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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
4章.大鎧と勇者編

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4-11.大鎧の書

神殿跡地に引っ越し、大鎧様の遣いの竜ということになってしまいました。その甲斐あって、大鎧の書を読む機会に恵まれたのです。遂に、謎の一端がわかってきます。

挿絵(By みてみん)


”大鎧の書”を見せてくれると言うので、やってきた。

”大鎧の書”の原本は、なかなか見せてもらえない貴重なものらしい。


俺が”大鎧様の遣いの竜”という、謎の役職に就いたので、見せてもらえることになったのだ。

シートは余裕で知ってそうな感じだったが、教えてくれないので自分で見るしかないのだ。

俺しか見られないので今日は1人で来たのだ。


モブキャラA子が「”大鎧様の遣い竜”になられました」とか言い出した。

俺は自分では人間だと思ってるのだが、どうやら人間じゃないらしい。

今まで”大鎧様の遣い”だったものが、ランクアップしたんだか、”大鎧様の遣いの竜”になった。


「神殿跡地にお住まいですから」とモブキャラA子が言う。


”お前が住めって言ったんだろーーー!”と全力で叫んだ。心の中で。



防空壕だか、貯蔵庫的な、ちょっとした洞窟内で、大鎧なんたらの婆さんと、モブキャラA子と俺の3人だけで話をする。

大鎧何とか会の屋敷はそこそこ広いが、警備とかあんまりない、普通の屋敷なので話が聞かれてしまう。秘密の話はここでするらしい。


一応丁寧に聞いてみる。

「ダルガノードにはたくさんの勇者の本がありました。

 ここには大鎧様の本はないのでしょうか?」


「もちろんあるぞ。今のお主にはそれを読む資格がある。後で見せよう」


俺が大鎧様の遣いの竜になっても、この婆さんの口調は変わらなかった。

人間じゃないくらいだから、よっぽど偉いと思ったのに。


ちょっと残念に感じた。


「ところで、悪魔の書に気になることは書いてあったか?」


ここで言う”悪魔の書”と言うのは、勇者信仰の勇者の書物のことだ。

だいたい信仰というのは、他の信仰の対象を悪く言うのだろう。


「向こうの勇者がこっちで悪魔であるように、

 大鎧様も向こうでは竜の化身の巨人として伝わっています」


婆さんが頷く。さらに、その先の話をしろってことだろう。

気になることは、たくさんあるが、装備の話をしてみた。


「大鎧の装備は壊れないと書いてありました。尾から剣が作られたと」


「ほう。悪魔の書にそう書かれていたか」


想定の範囲内って感じか?


「他に何か気付いたか」


装備ではなく、もっと本質的なことを聞かれているようだ。


「大鎧の話が書き換わると、それに合わせて勇者の話が変わるようですが」


「その通り」


当たりっぽい。

内容が正しいかは別として、この婆さんが聞きたい答えはそれだったということになる。

結局、キャゼリアもテーラも、それに気付かせようと画策していたように思える。


そんなに敵視しなくても、大鎧様と勇者がもめて国家間の戦争になったりはしない。

「それに、勇者は大鎧と国を割って戦うことは無い」と付け加えた。


「今はそうなっておるか」


”今は”と言うことは、そうじゃないパターンも過去にあったことを知ってるのか。


モブキャラA子が、「勇者と大鎧様が戦うという話?」と言うので、

「昔に書かれた話では戦うことになっています」と説明した。

婆さんとモブキャラA子じゃ歳が違うので、古い話については知らないのだろう。


それにしても違和感を感じる。

ダルガノードには大きな書物庫があり、研究者もいる。こっちは、何も無い。

本はあると言うが、こっちでは詳しいはずのモブキャラA子がこのレベルだ。

レベルに差がありすぎる。


それでいて、こっちが主で、向こうが従。

この差が生まれる理由は何だ?

まあ、普通に考えれば”竜”が関係しているのかもしれない。

竜の話をしてみる。


「グリアノスと言う竜が城を壊したと書いてありました。竜は実在するのでしょうか?」


婆さんが答える。

「わしは直接見たことは無いが、見たと言う話ならたくさんあるぞ。

 道が崩れて通れなくなって困っていたところに、竜が現れて道を回復したという話がある。

 そして、その竜が神殿を造ったと言う。その神殿の名がオーテル神殿」


その竜に名前は無いのだろうか。


「ずっと昔遠くから来たという”ガスパール”」


おお、テーラのお父さんが晩年に名乗ってたという”ガスパール”と言う名は、竜の名だったのか。


「迷宮を守る竜はディアガルド。迷宮を守る竜は人と話ができると言う」


迷宮の竜!

「テンゲス迷宮か?」と聞くが、


「あそこは竜が出入りできる通路が無いから無理じゃろ」と返ってきた。

でも、あそこには巨大な何かが居た……俺はあれが竜なのではないかと思っているのだが。


「竜の話は多いが、出てくるのは、この4体のうちのどれかと、大鎧様じゃ」と言い、

「ところが、近頃巨大な竜の目撃情報が出ている。どう言うわけか、お主の行く先々で」

と付け足した。


俺は竜なんか見てないのだが。


婆さんは立ち上がると、

「悪魔の書と大鎧様の書には決定的な差がある。

 大鎧様の書は人間が書くことは無い。

 そして、大鎧様のことしか書かれていないのじゃ」

と決め顔で言った。


俺は若干残念な気持ちになった。……決め顔は忘れよう。

大鎧の書は人間が書かない? 竜が書く? 文字を?……どういうことだろうか?

この世界の竜は本を執筆するのか?

ダルガノードでは、そんな話は全く無かったが。


”大鎧様の書”のところに案内してもらう。

狭い祠を抜けて、こんな狭いとこ通れるか!と思いつつ何とか抜けた先は十分広かった。

狭いところに引っかかって凄い勢いで難儀した。俺はここだと巨人サイズなんだよ!!


俺が見るものなら、俺が引っかからない幅になってるはずだと思うのだ。


まあ、その先は広い。

テンゲス迷宮のボス部屋みたいな感じで、奥は広くなっている。

テンゲス迷宮の縮小版みたいな感じだ。


「これじゃ」と婆さんが指した方向には大きな石があった。


書と言うが、実際には大きな石に文字が刻まれている。

俺に読める文字とは違うやつで書かれている。

とはいえ、それほど文字数が多くないので、多くのことは書かれていないことがわかる。

俺には読めないが、訳すとこうなるそうだ。


婆さんは目が悪いらしく、モブキャラA子が読んでくれた。


----

 神がいる場所が神殿であり、神が住めば聖域となる。

 勇者は神が選ぶ。

 神殿には竜が住む。神殿に住む一番大きな竜が人になった。


 一番大きな竜が人になるとき、尾は剣に、牙は盾に、爪が鎧と兜になった。

 決して壊れることは無い。

----


尾が剣……勇者側の伝承と同じだ。盾もある……

普通、牙とか爪が剣だろ……と思った。


大鎧様がカリオ神殿跡地に住んでると言うのは、60年前に書の内容が変わり、大きな神殿跡が現れたからだと言う。

カリオ神殿跡地というのは、人間が付けた名前だそうだ。

名前が”大鎧様”となったのは、”大鎧”の実物が発見されたから。

盾は恐らく今俺が使ってる盾だ。


神が住んで聖域になるなら、俺は神じゃないか!

その割には微妙な扱いなんだよなと思う。


60年前に書き換わる前の内容は知られている。


----

 神がいる場所が神殿であり、神が住めば聖域となる。

 勇者は神が選ぶ。

 神殿には竜が住む。神殿に住む竜が一番大きな竜を探した。

----


さらにそれ以前の書は神殿の記載はあるが、竜が人になって魔を退けるというもっと短いものだったようだ。


この時代には、この書が書き換わることが知られておらず、正確な写しが存在しないが、”一番大きな竜を探した”の部分が”人になって魔を退ける”となっていたと言う。


つまり、こうだ。


----

 神がいる場所が神殿であり、神が住めば聖域となる。

 勇者は神が選ぶ。

 神殿には竜が住む。神殿に住む竜が人になった。

 魔を退ける。

----


50年以内に書かれた勇者の書では、大鎧と勇者は国を分けて戦っていない。

一番大きな竜に変わってからは、大鎧と勇者は敵対しないのだろうか?

そもそも”大鎧の書”には以前から勇者と戦う話がない。


短いから、省かれているとしても、あまり重要な問題ではないということだろう。


竜が住む場所と、神がいる場所が同じなのは、なぜなのだろう?

なぜ突然、勇者の話が出てくるのか。

誤訳?これだけではさっぱり意味が分からない。


勇者側の書は200年以上前のものも存在していた。


おそらく、今の大鎧信仰会より前から、今”大鎧の書”と呼ばれているものは存在したのだろう。

古い時代には勇者と戦うことになっていたのかもしれない。

今の勇者信仰側の巨人は、大鎧とは別のものではないかと思う。

あの白くて2.5mくらいあるやつじゃないのか?

もしかしたら、あれのもっとでかいやつが居るのかもしれない。


……などと考えていると、


実は最近新たに、”大鎧の書”に文言が追加されたのだと言う。


”迷宮の竜が導く”


テンゲス迷宮の奥のあの扉を開けると、大鎧様と悪魔の戦いがはじまると言われていたが、気付いたら文字が増えていたのだと言う。


”迷宮の竜が導く”には思い当たる節がある。

なるほど。あの女が何かをするはずだった……のに、俺は裸を見てしまい撤退した。

たぶん、本当ならあの女が服を着て俺達……ではなく、たぶん俺を導くために何かをするはずだったということだろう。


あの女は竜が化けたものなのか?

いや、あの奥に居る竜のところに案内する役?



いや、神殿に住むようになった俺が迷宮に行かなきゃ話が進まないのか?


俺が、この世界に来たのは、事故や偶然では無く、仕組まれたことである可能性が高くなってきた。

(りゅう)とか、人間には開けない扉とか全部嘘で、単に(おれ)に反応する仕掛けがあるだけなのではないだろうか?



今までにわかってる俺の能力は、”雨粒寄せ付けない”のと、”人間が開けない扉を開けることができる”。

あとは浄化? 熊とか山賊が居なくなる。

雨粒と扉以外は、守り神っぽいか。


体質的には、怪我がすぐ治る。それと匂いが出ても、寿命が縮まらないっぽい。

怪我がすぐ治るのも、守り神っぽいかもしれないが、匂いが出ても大丈夫って何なのだろう?


俺は竜が化けたもの?

竜と雨粒関係あるか? 俺は一体何なんだろうか?


その他の書は、後日改めてと言うことになった。

俺一人じゃ、まったく読めなかったのだ。


古文て感じか?


========


今日もトルテラが一人で出かけてしまった。


エスティアは一息ついて考え事をしていた。

タンガレアから帰ってから、いろいろありすぎて、しばらくはゆっくりしたい気持ちだったが、トルテラは、竜がらみで連日出掛けてしまうので、一緒にくつろげない。

急速に遠くなってしまったように感じていた。


キノセ村で暮らしていた頃のことが、遠い昔のように感じてしまう。

狭いテントで……狭いベッドで……あれ?今広すぎない?


エスティアは凄く簡単なことに気付いてしまった。物理的に距離が遠いのだ。


ただ、全員で団子になって寝るのは大変だ。

ダルガンイストからの帰りのテント泊では、ゴタゴタしてたし見張りが居るしで落ち着かないし、

誰かが私の髪踏んだり、誰かがトイレから戻ってきて足踏まれたり、

やっぱり、安心して寝られる日と、密着できる日と、両方が必要だと思ったのだ。


そこで、エスティアは、とりあえずリナと相談することにした。

寝るスペースを現在の雑魚寝から、密着ゾーンと快眠ゾーンに分けることについて。


小屋から出てみると、井戸の横でテーラとアイスがナイフの手入れをしていた。

先にリナと話をしようと思っていたが、とりあえず、2人に寝るスペース分けの話をしてみることにした。


「テーラ、アイス、この部屋で寝るときの、ルールを作ろうと思うんだけどどう思う?」と聞いてみるとアイスが即乗ってきた。

「俺、何かが足りないと思ってたんだよ」

テーラは特に何も言わないので、異存なしという感じだろう。


「ここ中途半端に広いでしょ。もうちょっとメリハリがあった方が良いと思って」

エスティアがそう言うと、テーラが

「エスティアが酷いことするからトルテラが逃げて行っちゃうんでしょ」と言う。


「え?酷いこと?逃げる?」エスティアが混乱していると、アイスが追い打ちをかける。

「なんだ、やっぱ覚えてないの」


リナが家に戻ってくると、エスティアが廊下に座っているのが見えた。

ずいぶん落ち込んでるようだった。


「どうしたんだ?」と声をかけると、「私、寝てるときトルテラに酷いことしてるの?」と聞いてきた。

これには苦笑いしか返せなかった。


トルテラが来る前の被害者は、リナだったのだ。


「もしかして、リナにも?」とエスティアが聞くが、「まあ、でも、今はトルテラが居るから」と答える。

エスティアはがっくりと項垂(うなだ)れる。


すると、アイスとテーラが出てきて、安眠の観点からも寝るスペースは分けた方が良いと言う話になった。

凄くすっきり、あっさり決まった。


スペース分けるのは一見エスティアの暴力問題に見えるが、実は背景にあるものは皆同じだった。

急激にトルテラが手の届かない存在になってしまったようで寂しさを感じていたのだ。


========


トルテラが帰ってくると、部屋の真ん中に、物入が置かれていたので、ちょっと嫌な予感がした。


相変わらず、いつものように野草風味の大芋食って寝る時間になると、寝るポジションが変わっていた。


物入れが仕切りになって、快適に寝れるゾーンと、狭いゾーンに分けられた。


女達はローテーションで俺は固定。

俺だけが快適ゾーンには行けないのか!


”ここ俺の家なんだけど”

ちょっと不満に思ったけど、言える雰囲気じゃなかったので我慢した。


でも、片側に全員で寝るとかじゃなくて良かった。

テーラの家にいたときは酷くて、シートまでベッドに入ってくるから凄いことになっていたのだ。

それと比べると十分平和になった。


相変わらず、わざわざ仕切り作ってまで密着して寝る意味が分からないが。

でも、両手に花くらいでちょうど良いかもと思った。


今日はアイスとリナだが、アイスは相変わらずトルテラはでけーし髭が生えると喜んでいるので、アイスの方を向いてたのだが、なんか背中に微妙にリナがくっついてきて、動悸が激しくなってきた。

背中にくっつかれると、胸が当たって俺には刺激が強過ぎるのだ。

アイスはあごひげジョリジョリしてたが、匂い出てたのか、「興奮しちゃったのか」とか言いながらべったりくっついてきた。その反動で、背中にリナの胸が当たって、俺はもう駄目だと思った。


リナはトルテラがどこかに行ってしまいそうで、なんとなく、悔いを残さないようにと思ってわざと胸を当ててみたのだった。


急に静かになったので、エスティアは気になって添い寝ゾーンを覗いてみると、スペースが余るほど密着してるので、あのくらいやっても良いんだ!と何故か納得した。


テーラは口には出さなかったが、”トルテラは私のパンツの方が好き”と思っていた。

挿絵(By みてみん)


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