4-4.白い巨人と洗濯の危機
遂に国境の町ダルガンイストに到着しましたが、国境越えで兵士に見つかり戦闘になってしまいました。いつもは余裕のトルテラも予想外の強敵に血だらけになりました。
今回はやっと神殿跡地の調査をします……案外真面目な話……な気がしますが、そんなことはなく、結局いつも通りの残念なお話になります。
ストーンサークルの場所は地図に載ってるのだが、この地図が荒すぎてさっぱりわからない。
詳細版も貰っておけばよかった。たぶん、そんなのは無いのだろうが。
「こりゃ相当厳しいな」かなり困ったことになった。
「目印になるものが何も無いからな」とリナが言う。
「もう帰りてぇー」とアイスが言う。
「分かれて探す?」とエスティアが。
ここにはケータイが無いので一度はぐれてしまうと合流が凄く難しいのだ。
分かれると合流が難しそうだしと思って考えていると、
「少し休んだ方がいい」とテーラが言った。
即「きゅうけーい」と言って、アイスが座る。こいつの休憩はおやつタイムの意味だろう。
休憩してるときに気付いたのだが、なんとなく、木陰と言うか日陰と言うか、そういう感じのする場所があるような気がして、休憩が終わると、地図と目印で探すのは諦めて、気配を感じた方に進んでみた。
見失ったのでまた休みながら気配を探る。
すると、「何かある……かも」とテーラが言った。
二人でどっちっぽいか相談しつつ捜し歩いてたら、本当に在った。
前に玉を一晩置いたストーンサークルよりだいぶ小さく、直径3mくらいの小さなやつだった。
俺とテーラはストーンサークルの気配がわかるらしい。草があってわかりにくいので、気配が分からない普通の人じゃこんなの見つからないだろうと思った。
だから俺に依頼が来たのか……と納得した。
一応ストーンサークルの真ん中に例の玉を置いて、ストーンサークルの外で休憩した。
そこで気付いたのだが、テーラもストーンサークルの場所がわかるのだ。
扉を開けることができる俺じゃないとストーンサークルを探せないとしたら、もしかして、テーラも迷宮の奥の扉を開けることができるのだろうか?
テーラに聞こうかどうか迷ってると、気配察知で今まで感じたことのない妙なものを感じた。
まだ誰も気づいていないようだ。
「何かこっちに向かってきてる。撤収しよう」と声をかけた。
もう1時間は経過したと思うので、撤収する。
ゆっくりだが、謎の存在は、まっすぐこちらに向かってくるのがわかった。
進路を横に避け、十分距離を取りつつ撤退する。
「どの辺に居るの?」エスティアがリナに聞く。
「わからない」とリナが答える。
気配察知はリナが得意なのだが、まだ引っかからないようだ。
「テーラも察知できないか?」
テーラは首を振って否定した。
ストーンサークルの存在を感知できるなら、あれも感知できると思ったのだが、そうでも無いようだ。
「気のせいじゃないか?」とアイスが言う。
アイスも特に何も感じないようだ。
俺の気配察知は、特定のものだけ極端に遠くからでも察知できる。
たぶん、あれも、その特定のものなのだろう。
特定のものなら、誰かの脅威になるかもしれないと思い、見ておいた方が良いと思った。
「ちょっと見てくる」と言い残して、高台から遠目を使って見てみる。
遠目で白い巨人らしきものが見えた。2.5mくらいありそうだ。
ストーンサークルのあたりを回ってから元来た方向に戻っていった。
俺達に気付いて見に来たのか?
ストーンサークルと巨人には、何か関係があるのか?
前にテンゲス迷宮で倒したやつの巨大版ではないかと思った。
真っ暗な迷宮内と、ここでは差がありすぎて、はっきりわからないが、巨大な二足歩行のやる気の無さそうな動きが似ている気がする。
エスティア達と合流して、「テンゲス迷宮に居た俺よりでかいやつの、もの凄くでかいやつだった」と伝える。そして、「大丈夫だ。こっちには来ない」と付け加えた。
残念騎士が探してるのは、おそらくあいつだろう。
発見したのが俺で幸運だった。
あんなものは残念騎士とそのお供数人でなんとかなるようなものではない。
一方エスティア達は、テンゲス迷宮の巨人はあまりよく覚えてなかった。
エスティア達が雑魚と戦ってる間に俺が倒してしまったので、盾が壊れたことにばかり気を取られて、巨人はよく見てなかったのだ。
もう用事は済んでいるのでダルガンイストに戻る。
通行書持って無いけど一応砦の普通の入り口に行ってみると、あっさり通してもらえた。
律儀に砦……要塞の一部だが、巨大な老人が来たら通すようにと話を通してあって、普通に通してくれた。
あの女は残念だが、そのあたりはきっちりしてるらしい。
ダルガンイスト要塞。
タンガレア側から見ると良くわかるが、ここを攻め落とすのは難しいだろう。
こんな大きな要塞を作る必要が過去には有ったのだろうか?などと考えた。
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瞬撃の残念騎士に、巨人を目撃したら、砦の騎士隊に伝えるよう言われていたが、騎士隊がどれなのかわからない。
仕方なく、そこらの兵士に聞いたら、軍隊には郵便屋みたいな部署があって、そこに行けば情報は届くというので行った。
まあ、リナとエスティアに聞いてもらって、俺は後ろをトボトボ付いていくだけなのだが。
郵便屋部署に残念騎士にと言って情報を伝えようとしたら、残念騎士のファンが興味引くためにテキトーな情報持ってきたみたいな扱いされて猛烈に凹んだ。
あんな残念なやつがここでは大人気なのだ。
それだけでも居心地悪いのに、俺もそのファンの一人と思われたのだ。
俺はもう放置して帰る気満々だったが、巨大な盾を持っていて手足血だらけでリーディアに勝った巨大な老人が居るという話を知ってる兵士が居て、コイツじゃないかと騒ぎだした。
20人も30人も集まって、凄い敵扱いされて酷い言われようだった。
しかも山賊相手に山賊行為をはたらく凶悪なやつと言う話までくっついていた。
なんで、そんな話知ってんだよと思った。
それに、山賊相手に山賊行為したって俺は悪くないだろと思うのだ。
襲ってきたのは山賊の方なんだし。
凄い言われようで、もの凄く凹んだ……けど瞬撃の残念のファンと思われるよりは敵の方が嬉しい。
一応情報は伝えたし、もう嫌になって街に向かうと、今度は服が両腕両足血まみれで大騒ぎになった。
騒がれるだけで、町には入れると思ったが、入れもしなかった。
俺は町にも入れてもらえない不幸な老人なのだ。
そう思うとますます凹んだ。
町はずれまで移動してテントを立て、血だらけの服は洗濯してもらうことにした。
残念騎士のせいで本当に踏んだり蹴ったり酷い目に遭いっ放しだ。
今は血だらけの服を洗濯してもらっている最中で、寂しく1人でテント内に籠っている。
なんで、自分でやらないか……って、それは簡単な話で、洗濯する服が無いのだ。
洗濯する対象はあるけど、洗濯中に着る服が無いのだ。
仕方なく俺はテントで待機してるのだ。
今着てるのはキノセ村に住んでた頃作ってもらった短いパンチラローブだ。
体育座りしてるとパンツ丸見せ状態だ。
この世界では、おっさんのパンツ姿にも需要があるのでテント内に潜伏してないとならないのだ。
不便な世界なのだ。
この世界に来たばかりの頃は、そんなことは知らなかったので、見られまくってしまったという苦い経験があるのだ。
しばらくするとアイスが凄く嬉しそうな顔で、「俺のパンツも洗った」と言って濡れたパンツを見せにきた。
なぜ?と思ったが、続いてテーラも見せる。エスティアもリナも。
コイツら、絶対俺がパンツ好きだと思ってると思うと、もう、なんだかいろんなことがどうでも良くなってヘナっと倒れた。
すると皆笑顔で去って行った、皆忙しかったようで、誰も介抱してくれなかった。
忙しいのにわざわざパンツ洗いの報告しに来るなよ……と全力で思った。
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厚手の冒険者服はそう簡単には乾かないので、食事とかは毛布巻いて過ごしたが、寝ようとするとアイスが「トルテラもパンツ良く似合ってる」と言った。
それは誉め言葉のつもりなのだろうか?おっさんのパンツ姿にも需要のある世界なので、案外普通に俺のパンツ姿が好きなのかもしれないと思った……いや、そんなことも無いか。
ここのパンツはデザイン的にはカッコ悪いが、布がゴワゴワなので凄く下着っぽい見た目でもない。
安全なところで寝るときは、皆冒険者服は脱いで気楽な格好で寝るのだが、今日は困ったことになった。
皆冒険者服を脱ぐと、そのままパンツ姿で、寝間着を着ないのだ。
「なんだ、その恰好は」と言うと、
「仕方ないでしょ。全部洗っちゃったの」
「こっち、水無いから、洗える時洗わないと汚いだろ」
まあ、確かにその通りだ。
その通りではあるけど、「俺は露出が多いと刺激が強すぎて困るんだよーーー!!!」と全力で叫んだ。心の中で。
テーラは上はスケスケっぽい薄いの着てるし、アイスは例のタンクトップ。
リナとエスティアはTシャツ風のやつだが、皆下はパンツだけだった。
こいつら絶対、パンツ姿だと俺が喜ぶと思ってやってるだろ……と思った。
実は見た目はそんなに問題じゃない。
暗いし、俺は暗視使ってないのでほとんど見えてない。
問題は触覚だ。
そんな恰好でくっつかれたら死んでしまうと思ったが、狭いテントで寝るので、どうしても接触してしまう。素肌が触れ合うというのは今までほとんど無かった。
これは危険だと思い、毛布に厳重に包まる。……が、小さいのだ、ここの毛布はサイズが俺にまったく合ってないんだよ!と全力で思った。
それでも頑張ってミイラのようにぐるぐると包まった。
ところが、しばらくすると、毛布の隙間から誰かの足が侵入してきた。
毛布の隙間を閉じようと頑張ってみるが、侵入者は出ていかない。
絶対わざとだろ……と思った。
ピタっと肌が密着して、俺はもう駄目だ死んでしまうと思った。
でも、朝起きたら死んでなかった。
誰が隣で寝てたのかもわからなかったが、起きたら誰も居なかった。
外を見ると、皆冒険者の恰好でいろいろ準備してた。
「昨日トルテラすぐ気失ったよね」
「うん。匂いしたしな」
(……この手は使える)
女たちはパンツ姿で添い寝すると興奮して気を失うんだと思って、そのうち何かあったら、その手を使おうと皆同じことを考えていた。
トルテラはカチコチに固まっていて気付いてなかったが、昨日の隣はテーラとリナだった。
わざわざ足突っ込んだのは、もちろんリナだ。リナはそういう悪戯をよくするのだ。
エスティアだけは、トルテラが自分のパンツ姿がどのくらい好きなのか、ちょっと心配だった。
以前も無理やり裸見せてやっと倒れたくらいで、トルテラはエスティアの体を見て興奮して倒れることがあまり無かったので自信を失っていたのだった。
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朝食の時に、わざわざ全員で洗ったパンツ見せに来なくていいからという話をすると、アイスが俺が喜ぶと思って見せたがったけど1人だけだと悪いからと全員で見せに来たのだという。
悪いって何だよと思った。
「今度から俺1人で見せに来るよ」と言った。
すると、女たちの戦いが起きて、テーラが「トルテラは私のパンツの方が好き」とか言って譲らない。
なんで洗濯したパンツ見せるか見せないかで揉めるんだよと思ったが、結局洗濯パンツ見せ禁止の方向で話がまとまった。
これには驚いた。いつも俺が被害受ける形で決着がつくのに、今回はまともな結論に至ったのだ。
トルテラは気付いていなかったが、女たちの認識が、
洗って濡れたパンツは好きじゃない = 乾いてるパンツが好き
に変換された結果だったのだ。
結局、パンツ干してある報告に戻っただけなのだが、わざわざ見せられずに済む分マシだ……とトルテラは思った。
それともう1つ安心したことがある。全員パンツはボロボロじゃなかったのだ。
これからも頑張って娘たちがボロボロパンツを穿かずに済むよう精進を続けようと心に誓ったのだ。
父ちゃん、頑張ってお布施貰って新しいパンツ買ってやるからな。
もう以前の俺では無いのだ。俺には現金収入がちょっとだけあるのだ。トート森に帰ればの話だが。
まだやることがあるので帰れないのだ。
トルテラは1つ勘違いをしていた。実は、パンツ干してある報告は、女達からすると、もうすぐ乾くから好きなパンツになるよという意味の報告に変わっていたのだった。
トルテラは何をしてもパンツフラグが立つ悲しい男なのだ。




