4-12.亡き父の夢、母娘の思い
亡くなったお父さんの夢を継ぐ母娘の姿。とっても美しいです。
ところが、やっぱり残念な方向に、向かってしまうのです。
”大鎧関連の本を読む許可”が出たので、読みに行くことにした。
「今日、大鎧なんたらのところで本調べてくる」と言うと、
エスティアに文句を言われる。
「え? 今日やりたいことあったのに、何で勝手に決めるの」
「テーラと二人で……」
と言いかけたが、なんか、続きは言えない雰囲気だった。
本を読むには、本の閲覧許可を貰わなきゃならず、
その許可が出ると、今度は、エスティアに、その本を読みに行く許可を貰わないといけないのだ。
エスティアは、俺を自分の所有物と思ってる節があって、相手先に制限されない限り勝手についてくる。
「私も行こう」
リナも、読むのを手伝うと言いつつ、ついてくる。
たぶん、エスティアと俺を見張る役なのだ。
本読みに関しては、本命はテーラなんだが。
アイスは町まで行くので、途中までは一緒だけど、本を読みには行かない。
「俺、文字とか嫌いなんだよ」とアイスが言う。
凄く納得する。
まあ、どう見ても、文学少女って感じでは無い。
文学少女と言うのは、文章を読むことが好きな女の子のことだ。
他にもいろいろ条件はあるかもしれないが、文字や本が好きな子のことを指す。
俺はそのくらいの意味合いで使っている。
アイスは、潔いほど、その基準に引っかからない。
因みに、アイスは依頼書とかは読めるので、文字が読めないわけではない。
本読む趣味は無いってだけだ。
行ってみると。予想外に本は多かった。
「けっこう(たくさん)あるな」
書物は少ないと思っていたのに、50冊くらいあって驚いたが、大雑把に確認すると、一部に竜の記載があるだけのものが多かった。
まともな竜の本は10冊くらいだが、これは難しくて読めない。
「ごめんなさい、これはちょっと私には無理みたい」
「こんなやつだったのか。これは無理だな」
実際に本を見るとエスティアとリナは即音をあげた。
2人は、この読みにくい文の読解力は、ここの文字に不慣れな俺と同レベルらしい。
テーラは頑張るが、歯抜けにしか読めず、ほとんど話がつながらない。
「”竜”と”人”と、”領地の代表”?領主かな?”穴”、”竜人”?」
しばらく頑張るが、テーラも降参する。
「竜の遣いのことは、書いてあるみたいだけど、単語しか拾えない。私にも無理」
テーラが無理じゃ、誰も読めないだろう。
仕方がないので、一度帰って、シートに本読み手伝ってくれるようにお願いする。
「テーラも読めなかったの?」
テーラは、深く頷く。
基本的に、あまり教えてくれないシートだが、こればかりは仕方ないと思ったのか、珍しく協力してくれた。
大鎧なんたらに行くと、シートを見てあからさまに白々しい反応。コイツ等絶対グルだ。
途中で別れたアイス以外は、全員ついてきた。
もしかしたら、エスティアとリナは、シートを警戒しての見張りなのかもしれないが。
もちろん、性的な意味での警戒だ。
こっちの書物は、ダルガノードの勇者伝承なんか目じゃないくらいに難解だ。
思いついた単語並べただけだろ……みたいな感じだった。
多分だが、書き慣れていないのだ。本があまり書かれない地方だから。
ダルガノードは、本に溢れていたが、ここにはあまり無い。
だいたい昔のお話しは、踊りと歌にになるようだ。
不思議なことに、シートはすらすら読んでと言うか、元から内容だいたい知ってて、頭の中の情報を、文書に沿って教えてくれたと言った方が正しそうな勢いだった。
ここの書物くらいは、とっくの昔に調査済みなのだろう。
”道を塞ぐ大岩”を、どかしてくれた竜の話は何度も出てくる。
こいつが竜信仰の元になったのではないかと思った。
この竜が作ったのが、オーテル神殿。
神殿は竜が作るものなのだろうか?
今は神殿跡地だが、もしかしたら当時は、神殿があったのかもしれない。
この竜が居なくなったのと、大鎧の書が”一番大きな竜を探す”になったのが同時期。
探しに行ったのが、この竜なのだろうか?
オーテル神殿を作った竜だから、この竜の名がオーテルなのだろうか?
城を壊した竜のことも書かれている。いつ来たか書かれてないが、帰ったと書いてある。
勇者側で書かれてた、”グリアノス”という竜のことだろう。
こちらの書物には”グリアノス”の名前は出てこない。
勇者側の伝承がある土地で、勝手に付けた名前なのかもしれない。
その後は、”迷宮の竜”の話ばかりで、”竜の遣い”が出てくる。
”竜の遣い”が先代の領主に”竜の遣い”探しをさせた。
見返りは財宝。
その財宝は、この国が安全であるために、必要らしい。
”竜の遣い”が、他の”竜の遣い”を探させるのか、何故だろう?
迷宮の竜は”ディアガルド”だったはずだが、本には名は書かれていない。
だいぶ古い本に、ずっと昔に遠くから飛んできた竜のことが書かれていて、コイツは飛んできただけ。
名前は”ガスパール”。名前の付いた竜が出るのは、これがはじめてっぽい。
「ガスパールって、確かテーラのお父さんの名前じゃ?」とエスティアが言った。
ああ、そうか。
竜のガスパールの話は、俺はここの偉い婆さんに聞いてたが、エスティアは聞くの初めてだったか。
「トート森に来てから名前を変えたの」とシートが答える。
そして、
「竜はトート森に飛んでくる可能性が高く、時期も近いと聞いてたから一緒に待ってたんだけど、間に合わなかったのよ」と付け足す。
玉に反応が出るとテンゲス迷宮に行かされる理由は、本には書かれていなかったが、
”竜の遣いには、人間には開けない扉を開けることができる”という記載があった。
「竜の遣いは開けられるのか!」
いや、待てよ……ってことは、
「俺より前にテンゲス迷宮まで行かされた人達って、全員外れだったのか!」と言うと、
シートが「そういうことになるかしら」と言う。
白々しい。
そして「だから、間に合わなかったのよ」と続けた。
あれ? 俺の前は、全員外れで、俺は当たり。
テーラのお父さんは、当たりが出るまで待てずに亡くなった?
テーラのお父さんは森に飛んでくる竜を待っていた。
……飛んでって飛行?
そもそも、俺はどこから来たんだ?
どこかから落ちたらトート森に居た。
”森に飛んでくる竜”を待ってた?
俺は森に向かって飛行してきて、墜落したのではないだろうか?
ここではじめて気付いたが、ガスパールが待ってたのは、俺なのではないか?
「テーラのお父さんが待ってたのって……」
ここまで言いかけて、シートを見ると、”やっと気付いたか”みたいな顔をしてた。
そう思ったなら教えろよ!!と思い、ちょっとイラっとした。
そうか。シートとテーラの家に、初めて行ったときの反応は、これのせいか。
テーラは知っていたのだ。俺がやってくると言うことを。
テーラを見ると、じっと俺を見つめていた。
そうか。テーラのお父さん亡き後も、人里から離れた家にずっと住み続けたのは、このためだ。
この母娘も、俺を待ってたんだ。
エスティアとリナは、話をしていて、気づいて無さそうだった。
「私がキノセ村に来た時には既にいなかったからな」
「私も会ったこと無いわよ。話を聞いたことがあっただけで」
テーラのお父さんの話をしているようだ。
俺は、はじめてテーラの家に行ったとき、”いずれ勇者が現れる設定”みたいなものが、あるんじゃないかと感じたが、待ってたのは勇者じゃなくて”飛んでくる竜”だったのか。
いや、飛んでくるのは”竜の遣い”?
「飛んでくるのは、”竜の遣い”なのか?」と聞くと、
「でもあなた、今、神殿跡地に住んでるわよ」とシートが答えた。
「待ってた竜って、トルテラのこと?」エスティアが気付いたようだ。
「そうか、竜だから、神殿跡地を返されたんだよな」とリナが言う。
「これが竜なのか?」と言って、手を広げて見せる。
「尻尾も無かったし」、「うん。無かった」とエスティアとテーラが言う。
そうだ! こいつらには、風呂で尻見られたんだった。
おっさんの尻見て嬉しいんか!と思ったが、なんか嬉しそうな顔してるので、イラっとした。
俺は正直、”おっさんの尻に需要のある世界に来たい”と思ったことは無いと思うのだ。
なんで、俺はこの世界に来たのだろう?
俺は”神殿跡地に住んでる”から、竜ってことになってるけど、竜って人間の姿をしてるんだろうか?
でかい狼だったような気がしたが。
もしかして、テーラはお父さんの意志を継いで竜を見たい?
竜を見る前段階として、俺が何かをする必要があるのか?
とりあえず、俺が竜を呼ぶための生贄ってことはないよな?
ここでテーラが口を開く。
「竜は飛んでくるって、家に飛んでくるからって、お父さんが”あの家”で待ってたの」
飛んでくる竜が俺で、俺を待ってたのに、テーラの家に飛んでこなかった?
飛んでくるはずの俺が、歩いて行ったから困惑したのか?
俺に飛行能力は無いような気がするのだ。
「飛んでくるのは竜よ。巨大な生き物で一目見ればすぐわかるわ」とシートが言う。
あれ?テーラのお父さんは、俺を待ちきれずに亡くなったという意味に聞こえたんだけど。
確かに、シートは明言してないと言えばしてないのか……な?
「どういうこと?」「さあ?」エスティアとリナも混乱中だ。
「俺が何かをするから、竜がシートの家に飛んでくると?」とシートに言うと、「飛んでくれば、あの人の予想は当たってたってこと」と言った。
俺が何かをすると、竜が飛んでくるかもしれないってことか。
竜の遣いというのは、竜を呼び出すもの。寄せ餌だったら嫌だな。
テーラは、お父さんの予想が当たってほしい。
シートも当たって欲しいとは思っている。
ただし、シートは他に何か知っている。そんな気がした。
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”竜の遣いは人間の開けない扉を、開けることができる”
大鎧様の遣いかどうか調べる玉で、1日がかりで反応が出ることは何度かあったが、扉は開かなかった。
俺はあっさり扉を開けた。
領主に頼んだという”竜の遣い”が探してたのはたぶん俺だ。
玉は即反応が出るか調べるものなのに、使い方間違ったのだと思う。
時間をかければ反応する人も少数居て、今までは、その人たちを”大鎧様の遣い”と呼んでいたのではないかと思う。
一通り本を読んで……と言うか、内容を聞かせてもらったが、大鎧様の遣いの竜と言うのは、どこにも書かれていなかった。
「ありがとう、助かりました」とシートに礼を言うと、「お礼はまた今度」と言った。
エスティアとリナとトルテラは思った。
これは、あとで体で払えってことだなと。
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”遣いの竜”のことをモブキャラA子に聞くと、
「神殿跡地を聖域化できるお方を、単なる遣いとお呼びするのは」
と、遣いであり神殿の持ち主だからそう呼ぶことにしただけだと言う。
俺がそう呼ばれてるだけで、元からあったものではなかったのだ。
納得した。……けど、その設定先に言えよ!!と思った。




