八話
今回、虫が出てきます。
「にぎゃぁぁぁぁあああ!!!!」
「おいこらどこいく!!」
「何あれ何あれ何あれ!!!」
エル君に武器を渡された次の日、私は初任務にあたっていた。任務内容は王都付近に出没した『一角猪』と呼ばれる魔物の討伐。初任務だと勇んで出てきたものの。
私は絶賛、逃亡中です。
え、何から? ははは、決まってるじゃないか。
「何あのうごうごしてるのぉぉぉぉおお!!」
よくわからない、足がいっぱい生えた魔物からさっ!
「あれは『飛び百足』だな。魔物の一種だ。あんなに大きいのはめったにいないが」
「むりぃぃぃい!! 気持ちわるいぃぃぃ!!!」
私は! 前世でいたGから始まる虫と! ああいう足がいっぱい生えた奴は! 無理なんだ!! 百足無理!! 蜘蛛までなら許せるから大抵の虫は平気だけどね!!!
少し前、王都郊外にでた私たちは、しばらくあたりを巡回したが、どこにも一角猪はおらず、二手に分かれて探索することとなった。私はバルドさんと。エル君たちは三人で。ねぇ、今思ったけど、なんで新人を一番若いであろうバルドさん一人に任せたの? いいけどな!!!
叫び、走り逃げる私の隣をバルドさんが並走する。
バルドさんと二人で一角猪を探していたところで出会ったのがあいつだ。それはもう運命のような出会いだった。時が一瞬止まったよ。
全長1メートルは超えていそうな長く、光を反射して紫色に光る体躯。
その体躯に見合った大きさのつぶらな瞳。
つぶらな瞳の下に存在する大きな口。その中でチラ見する鋭い牙。これが牙チラか。
そして、大きな体躯を支える、無数に生えた足。
私はその全貌をとらえた瞬間走り出した。
「フィオーレは虫苦手なのか?」
「ああいう足が無数に生えてるのは無理ですぅぅ!!」
「なるほど。でも魔物が王都付近にいるのは危険だから退治しなきゃならないんだが」
「あれをもう一度視界に入れろと!?」
「あぁ。ほら、とまれ」
「いやぁぁああああ!!!!!」
私はバルドさんに手首をとられ、その場に立ち止まらされた。そして強制的に百足がいるであろう方向を向かされる。
もちろん、そこには私たちを追いかけてきている百足の姿。
「うわぁぁあああああ!!!! 気持ちわるいぃぃぃ!!!!」
「ほら、叫んでないで撃ってみろ」
「バルドさんの鬼!!!」
「鬼じゃない」
「こっちきてるぅぅぅ!!」
私は叫びながらも銃を構えて百足に向ける。あぁぁぁあぁぁあ百足が近い。っていうかあいつ足おそいよ!! あんなに足あるのに何で人間より足遅いんだ!!!!
心の中でそう言いながら私は雷をまとった銃弾を百足に打ち込んだ。百足はショック死したようで、その場に沈む。
「うぅ……初回から疲れた……」
「頑張った頑張った。……こっちには猪いないみたいだし、少佐たちと合流するか」
「もっと褒めてください……」
「よーしよし」
要求したらわしゃわしゃと頭をなでられた。もっと褒めて。私頑張った!!!