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作者の体験した恐怖体験録  作者: パイオニアレポート
4/6

クネクネ

これは私が二〇一七年の夏に本当に体験した話です。


二〇一七年の夏、私は長期休暇で久しぶりに故郷の田舎へと帰省しました。

久しぶりの田舎は都会で疲れた私の心を癒すのには充分な環境でした。


ゲームをしたり、サイクリングをしたり、思う存分夜更かしをしたりしていました。


でも、そんな長期休暇も終わりが近づいた、そんなある日の事です。


私はふと夜中に散歩に行こうと思い至りました。

ただし、その様な事は今まで何度か思っていたのですが、明日、また明日でいいいやと日を延ばしていた為に実行されなかったのです。


ですが、私の長期休暇も終わりへと近づいたこの日。

ようやく私は、良し!今日こそは行こう!と思ったのです。


そう決断した私はすぐにそんな、ささやかな計画を実行に移すべく準備をしました。

祖父からLEDの懐中電灯を借りて用意し、デジタルカメラのバッテリーもフル充電をしました。

デジタルカメラを持っていくのは単純な理由からでした。

私は趣味でイラストを描いているのですが、夜の写真はもしかしたら、良い素材になるのでは?と思ったからです。


そして、深夜12時すぎの頃。


私は家族全員が寝静まった時を見計らって家を出ました。

懐中電灯を持ち、カメラを持ってサンダルを履いて家をこっそりと後にしました。


真っ暗な家の前の道を懐中電灯の明かり一つで歩いていきました。

すっかりと寝静まった町を私は歩き進めたのです。


当初、私は夜散歩の時間を少なく見積もっていました。

最初こそは面白いだろうが、さすがにすぐに飽きるだろうと。


ですが、夜の街は私には想定以上にとても魅力的でした。

空を見上げれば満点の星空。

町は街灯以外には建物の明かりは殆ど見えません。

日中は田舎といってもバスや車が二車線の大通りともなると引っ切り無しに通っていますし、一車線の道路でも度々車が走っているのです。

ですが、夜散歩の最中、私の前には車は殆どと言って良い程に通りませんでした。


本当に静かでした。


聞こえるのは蟲の鳴き声やカエルの鳴き声だけです。

人間の出す音は殆ど聞こえません。


そんな私の視界に映るものはオレンジ色や白色の街灯が照らす道路とその周辺だけです。

私はそんないつもとは違う景色にテンションを上げました。

私が知ってる街の日常とは違う非日常の景色が私の目の前には広がっていたのです。


私はデジタルカメラで夜景の写真を何枚も何枚も取りました。

それだけではありません。

車が居ない二車線の道路を何度も無意味に渡ったり、一瞬、道路の真ん中で止まったりして写真を撮ったりしました。

それだけ、車が全くといって良いほど居なかったのです。


私は最初は比較的に家の周辺を散策していたのですが、テンションが上がってきた私は家の周辺を越えて街を散策を開始しました。

街灯がなく真っ暗な道も途中には何箇所もありましたが、LEDの懐中電灯があればそんなのなんのその。

ヘッチャラです。


でもちょっとドキドキしながら懐中電灯で道を照らして散歩をしました。

気分はもう子供時代です。


大通りや一車線しかないような小道、夜の神社。

その全ては普段自分の知る日中の光景よりもどこか不気味で非日常的で神秘的ですら思うほどに刺激的でした。

夜散歩は想像以上に楽しい物だったのです。

それは、子供の頃に持っていた冒険心を蘇らせた様な感覚を私に与えてくれました。


しかし、そんな散歩はある場所で私を本物の非日常の世界へと誘ってしまったのです……。


私は夜散歩を満喫していました。

普段ならば体力がない私はすぐに疲れてしまうのに楽しさのあまり体力を忘れさせてくれました。


そんな時です。

私はふと、昔住んでいた家のある方へと行ってみようと思い当たりました。


というのも、実は私には実家が2つ存在しています。

一つは現在、私の父母弟祖父母が住んでいる家と、もう一つは私が中学3年生の時に家族全員で現在の家に引越しを行った古い家です。


つまり、私はこの時、古い方の家の方へと行こうと思ったのです。

私はそう思い当たるとすぐに、それを実行に移しました。


懐中電灯をもってカメラを構えて道中の景色の写真をとりながら進みます。

すると、私は、それと、出会ってしまったのです……。


私がその時居たのは十字路で、二車線の道路と一車線の道路が交差する道で、私はその十字路の二車線道路を挟んで一車線道路が見通せる場所にいました。

この一車線道路は街灯が多い為、数百メートル先の遠くまでを見渡す事ができる道路でした。


ですが、私はそこである事に気づいたのです。

私の立っている地点から60mか70mも離れていない場所で。


あれ?誰か居ると……。


実はここまでの夜散歩で私以外にも夜の街を歩いている人を片手で数えられるだけの人数を目撃しました。

その人たちは恐らく私と同じように散歩をしている人やこんな時間まで仕事をしていたのか小さな工場の前で作業着を着た人が車のエンジンをかけている様なそんな人たちでした。


夜の街では人が歩いてると、物凄く目立ちます。

街灯がスポットライトの様な役目を果たしているというのもありますが、何も動かない静かな夜の街では意外にも動いている物は非常に良く目立つのです。

これは個人的な見解ですが恐らく、夜の街では日中に比べて見えている色が少ないから目立つのだと思います。


その上で私は、二車線道路の反対側から、一車線の道路を見てました。

ただでさえ街灯の明かりで遠くまで見渡せるような道です。


私はそこでその存在に一瞬、なんだか分かりませんでしたが、黒い何かが道路上に居るのを目撃しました。

私はそれを見て咄嗟にそれを人だと思いました。

ただ、この時の私の感情は今まですれ違ったり見た他の人に対する感想とは違い驚愕にも驚きにも近い感情でした。


その時の私はこう思ったのです。


なぜ、子供がこんな時間に居るのかと。


というのも、この当りは私の良く知る土地であり昔から殆ど姿を変えていません。

ゆえにその謎の人物が居る所にコンクリートブロックがあったのですが、その高さは私の体の半分くらいの大きさしかないのを知っていたので、その人物の身長が感覚として大体、わかったのです。

それに、そのブロックが無くても、60メートル程度のそれくらいの距離に人が居ると自然と大人か子供かのサイズは分かります。

ですが、時刻は深夜2時過ぎです。

身長的には小学生くらい。

子供が出歩くのは余りにも遅すぎる時間帯です。


私は驚き自分の目を疑いつつも二車線道路を渡って一車線道路上に居るその小さな身長の人物を凝視しました。


ただ、街灯のおかげでその謎の人物の自体は見えているのですが、その詳細な姿は逆光なのか真っ黒に見えて良く分かりません。


私はその異様な光景に目を奪われていました。


ただ、私はすぐにさらにおかしい事に気がつきました。


その人物は動いていたのですが、その移動は道幅の端から端を行ったり来たり行ったり来たりしているのです。


さらに目を凝らします。


すると、その黒い影は異常にクネクネとした動きをしていた事に私は気がつきました。

その動きはまさに異常そのものでした。


右に直角、左に直角と動いていてその動きをしながら道の端から端に繰り返して動いていたのです。


私はその様子をずっと見ていました。

黒い影は何度も何度もそれを繰り返していました。

カメラでの撮影も試みましたが、デジタルカメラの精度が悪く、よく映りません。


それからどれほどの時間だったでしょうか。


5分……もしかしたら10分近くはその様子を見ていたかもしれません。


すると、その黒い影は突然、クネクネした動きをしながら通りの左側にある居酒屋に隣接した横道を通っていきました。

というのもこのあたりの道は碁盤の様に道が幾つもある通りで黒い影は私から見て一番手前側にある道へと入っていきました。居酒屋はその通りの曲がり角にあるのです。


私はすぐに黒い影を追いかけました。

私は黒い影の正体を知りたかったのです。


私はサンダルのつま先に力をこめて走れるようにすると全力で走って追いかけました。


もし、あの黒い影が居酒屋の酔っ払いなら、居酒屋はとっくに閉店している時間帯ではありますが、酔っ払いならば追いつけるはずです。

ちなみに居酒屋の閉店時間は10時です。


私は走りました。


そして、黒い影が入っていった通りを見ました。

その通りは街灯は少なく遠くまで見渡せるような道ではないのですが一直線に伸びる道です。


距離はそこまで遠いというわけでもないのですから、あの様なクネクネとした動きをしているのなら追いつけるはずでした。


しかし、私がその通りを見た時、黒い影は居ませんでした。


私は唖然としましたが、すぐに黒い影を探しました。


そして、私は再び黒い影を見つけたのです。


その黒い影は街灯の明かりで辛うじて見る事ができました。


その黒い影は同じ動きをしていました。

クネクネ動きながら道の端から端を先ほどと同じように動いています。


ですが、その黒い影が居た場所の距離は先ほど、私が眺めていたのと同じ距離の感覚だったのです。

つまりは全力で追いかけたにも関わらず黒い影と私との距離は全然縮まっていなかったのです。

私は意味が分かりませんでしたがこの時、ようやく私はこう思いました。


あの黒い影は何かヤバイ存在ではないのかと。


こう考えた私ですが、すでに爆発した好奇心は押さえ込めませんでした。

私はその黒い影の正体を見ようと追いかけたのです。


ですがいくら進んでも黒い影には追いつけません。

目を凝らしてみれば黒い影はずっと同じ動きをしています。


クネクネ、クネクネ、クネクネ……。


私はまるで虹でも追いかけているのかと思いました。

カメラを向けても写真を撮っても暗すぎて街灯の光しか見えません。

幾ら追いかけても追いつけないソレに私はどんどん好奇心よりも恐怖心の方が強くなっていきました。


そして段々、私はアレの後についていってはいけないのではないかと思うようになりました。


私はそれでも途中までは追いかけたのですが、この時、私は幸か不幸かサンダルで来ていた為に足が悲鳴を上げ始めました。

慣れない長距離の徒歩移動の上に全力疾走をした為に左足に豆ができていてそれが潰れてしまったのです。

痛みが私の足に走っていました。


私は家からかなりの距離を歩いてきています。

このままでは帰るのが大変ではないか?そう思ったのです。


それで結局、私は足が痛い事を理由にして黒い影に背を向けてそのまま諦めて帰路についたのです。

都合の良い理由かもしれませんが私はそれを理由にして逃げたのです。

その後はあの黒い影が自分を追ってきているのではないかという恐怖を覚えながらも、何事も無く家へと帰る事ができました。


私はその後の翌日、家でパソコンを開いて昨日の夜に見て撮った写真にあのクネクネした黒い影が映っていないかを写真編集ソフトのフォトショップを開いて明るさ調整などをしてクネクネを見ようとしました。

しかし、残念ながら写真にはクネクネは写っていませんでした。


その後、私はあの黒い影がなんだったのかも良く分からないまま半年もの時間を過ごしました。


そして二〇一八年のお盆の頃に衝撃的な話を耳にする機会があったのです。


お盆の時、私の家に親戚のおばさんが祖父、祖母の部屋でお茶を飲んでいました。

私もその中に混ざったのですが、その際、有名なホラードラマである本当にあった怖い話の話題になりました。

最初は幽霊は居るか居ないかの話だったのですが、その場で私は半年前に見たクネクネの話をしました。


すると、親戚のおばさんが突然、祖父に向かって「居酒屋の所って、うどん屋の所?」と聞いて祖父が「あぁ、うどん屋な」と話を始めるんです。


私は会話から取り残されたのでうどん屋って何?と聞きました。


すると祖父が私に教えてくれたのは、かなり衝撃的な話でした。

どうやら祖父いわく、昔、居酒屋があった場所には、うどん屋が在ったそうなのですが、その隣の家で男か女かは分かりませんが、その家の子供が両親を刃物で滅多刺しにして殺害する事件が在ったそうです。

祖父によると、当時はそのうどん屋と事件があった家の周りには畑しかなかったそうで、周囲の家の人たちは一時期、事件が事件なだけに気味悪がって周囲には人が寄り付かなかったそうです。

ですが、それから時が経ち、うどん屋は無くなり居酒屋となり、周囲も住宅街となり事件の事は皆忘れたようなのです。

現に私は今までそんな話は一度も聞いた事はありませんでした。


正直、自分の近所で、私が生まれる前とはいえ、そんな事件が起きていたのかと驚愕しました。


その話を聞いた上なのですが、結局、あの黒いクネクネの正体はなんだかは分かりません。

もしかしたら私が思っている様な怖い存在ではなく酔っ払いなのかも知れませんし、不審者だったのかも知れませんし、心霊現象的な存在だったのかも知れません。


ですが、これは現実に私が二〇一七の夏に体験した話です。


夜の街には何かが居る……そう感じます。




▽▼▽




挿絵(By みてみん)

この写真は私が黒いクネクネを追いかけた先で撮影した写真です。正直言って黒いクネクネの撮影には失敗してしまったと思います。なんでもっと高品質のカメラを持っていかなかったのかと悔やまれます。ですが、この写真は私が間違いなく黒いクネクネにカメラのレンズを向けて撮影した写真なのです。


挿絵(By みてみん)

この写真は私が黒いクネクネの追跡を諦めた後、逃げる様に帰る途中で、最後に撮影した一枚です。この通りで私は黒いクネクネを目撃しました。

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