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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
37章.神殿再建(2)

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37-32.[異世界側のお話です]妻の形見を持たせる(9) 時系列?

挿絵(By みてみん)


エスティアが無言で何か考え込んでいる。

その姿を見てリナが声をかける。


「どうした、エスティア」

「順番が気になって」


「順番?」


”順番”とだけ聞いてもピンとこない。何の順番の話だろうか?


長年一緒に過ごしてきたエスティアの考えていることがわからないというのは、リナにとっては珍しいことだった。



単純に”順番が気になる問題”であれば、現状でもいくつも思い当たる。

例えば、なぜリナの順番が最後なのか。

鎧は5人の人間の女を使って呪いをかけた。

鎧の半身であるトルテラは、呪いの女を救って回る。

最後の女に”死んだときの記憶”が生まれたときにトルテラが戻ってくる可能性が高い。

鎧の呪いは半身を呼び戻すためのものであり、未来から来た竜が【一番大きな竜】が戻ったことを知っているから。

戻ってくることはわかっている。だが、具体的な方法はわからない。

そもそも、なぜこの順番なのか。

単なる気まぐれではないはずだ。順番には何かしらの理由がある。

少なくとも、最後の一人には必ず理由があるはずだ。

おそらくリナである必要がある。

リナも自分自身で、仮説はいくつか立てた。

でも、それは今疑問に思うことでも無いように思う。


他にも順番が問題になることなどたくさんある。

”鎧の記憶を読む”という案に気付かず、今さら読んで【妻の形見】の話がでてきたことや、今頃になってヨコハマに存在するダミーの話を聞いたりと、順番的におかしく思えることは他にもいくつもある。


【石】、【首飾り】と呼ばれるこのアイテムがトルテラの首の骨、トルテラの体由来のものであることを知っていながら、同じく体の一部である鎧の記憶を読むことに今更気付くというのは偶然なのか?

それとも今になって読むように誘導されたのか。

そして、ほぼ同時にもたらされた”ヨコハマのダミーの話”。

もし仮に、必要な時に情報がもたらされるとするなら、”ヨコハマのダミーの話”は、このタイミングを狙ったものだろうから、今必要な情報である可能性が高いのだが。


さらには、このまま続けても死んだときの記憶が生まれなかった場合、リナはランデル行きと、石を読むことのどちらを優先すれば良いのか。

等々、順番で悩む問題は多い。

だが、それはリナの悩みであって、

”今、エスティアが気にしているのが何に対する順番なのか”は、ピンとこなかった。


こんなことは珍しい。

今日も朝からずっと一緒に居て、一緒に作業していたのだ。

こういうときは何に悩んでいるのか見当付くのが普通だ。

細かくはわからなくても、ある程度は見当が付く。

だからこそ、妙に感じるのだ。


エスティアは何を気にしているのか?


----


一方で、エスティアが単に”順番が気になって”とだけ言ったのには理由があった。

エスティアが気にしていることを、リナとリーディアが気にしていないように見えたからだ。


通常、難しいことにはリナとリーディアの方がエスティアより先に気付くことが多い。


この2人がどうして気にしていないのかが知りたかった。

既に答えが出ている問題だから気にしていないのかもしれないと思ったのだ。

だとしたら、それはそれで、”気にしなくても良い理由”を知りたい。


()()()()には何か意味があるのだと思うのだけれど、

 どうして()()()()なんだろうと思って」


そう言いながらリナとリーディアの顔を見るが、

リナとリーディアは特に疑問を感じていないようだ。


むしろ、”エスティアの言う順番が、何の順番なのか”の方に興味を持っているように見える。


それを確認すると、続きを話す。

「さっきのヨコハマの女は、私が空を飛んだ時に話した相手と同一人物なのだけど、

 私が話した時は、もう役目が終わってあとは神様を送り出すだけという感じだった。

 だからヨコハマの女は私にトルテラの最期を見届ける役割を引き継がせたはずだった」


その場面はリナも見ている。

「ああ。私にもそう見えた」


「でも、今日のヨコハマの女は神様を作ると言っていた。

 娘が生まれることも知らなかった」


「ああ。その通りだと思う」


確かにその通りだった。

エスティアが言った通り順番の問題だ。


先に、トルテラを送り出す直前のヨコハマの女に会い、今日は、神様を作る前のヨコハマの女に会った。


エスティアは、実際の時間の流れと逆の順番で、ヨコハマの女と話したのだ。

時系列の問題だ。

リナはそう考えているので、そのことを話す。


「時系列の問題だな」


ところが、エスティアはこう答える。

「時系列なのかな?」


「ん?」

リーディアはエスティアの言い方が少し引っかかった。

”時系列”。一般的にはあまり聞かない言葉だが、トルテラに関することを話す場合には重要な言葉だ。

物事が起きたタイミングを時間順に並べることを時系列と言う。

他の人々が知らなくても不思議は無いが、エスティアは知っているはずだ。


普通は時間を超えることはできないが神様が絡むと事情は変わる。

神様は過去に行くことがある。竜も未来からやってくることがある。


入り組んだ時系列を追うのは難しく、エスティアはあまり得意ではない。

とはいえ、エスティアは、両方を見ている。

たった2回の出来事の順番を理解できないとは思えない。


”信じられない、信じたくない”ではなく、疑問を持って何かを考えていたように見えた。

”神様が生まれる前のヨコハマの女と後から話した”という順番を理解できなかったという次元の話では無いように思える。


リーディアは、おそらく、エスティアは何か理由があって”時系列の問題では無い可能性が高い”と言っているのではないかと考える。


「続けてくれ」


----


エスティアは続ける。

「私が空の上に行ったときは娘が一緒に居たと思う。

 でも今日は”生まれるのは娘なんだ”と言った。

 たぶん、本当に知らなかったのだと思う。

 子供が生まれることは知っていた。

 だけど、性別は知らなかった。


 それに、石の記憶のことを知らなかった。

 石の記憶を読んだことが無いんだと思う」


ここまで聞いても、やはりリナには時系列の話に思える。


「今日話したヨコハマの女は、願いが叶う前のヨコハマの女だと言ってるのか?」

「ええ(肯定の意味)」


だったら、やはり時系列の話をしているように思う。

「願いをかなえる前だったら、時系列ではないか?」


「ええ。でも、合わないのよ」


「合わない?」


「ええ。

 たぶん、ヨコハマの女の願いは”子供”じゃないかなって思ったの。

 私が話したのは願いが叶った後のヨコハマの女。だから娘が居た」


何が合わないのかは、わからないが、ヨコハマの女の願いが”子供”であれば、なぜわざわざあの場面を再現する必要があったのかが理解できる。


「なるほど。願いが子供であるなら、リナが伝えた言葉に意味が出てくる」


さっき伝えた言葉。

”神様がいる場所が神殿だ。神殿があると子供が居る未来が確定する”


子供を望むのであれば、神様の居る場所に神殿を作れば良い……或いは、神殿ができるはずの場所を知っているのであれば、そこに神様が居るという意味か、とにかく神殿を作れば神様も生まれ、子供も生まれる。


「で、合わないというのは?」


「ヨコハマの女の歳」

「ああ、それか……」

確かにそれは謎だった。


ただし、人種の差の可能性と言うことも考えられそうだ。

ヨコハマの人たちがどのくらいのペースで年を取るのかわからないが、100期(50歳)に見えるトルテラが100期(50歳)なのだから、おそらくリナたちの世界の人間と、そう大差は無いはずなのだ。

※違います! 永遠の49歳です!


「娘はリーディアより年上に見えた。

 その割に、ヨコハマの女の歳は、エスティアの時と変わらなかった。

 今から生まれても年が合わない」


「そうなのよ」


「それはそうだな……」

それに関しては、リナもリーディアも同感だった。

だが、妙だと言うだけで、それ以上はわからない。


ところがエスティアが妙なことを言う。


「だから、たぶん、両方あるのよ」

「両方ある?」


「死んだ記憶と同じじゃないかって思ったの。

 今生きているのに、死んだときの記憶が後から生まれた。あれと同じ」


リナとリーディアは考え込む。


……………………


ヨコハマで100期(50歳)の女が子供を産むことができるかはわからないが、仮に生めたとしても、100期(50歳)の女が子供を産んで、その子供が50期(25歳)になると生んだ親の方は150期(75歳)になっているはずだ。

ところが、娘が生まれる前に会ったときも、娘が50期(25歳)になって会ったときも、100期(50歳)のままだった。


確かに、娘が居る歴史が生まれた。そう考えた方が辻褄が合う。


元々”娘が居なかったという歴史で100期(50歳)の時に異世界の女と話す機会”があった

として、”娘が存在する歴史で100期(50歳)の時に異世界の女と話す機会”があっても良い。

合点がいく。


……………………


エスティアは2人の様子を見ていたが、どうやら2人は、

娘が居ない100期(50歳)の女に子供が生まれて、

その後50期(25歳)の娘が居る100期(50歳)の女に会った

という矛盾には気付いていたが、両方の歴史が存在している可能性には

気付いていなかったように見える。


2人が無言で考え込んでいるので、エスティアが声をかける。

「言ってる意味わかる?」


「なるほど……それは思いつかなかった。

 今聞いて理解した」


やはり気付いていなかったのだ。

だとしたら、話をつづけた方が早い。

「たぶん、こうだと思う仮説があるの」


----


そう思える理由がある。

エスティアは既に何かに気付いていると言っているのだ。


「続けてくれ」


「娘が居ないときのヨコハマの女は、願いを叶えるために、神殿を作る。

 たぶん神様が生まれる場所を知っている。

 神様が生まれたら、そこが神殿になるのかもしれない」


既に神様であるトルテラが存在する状況でエスティアはヨコハマの女と話をしたが、

そのときも神殿を作ると言っていた。

神様が居るのに神殿が存在しないというのはおかしい。

矛盾しているように思える。


「娘が居る歴史でも神殿を作ると言っていたが、

 あの時、神様は存在していたのではないか?」


神様も娘も存在しているのにヨコハマの女は神殿を作ると言っていた。

リナには矛盾に聞こえた。


「たぶん、両方正しいのよ。

 私は娘が居る時のヨコハマの女と話をした。

 リナは娘がいないときのヨコハマの女と話をした。

 両方が存在していて矛盾は無くて、両方の記憶が生まれれば、先に進める。

 今日、両方の記憶が揃ったから、神殿が再建される」


----


確かに、女たちは、死んだときの記憶と死ななかった時の記憶の両方を持つ。

あれは簡単に言えば、過去に助けられたことがあることに気付くためだ。


「両方の歴史が存在することを知るだけであれば、

 石から記憶が読めるだけで十分だと思うが」


「トルテラは実際に助けて回っていると思う。

 助けられたから記憶が生まれた。私たちは石で読んでいないでしょ?」


リーディアは納得した。

死んだときの記憶は石を使って読んだわけではない。


「つまり、(神様が生まれる前と生まれた後の)両方のヨコハマの女に

 会わなければいけなかった理由があると言っているのか」


「今日のはわかるでしょ。

 おそらくトルテラが死神と呼んでいた存在が実在していて、

 神殿で神様を作ると娘が居る歴史が作られると思わせるため。

 私が空に上がった時は、この世界にトルテラを送り出してもらうため。

 どっちも、トルテラをこの世界に送ってもらうために必要だったことだと思う」


トルテラの話では、ヨコハマでは神様がそこらを歩き回ったりなどしていなかったと言っていた。

だから、神様を作ると言われてもヨコハマの女は信じなかったのかもしれない。

ところが、リナが話しかけた結果、神殿と神様の話を信じた。


その結果、神様が生まれた。

トルテラは、ヨコハマに神様は居ないと言っていたが居たのだ。

本人が神様だと気付いていなかっただけだ。


エスティアの話は正しいように思えた。

これには、リナとリーディアは驚いた。


「すごいな。よくそこまで思いついたな」

「同感だ」


「まだ途中よ。トルテラの気持ちがわかったの」


これには違和感がある。記憶の中にトルテラは出てこなかった。


「トルテラがどこかで見えたのか?」


エスティアは首を振る。

つまり、両方の歴史が存在した方がトルテラの行動を納得しやすいという意味だろう。


「そう考えると、今日のヨコハマの女の話はかなり重要な話が多く含まれてそうだな」

言ったのはリーディアだが、リナも気付いたことがある。

「ああ。石を読んだことが無さそうだったのに、その割には願いが叶った後、

 トルテラを送り出すことは知っていたようだった」


それについてもエスティアは想像が付いていた。


「たぶん、トルテラが自分で教えたんだと思う」

「自分で教えた?」


「さっきヨコハマの女と話をしたとき、既にトルテラは死んでいて、

 死ぬ前に話をしたんじゃないかな?」


ヨコハマの女の話を聞いた感触として、元々人間だった時のトルテラはあの時点で既に死んでいたと考えるのが妥当に思えた。

「神様が生まれる前だからな……」


神様が生まれる前。おそらく、このときにはトルテラは存在しない。

トルテラが存在しないタイミングで、ヨコハマの女に会ったということになる。


「リナのことを死神だと思っていたでしょ?

 トルテラのところにも死神が来ていて、それはオーテルだったんじゃないかと思うの。

 神様を作り出して、この世界に連れてくることが目的だから」


オーテルが何かを言った結果、トルテラは神様になった可能性が高い。

とはいえ、どうやって説得したのか。


「トルテラは神様になるのを嫌がっていた。

 何を言えば神様になるのだろうか?」


「おそらくヨコハマの女の願いを叶える方法を教えたんだろう」


リーディアが言ったのだが、リナは、何を言えば神様になろうと思うのかわからないと言ったつもりだった。


----


「ええ。そう考えるとトルテラの行動がわかるの。

 トルテラは、自分が生きているのは正しくないと思っている。

 生きたいと思ったわけじゃなくて、何か理由があって神様になったんだと思う」


「そうだろうな」、「それは納得だ」


「ヨコハマの女は、自分が神様を作り出したことは悪いことだと思っていた。

 首の骨を使って呪いをかけた……たぶん、首の骨を使って願いを叶えたのだと思う。

 トルテラが既に死んでいるから首の骨が自由に使えた。

 神様は神様にはなりたくなかったけれど、妻の願いを叶えたかった。

 ヨコハマで生まれた神様は、そこで消えることはできずに、この世界にやってくる。


 でも、そのことをヨコハマの女は知っている。

 はじめから送り出す覚悟があって神殿を作る。

 元々トルテラは死んでいたから。

 願いが叶ったら送り出す約束で神様を作り出したのだと思う」


リナは、何のためにあの場面を再現する必要があったのかはっきりとした理由を理解していなかったが、これでよくわかった。ヨコハマの女が神様を作り出すように動かされたのだ。


「私がその背中を押したわけか。

 ”神殿があると子供が居る未来が確定する”と。

 それによって、神様の存在が確定した」


辻褄はあっているように思える。


リナはトルテラの記憶をずいぶん見たが、生きているのが良くないことだと思った時期はある程度後のことであり、はじめてトルテラに会ったときは、トルテラは死を望んでいなかった。

エスティアやリナの身代わりになって死ぬのはかまわないと思っていたようだが。


一度死んだ人間が神様になったとして、その神様が、人は正しく生き、死ななければならないと考えているのなら、トルテラの心境の変化の辻褄が合う。

一度死んでいることを思い出さなければ、生きていることが悪いことだとは思わない。


オーテルははじめから、この世界にトルテラを連れてくるために呼びに行った。

オーテルが何かを言った結果、トルテラは神様になるという選択をするしかなくなった。

ヨコハマの女は願いが叶ったら手放さなければならないと思っている。

その結果、神殿を建ててトルテラが戻ってくる。

オーテルが狙った通りの結果になる。

そして、トルテラは妻が許可するまで死ぬことはできない。


----


見事に一本につながった。

バラバラに砕け散った情報が、ガッチリ嵌った。

凄い。


リナは思った。

なんだかんだ言って、一番よくトルテラを理解しているのはエスティアだと思う。

エスティアの仮説は正しいように思えた。


「たぶん当たりだ。エスティアの話で納得できた。

 トルテラは、この世界に居る間、死にたいとは思っていなかった。


 でも、ヨコハマに居る時のトルテラは、一度死んだ人間が、

 いつまでも動き回っているのは良くないと思っていた。

 あれは、死んだことを思い出したからだ」


「凄いな。エスティアが居てくれて良かった。

 エスティアの予想では、この後どうなると思う?」


リナもリーディアも気付いていなかったのだ。

話をしているうちに、さらに納得できた。


今なら、進めそうな気がする。


「今なら次に進める」


「フラグが立ったのか?」


「フラグが立った時、次に進めると言うなら、フラグが立ったんだと思う」


「じゃあ、次は、鎧の記憶にあった【妻の形見】と”ベス”の情報だな」


「ええ」


3人は、今の話を整理して再度考えた結果、無事、

”矛盾が無いことが確認できた”ので、次の行動に移ることにした。


”妻の形見とベスの情報を探す”。


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