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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
37章.神殿再建(2)

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37-37.タカアシガニ旅行(18) 夢と希望なんて絶望だ

挿絵(By みてみん)


現代日本側のお話です。


--------


むしろ、俺より良い神様が居ないなんて、夢も希望もない世界なんだなと思う。


「俺より良い神様が居ないなんて、夢も希望もない世界なんだな」


「だから、夢と希望を届けに行くんでしょ」


なんだと! ”夢と希望を届けに行く”だと!!

絶望的なキーワードが飛び出した。俺はミンキーモモかよ!!

あ、あ? あ、、、、俺はモモか!!


ああ。なんか納得できた。

ミンキーモモは2度やって来る。


現代日本視点ではなく異世界側の視点で見ると、俺は、ミンキーモモなのだ。

やけに爺さん扱いされると思ったら、49歳の俺が、アダルトタッチ扱いされてああなったのだ。

”大人になったら何になる”がテーマで、主人公が使える魔法は、基本的には大人になるだけ。

小学生相当の年齢の主人公が大人に変身するが、その際に、あらゆる職業のエキスパートに変身することができる。

俺は大人になって普通のサラリーマンやってたのに、あっちの世界では無職扱いだった。


俺はアダルトタッチで無職にしかなれなかった……

”アダルトタッチで無職になーれー!”ってのは夢も希望も無いパターンだ。


--------

※あっちの世界では男の老人は無職が普通ですし、このおっさんは、

 無職とはいい難い状況でした。

 先代勇者とか神様とか事実上の町長さんとか職業とは言い難いものもありますが、

 むしろ自身が無職だと言い張っていました。

 たぶん、人々から無職だと思われていたのは、初期の短期間だけだと思います。

--------


俺が小学生のころ、ミンキーモモという魔法少女物のアニメがあった。

魔女っ子アニメ自体は、かなり古くから存在していて、なんと、テレビが白黒放送だった時代から存在していた。


俺の時代は既に白黒放送なんか無い。

当然、魔女っ子アニメは俺が子供の頃にも新しいものでは無かった。

むしろ廃れた時代だったかもしれない。


ミンキーモモという番組は、本家魔女っ子シリーズが終わった直後に放送された。

それまで延々続いてきた魔女っ娘シリーズと入れ替わるようにはじまった。

大人の都合を理解していない子供から見ると、

”絵柄が極端に変化したけど、また今年の魔女っ娘アニメが始まった”という程度の感覚だったと思う。


あれは後に流行る”トラック転生”の元祖だと思うが、最初は魔法のプリンセスが活躍する魔法少女モノに見える。

内容的には女の子向けの普通の魔法少女モノとはだいぶ違うが、一応は魔法少女モノだった。

ロボットアニメのパロディーで合体ロボが出たりもするが、一応は、魔法のプリンセスっぽかった。


ただし、主人公のモモは途中でトラックにひかれて転生する。


打ち切りで話数が足りないから、苦肉の策でああなったのだと思うが、

”あと1個宝石を集めれば任務達成”という局面で、夢のエネルギーが枯渇して謎の乗り物が消えてしまい長距離移動できなくなるし、トラブルで、魔法のステッキも破壊されてしまい、打つ手が無くなる(45話)。

もはやこうなっては普通の女の子と変わらない。


46話では、もはや普通の女の子とかわらない生活が描かれ、視聴者視点でも、”これ、どうするつもりだ?”と思って見てると、突如あっさりトラックにひかれて死んでしまうのだが、そのとき、人間として自分の夢を叶えたいと望み、人間に転生することを選ぶ。

※異世界出身の主人公が、現実世界の人間として転生しました。


そして、その直後に、”転生後のモモが自分の夢を叶えたとき、夢の国が再び地上に戻ってくる”場面が描かれる(46話)。


未来に起きるであろうことが映像として流れる。

成長したモモが夢を持っていれば、最後の1個の宝石が集まるので、一応、成功が約束された形で、ハッピーエンドの形になっている。


その後、再度、今度は謎のミュージカル仕立てのエンディングがはじまる。

元から劇中劇だったように見えるような閉じ方をしている。


※そのあと普通に、いつもと同じエンディングが入ってます。


その割には、トラック転生後もしばらく放送は続いているので、ずいぶん妙な話に見えた。


元のテーマが、”魔法で夢を叶えることはできない”というものだったようで、

打ち切りによる短縮しつつ、魔法で夢を叶えなくてもハッピーエンドに向かう話にするために、トラック転生を採用したようだ。


魔法が使えない普通の人間に生まれ変わって、夢を叶えることができれば、魔法無しで夢を叶えることができたことになる。

『夢は魔法の力ではなく、自らの力で叶えるものである』というテーマは描けているが、本来のターゲットである女児にトラック転生見せるのは如何なものかと思うのだ。


アレを知っているからだと思うが、俺は”夢と希望”と聞くと、トラック転生が待っている気がしてならないのだ。

今の俺はトラックにひかれたくらいで死なない気がするが、夢のエネルギーが枯渇したのか、まあ、何か理由があって1度は退場して戻ってきた。


俺の夢のエネルギーは既に枯渇しているような気もするのだが。

だが、再度異世界に行くことになる。



ミンキーモモは2作あり、俺が小学生のころやったやつの続きが、俺が成人するころにやっていた。


俺は子供のころ、魔法のプリンセスという題名に騙されて少女向けだと思って、前半は見ていなかった。

実は中身はあまり少女向けでは無いことに気付いたのは後半になってからだった。

だから俺がリアルタイムで良く知ってるのは、終盤のあたりで、なんと、トラック転生はリアルタイムで見た。


むしろ、転生後の話の方を多く見たと思う。

中途半端に終わったならともかくとして、区切りも良かったし、続編は通常それほど期間を開けずに作成される。


女児向け玩具を売るための番組で、何年も間を開けたら効果が薄い。

だから、続編が中途半端なタイミングで作られるとは思わなかった。


ところが、なぜか、俺が成人するころ再度ミンキーモモが放送された。

てっきりリメイクかと思っていたら、なんと旧作の続きだった。

俺は新作の方はリアルタイムでは見ておらず、続編だったことを後になって知った。


作中での時間も進んでおり、しばらく時間を隔てて、新たにモモがやってきた。


俺も、あれと似ているように思う。

第二弾として、再度俺が行く。海モモのように。

あれはすごい話だ。


一見”夢と希望を届けに行く”ように見える。


だが、実際には”夢も希望が存在しないことを身をもって証明するために行く”のだ。

たぶん俺は夢も希望も存在しないということを思い知らせるという残酷な使命を持っていくのだ。

俺が運ぶのは、夢や希望では無い、絶望だ!


なんか、すごい勢いで納得した。絶望した!


俺は、夢と希望を持っていくのは難しいと思うが、絶望を届けに行きたくは無い。


※このおっさんは自覚していないだけで、ちゃんと”夢と希望を運ぶ役”を

 こなしているような気がします。



俺が小学生の時にやっていた方のミンキーモモは”空に浮かぶ夢の国”、フェナリナーサのお姫様なので通称”空モモ”と呼ばれている。俺が成人するころやった方は”海に沈んだ夢の国”、マリンナーサのお姫様なので通称”海モモ”と呼ばれている。

2人のモモは基本、デザインが同じで見分けがつかない。

しかも、海モモには空モモも登場する。


古い方の空モモは、変身前はアラレちゃんの声で、変身後はキシリアの声になる。

変身前後でギャップがあるし、変身前はおちゃめで、変身後はかっこいい。

キシリアでカッコイイイメージがわかなければ、ゴーショーグンのレミーの声が想像できれば尚良い。

変身前後で声の印象が大きく変わるのに、実は同じ声優さんが声をあてているという、声優さんの声を生かした作品だった。


新しい方の海モモは変身してもしなくても声はあまり変わらない。

特に変身するメリットもないので最後のほうは変身しなくなる。

夢のエネルギーも枯渇して、魔法もろくに使えなくなってるし。

この時点で既に夢も希望も無い。


共演シーンもあるが、空、海、両モモ共に、その時代の人気声優をあててるのだが、組み合わせが悪かったのか、なんとも煮え切らない共演シーンになっている。


海モモは、空モモの続きの話で、空モモが登場するけど、トラック転生後の空モモは普通の人間で変身できない。

変身しないので声芸が生かせない。

新モモは、変身できるけど、変身するメリットがない。


凄いのがトラックネタだ。

海モモに空モモが登場するとき、僅かな出演シーンでだいたい毎回トラックにひかれかける。

特に海モモの39話のトラックにひかれるシーンは、直前の子供とのやりとりも含めて、空モモの46話でトラックにひかれるシーンが再現されている。


ただ、転生後のモモは、トラックには慣れているのでひかれて死ぬことは無いようだ。

既にあの時点でトラック転生ネタと対になる、トラック転生しそうでしないネタが出来上がっているのだ。


空モモは打ち切りでトラック転生したはずだが、トラック転生が46話で、そこから増加分が加わって63話もある。

海モモは62話もあり、さらに未放送の話が3話もある。両作合わせて120話以上もあるのだ。

今は1クール12話が多いので、その10倍もやっていることになる。


先にやっていた空モモは、右肩上がりで視聴率は上がっていたようだ。

番組自体はそれなりに人気出て、特に魔法少女モノを見ない層が、実はあんまり女児向けの内容ではないことに気付き始め、視聴率は上昇傾向にあったのだろう。

だが、昔のスポンサーはおもちゃを売るのが目的で番組自体にたいして興味は無い。


そんな状況で無理やり番組打ち切り決定したからか、おもちゃメーカーがスポンサーの番組内で、おもちゃを配送するトラックで主人公死亡という悲劇が起きてしまったのだ。



海モモには”夢を持ち続けてほしい”というメッセージが込められていたというが、

俺には『お前が夢を失ったらモモが消えるぞ』という脅しに見えた。

酷く後味の悪い作品だった。



変身か……俺も子供の頃は変身ヒーロー好きだったんだけどな……


俺は変身すると巨大変身ヒーローの敵役みたいなやつになるのだが、たぶん、変身したら戻れない。

だから変身できない。変身しない変身ヒーローだ。


魔法も使える。まあ、変身前も可愛くないから需要は無い。

※割と需要ありますよね、異世界の方々には。


魔法のステッキくらい持ってたほうが良かったか。

まあ、魔法のステッキ持ってても需要無いだろうな……


海モモはと言えば、放送時期が微妙だった。

魔法少女モノで8年後に続きやっても、前作見ていた女の子は、もう、魔法少女モノ見ない年になっている。

だからといって、まだ子育てする年でもない。

普通は女児がリアルタイムで見ていた作品を、25年後くらいにリメイクすると、親子揃って釣れるので、そのタイミングでリメイクする。定番にして数十年作りまくっても、親子で見る機会がある。

8年とか10年では、親子釣り効果が生まれない。


ただ、作中の設定的には意味があって、転生した先代モモが、月日の経過で成長しているのだ。

子供のモモは10歳で、企画時期が10年後。転生して0歳のモモが、この時期には10歳になっている。

リアルタイムなのだ。


ただ、この続編が作られたことで、旧作のモモが任務に失敗していたことが確定してしまう。

旧作の時点では、モモが成長すれば夢の国が地球に戻ってくるはずだった……のに、海モモが制作されたせいで、失敗が確定したことが描かれてしまった。


海モモが放送されたせいで、トラックにひかれて転生してまでも目的を果たそうとした空モモも救われない話になってしまったのだ。


俺が次に異世界に行ったときも、夢や希望は実現できないことを証明しに行く羽目になるかもしれない。


海モモは目的を果たすどころか、もはや地球では、自身の存在すら厳しくなってしまった。

夢の無い世界で夢の世界の生き物は、存在することはできない。

海底に沈んだ夢の国は、地球を離脱する。

それでも、脱出せずに海モモは地球に残る。


OVAでは、お供の犬猿雉も消えてしまい、人間のパパママも死んでしまった後の世界が描かれる。

真綿で首を締めるを地で行く作品だった。

なんで、魔法少女にあんな残酷な仕打ちをしたのかがわからない作品だった。




まあ、俺は、俺が消えるのはかまわないのだ。

俺が物語の主人公で、夢の無い世界では生きて行けずに消えてしまう役でも、俺を見て悲しむ人は多くないだろう。

だから、まあ、適任なのかもしれないな……


まあ、わざわざこんなおっさんが主人公の話なんか作っても存在価値が無い。


※おっさん本人は存在価値を否定しているようです。


だから、俺のような存在がやるというのは合っているとは思う。

俺は、俺が納得できる形で最期を迎えたい。それだけだ。


俺は、俺自身の超常的な能力の多くを知らないか、知っていても仕方なく使っているものだと思うが、1つだけまだ使ったことが無くて、俺が使えそうな能力を知っている。


俺は異世界に行っても長生きしない。それはオーテルから聞いている。

だが、異世界に行っても俺を殺せる奴は存在しないだろう。


俺を殺す方法は、限られる。

おそらく1つしかない。


オーテルが見せてくれた。

”成仏” オーテルは仏教知らないと思うが、そう呼んでいた。


俺は、自分の力で消滅することができるはずだ。

たった1つだけ、俺が自分で納得したときに発動させることができる能力だ。


俺はしばらく前まで、異世界に行かずに成仏しようと思っていた。

あのときならできたはずだ。


でも、それを止めるために、異世界から写真の子たちが接触してきていたことが分かった。

だから、今はもう異世界に行かずに消えることはできなくなってしまった。


でも良かった。

俺は、俺が望むタイミングで終わらせることができるのだ。

だから、異世界に行って、あの子たちともお別れをしてから消えようと思う。


いや……オーテルのお母さんは竜だと言っていたから、俺はしばらくは竜として過ごさないといけないのかもしれない。


”夢と希望”とか聞いたから、トラック転生したり、絶望を運ぶイメージが湧いたけど、

よく考えたら、そういうのじゃなくて、もっとめんどくさい役のような気がしてきた。


………………


新婚旅行が終われば、俺が未練を残さずに転移できる条件が揃うのだろう。

今の俺にはまだ、現代日本に未練がある。

だから、今のまま転移したら、半身がここに残ってしまう。


だが、このまま消えてしまうことはできた。


オーテルは最後の転移では記憶を持っていくことができると言っていた。

俺は2人を置いて去るのには少々の抵抗がある。

だからこその妻の形見なのだ。

アレの威力は凄まじい。


未練と言っても、大した話では無い。

俺はもう消えても良いのだ。

たぶん、妻の形見があれば未練を残さず去ることができるのだろう。

少しであれば未練があっても、半身を残さずに去るアイテムが妻の形見なのかもしれない。


あとは異世界に行った後だ。

あの写真の子達は、唯ちゃんが存在する世界を作るのを手伝ってくれたのだ。

お礼を言いに行かなきゃならない。


この世界での俺の役目は、新婚旅行が終われば終わり。

お別れだ。まあ、そこで俺の心の整理が着くのだろう。


……………………


「新婚旅行、山中湖だっけか」


「ええ」


山中湖。俺的にはあまり遠い場所ではない。

富士五湖のうち横浜からのアクセスが最も良い湖だ。


横浜在住の人が新婚旅行で熱海行くくらいのレベルだ。

わざわざ新婚旅行で行くようなところではない。

意味はわからなくもないが。


「…………」


「行ったでしょ。会社の保養所があって」


「ああ、行った。

 確かに懐かしいと言えば、懐かしいな」


俺が人間だった頃務めていた会社の保養所があった。

昔は相当な山の中だった。

その割にはアクセスも良く、手ごろだったので会社の保養所が多い。

ただ、その後、保養所は無くなった。

俺が病気した後だったと思う。


会社の保養所……昔はそれが会社の価値だった。

俺が就活していた頃は、どこに行っても、福利厚生はこんなものがありますという話ばかりで、仕事の話はされなかった。

まあ、人事との一次面接で落ちるからかもしれないが。

人事の人は、採用後の配属先のことを詳しく説明することはできないから、就社すれば誰でも使える福利厚生の説明ばかりをするのかもしれない。


就活する側の立場としては、あれは異様な光景に見えた。

福利厚生や年間休日数の話ばかりされて、その割には、志望動機に福利厚生の充実とか休日が多いとか、そんなことを書くのは良くない。


まあ、あのスタイルになった理由はわかるのだ。

俺が就活していた当時は、”なんで仕事と関係無い、しかも、会社案内に書かれていることばかり言うのだろうか”と疑問に思っていたが、売り手市場が長く続いた結果がアレだったのではないかと思っている。


長く続いた経済成長期、企業側としては人材獲得が大きな課題になっていた。

だから、当時は、保養所がこれだけありますよと、そういうのを売りにして人材の獲得をしていた。

それが会社の価値だった。そういう時代があったのだ。

俺の時代は社員旅行行きたい人なんて、俺も含めて滅多に居なかったわけだが、もっと上の世代は社員旅行に行けるのは良いことと感じていたのかもしれない。


待遇の良い会社ほど福利厚生も充実していることが多かったから就職先の選択基準の1つにはなった。

会社側が学生を学校名で判別するのと同レベルの意味しかない。

本質とは関係無いが、目安にはなる。


就職氷河期、労働者が余る時代になると、そんなものは無くても、選ぶのに苦労するほど勝手に人が集まってくる。

維持費もかかるので、無駄な施設として、どんどん廃止されていった。


保養所は、利用料が安いし、手軽に行けるので俺も何度か利用したことがある。

俺が若い頃は、安く感じた。

40の頃にはあまり安いとは感じなかった記憶がある。

利用料が上がったのか、民間施設を個人で利用する方が質的に良かったのか、もう覚えていない。


エアコンが無いのが普通の時代には、手軽に行ける避暑地として人気があったのだろう。


山中湖は標高約1000m地点なので、単純計算で平地より5℃以上気温が低い。

それでも夏は沼という感じだったが。

※日本で3番目に標高の高い湖。樹海の神殿に近い本栖湖は4番目。


俺が社会人になった当時、既に家にはエアコンがあるのが普通だった。

子供の頃には、エアコンはまだあまり普及していなかった。

だから当時は価値が高かったのだと思う。


今は、山中湖に行くより、自宅でエアコン使って過ごした方が涼しいので、避暑地としての価値は大きく下がったのではないかと思う。

気温自体が異様に上がっているというのもあると思うが。


車で行く場合、横浜からは行きやすかった。

車が無いとむしろ行きにくい場所だが、神殿に直行できるというメリットもある。

俺の神殿は、富士の樹海にある。

わざわざ山中湖を選ぶのだ。神殿に近いところが都合よいのだろう。


どうせ最後は唯ちゃんと合流する必要がある。


……………………


「それにしても、神様を必要としているのは女の子ばかりじゃない?」


異世界で神様を必要としている人の話だ。

ぬう、ちょっと嫌なところを突かれた。

とはいえ、とにかくあの世界、男女比がすごいのだ。


「それは俺が狙ったわけじゃなくて、あの世界、女ばっかりだから」

「でも、若い子ばっかりじゃない?」


俺もそう思っているが、俺が望んだことでも無い。たぶん。


「それは俺も思ってる。俺が選んでるわけじゃないと思う。

 それに俺は神様役だから、男女の仲じゃないと思う」


※女たちは普通に男女の仲を望んでいます!


「ほんと?」

「本当だ。俺は、女の子とイチャイチャして暮らしたいとか思っていないからな」


※すごい勢いでイチャイチャして暮らします!!

 ただ基準が、現代日本とだいぶ違うだけです。


「確かに、あの子たちは神様を返してほしいって言ってたけど」

「俺は神様とか好きじゃないから」


----

”俺は神様とか好きじゃない” それはもちろん洋子も知っている。

「それは知ってる。私が神様を作ってしまった。

 それはあなたには悪かったと思ってる。

 でも、私は後悔していないから」


----


好きじゃないのは事実だ。だが、俺は洋子さんを責める気は無い。

神様になる方法を残したのは俺だから。


「ああ、いや、まあ俺も心残りがあったから、こうなっちゃったんだけどな」


「悪いことみたいに言わないでよ」


「うーん、まあ、俺も唯ちゃんが存在する歴史の方が良いと思うけどな。

 俺自身が存在しているのは正しくないと思ってる」


「感謝してるのよ」


それも理解している。

だから、俺は今すぐ消えようとしていないのだ。

なんだか気まずくなってしまう。


「それより、ベスが居た時の話だろ、

 あれから、時間を戻してるけど、あっちでは何年経ってるんだろうな?

 あの世界、男の寿命は短いけれど、女の寿命はこっちの人間と大差ないはずなんだ」


「青い服って……代々受け継がれてるってことある?」


代替わりするほど時間が流れてるのか?

いや、俺の感覚だと、あの子供が成長した時代に行くと思うのだが。


とりあえず、服の話であれば、凄く高いので簡単に捨てたりはしないと思う。


「わからんけど、服は凄く高い。色がついてたらもっと高い」

「代々伝わる?」

「でも、あの青い服の子は、何度か見てるけど同じ子だと思う。

 姿が分からないときでも誰だか区別つくから、却って確実に思える」


----


つまり、視覚情報が無くても気配察知なりなんなりで区別が付いてるのだ。

洋子さんは、直接気配察知が使えなくても、石の記憶の中で見えた相手が気配察知を使った結果は感じることができるのかもしれない。


何度か出てきた同じ子がほとんど年を取っていないのだから、さほど長い時間は経っていないのだろう。

或いは、”こっちとセットで時間が戻る可能性”……は無いな。


まあ、こっちで何年過ごしても、あっちの時間の流れとは関係ない感じなんだよな。

俺は延べ数百年をこっちで過ごしているのだ。


「俺は、こっちに戻る時は高校3年の受験直前。

 オーテルは、どの時代でも自由に選べると言ってたけど、いつも同じタイミングだった。

 あっちに行く時も俺は時代を選んでないと思う」


こっち戻るときはいつも高校3年生。その理由は洋子にはよく理解できる。

そこに洋子との強い接点があるからだ。


「あ、そろそろPAあるけど寄る?」


おお、ありがたい。実は、尻がすごく痛いのだ!


「ああ、寄ってくれるか。

 飲めるうちに缶コーヒー飲んでおく。

 あと、ついでだからトイレ寄ってく」


あっちの世界にコーヒーは無い。


========


PAで駐車すると、一息つく。

栫井(かこい)がコーヒーを買いに行った間、洋子と唯が先に車に戻る。


「ジン君が戻ってくるのが高校3年なのは、きっと私のせい」

「なに?」

洋子が急に話し始めたので、何のことを言っているのか、この時点では唯にはわからなかった。


洋子は話を続ける。

「たぶん、ジン君は、どの時代にでも行けるけれど、

 行く先の時代を決めているのは本人ではないのよ。

 異世界でもね。

 願いを叶えるためだけに存在している神様だから。」


”どの時代にでも行ける”何の話をしているのだろうか。

唯には誰かに操られていると言っているように聞こえる。

「それで栫井(かこい)さんは幸せなのかな?」


「今はね。でも、この先はわからない。

 あの人は願いを叶えるためだけに存在しているから、

 願いが叶えば自分がどうなるかは気にしていないのかもしれない」


確かにそうかもしれない。

唯にもそう思える。


「悲しいね。願いが叶ったけど、もう、この世界には戻ってこない」

ところが洋子が妙なことを言う。

「次は別の時代に行ってもらう」


別の時代に行く。おそらくできないはずだ。

栫井(かこい)はもう時間を戻すことはできない。

だからこそ、お別れの準備を進めている……筈なのだ。


「別の時代? どういうこと?」


「その先はわからないけれど。

 でも、待ってる人がいるのにここで終わりにはできないわ」


なぜか洋子はまともに答えてくれない。

別の時代とは何のことだろうか?


「お母さん、どういうこと?」


「新婚旅行が終わったら、すぐに送り出す。

 唯の治療してもらわないといけないから、最後は一緒に見送ることになる。

 どんな時間の流れになるのかは、私にもわからない」


「時間の流れ?」


「ええ、でも最後はジンくんの仏壇がある歴史に辿り着く」


最後がああなるのは唯も知っている。

時間の流れ……これ以上何も無くても、まっすぐ行けば辿り着くように思う。

あの時見た記憶でも、栫井(かこい)が登場した後、唯が30歳くらいになった姿と、

家に置かれた仏壇が有っただけ。

「う、うん」


それに、もうすぐ栫井とお別れだと言うのに、洋子があまり悲しんでいないことが妙に思える。

何があるのだろうか。まさか、異世界に行かせずにこの世界で終わらせるつもりなのだろうか?

唯は、母(洋子)の行動を疑問に思う。

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