできるだろ?もう少しで帰れるって手紙は王子に頼んで幼馴染に出しておくけどな。」

「幼馴染カァ。イイネェ。」

「顔を覚えててくれるかわかんねぇけどな。すげぇ大事な友達なんだよ。」

「…僕も挨拶クライしてもいいかナ?」

「不本意だが、俺のもう1人の親だって言ってやるよ。」

「親…。」

その言葉を最後に魅空は黙り込んだ。

あまりに喋らないものだから、煙斬は心配になってその顔を覗き込んだ。


「…何泣いてんだよ。」

「煙斬はコンナに良い子にナッタんだヨって教えたくテ…。」

「そ。勝手に祈ってろよ。その良い子様は晩飯作りを始めるからな。」


鼻をすすりながら魅空は煙斬に尋ねる。

「煙斬ハ、僕と別れて寂しくないノ?」

それに料理の手を止めずに煙斬は答える。

「…あんまり。なんだかんだお前の方が寂しがって、俺のところに来そうだし。その時は…まぁ、受け入れてやらんことも無い。」

「…やっぱり、煙斬とズット一緒に暮したいナァ。」

「俺のこと食べないなら、俺は構わねぇよ。ていうか、お前絶対食べないもんな。なんかもうそう信じてる。」

「ソウ、ソウダヨ!絶対食ベナイ!!」

「その意気だ。お前がいねぇと酒も美味くねぇだろうしな。」

煙斬はケラケラと笑った。


今日のメニューはハンバーグダッタ。中にトロトロのチーズが入ってイタ。

「…明日が最後の晩御飯ナンダネェ。」

「縁起でもねぇ言い方すんなよ。」

「違ウ違ウ!そういうコトじゃなくてサ…」

「でもまぁ言いたいことはわかるよ。そんな雰囲気だもんな。」


「ソウ言えば、煙斬はナンデずっと煙草をやめないノ?」

「あー、アレか。もうこの際隠す必要もねぇか。」

「エ、何?そんなに重大なコトだったノ?!」

「まぁまぁ。お前にいつ食われてもいいように自分の肉を不味くしてやろうと思ったんだ。それで一番手頃なのが肺を汚せる煙草。そんだけだ。」

「…そうだったんダネ。僕のセイで不健康なコトをやってたんだネ。」

「そうだな。でも、食わねぇってことならもう吸わなくても良いか。俺、煙草あんまり好きじゃないんだよ。不味いし。」

「ソンナ、本当にゴメンネ…。」

俯いた魅空の頭を煙斬はぺしぺし叩いた。

「気にしてんじゃねぇよ。息子に何気を遣おうとしてんだ。」

冷めるから早く食えと説教され、魅空は幸せそうにハンバーグを完食した。


きっともうすぐ戦いが終わる。





















ザリッ…ザリッ…

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