七話
「起きてください」
昼、起きたら、目の前にエルくんの顔があった。
何故エル君の美しい顔が目の前にあるんだ。相変わらず美しいお顔ですねエル君。あの本の中で脇役だったとは思えないよ。さすがエル君。そんなエル君に起こされるなんて、今日はなんてついているんだろう。っていうかなんでエル君が私の部屋に。まるで夢みたいじゃないか。でも私はエル君を眺めるなら壁か天井になり、エル君の日常を覗き見たい。……夢みたい?
あぁ、これは……。
「夢か」
「起きてください」
「ふぐっ」
これは夢だと判断して二度寝を決め込もうとしたら腹部に容赦ない手刀がおろされた。すさまじい衝撃だ。
私はのそりとベッドの上で身を起こす。寝不足は解消できたようで、頭はそこそこさえている。
「少佐、どうしたんですか」
「貴方に少しお話が」
「えっ、クビですか」
「貴方昨日うちの班についたばかりでしょう。そんな話じゃありません」
「なんだ~」
クビではないことにほっとしつつも、少し疑問がある。
「少佐…………どうやって部屋に入ったんです……?」
私は寝る前に鍵をかけたはずだ。
「ははは」
「え、あの、ほんとどうやって入ったんですか!?」
私はこの軍の中で唯一といえる女子だ。祖父にも女であることは隠すようくぎを刺された。だからカギ閉めたのに。着替えとか見られるラッキースケベ的なのを防ぐために! なんでエル君入ってきてんの!?
女だとばれた場合、最悪医療班もしくは後衛に回される可能性がある。そんなことになったらエル君を守れないじゃないか!! 私はエル君の死亡ルートを回避するためにここにいるのに!!
「で、話というのはですね」
結局、エル君は質問に答えてくれなかった。ちくしょう。なにか対策を練らなきゃ。
「昨夜、少将から聞いたのですが、貴方は『希少種』だそうですね」
「え、はい」
「……ならば、魔法武器は必要ありませんね」
「そうですね。壊しますし」
「それは困ります。なので貴方には今まで使っていた武器を使っていただきたい。最近は魔石を外から見えないようにしている武器もありますから、疑われたりはしないでしょう」
「わかりました」
じゃあいつも持ち歩いている銃でいいか。
「それと魔法属性ですが、希少種ならばどの属性も使えるのですよね」
「使えますよ」
「では雷でお願いします。できますか」
「なんでです?」
別に、指定しなくても、その場のノリで使っちゃいけないんだろうか。今まではそうしてきたんだけれど。
「貴方にはなるべく希少種であることは隠してもらいたい」
「?」
「希少種はその名の通り希少です。それに謎も多い。そんな人間がいると知ったら、研究者は貴方を実験台、研究対象として欲しがり、上の人間は貴方を利用しようとします。……最悪、人間として扱われないでしょう」
「ひぇ」
「……まぁ人間扱いされない、というのは本当にやばい人間に捕まった時です。しかし、今までの数少ない研究結果から『希少種は再生能力が異常に高い』という事実が見て取れるそうですから、手荒には扱われるとは思います」
「それは……いやですね」
いくら私でもそんな実験台になりたいとは思わない。っていうかそんなことに巻き込まれたらエル君を守れなくなるじゃないか! 絶対逃げてやる!!
「ですから、貴方には極力希少種であることは秘密にしていただきたい」
「わかりました!」
「よろしい。勿論、私含め我が第六部隊A班は全力で貴方を守ります。何かあったら言ってください」
エル君はそう言ってほほ笑んだ。
エル君超イケメンだね!!!! ありがとう!!!! エル君のその言葉と微笑みだけで白米三合は食べられる気がするよ!!