4-10.神殿跡地に引っ越し(後)
聖域化と言うのは汚染の反対で、悪いものを寄せ付けない力を持つらしい。
まあ、実際に俺が行って何かが起きたなら、やはり俺は神殿跡地と関係がありそうではある。
神殿跡は俺に返すので、是非とも住んでほしいと言われた。
そう、正確には貰ったのではなく返されたのだ。
「それでは、是非とも、是非とも……トルテラ様」 モブキャラA子が言う。
俺に神殿跡地に住めと言うのだ。こいつも様付けだし。
……………………
やっと解放された。エスティアとリナが待っていてくれた。
「待っててくれたのか」
「ずいぶん長かったな」、「オリアン神殿のことだった?」
「ああ。なんか、あそこが俺の神殿だから住めって言われた」
と言うと、
「……で、どうするんだ?一人で住むのか?」とリナが言う。
「え?」あんなところで一人で住む?あれ?もしかして一人で住まなきゃならないのか?と考えてると、
「私は付いていくぞ。一生面倒見ると約束したからな」とリナが言った。
ああ、なんだ、むしろ、それが言いたくて一人で住むという話をしたのか。
ツンデレとかそういうやつの緩い版なのだろうか?と思った。
「私も行くに決まってるでしょ。でも、家どうするのよ」とエスティアが。
そうだよ、あそこ監視小屋しかない……テント暮らししながら、少しずつ家作るか……と思ったが、ずいぶん久しぶりに、家の周りを回る簡単なお仕事しに行ったら、俺が神殿跡地に住むという話を聞いて、いつもお布施くれる人たちが協力して井戸掘って、家も建ててくれると言う。
シートは神殿跡に住むこと推奨みたいな感じだったし、引っ越すことを皆に話した。
家建ててもらって住まないはまずいと思うし。
「俺、神殿跡地に住むことにする」と俺が言うと、
「私とエスティアは一緒に行く。アイスも一緒がいいよな?」とリナが言い、
「俺はトルテラが居るところに一緒に住むよ」とアイスが言った。
さらに「だって、トルテラは俺のパンツが大好きだからな」と言った。
「トルテラは私のパンツの方が好き」とテーラが言う。
こいつら、いつもこれを言うのだが、何か根拠はあるのだろうか?
それと、これは付いてくると言ってるのだろうか?
皆既に知っていたので、さほど問題はなかった。
エスティアとリナはもちろん、アイスも付いてくると思っていたが、テーラはどうだろう?と思っていたのだ。
今住んでる家はテーラの実家だ。俺たちが居候してるだけなのだ。
シートも「一緒に行った方が良い」と言って、賛成の様子。
なんでだろう?
やはり、この母娘にはまだ何か秘密があるのだろうと思った。
テーラもさっきのパンツは一緒に行くの意味だったらしく「もちろん」と言った。
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俺も家を建てるの手伝うつもりで行ったのだが、あまり手伝わせてもらえなかったので、諦めて普通に冒険者仕事やりつつ、家の周りを回る簡単なお仕事をして過ごした。
1月半ほどで、立派だけど住むのにはあんまり向かないような家を建ててくれた。
俺は感激して、この人たちのために家を周りまくろうと思ったのだ。
井戸水は井戸を掘って暫くは水が濁るというが、俺が水を汲んだら透明だったので歓声が上がった。
他の人が汲んでも透明だった。
神が戻ってきたから、浄化されたと言う。大袈裟なと思った。
それまでは濁っていたという。本当か?
川の水は俺が汲んでも川の水味なんだが。
家はたぶん俺一人用サイズなのだと思う。6畳一間という感じの部屋が1個だけ。
家と言うよりお堂という感じだ。回りに廊下があって一周回れる作りになっている。
大鎧なんたらの大鎧が置いてある建物の縮小版だ。
俺は一周回ってから入らないといけないのだろうか?と思ったが、階段と出入り口は別方向という謎の構造だった。
高床式なので、土禁にしてベッドは使わずに寝ることにした。
丸々使えば、キノセ村に住んでいた頃のエスティアの家と比べて寝るスペースは2~3倍広そうだ。
俺がこっちに引っ越す時皆も付いてきたので、5人で住みはじめたが、家作ってくれた人達に、神と人が一緒に住むな!と言われた。
じゃあ出ていくと言うと俺用の出入り口と人間用の出入り口を分ければ良いと言う妥協案が出されたので、側面に人間用の出入り口を追加した。
元からあったのは俺専用で、人間が出入りしてはいけない。
……と言うが、俺も人間だと思うのだが。
神様と人間は同じ方向から出入りしてはいけないのだそうだ。
人間用の階段もつけたので、そっちの方が便利なのだが、俺は半周回って俺用の階段を使わないといけないらしい。
俺用の階段の前はダミーの出入り口になっていて、立派な扉に見えるのに実は開かない。
俺は反対から出てダミーの出入り口の前の階段使う。
不便だが、意味があってそうなってるはずなので、そのまま使っている。
お堂に入るのに半周回って、出るときは入るときと逆の半周回って出る。
一方通行になっているのだ。
お堂本体と井戸だけで、その他の生活に必要なものが全然ないので、炊事場とか、かまどは別の小屋を作った。
薪置き場も作ったが、とりあえず小さいのを作ったらそれでも十分なことが分かった。
ここはよく薪が乾燥するのだ。テーラの家の時の1/3くらいのサイズだが、これでも十分な感じだ。
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大鎧信仰会では、俺は大鎧様の遣いの竜ということになったらしい。
神殿の持ち主は竜だからと言うことらしい。
そこでやっとリナとテーラに教えてもらえたのだが、実はこないだの変態医者の診断でも俺は人間じゃないという判定が出てるらしい。
俺は変態にも人間じゃないと言われてしまう男なのだ。
なんか凹んでヘナっと倒れたが、エスティアが外出中なので、誰も介抱してくれなかった。
俺はとっても悲しい気分でいっぱいになった。
しばらくしたらエスティアが帰ってきて介抱してくれたので、やっぱり俺のことを一番大事にしてくれるのはエスティアなのだと思って、忠誠度が上がった。
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今まで間借りしていたテーラの家を出て、オリアン神殿跡地に引っ越してきた。
トート森の中で少し場所が変わっただけなのだが、けっこう環境が違う。
テーラの家は滝が近いので湿気が凄かった。
それと比べてここは快適なのだが、1つ大きな問題があった。
水量の多いきれいな川が近くにないので、今までのやり方で獣を解体できないのだ。
俺は未だに解体は嫌で、水につけて血は全部流していた。
陸上で解体すると臭いが気持ち悪いのだ。
熊を切りつけて血の匂いがしてもかまわないが、食べようと思ってるものからこの臭いがするのは嫌なのだ。
俺は日本に住んでた時は魚より肉が好きだった。
あれは加工済みの肉が安定して手に入り美味いからだ。
ここでは水産物の方が美味い。
肉は鶏肉とイノシシ肉だけは別格でうまい。
鹿はうまくは無いがまあ食える。
他はだいたい駄目だ。臭かったり食うとこない。
その上解体で嫌な思いすると食いたくなくなるのだ。
鹿でも積極的に食いたいと思わない。
魚は旨い不味いあるが、大きさの割に食える部分が多い。簡単に食える。
獣は魚と比べると手間がかかる割に食うところが少ないのだ。
魚は内臓取って焼けば食える。
トート森一帯は水が冷たくきれいすぎて水産物が少ない。
もっと沼地とか水が汚いところの方が水産物が豊富に獲れる。泥臭かったりするが。
なので、ここでは水産物を食べる機会はあまり無い。逆に、獣を食べる機会はよくある。
俺が居ると熊が居ないので鹿が集まるのでたくさん獲れる。
でも、ここで解体はきつい。そんなとき1つ気付いたことがあった。
ストーンサークル周辺では、血の匂いが長期残ったりしないのだ。
少し離れたところで解体してたのだが、そこはかなり長期間嫌な臭いがするのだが、神殿跡地周辺では長期残ることは無い。
聖域ってやつの力だろう。
俺が人間で無くて竜だとしたら、満月の夜……って、ここには月は無い……いや、有るけどスゲー小さくて地球で見たような見た目で明らかに大きな天体という感じでは無いのだ。
言われなきゃ気付かない。実際聞くまで俺は気付かなかった。
遠目の魔法があるので、気付けばよく見える。
この惑星の影に中途半端に入ることはあまり無いみたいで、月の満ち欠けとかは滅多に無い。
見えてるときはだいたいいつも満月だ。
地球の月と比べるとだいぶ遠いところを回ってるのだと思う。
それはともかくとして、もしも竜だとして、竜の自覚が無かったり、人間として日本に住んでた記憶があるのは何なのだろう?
あれは偽の記憶か何かなのだろうか?
俺は49歳まであの世界で暮らしていたと思う。
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この世界には神殿跡地と呼ばれる場所がいくつかある。
ストーンサークルみたいなものがあるだけなのだが、カリオ神殿跡地というのが特別でかくて、大鎧様が住んでるらしい。
このストーンサークルがでかいほど偉い神様が住んでいたと考えられているようだ。
まあ、カリオ神殿跡地のストーンサークルの岩は、相当大きいようだ。
俺の持ってるオリアン神殿跡地は直径5mとかそのくらいであまり大きくないようだ。
つまり俺の偉さは直径5mだ。
石の内側で5mくらい。戦闘力は面積に比例とかそんな感じなのだろう。
「ふふふ、私の戦闘力は直径5メートルです」とか言って遊んでみた。1人で。
さほど楽しくなかった。
カリオ神殿は60年前からあるという。
今でも大鎧様と言われる神様が住んでいるのだろうか。
※あとで出てきますが神殿は有りません。
俺の持ってるオリアン神殿跡地は俺がこの世界に来るより前からあったが、
今は俺が神様として住んでる。
俺が今住んでるからといってトルテラ神殿に名前が変わったりはしないようだ。
前から疑問だったのだが、ストーンサークルだけあって、神殿は無いように思うのだが、なんで神殿跡地なのだろう?
この世界には不思議なことがたくさんあるのだ。




