37-33.[異世界側のお話です]妻の形見を持たせる(10)あの事件の犯人
念のための説明:竜と犬
本作における”竜”とは”人間が竜と呼ぶ生き物”のことであり、四本足の巨大な哺乳類です。
日本人が見たら、”巨大な犬”に見えるような生き物です。
一方で、異世界側に犬は実在しませんが、
”人間と意思疎通が可能で、人間と一緒に暮らしている”
と言われる伝説上の生き物として知られています。
地球側で伝説上の生き物である”竜”と、異世界側で伝説上の生き物である”犬”
が対になっています。
================
”妻の形見とベスの情報を探す”
といっても、ヒントが少ない。
【妻の形見】も、【ベス】も情報が少ない。
エスティアは、妻の形見よりは、ヨコハマに存在するダミー”ベス”の存在の方が調べやすそうに感じていた。
タイミング的に考えると”ベス”が関係ありそうだったのに、さっきの記憶に”ベス”は出てこなかった。
出てこない方が妙に思える。
「結局”ベス”の情報はなんだったのかしら?」
リナとエスティアは、”ベス”と呼ばれるダミーの存在を今日はじめて知った。
リーディアも昨日までは知らなかったのだから、ベスの存在を知ってから石を読んだのは今日がはじめてのはずだ。
なのに、”ベス”とは関係のない場面が読めた。
タイミング的に、関係無いとは考え辛い。
----
リナは”ベス”に関しては思い当たるものがあった。
一瞬ではあったが石の記憶で、”竜を小さくしたような生き物”を見たことがあるのだ。
その話をする。
「以前、石の記憶で、ディアガルドを小さくしたような生き物、
伝説上の生き物”犬”のようなものを見た。
あれがベスだったのだろう。
トルテラはあの生き物をオーテルと呼んでいたようだったが」
※これは少々語弊があります。リナさんは、おっさんがベスを
”オーテル”と呼んでいるシーンを直接見てはいません。
”ベスを見た”+”おっさんはグライアスをオーテルと呼んでいる”
が混ざった結果です。
女たちが知る話ではヨコハマに行った竜はグライアスと呼ばれている。
トルテラはグライアスをオーテルと呼んでいる。
どういう理由かはわからないが、オーテルとグライアスは同じ存在だと考えて良い。
※名前が判明する以前から、おっさんがオーテルと呼んでいた竜です。
人間が呼ぶ名前がグライアスであることが判明した以降もオーテルと呼んでいます。
「その場面で、ヨコハマの女に話を伝えてもらえば、ベスと話ができる?」
「そうか!!!」
確かにそうだ。
もし、ヨコハマの呪いの女と直接話ができなくても、ベスと話ができれば何かを伝えることができるかもしれない。ベスの中にはオーテルが居るはずで、オーテルはこの世界(元々オーテルが居た世界)のことも知っているのだ。
【妻の形見】も、オーテルなら知っているかもしれない。
「【妻の形見】……って、オーテルは知ってるの?」
「わからない。だが、オーテルは未来の竜だから、
トルテラがこの世界に戻ってくるときに、【妻の形見】を
持ち帰ることを知っている可能性が高い」
そもそもオーテルは、この世界にトルテラを連れてくることが目的でヨコハマに行ったのだ。
トルテラをこの世界に連れて来る方法を知っているはずだ。
そして、何かを持ち帰ることがわかっているなら、それを持ち帰る手伝いをしてくれるかもしれない。
「だったら、ベスとヨコハマの女が話をしている場面を見た方が良さそうね」
「そうだな」
このタイミングでわざわざベスの情報を伝えてきたのだから、おそらく関係があるのだ。
ベスが無関係であると考える方が不自然だ。
リナがボソッと呟く。
「納得できた」
「何が?」
リナがなぜか納得したが、エスティアには、その理由はよくわからなかった。
----
リナは納得した理由を話す。
「私は今まで、ずっとヨコハマの女と話をしようとしていた。
トルテラと話したくても、私には呪いの女とトルテラが
一緒に居るところがほとんど見えなかった。
あれには理由があったのではないかと思ってな……」
「理由?」
「ああ。本当は、話をするべき相手は”ベス”で、
ヨコハマの女とベスが一緒に居るところを探さなければ
ならなかったのではないかと思ってな」
「ああ、そうなのかも」
確かに、そうなのかもしれない。
エスティアは、石からいくつもの記憶を読んだが、法則はよくわからなかった。
探している記憶が読めることも多かったが、そうでないことも多かった。
石には多くの記憶が入っている。どれを読むかは、読み方や状況で変わる。
読み方を変えると別のものが読めることも経験したし、読み方を変えなくても条件が揃うと勝手に読める現象も経験した。
話す相手がベスなのに、ヨコハマの女と話をする場面を探しても読めないのかもしれない。
それはそれであり得る話だと思う。
----
「ヨコハマの女には、何と言えば応じてもらえるだろうか?
私の名を名乗るのか?」
前回は、なぜか死神だと思われた。
「石の記憶って名前見えないことが多いけど、名前で伝わるかしら?
私、ヨコハマの女の人の名前わからない。ヨウク、リョウク?
そんな名前で呼ばれてたみたいだけど」
「そうだな。確かに、そんな感じの名前だったと思うが、
私もはっきりと覚えていない」
「イグニスも人間の名前覚えないし、ベスはリナの名前は覚えてないと思う」
「ああ。竜にとっては名前の価値は低いからな」
グリアノスは、トルテラの妻の名を”テラ”だと思っていた。
おそらくオーテルも異世界から接触してくる者の名前を”テラ”だと認識している可能性が高い。
「未来の竜も”テラ”だと思ってる可能性もある」
「前に聞いたな……その話」
================
■解説:”テラ”
”テラ”は連合内では女の子の愛称として非常に一般的なものですが、本名が”テラ”である人物は連合内には基本居ません。
仮に”テラ”という名の子が存在すると、名無しの女の子の仮称として扱われます。
竜がそんなルールを知るわけは無く【一番大きな竜】の人間の妻の名は”テラ”だと認識していました。
グリアノスさんは、人間の名前なんて個体識別できれば何でも良いと思っていたわけですが、個体識別できない愛称で覚えちゃったのですね。
■解説:石の記憶と言語の壁
石の記憶は言語ベースのものではないので、見たものを言語で表現すると、人それぞれ多少なりとも異なる表現をします。また、意味のある言葉は伝わりやすいのですが、固有名詞、発音はうまく伝えられません。
(同じ言語を使う者同士であれば、だいたい正しく伝わります。そのため、竜は人間に読ませて情報を得ることがあります)
================
「名前は分からなくても話はできる。
どうせ石の記憶は、名前を頼りに探すわけでもないのだから」
石の記憶の中身は、探さないと見たい内容に辿り着けないことも多い。
だが、名前を知らない相手を探すことができる……むしろ、名前から相手を探すことはできない可能性が高い。
「逆に【妻の形見】の話をすれば気付くのかもしれないな」
「呪いの女とベスは話せるのよね?」
「話せるはずだ」
「はずってことは、話しているところは見ていないということ?」
「見ていないと思う」
リナはさらっと答えた。
この時点で、リーディアも、リナの言うことに疑問を持っていないように見える。
でも、仮にトルテラと話ができるとしても、その他の人間と話ができるかはわからない。
「どうして話せると思うの?」
----
リナは、オーテルとトルテラが話をしている場面を見たことがあった。
ベスを使わずとも会話ができていた。
「トルテラとはダミーが無くても話ができる」
グリアノスは人間と話はできないが、トルテラとは話ができる。
おそらくあれと同じなのだろう。
「ああ、じゃあ、ベスはトルテラ以外の人間と話すためにヨコハマに居るの?」
「そうだろうな」
「だったら、ヨコハマの女に頼んでベスと話をすれば良いのね」
「その可能性が高そうだ」
「鎧もやらせたいことが決まっているなら、具体的に教えてくれれば良いのに」
「鎧は細かなことは知らないんだよ」
鎧は呪いをかけて、結果が出るのを待っているだけ……
基本的なところは決まった。まずは、ベスとヨコハマの女が一緒にいる場面を探す。
そこで話ができればヨコハマの女と話をする。
話が通じるようであれば、妻の形見が何かを聞く。体を乗っ取ってしまうようだったら、ヨコハマの女の口からベスに妻の形見のことを聞く。
……………………
少し休憩をはさんでようやく石の記憶を読む。
「ベスを探そう」
「さっきは結局、ベスは見えなかったからな」
ベスを見ようとしたら、ヨコハマの女と話ができたのだ。
「さっきの感じだと、ヨコハマの女とは話ができるようだな」
リナも”ヨコハマの女とは話ができるようだな”の部分には同意なのだが、
そもそもヨコハマの女が居る場面がほとんど無いのだ。
「そうだが、ヨコハマの女が見える場面がほとんど無いんだ」
その数少ない登場場面で話ができた。
「なんで急に話ができたのだろう?」
なぜ急に話ができたのか。むしろ、それが気になる。
今まで散々チャレンジしたのに話ができなかったのだ。
----
エスティアは今日話ができるようになった理由については自覚があった。
「昨日は私の覚悟が足りなかったからだと思う。
本当はあの後読めば、鎧の記憶を読んだ後なら話ができたと思う」
確かに、昨日はそうだったかもしれない。
だが、昨日に限った話ではない。
「それ以前に私は散々試した。でも、今日になって急にできた。
鎧の話と関係があったようには思えないのだが」
確かにリナは、ヨコハマの呪いの女が見当たらないと言っていた。
「ヨコハマの女が無理だった場合、トルテラと話をすることはできる?」
「石を使っては無理な気がする。トルテラの暮らしはたくさん見えた。
話ができるならもうできていると思う」
リナは、ヨコハマの女は見えなかったが、トルテラの生活はかなり見えた。
あれは記憶であって、話はできなかった。
だが、話をする方法はあるかもしれない。
「ヨコハマの女の体でなら、その場にトルテラが居ればできるだろう。
ただ、話す相手はトルテラではないと思う」
----
”話す相手はトルテラではないと思う”
リナはそう言っている。
実際に石を使ってヨコハマの女と話をすることはできた。
だが、トルテラと直接話をすることはできない。
それはリーディアも、なんとなくだが、そうだろうと思える。
結局のところ、トルテラをどうするかは、呪いの女が決めることなので、
トルテラと話ができる必要が無い、或いは、単に法則的に、
トルテラと直接話をすることはできない。そう思える。
だが、ヨコハマの女の口から、トルテラと話をすることは
可能かもしれない。
なのに、リナは相手はトルテラではなさそうだと言っている。
その理由が知りたい。
「なぜそう思うのか教えてくれるか」
「ああ。トルテラは、おそらく私たちのことを覚えていない」
確かに覚えていない可能性が高い。
でも、リナの姿を描いた絵がある。リナの存在は知っているはずだ。
「リナのことは絵で知ってるんじゃない?」
「あの絵を見た後のトルテラに会うかどうかがわからない」
「ああ、そっか」、「確かにそうだな」
「そして、あの体で伝えられる言葉はとても少ない」
「ああ、なんとなくわかった」
エスティアは、リナが何を思ったかはわかった。
「今の話でわかるのか?」
リーディアは、リナが何を言っているのかは、なんとなく想像は付くものの、エスティアが変なところで納得したように見えた。
----
これは、ヨコハマの呪いの女と話をしたエスティアの方が理解しやすい。
ヨコハマの女と、エスティアたちの目的はある程度一致している。
細かく言わなくても、おそらく意図が伝わる。
一方のトルテラは、エスティアたちのことを覚えているかもわからない。
おそらく妻の形見も、妻が渡すものであり、トルテラに伝えても意味が無い。
「ええ。偽ジョシュアを考えると、トルテラにヨコハマの女の口から
妻の形見のことをトルテラに伝えるのは無理がありそう」
偽ジョシュアは数日間、ジョシュアの体で動き回った。
何度でもできるなら、何度も偽ジョシュアが現れたはずだ。
竜の力でも1回だけ、数日間が限度だったのだ。
「私たちは石の力を借りて、鎧と神殿の短い話ができただけ。
私たちの力だと体を乗っ取れる時間は50拍(40~50秒)くらい?
1回だけで50拍が制限かもしれないと考えたら、
話す相手はトルテラではないと思う」
リナとリーディアも、同じ意見だ。
その時間で、リナたちのことを覚えていないトルテラに話を伝えるのは難しいように思う。
……………………
「ベスはディアガルドを小さくしたような生き物なのよね?」
「ああ、私にはそっくりに見えた。と言っても、いつもは見上げているから、
上から見たのは、関所を工事したときのグリアノスの姿くらいだが、
たぶん、かなり似ているから、すぐわかるはずだ」
「ディアガルドがヨコハマに居るわけないから、すぐ見つかるわ」
※ベスは地球ではとてもメジャーな生き物である犬のように見えるので、
見た目的には、似た生き物は非常に大量に居ます。
「それじゃ、ベスとヨコハマの女が話をしている場面を探そう」
3人で石を握りしめる。
「それじゃ、読むか」
そう言っている間に何かが見える。
ベスが見える。ヨコハマの呪いの女も見える。
”見えた!”
だが、その先を読もうとすると、いきなり途切れた。
エスティアが止めたのだ。
「見えたわ、確かにディアガルドそっくりで人間より小さな生き物」
「今止めたのはエスティアか?」
「ええ。いきなりだったから」
せっかく、ちょうど良い場面が見えたのに止めてしまって、同じ場面が読めなかったら元も子もない。
「ベスと、ヨコハマの女が見えた。今の場面が見えたら、ヨコハマの女に頼んでみよう」
「リナがうまく説明できれば、素直にリナに体を貸してくれるはず」
たぶん、ジョシュアも、オーテルに体を貸したとき、抵抗をしなかったから
あの偽ジョシュアが自由に行動できたのだ。
「それじゃ、ヨコハマの女に頼んで、ベスと話をさせてもらおう」
さっきの場面を見る。
リナは、再度見るのに失敗したらと思っていたが、あっさり同じ場面が見える。
やるべきことが確定すると、同じものが見えるようだ。
エスティアは、それを知っていたのかもしれない。
だとすれば、さっき止めたのは、むしろ良い結果になりそうだ。
リナは、呪いの女に話しかける。
まずは、前回のことを覚えているか確認する。
「聞こえるか、以前、神殿と鎧の話をした者だ」
「……」
反応が無い……が、何か感覚が変だ。試しに右手を動かすと、動いた。
既にリナが体を乗っ取っている状態だ。
話をする前に体を乗っ取ってしまった。
想定外だが、続けるしかなさそうだ。
さっき見た通り、すぐ近くに、竜を小さくした”ベス”らしき生き物が居る。
話は通じるだろうか?
「ベス、形見を……」
リナは体は思うように動かせないが、何とか少しだけ声を出すことができた。
「なんじゃ。おぬし、形見を覚えておったか。石でも読んだか?」
ベスは驚くほどあっさりとまともに返事をした。
リナは、この姿をした生き物は気まぐれで、ほとんど話が通じないと思っていた。
返事をしたら幸運くらいの気持ちでいたのに、意外にまともな返事が返ってきた。
そして、その声も言葉遣いも完璧にイグニスだった。
実はイグニスと同一の精神の持ち主が喋っているのではないかと疑う。
今リナが話していることを打ち明けたほうが話がスムーズに進みそうだと思いつつも、
ヨコハマの女のふりを続けることにする。
”石”と言った。
やはりヨコハマにも”石”があり、読むことができるのだ。
だが悠長に話をしている暇はない。この体で動ける時間はとても短い。
「形見は、……何を渡せば良いのだ?」
「持って行ける物なら、なんでも良い」
少し雲行きが怪しくなる。
どうも、この見た目の生き物が話す内容は曖昧で、会話が成立しにくい。
長々と話をする余裕はないのだ。
持っていけるものが何なのかがわからない。
「持って行けるものを教えてくれ」
「毛皮の代わりじゃからの。
お前が毛皮の代わりに体に身に着けるものなら何でも良いのじゃ。
そこに置いてあるのでも良かろう」
返ってきた答えは予想外にまともだった。
毛皮の代わりに身に着けるもの。
つまり衣類を渡せば良いと言っているように聞こえる。
さらには、そこに置いてあるものでも良いと言っている。
何を渡せば良いのかがわかりそうだ。
そこと言った先に何かがある。
白っぽいクシャクシャな布のようなものだった。
手に取ると、予想外に、とても柔らかかった。
これが身に着けるものだろうか?
体の大きさに対して、とても小さなものだ。
「これは?」
「お主の股の布じゃろ」
これが? 竜が人間の股の布と言えば、パンツの意味になるが、こんな小さな布がこの女のパンツであるわけがない。
こんな小さなもの、子供でも履けないだろう。
これが何であるかはわからないが、衣類の一種ではありそうだ。形見になるものであれば何でも良い。
「これが形見になるのだな?」
「それであれば、形見になると思うがの?」
股の布と言ったのでおそらくパンツだと言っているのだろうが、とても、この体に合うようなサイズのものには見えない。が、とにかくこれが形見になる。
どういう基準かはわからないが、これで良いと言っている。
”非常に厳しい基準を満たした特別な品”ではなく、その辺に転がっているようなものでも問題ないのだ。
それはそれで疑問がある。どれでも構わないのに渡せていないということは、
トルテラが受け取らないのかもしれない。
とりあえず、今はこれを第一候補にする。
トルテラに渡す時間は無い。ベスに頼むしかないだろう。
「これを渡して欲しい」
「何を言うておる。妾が渡すものではない。おぬしが渡すのじゃ」
ここに高い壁があった。
そんな時間は無い。
この体の持ち主と、今操っているリナが別人であることを、
長々と説明する時間は無いのだ。
「これをテラの神様に持ち帰らせたい」
「今直接渡すと受け取らない可能性があるか?
ならば、そこのカバンというものに入れておけば持ち帰るじゃろ」
”直接渡すと受け取らない可能性がある”
渡せばよいものなのかわからないが、時間がない。
カバンに入れることにする。
カバンは近くにあった。
幸いにも蓋が開いているが、うまく入らない。手に力が入らない。
さらに、困ったことに、どんどん力が抜けてくる。
時間切れが近い。
早くしないと、カバンに入れる前に力尽きる。
苦戦しているとベスが言う。
「蓋はせずとも良い。見えるとすぐ気付く故、少し奥に入れた方が良いじゃろうな」
ベスは、カバンに妻の形見を入れさせたがっているように思える。
もしかしたら、ベスは今ヨコハマの女を動かしているのがリナだということを知っているのかもしれない。
器用に入れることは諦めて、隙間に突っ込む。
なんとかカバンの奥に押し込んだ。
これで、形見を渡すことに成功した……のだろうか?
----
このときの様子を唯が見ていた。
たぶん何かイタズラをしているのだろうと思い深くは考えなかった。
カバンに何かを入れたようだった。
ただ、何を入れたのかはよくわからなかった。
----
横方向に気配を感じた。
リナは横を見て驚く。そこにはトルテラが居た。
こんなに近くに居たのに気付かなかった。
気配察知があれば絶対気付く距離なのに、それが無いのだ。
「トル…………テ……ラ?」
驚いた瞬間、石から弾かれた。
3人は、椅子から転げ落ちる。
その瞬間、見張りの兵が驚いて助けに入る。部屋の外の見張りも部屋に入ってくる。
「どうしました?」
リーディアが答える。
「勇者の道具を使って、トルテラの居場所を調べていたのだ。
トルテラが見えて驚いただけだ」
「トルテラ様が?」
「ああ、見えた」
「もう今日は道具は使わない。もう少しだけ3人で話をさせてくれ」
----
音がしてすぐに部屋の中に駆け付けた見張りの兵が見た光景は、3人が、なぜか椅子から転げ落ちているというものだった。
明らかに何かが起きたことがわかる。
そして、3人の表情を見る限り、驚きはしたが失敗したという表情ではない。
何か良いことが起きた。
そのうえで、もう少しだけ3人で話をさせてくれと言っている。
「はあ……」
気の抜けた返事をしつつも、見張りの兵たちは、いよいよトルテラが戻ってくる可能性が高くなったと思った。
========
※”25-4.人間の股の布、妻の形見”(2020/02/16投稿)の、
洋子さんがなぜかおっさんのカバンに自分の下着を突っ込むという
謎行動をしたときの真相がコレです。
犯人はリナさんだったのです。




