37-21.[異世界側のお話です]パンツの中の毛(下)
「ルルも調べてあげる」
テリシア(テーラ)がルルに毛がないか調べようとする。
ルルは、毛の有無にあまり興味は無い。
調べられることが嫌だった。
「わたしはいいって、自分で調べるから」
「だめ。ルルは有っても隠すかもしれないから」
テリシア(テーラ)は、ルルに毛があるかもしれないと思っているようだが、
ルルにそんなものは生えていない。
テリシア(テーラ)にもアイスにも生えていないのに、なぜ、自分が疑われるのかがわからない。
「無いから、アイスにもテリシアにも無いんでしょ。
私にも無いから」
「あるかもしれない」
それでも、テリシアは納得しない。
とりあえず、調べられるのが嫌なので、自分で調べる方がマシだと思う。
「い、いいよ、あとで自分で調べておくから」
「だめ、ルルは隠すから」
……………………
ここまできたら、もう観念するしかない。
もう、こうなったら、避ける方が余計にめんどくさい。
ルルは仕方が無いので譲歩する。
「わかった、調べるから、服脱ぐから待って」
毛が生えて自分で気付かないことなどあるだろうかと思う。
ルルは一応、体全体調べるが、もちろん、手触りの違う場所などなかった。
ちょっと安心した。
「ないわ」
すると、アイスが背中をぺたぺた触る。
「背中にも無い。リーディアだけか……なんなんだろうな?」
”なんなんだろうな”はこっちのセリフだ!!
リーディアに生えたからといって、なぜ無理やり調べられるのか。
不満ではあるが、テリシアとアイスは、元からこういう生き物なのだ。
「もう疑いは晴れたんでしょ? 服着ていい?」
ルルは、”もう服着るよ”の意味で言ったつもりだったが、
そこでテーラの指摘が。
「まだパンツの中、調べて無い」
「パンツの?」
確かにパンツの中なんか調べていないが、既に全身調べても無かったのに、そんな狭い範囲にあるわけがないと思う。
……が、よく考えるとトルテラは、尻尾にその毛があるので、もしかしたら尻のあたりには生えるかもしれないとも思える。
「ああ、尻尾の毛だからお尻のあたりに生えるかもってこと?
でもリーディアはわき腹にあるし、テリシア(テーラ)はパンツの中まで調べたの?」
と聞きはしたものの、おそらく調べたのだろうと思う。
「ちゃんと調べた」
テーラ(テリシア)は、そう答えるが、テーラ(テリシア)は、毛が生えていて欲しいと思っているので、実際に調べたのだろうと納得した。
だが、ルルにとっては迷惑な話でしかない。
それでも、調べないとうるさそうなので調べる。
紐を緩めなくても、少しお腹を引っ込めれば、手を差し込む程度の隙間はできる。
片手ずつ突っ込んで左右から、尻にも、腰にも無いことを確認する。
毛は無かった。
ルルは安心した。
「ほら、そんなの、どこにも……」
手を前に回して終わりにしようと思った瞬間ジョリっとした感触があった。
下から上に撫でると逆毛が引っかかる。あの感触があったのだ。
だが、スルーする。
「うん。無かった。調べたけど無かったわ!」
ルルは調査完了の報告をした。
だが、テーラは何かに気付いていた。
「ルル、今、なんか変だった」
「え? そんなことないから」
「アイス、ルルのおなか」
テーラがそう言うと、アイスがいきなりルルのおなかを撫でた。
「柔らかいな。でも毛は無い」
「やめてよ、くすぐったい」
「柔らかすぎじゃないか?」
ルルは、これで”おなかに毛が無いことは証明できた”と思った。
それに、トルテラはおなかの肉が柔らかいのは良いことだと言っていた。
「トルテラはこのくらいが好きって言ってたから!
ほら、もういいでしょ」
だが、テーラ(テリシア)の目はごまかせなかった。
「ルル、毛があるんでしょ。パンツの中」
テーラ(テリシア)がしつこい。
ルルは、他の場所ならともかく、パンツの中は見せたくない。
”毛なんて生えてない”……と言いたいところだが、
毛の有無で言えば、確かに生えてはいる。
でも、それが普通だ。
良い言葉が見つからない……のでこう答える。
「毛くらい……誰にでもあるでしょ」
「そうじゃない、見えない毛!!」
「見える毛が生えてるから!」
「そんなに下じゃなかった」
確かにその通りなのだ、パンツの中ではあるが、上の方で毛が生えてるようなところではない。
だが、なんであの一瞬で、そんな詳細な位置までバレたのかがわからない。
「無いよ、無いから」
「毛があるんでしょ?」
「普通の毛だから!!」
「アイス、私が抑えてるから確認して!」
「ええー? 俺、ルルの毛なんて触りたくないよ」
幸いにもアイスは拒否した。ルルも最大限に抗議する。
「私だって嫌よ!! もういいでしょ」
ルルが無茶苦茶嫌がってるのに、テーラが納得しない。
「普通は毛が生えて無いところ、ちょっとパンツ下げれば見える場所のはず。
トルテラの尻尾もはじめは少しパンツ下げないと見えなかった」
「そうか! トルテラの尻尾の毛もパンツに隠れる位置だよな」
なぜかアイスの気が変わった。
「やーめーてー」
…………
…………
※結局触られてしまいました。
「こんなところに生えることもあるのか……」
「無理やり調べるなんて酷い」
「ルルが隠すからいけないんだよ?」
「だってあるって言ったら絶対触るでしょ」
「無いって言ったから触ったの」
「その方が酷いじゃない!」
「触らないとわからないんだから、触るのは仕方ないだろ」
問題の”見えない毛”は、腹ではあるがパンツに隠れてしまうようなところにあった。
「いつからだ?」
「知らない、さっき気付いたから」
「体洗うとき絶対気付くだろ。ルル、昨日、体流してただろ」
※おっさんの尻尾の毛は逆撫ですると、布が引っかかるので、
布でゴシゴシ擦れば気付くはずだと皆考えます。
(おっさんは自分で尻尾をキレイに拭くことができないので、
女たちが拭いていました。なので皆知っています)
「昨日のあれは、腕を洗ってたのよ。
でも、昨日はたぶんひっかからなかった。
でも、痒かったから、昨日寝た後生えたのかも……
で、これ何なの?」
「私はトルテラとの絆を示すものだと思っている」
リーディアはそう言ったが、テーラは却下した。
「わたしに無くてルルにあるから、
たぶんトルテラとは関係ないよ?」
「なんでよ!」
「でも、ルルのもトルテラの尻尾と同じ手触りだ」
「じゃあ、リーディアのとルルのは手触りが違った」
「そうか? おんなじだったよ」
「違う、ルルのはトルテラのとは違った」
「さっき同じだって言ってただろ?」
「よく考えたら違ったの!」
なぜかテーラが手触りが違うと言い張る。
「違ってたかな? もう一度、ルルとリーディアのが同じか比べたい」
「また? 紐、結んだり解いたりするの大変なんだから」
※ゴムや伸縮する布が無いため、紐だけで縛っています。
そのため、けっこう手間がかかります。
「そんなことより、妾の菓子はまだかの?」
※イグニスさんは既に飽きて、菓子を食べたら帰る気で居ます。
「じゃあ、続きはお菓子の後だな」
……………………
……………………
町(城下町)の用事で少し外に出ていたエスティアが屋敷に戻ってくると、女たちの気配が一か所に集まっていることに気付く。
※この時点では既にイグニスさんは居ません。
なお、エスティアさんのぶんのお菓子はイグニスさんが食べてしまいました。
女たちが一か所に密集している。一部屋に居るだけではなく、かなり密集している。
トルテラが居た頃は普通だったが、近ごろは、あまりそういう機会が無い。
何をしているのかと見に行くと、なぜか、女たちはパンツ一丁になっている。
リーディアが謎ポーズをしているのは、何か良いことが有った可能性が高いとして、ルルとテーラと目が合う。2人は固まっている。
なぜか、テーラがルルに抱き着いて何かをしている。
よく見ると、テーラがルルのパンツに手を突っ込んでいる。
「……?」
パンツの取り合い……でも無さそうだ。
※いつもそんなことしてるんですかね?
リーディアとアイスに見守られながらなので、たぶん、何か意味があるのだ。
エスティアはその光景を見て少し考えたが、何をしているのかさっぱりわからなかった。
「何やってんの?」
エスティアが何をしているのか訊くと、テーラが答える。
「ルルの毛を調べてるの」
テーラはルルのパンツに手を突っ込んでいる。
そして”ルルの毛を調べている”と言った。
エスティアはますます混乱した。
なんで、そんなものを調べる必要があるのかさっぱりわからなかったのだ。
「え? 何を?」
アイスが状況をわかりやすく説明する。
「ルルの毛を調べてるんだ。
ルルがパンツ脱ぐのは嫌だって言うから、履いたまま調べてるんだよ」
アイスの説明は、いつも通り、ぜんぜん意味が分からなかった。
「毛なんか調べてどうするの?」
「リーディアとルルだけなんだよ、毛が生えてるの」
「え?」
エスティアは少しだけ思い返す。
どう考えても、アイスだって生えている。
「アイスだって生えてるでしょ」
当然生えていると答えると思ったのに、予想外の答えが。
「俺には無かった」
アイスには生えていない……もしかしたら剃ってしまったのだろうか?
でも”無かった”と言った。
なんて考えているとアイスが言う。
「エスティアも毛を触ればわかる」
「え?」
剃らない限りは生えているのが当然で、珍しくもなんともない。
正直なところ、エスティアは、他人のそんなところの毛を触るのは嫌だな……と思った。
「触ればって……なんで……」
ところが、思ったのと違っていた。
「ここだよ、ここ」
テーラは、へその斜め下くらいを指す。そこには毛なんて生えていない。
「毛なんて無いじゃない」
「だから不思議なんだろ。触ってみろよ」
「ここを?」
触ると即気付く。
「これって、トルテラの尻尾と同じ?」
「だろ?」
「どうして?」
エスティアはルルに訊く。
「わからないわよ。私だって、今さっき気付いたばかりなんだから」
「この手触り……同じだ……尻尾と」
そう言ってエスティアはルルの腰をがっしり掴んで、手触りを確認する。
じっくり撫でまわすと、毛並みに従えばサラサラした触感で、逆撫ですると引っかかる。
トルテラの尻尾の毛の手触りとそっくりだった。
「トルテラのと同じ? どうして?」
そこに、リナがやってくる。
見ると、エスティアがルルの腰にしがみついてパンツに手を突っ込んでいる。
リナには何が起きているのかさっぱりわからない。
「何してるんだ?」
アイスが親切に説明する。
「ルルの毛を触って調べてるんだ。
ルルがパンツ脱ぐの嫌だからって、こうやって調べるしかなかったんだよ」
「ルルの毛が……」
そう言って、エスティアが涙を流した。
猛烈な勢いでリナにはさっぱり意味が分からなかったが、なんだか、トルテラが居た頃のような雰囲気で懐かしい気もした。
トルテラが居た頃は、毎日が楽しかった。
あの頃の日常を見ているような気がしたのだ。
※これが日常って、カオスじゃないですか?
(誰に聞いているのでしょう?)




