31-8.神様の秘密を暴くのはやめてください(20) おっさんの恥ずかしい秘密 本当に無職の老人?
老人との戦いで負けたランデル勢は、おとなしく一度国に戻り、何故かすぐに老人の元へと向かう。
このランデル兵の動きが知られるようになると、なんでそんな行動をしたのかという疑問が生まれた。
傍から見ると不自然な動きに見えた。
が、もう一方の、老人の動きは、わかりやすく、調べると良く見えた。
老人の行動を実際に目にした者は少ないものの、同行、及び監視の目があったためだ。
そのため、ランデル軍との戦闘後の、老人の足取りは、はっきりしていた。
老人は、ランデルの見張りを黙認したため、老人の行動は、ランデルにも把握されていた。
その足取りは、兵たちも知らされていた。
特に口止めされていないのか、そこはあっさり話す兵も多かった。
「戦った村まで着いた時にはトルテラ様は居なくて。
もっと先だったから、村から少し離れた場所を通った」
「(ベリクハスタの)応援も来てたから、村の守備兵は少し増えてたけど、通してくれた」
戦闘の有った村を超えて行く必要があったため、話をして、村を迂回して通った。
村人は、快く通したわけでは無いのだが、強引に止めるほどの兵力も無い。
それに、ランデルの兵達が、老人を追っていることは、村人たちにもよくわかった。
荷物の量から、そう長期の行動はできない。
武装に関しても、かなりの軽装だったので、先日の仕返しにも見えない。
雰囲気も明るく、とても、戦いに来たようには見えなかった。
あれだけ一方的にやられた相手に仕返しするのに、こんな軽装で明るい雰囲気で居られるわけが無い。
なので、村人は、さほどこの軍を恐れなかった。
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辺境国同士の戦闘ルールについて
辺境の小国同士では、焼き討ちとか、皆殺しとかしません。
辺境一帯は、”今日の敵は明日の友”。
今回の戦闘も、デルデの先方としてランデルが動いているだけ。
目的は偵察と、嫌がらせ。
この村の人達も、ランデルがこの村を狙っているわけではないことを知っています。
とはいえ、決着がつくまで兵同士が戦いますから、死人は出ます。
辺境国同士の戦いでは、基本兵だけで勝敗を決める。
怪我した兵にとどめは刺さないという、暗黙のルールがあります。
そのかわり、怪我人が戦闘に参加してはいけない。
(今回の戦闘には再登場しないことが前提で、見逃されている)
負けた方は戦争終わるまで武装解除。治療に専念するという建前がある都合、
しばらくの間畑仕事もできなくなるので、国力的に損害が大きい。
今回の場合は、ランデルに対抗する兵力が無いので交戦前に逃げる。
そのため、トルテラが勝利したとき、武装解除して捕虜として捕まえておいても良かった。
武装解除した兵を殺すのはご法度だが(常識の範囲内で)、兵を返す見返りを要求してもかまわない。
ダイランカラハヤ(ダイターンカムヒヤ)は、ラハイテスを何故捕らえなかったのか
と言っていますが、大国視点だと大将を討ち取るのが通常だからです。
大国は、兵の補充は効くので将をとる。小国は、兵が労働力として重要なので兵を捕る。
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村人視点だと、こうなる。
元々、この村が欲しいなら何時でも取れる。
そして、取ったところでベリクハスタから兵が来れば、ランデルは撤退することになる。
わざわざ手間かけて取るほど戦略的な価値が無い。
そもそも村から見ても、老人は突然やってきた。老人が訪れる数日前に知らされたばかりだった。
それを察知して、軍を差し向けたのだから、はじめから、あの老人がターゲットだったのだ。
よく考えれば、元から変だった。まさかランデルが出てくるとは思わなかったが。
村には、かなりの報酬が入った。
その報酬を使って、老人をもてなせと言う意味だが、ダルガンイスト側とベリクハスタ側の両方から入り、かなり美味しい話だった。
とはいえ、そもそもこの村に、重要人物が来ることは無い。
ところが、たった3人の急な客の来訪を、何故かランデルが知っていた。
※元々カタイヤが網を張っていたのもありますが、ダイターンの動きが目立ったからです
トルテラが滞在していたこの村は、ベリクハスタの勢力下にある。
ベリクハスタとデルデは敵対しているため、戦争のたびにランデルに脅かされてきた。
そのため、村人たちはランデルを嫌っていた。
※皆殺しにされるとは思っていないので、嫌う程度です。
最悪でも、村を捨てて逃げますという態度を見せれば良い。
それでも、稀に死人が出ることもありますし、好きなわけがありません。
村人は、避難を進めていたので、老人が一人で大軍に向かって進んでいく後姿を見て、これで見納めになるかもしれないと思っていた。
村長(区長)は、予め、老人の身に危険が迫っても一切の責任を負う必要は無いというお墨付きをもらっていた。
とは言え、村を守るために1人で投降させたというのは人聞きが悪い。
捕まっても、いずれ解放されれば問題無いが、この場で殺されたらどうしようかと、凄く心配していた。
というのも、どうも、あの老人は抵抗する気が有るように見えたからだ。
何もせずに、大人しく掴まって欲しいと言うのが村長の願いだった。
避難した村民たちは、老人がどうなったか、村がどうなったか、いつになったら帰れるのかを心配していた。
結局、あの老人が来たから村に軍が来たわけで、迷惑と言えば迷惑だが、逃げずに一人で向かっていったことで、その思いは相殺していた。
村人が避難した後、老人の付き添いの6人ほど(アイス、リナとキャロと部下)は、逃げる気は無さそうに見えた。
避難が終わるまで待って、最後に村を離れるつもりだった者達は、逃げるよう説得してから自分たちも逃げるつもりだったが、喜んで観戦しているように見えた。
そして、説得が終わる前に戦闘が始まってしまった。
ところが、兵は一人も村には向かってこない。
そして遠方では兵士が宙を舞う。
付き添いの者たちは、こうなることを知っていたかのようだった。
数秒おきに兵士が宙を舞う。
ところが、兵は飛ばされても、起き上がるとまた攻撃に戻る。
老人は兵力を減らすつもりが無いように見えた。
あの老人は何をしているのか?
そう思いつつ見ていると、兵たちはだんだん勢いがなくなり、攻撃を諦めたように見えた。
投げ飛ばされても、しつこく戻る兵が、だんだんまばらになると、指揮官を盾ですくって捕えてしまった。
すると、兵は攻撃を諦めた。
勝ってしまった?
攻撃が止まると、老人はそのまま戻ってくる。
1人で出ていき、あれだけの大軍を蹴散らして生きて戻ってきた。
だが、妙なことに、指揮官を捕らえたはずが、解放してしまった。
そして、ランデル兵も、そのタイミングで既に退き始めていた。
この戦闘の話は、わざわざ言いふらす者があまり居なかったため、ランデル兵から直接聞くまで、外部の者は知らなかった。
単に、ランデル軍が老人に負けたという話だけが広まり、いろいろな憶測を呼んだ。
避難していた村人は、この段階で呼び戻されたので、隣の村に着く前に戻ることとなり、隣村でも、それほど大きな騒ぎにはならなかった。
1人で蹴散らした……というのは事実であり戦果は凄まじいが、戻ってきた老人を見ると良く生きて戻れたという見た目だった。
老人は全身血まみれだった。ランデルの兵は血を流していないので返り血ではない。
深手はないものの、療養のため、引き返すか、この村にしばらく留まるか、いずれにしろ熊狩りは失敗。
ターゲットを変更して、村人たちで狩れるような普通の熊に変更しようと思っていた。
ところが、血を洗った服が乾いたら、熊を倒しに行った。
連れの女も、さほど心配した様子もなく、そのまま出て行ってしまった。
帰りにまた寄るかもしれないと思って待っていたが、灰色の悪魔を退治して、直接ダルガンイストに帰ったという情報を持って、案内人3人(ヒヤト、ツルダイ、ノーラ)が村に戻ってきた。
娯楽がろくに無い世界で、熊狩りの話の内容は衝撃的だった。
3人はたちまちヒーローになった。
村人は、しばらく滞在を望んだが、2泊すると、一連の出来事を報告するため、ベリクハスタの西の都アラクラムに向かった。
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そして、老人の配下に加えてもらうための鍵と出会う。
ラハイテスと、ランデルの兵が、老人を追うと、老人の配下の者に会った。
その者に話を付けてもらい、獲物の運搬をすることになった。
※キャロさんです。老人の配下でも無く、老人の意向は無視しています
その熊は、極端に巨大で、山中から短期間で運び出すには、100人規模の人手が必要だった。
熊を運ぶとき、兵たちは既に老人の配下に付いているつもりだった。
一方で、老人自身は、”ちゅうかまん退治の儀式を見たら帰れ”と言っていたという。
兵たちはせっかく出て来たのに早々に帰るのは嫌だと思っていた。
仮設とは言え宿舎を作ったし、警備の仕事が発生し、結果としては帰らずに済んだのだが、
元々、兵たちは、老人を慕っていたが、老人本人の意向は、あまり気にしていなかった。
※おっさんの不幸がどんどん加速していく理由です
ちゅうかまん迎撃で老人に関する出来事が話題になり、熊狩りの様子も、この頃既にはかなり詳細に情報が出回っていた。
案内人は、細かなことを言えば同じ村の出身ではないが、勢力で言うと、ベリクハスタの勢力圏内の者達だった。
3人同行しているが、とにかく、知りすぎていた。
ベリクハスタは、情報が漏れることを防止する意味に加え熊狩りの案内人として老人と一緒に行動した3人をアラクラムに呼び寄せ、他国との取引材料に使った。
なので、現在は自由に接触できないが、熊狩り直後に、村に戻って散々人々に話をしているので、大筋では話は伝わった後だった。
詳しく話すと、本が何冊も書けるほど細かいので、話で伝わっているのは一部の情報だけではあるのだが……
熊狩りが行われた場所は、すぐに特定された。不自然に山の中に道があったから。
熊を運べるサイズの荷車を通すのに、木を切り倒す必要があったため、その跡が残っていたのだ。
しかも、その切り跡が不自然なものだった。邪魔だから折っただけで、木は放置されている。
わざわざ、木を切り倒したのは、そのサイズの荷車を通すためで、熊を運んだ証拠になる。
これは案外重要で、ランデルの兵が、老人の配下に入った経緯を知るうえで、その出来事が有ったか無かったかで、解釈が変わってきてしまう。
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熊狩りに関しては、熊を狩ったという事実だけわかれば問題無いのだが、耳に入ってくると、ついつい聞きたくなってしまう。
熊狩りは、少人数だが非常に詳しいものが居た。熊狩りに同行した案内人だ。
その案内人とは直接接触できないが、老人の見張りとして追跡していたランデルの偵察兵の2人が、実際に熊と老人の戦いを、少し遠目ではあるが目撃していた。
そのため、老人と熊との戦いの様子は、少し遅れてランデルの兵にも広まった。
老人には、案内人と付き添いの女が合わせて5人付いていた。
付き添いの女たちは、戦闘には一切参加せず、必ず老人の背後に回り、熊の目標が老人から外れるのを避けた。
その動きは、偵察兵から見ると妙な行動に見えた。
※付き添いの女は近くで見たい。案内役は、帰るに帰れない
熊は恐ろしく巨大で、巨大な老人よりも遥かに巨大だった。体重に数倍の差があっただろう。
ランデルの偵察兵からは、いくら老人が大きく強くても、それ以上に大きい熊には勝てないように見えた。
ところが、最初の熊の突進を弾き返し、熊が驚いていたように見えた。
だが、途中で老人が盾を失ったのが見えて、さすがにダメかと思ったが、木を挟んで熊と対峙した後、熊が吹き飛ぶのが見えた。
どうやったのかはわからなかったが、熊が殴り飛ばされて斜面を落ちて行った後、何故か老人が豪快な空振りをして、その後は窪みに入ってしまって見えなくなった。
恐る恐る、見えるところまで進むと、既に決着はついていた。
このときは、老人も相当疲れて見えた。
このあと、ランデル兵の本体と合流する。
楽々勝ったようには見えなかった。まあ、付き添いの女は、勝って当然のような態度だったが。
老人は、ランデル軍と戦うより、熊相手の方が苦戦して見えた。
ところが、妙なことを耳にした。
付き添いの女は、本当は、熊を倒すのはさほど難しいことでは無く、捧げものにするためには、手段に制限があった。
それが難しかったのだと。まだ何か奥の手を残していた。
付き添いの女の一人がアイスなので、熊狩りの話も気が向けば話してしまう。
アイスの話はだいたい意味不明だが、それをきっかけとして、話が広がっていくので、調査する側からすると案外役立っていた。
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その当時、ランデルの兵達は、勢いで出てきてしまったものの、これからどうなるのかさっぱりわかっていなかった。
その時点では、この捧げものを、どうやって、何に使うのかというのが、ランデルの兵達の大きな関心ごとだった。
人力で禄に道も無いところで獲物を運ぶというのは、途轍もない重労働だった。
それでも、苦労して熊を運んだ熊を何に、どうやって使うのかを考えるとわくわくした。
ところが、あっさり判明した。竜が出て、一口で食べてしまったのだ。
竜が来るとき、恐ろしい気配がする。
そして、さらに驚くことに、さらにもう1頭竜が出現し、城壁下で2頭の竜が争いを始めた。
このときの竜は現在では名前が判明している。ディアガルドとグリアノスと呼ばれる竜だ。
老人は、出てくるのは1頭だと思っていた。そして、その争いを止めに行った。
2頭が争っているところに近付くのは危険だと思い見ていると、老人はあっさり踏み潰される。
このとき、老人の(自称)妻たちは、それほど反応していなかった。
おそらく、(自称)妻たちからは死角に入っていて、見えていなかったと思う。
後ろに下がる竜にあっさり踏み潰されたので、わけがわからず、そのまま見ていると、竜が足を退けると、すぐに老人は起き上がった。
※足の裏ではなく側面、尻で潰されたと言った方が正確かもしれません。
短時間の出来事だったので、漠然と、あれで無傷なのかとだけ思った。
その後、あの恐ろしい竜が出た。
※”26-8.”かれいしゅう”語り継がれる”に出てくる、踏み潰されたイメージは、
ランデルの兵のものでしょうか?
そのあと、アレが出た。
竜を見たのもはじめてだったのに、もっと凄いのが出た。
ついさっき、死の予感を感じた竜の気配が可愛く見えるほどの凄いやつだった。
そのとき、ランデルの兵達は何が起きたのかわからなかった。
その巨大な竜は、恐ろしい声で吠えた。
腰を抜かして動けないものが続出するが、助け合い、とにかく、その場から距離をとる。
それを見届けると、巨大な竜はサークルに潜り、反対に、足と尾が出た。
巨大な竜の尾の一振りで、あの巨大な竜2頭が吹き飛ばされてダルガンイストの城壁に当たり一部が崩れた。
竜は去り、老人は戻ってきた。
竜を恐れた一部の兵は、ランデルに逃げ帰ったが、逆に珍しがって見に来る者や、一度帰ったのにまた城壁に戻ってくる兵が出たりと、入れ替わりが激しかった。
兵達にも、どうにもわからないのが、なぜ、そこに滞在することができたのか。
そこは、ダルガンイストの玄関先なのだ。
ダルガンイストの兵は、老人のための仕事をしていたし、こんな場所に陣取って誰も文句を言わないので、ランデルの兵は、老人がダルガンイストの少し偉い軍人なのだと思っていた。
ところが、実際は本当に無職の老人だということが判明する。




