弱者の追悼
「ねぇイータ、…ねぇ、たすけて…?」
泣きながら、シータが私に声をかける。
脚は既に無い。切断されて目の前で喰われている。
肉を裂く音、骨を砕く音。
真っ白な小さい閏が赤く染まっていく。
逃げられないように、太腿の残った部分に刀を突き立てて固定されている。
いくら手を伸ばし地面を掴んでも、目の前の砂を掻き集めるだけだ。
動けない。へたり込んでしまった。
心のどこかでもうシータが助からないことを悟っているのだろう。
なぜ諦める?
そう問う人がいるのなら、今この時、私の手を掴んで立たせてほしい。
きっと無理だから。
最初に攻撃を受け、頭を打ったローは気絶してしまっている。
唯一助けてくれそうなイオタは毘沙門天を倒すことに精一杯だ。
親友が
目の前で
少しずつ
消えていく
何を思ったのか、その閏はシータの真っ白な腕の骨をこちらに投げて寄こした。
カランと音を立てて目の前に落ちる。
そこでようやく涙が零れた。
閏はにっこりと無邪気に笑うとヒビの中に消えていった。
私はただ、その骨を抱きしめて泣き叫ぶことしかできなかった。
私は弱い。
とても弱いの。
みんなにある力が私にはない。
それさえあれば動けたかもしれない。
でも、それがなくたって勇気があれば動けたのかもしれない。
私には何も無い。
強くならなくちゃ。
何も失わないように。
誰も傷つけないように。
それでも現実は厳しい。
私は強くなれない。
弱いままなの。
守られるまま。
なんで。
どうして。
力があれば。
それさえあれば。
…。
今、私は幸せだ。大好きな人がそばにいてくれるもの。
きっとシータもそれを願ってくれてるはず。
シータはローのことが好きって言ってたな。
今ならその気持ち、すごくわかるよ。
でも、伝える前に伝わらなくなってしまった。
あなたの二の舞になったら、きっとあなたは怒るでしょう?
だから私は伝えるの。
カレットが大好きだって。
ずっとそばにいたいって。
いつか、カレットの名前をもらえたらいいのにな。