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言霊円~Border of the mankind~  作者: 羽葉世縋
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しばしお別れ

残りの15キロをどうにか歩ききった。ウプシロンたちの家が見えた時にはもう日が落ちていた。

「ヤァ、待ってたヨー!お疲れ様だっタネ。」

「こんばんは、オメガさん、ウプシロンさん。と、あとは…」

少し大きめのログハウス。テラスもあって豪華なものだ。だからかは知らないが、ウプシロンたち以外にも3人、カレットたちを待っていた。

ゼータがはねた髪を揺らしながらカレットに近づく。

「カレットく〜ん、ゼータちゃんだよぉ〜。覚えてる?」

「はい!あのやばい植物をくれた人ですよね!」

「正解!はぁぁ…この子がアイちゃんかぁ〜!可愛いなぁ〜!」

ゼータはすぐにアイを撫で回し始めた。

「癒されるぅ〜」

「少しなら、撫でてもいいぞ。」

ゼータの撫で方が上手いのか、アイはしばらく撫でられることを許した。


「ねーねー、ラムダとカイもおいでよー。可愛いよー?」

ゼータが奥の2人を呼んだ。だが、2人は動こうとしない。

「ねぇってばー?」

「うるさい!今、師匠の料理ができあがりそうなんだよ!」

「だからテーブルに運ぶのが先!!」

よく見るとそこはオーブンの前。赤々とした光に照らされて、2人の顔も赤く染まる。

「出来上がるまであと5分はあるだろ?ちょっとくらい来なさい。」

ウプシロンが2人を呼んだ。

「はぁーい。」

「まったく。料理は逃げやしないぞ?」

「だって久々の師匠の料理ですから。」

「俺たち楽しみなんですよ!」

ウプシロンが溜息をついた。

「すまないなアイちゃん。」

「いや、あの二人雑そうだから撫でられなくていいかな。」


その様子を見ていたイオタがふんわりと笑った。

「オメガ、ウプシロン。2人のことをしばらく預けててもいいか?」

「…まぁ、俺は一向に構わないが…。」

「僕も構わないヨ。2人トモ良い子そうだしネ。」

「それじゃあ頼んだ。」

イオタはさっさと出て行こうとした。

が、カレットもアイも迷わず追いかけて後ろから抱きついた。

「どうしたんですかイオタさん!」

「なんかあったのか?」

イオタがたじろぐ。

「いや、…少しだけ1人になりたいんだ。2人が嫌いになったわけじゃない。」

「少しってどれくらいだよ?」

「さぁ…でも、その時がきたら電報を寄越すよ。2人で帰ってくるといい。」

「絶対ですからね!」

「あぁ。約束は守るよ。」

イオタが走り出した。まるで瞬間移動のような速度。

「イオタ、あんなに足、速かったかなぁ?」

アイが呟いた。



「どうしたのかなぁ、イオタさん。」

「…言い難い話があるんだよ。」

「あー、それ絶対なんか知ってるやつだ〜。教えてよー!」

「ダーメ。大人には誰にも言えナイ秘密の1つヤ2つあるもんナノ。」

カレットたちが戻るとゼータを中心に話が盛り上がっていた。

「戻りました。」

「オカエリ。どうだッタ?」

「なんか変な感じ。あんなイオタ見たことないや。」

「なんだか焦ってるようにも見えました…。」

「まぁいい。今日は疲れただろう。いっぱい食べてゆっくり寝なさい。」

「師匠ー!俺達も泊まっていいですか!?」

「あぁ、いいよ。俺も賑やかな方が好きだ。」

「でも師匠、俺達がいると煙草吸えませんよ?」

「いいんだ。もとより別に好きじゃない。」

「そうなんですかー。」


広いテーブルに椅子が8脚。イオタがいなくなったから7人で座る。

「うわぁ、すごく美味しそうですね!」

「デショ?僕が元々ウプシロンに教えたんだケド、どんどん上手くなっちゃッテ。いやー、親代わり…トハ言い難いけど嬉しいヨネェ。」

そう言って微笑むオメガをウプシロンは親の仇でも見るような顔で睨みつけていた。


カレットは適当にパスタをよそって食べ始めた。ケオの料理と並ぶくらい美味しい。心底驚いた。

「そう言えばどっちがラムダでどっちがカイなんだ?」

アイが素朴な疑問を投げかけた。

「小さくて蛇っぽいのがラムダで、顔に傷が入っているのがカイだ。覚えやすいだろ?」

「そうですねぇ。ラムダさんとカイさんはどうしてウプシロンさんを師匠って呼んでるんですか?」

これには我先にとラムダが答えた。

「俺たちが初めてここに来た時に、生活の仕方から料理、戦い方まで全部教えてくださったのが師匠だったんだよ。」

アイも話題に乗った。

「じゃあオメガはなんなんだ?」

カイが答える。

「オメガさんは師匠と思ったことは無いや。どこそこ雑だし…。」

ゼータが吹き出した。それをムッとした顔でオメガは見ていた。

それを見てウプシロンもニヤニヤと笑うのだった。


「そう言えば師匠、なんでオメガさんなんかと同居してるんですか?」

「カイ…オメガさんなんかッテ酷くナイ?」

ウプシロンが上を見上げて考え込んだ。

「…ないしょ。」

「ソウ。別に仲がいいだけダヨ。」

「嘘つくな。俺はお前のこと嫌いだ。」

「エー、僕はウプシロンのコト大好きなんだけどナァ。」

「うるせぇバーカ。」

この話題が1番気になっていたのはゼータのようだった。

「もー、やっと聞けると思ったんだけどなぁ〜。2人とも隠し事だらけだから気になるよぉ〜。」

ねーっとラムダたちと頷き合った。

「カレットくんもアイちゃんも気になるでしょ〜?」

「すごく気になります。」

「でも教えてくれないんだよぉ。このおじさんたちいじわるー。」

「意地悪で結構。絶対お前たちには話さん。」

「いじわるおじさん〜。」

「そんなに意地悪意地悪と繰り返す意地悪さんには特製のフルーツタルトを出してやらないぞ。」

「それはやだー!今日の楽しみなのにぃ!」

「おじさんは意地悪じゃないから、ちゃんとゼータにもあげるよ。」

「わっほぅ!やったぁ!」

簡単に一喜一憂するゼータをウプシロンとオメガは娘でも見るかのような顔で見ていた。

「なんか2人とも似てるよな。」

「アイちゃんも思った?」

「アイちゃん、カレット、それは二度と言わないでくれ。」

ウプシロンは少しだけ怒った。




その頃、イオタは一人で部屋の隅に座っていた。電気もつけないまま、ただ考え事に(ふけ)る。


どうしても、ウプシロンとオメガは苦手なのだ。


あの二人は賢すぎた。

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