6-2.再会2
テーラとルルとトルテラの3人で巨人標本を届ける長旅がやっと終わり。エスティア達と合流するため北の町に向かう途中でアイスと合流しました。
やっとエスティア、リナと合流できます。
アイスが髭を剃ると言う「久しぶりだから、緊張するなぁ」グスって感じで、なんで髭剃るだけで泣くんだよ……と思ったけど、アイスがはじめて髭剃って大喜びしてた時のことを思い出して、俺も泣いてしまった。
泣きながら髭剃る女と泣きながら髭剃られるおっさんになってしまった。
「剃る前に」と言って、横から俺の頬に自分の頬を寄せて、頬で髭をじょりっとした。
「おお!これだよ、スゲー」と言ってまた泣いた。
ルルが貰い泣きはともかく、テーラが無言で涙どわーーーっと流してた。
そして、腕組みしながら頷いている。
いったいなんなんだ、コイツは! ぜんぜん意味が分からねー。
どう考えても、昨日の再会シーンの方が泣けるだろ!!!
ジョリ……ジョリ……ゾリ
「あれ? ふんふんやらないの? くっつかないの?」とルルが言った。
「え? なんだそれ」とアイスが、「あれはテーラの趣味だよ」と俺が言う。
「えーー? あれ毎日やってたのに」とルルが騒いだ。
テーラはいつも髭剃るとき、におったり、くっついてきたりする。
ルルもそれに合わせて2人でやるようになっていたのだ。
ちょっと良いなと思っていたのだが、ルルが何をしてるのかは疑問だったのだ。
あれが正しいお作法とでも思っていたのだろうか。
ジョリ……ジョリ……
「もう終わっちゃったよ。すぐ生えてこねーかな」とアイスが言った。
もう既に剃ったところを、シャリシャリやってる。
すると、そこでテーラがアイスの肩に手を置き。大きく頷いた。
すると、アイスも大きく頷き、そして、二人して腕組みして凄くいい顔をした。
「あれ、何やってるの?」とルルが聞く。
「俺に聞かないでくれる」と返した。
この世界には、不思議なことがたくさんあるのだ。
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テントの設営も撤収も、アイスが居ると驚くほど速い。
そして俺が荷物持ち上げても、荷車引っ張っても喜ぶ。
でかくて力の強い男が大好きなのだ。
「すげー!やっぱ男すげー」アイスの居る日常が帰ってきた感じがする。
だが、無理しすぎたみたいで体にガタが来た。
テント設営も、だるくて仕方なかった。
食事したら即寝ると宣言して、テントに入って寝るつもりだった。
ところが、なんか、外からパンツ、パンツ聞こえてきて、とても寝てる場合じゃ無くなってきた気がした。
「え?いいよ、私は」とルルが言う。
「でも、明日には、エスティアとリナと会うから、今日が最後のチャンスだぞ、いいのか?」とアイスが、「大丈夫。トルテラは私のパンツが好きだけど、ルルのも好きだよ」とテーラが言うのが聞こえた。
俺は、今日はルルのパンツで倒れる義務が発生してしまうと思い、逃げようとしたときテーラがやってきて「トルテラはルルのパンツ嫌いなの?」と言った。
俺はもう、絶望のあまり、逃げる気力も無くなってしまった。
「私は、いいよ、べつに、やめて」とか声が近付いてきて、テントが潰れた。
俺もヘナっと倒れた。
アイスが無理やりテントにルルを連れてきて、それにルルが抵抗して暴れたのでテントの固定が外れて潰れたのだった。
「あれ?トルテラもう倒れてるぞ」、
「ルルのパンツ好きなのか?」
「え? 私のパンツ、好きなはずって言ったんじゃなかったの?」
「いや、あんな一瞬で倒れると思わなくて、そんなに好きなのかな? ルルのパンツ」
「ええ? 私のパンツ凄く好き……なの?」
「もうちょっと、ちゃんと見せてみよう」と言って、テントを捲って、ルルのスカートも捲ってパンツ見せてきた……いろんな意味で、もう駄目だと思って気絶してしまった。
朝起きたら、ルルがご満悦で、テンション高くてイラっとした。
もうこいつらは嫌だ。
俺は、一刻も早く、エスティアとリナに、会いたい気持ちでいっぱいになった。
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髭剃りのとき、俺は心のエネルギーが枯渇して、いつものように言葉も出なかったのだが、ルルがかわりに言ってくれた。
ジョリ、ジョリ
ふんふん。
におわない(ルル)
におわない(テーラ)
ジョリ、ジョリ
ぺた。
くっつかない(ルル)
くっつかない(テーラ)
なんて親切な……じゃなくて、稀に発揮される姉妹のコンビネーションがかなり厄介だと言うことに気付いた。
もちろんその間、働いてるのはアイスだけだ。
アイスがいてくれて本当に助かった。
俺はほとんど動けないし、ルルとテーラは冒険関連は駄目だし、アイスだけが頼りだった。
今日はエスティア達に会えるはずだが、俺は心のエネルギーが枯渇していて力もイマイチ入らず、湿地の道で苦戦した。俺の力はけっこう、気力に左右されるのだ。
元々、北の町で合流する予定だったが、エスティア達の居場所が分かっているので直接向かう。
途中でアイスが、「あ、リナ」と言った。
アイスはリナの気配に気づいたようだが、俺は心のエネルギー不足で気配察知もダメみたいだ。
「ちょっと呼んでくるよ」と言って走って行った。リナの方も気付いたようですぐ戻って来た。
リナだ。巨人と戦って以来だ。
リナが、
「アイス、ちゃんと会えたのか。今日も町まで見に行った帰りだ、
トルテラ、心配したよ。良かった。テーラもルルも久しぶりだな」と言った。
「リナ、ごめん」と言うと、リナの目から思いきり涙が流れて、「死んだと……思った」と言うと、そこでようやく抱き着いてきた。
「なんで、あんな女のために」とリナが言う。
あんな女……ああ、残ね……リーディアのことか。
そうか、リナたちから見ると、俺はリーディア守って死んだように見えたのか。
俺が、守りたかったのは、リナたちだったんだが。
でも、あのとき、リナたちが先に砦に入っていて、騎士隊が包囲陣作ってたら俺はどうしただろうか?
”もしかしたら、結果は同じだったのかもしれないな”……と思った。
「うん。ごめん」と言った。
すると、
「寿命で死ぬまで死なないで」とリナが言った。
「うん。ごめん」ともう一度言った。
寿命まで……俺は正直、リナたちと同じ時を生きていない。
俺はもう年取って死ぬだけだ。
俺が死んだあと、この子達が後悔したら……後悔しないとしても、俺を捨てて別の可能性を探った方がより良い人生を送ることができるのではないかと思っている。
俺の寿命以前に、別の道を探した方が良いかもしれないと思っていた。
すると
「最後まで面倒見るって決めてるから」とリナが言う。
俺は何も言えなかった。
リナたちが作ったと言う、仮住まいに向かう。リナはあんまり元気が無かった。
たぶん、俺の考えがバレてるのだろう。
リナは、やっと会えて嬉しいはずなのに、トルテラがまたどこかに行ってしまう気がして素直に喜べなかったのだ。
「あの高台だ」とリナが言った。
リナに会って心のエネルギーが少し回復していたので、難なく登れた。
途中でエスティアが気付いたようで出てきて手を振った。
「トルテラー!」と俺を呼んで走ってきて、そのままボスっと抱き着いてきた。
アイスと比べれば弱いが、それなり強い感じだ。
「もう会えないと……思った」と言った。
そう、点火を使う直前エスティアと目が合ったとき、俺はお別れだと思った。
涙が溢れた。
「俺も、死ぬと思った」。
「どうして勝手にどっか行っちゃうの」とエスティアが言うが、「俺にも、何が起こったのかわからないんだ」と答えた。
俺はゲートを通ってテーラの家に行った。
ただ、どうやってゲートを通ったのかは、わからないのだ。
リナがまた抱き着いてきて、「どこにも行かないで」と言った。
エスティアも「どこにも行かないで」と言った。
俺は「どこかに行くことがあっても、また帰ってくるよ」と答えた。
「うん。それなら良いよ」とリナが言った。
同じ時は生きられなくても、どこかに飛ばされても、帰ってくることはできると思う。
このとき、俺はもしかしたら、死を覚悟するとどこかに飛んでいくのかもしれないと思った。
もしかしたら、日本で死にかけて、ここに飛んできたのかもしれない……いや、日本で死んでここにきた?
飛ぶ条件が知りたい。
エスティアとルルが「ひさしぶりー」みたいな気軽な挨拶してたので、「エスティアはルルを知ってたのか?」と聞くと、「診断のとき会ってたけど、実はルルだと知らなくて」と言った。
やっぱり知らなかったのか!
「こいつ俺のち「わーーーーー」
「え?ルル、どうしたの?」
「なんでも無いわ、よ」とルルが言う。
「こいつ俺のち「わーーーーー」
「何?どうしたの?」
「なんでも無い、なんでも無い。それはいいから早く行きましょ」と言ってごまかされた。
こいつは、俺のち〇こを2度見したのだ。
こいつは昨夜も俺に酷いことを……あれは、ルルも被害者か?加害者は?テーラか!
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拠点に着いた。
ストーンサークルがある。確かに神殿跡地だ。
「確かに、神殿跡地だ」
このあたりではトート森と違って、神殿跡地はあまり重要視されてないので放置されてるようだ。
エスティア達が俺は神殿跡地に住むべきと考えて、ここに拠点を作ってくれたのだ。
やっぱり皆俺を、竜とか神とかだと思ってるんだろうか。
見晴らしも良いし。なかな良い場所ではある。
「この井戸、泥で濁ってるんだけど、なんとかなるかな?」
着いて早々に、井戸の水が濁ってて困るから、直してほしいと言われた。
俺は水道屋かよ!とちょっとだけ思った。
試しに水を汲むが普通に濁っていた。
「トルテラでも駄目かー!」
ルルが「トート森の神殿跡地も、本当にトルテラが来たから水がきれいになったの?」と言うので、「俺が行ったときには、きれいだったからわからないな」と答える。
きれいな水が出るようになるのには、何かしらの条件があるかもしれない。
「俺がストーンサークルにしばらく居れば、きれいになるかもしれない」と言って、ストーンサークルを調べる。
ここのストーンサークルは、今まで住んでたオリアン神殿跡地と同じくらいの大きさだった。
ストーンサークルはゲートになってるらしいので慎重に足を付く。
別に底が抜けて落ちたりするわけでは無いようだ。
まあ、オリアン神殿跡地でも問題無かったし、タンガレアのやつも問題無かった。
何かしなければゲートを通ることはできないのだろう。
すると、何か雰囲気が変わったことに気付いた。
これが聖域化か?
井戸の水を見ると……濁ってる? 水を汲むと、そんなに濁ってない。
「おい!水、少しきれいになった」と言うと、エスティア達が来て、「少しきれいになった気がする」とか言っていたので、俺がしばらくストーンサークルに居れば聖域化が進むのではないかと考え、ストーンサークル内で食事することにした。
食事自体は泥っぽい水で作ることになってしまったが、謎の芋が入っていた。
「これ大芋?」と聞くと、「この高台に大芋があるんだけど、トート森じゃないから小さくて」と言った。
大きいことだけが取り柄の大芋がこの大きさって、なんか損した気分だ。
大芋はトート森の特産品なのだ。
旨くは無いが、まあ食える。放置しとくといくらでも採れる。
ただし、収穫時期はけっこう短い。
タイミング逃すと、くそ不味くなる。元から美味くないが、さらにくそ不味くなる。
小エビを炒ったやつが、パリパリしてて美味かった。
このあたりは水産物が豊富なのだ。
「俺が獲って来たんだ」とアイスが言う。
「美味いな、今度、獲り行くか」と言うと、「俺、網用意してくる」とか言って行こうとするので、「いや、今日はゆっくりしよう」と言って止めた。
食事後に井戸を確認する。
井戸水は……水自体は奇麗な気がして、なんか変だなと思って水をすくってみると透明だった。
「水自体は奇麗だぞ」と言うと、皆が見に来て、ほんとだと言ってた。
浅すぎて、バケツが底の泥を巻き上げてるのだ。
「もう少し深くしよう」と言って掘り始める。もちろん盾で。
土を掬い上げるのはバケツでだが。
80cmくらい深くした。盾で掘ったので直径も広がってしまったが。
泥が凄くて、井戸掘り参加者は、全員酷い姿になってしまった。
ルル以外全員だが。ルルは今普通の町娘服で、泥仕事はちょっとできない格好だったのだ。
他は皆冒険者スタイル、要は作業着だ。汚れてても、そんなに目立たない。
とりあえず、泥を流しに比較的水の奇麗な川まで行く。
あくまでも比較的でしかないが。
そのうち井戸が落ち着くから、酷いとこだけ落とせばよいと思ったのだが、戻って井戸水を汲んでみると、川の水よりマシだった。
結局、皆の冒険者服は井戸水で丸ごと洗いなおした。
俺は生きてる除湿器なので、俺が居れば早目に乾くだろうということで、全部洗ってしまったのだ。
高台で排水が楽なので助かった。
心配してたが、全部洗って着る服が無い! みたいなトラブルは起きなかった。
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夜になると、
「これからどうするの?」といきなりエスティアに聞かれた。
俺は、もうしばらく旅せず静かに暮らしたかったので、「しばらくはここでのんびり過ごそう」と答える。
それに、「迷宮には行ったし、勇者が巨人倒したから、もう俺引退で良いだろ」と付け足した。
「どのくらい金に余裕があるのか確認しておこう」と言い、続けて、「迷宮の竜の分身に貰った財宝は?」と聞くと
「金貨は使っちゃった。ダルガンイストとここの滞在費で」とエスティアが
「他のアイテムみたいなやつは全部残ってる」とリナが言った。
「テーラ、巨人標本の金は? 丸ごともらって良いのか?」と聞くと
「おかあさんが餞別にって」
そうか、シートが……。たぶん、もう竜とか神とかそういうのは放って、テーラを連れてどこかに行けって意味なんだろうと思った。
でも、元はキャゼリアが用意した金だ。
たぶん勇者関連の何かに使う必要があるのだ。そんな気がした。
全部は使えないとしても、現金が大量にあるので、しばらく生活には困らない。
むしろ、金に余裕があるうちに、婿取りのほうだなと思った。




