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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
31章.神殿消滅(1)壊滅的な何か

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31-7.神様の秘密を暴くのはやめてください(19) おっさんの恥ずかしい秘密 カタイヤの策略

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


酒に酔ったランデルの兵士は、最後はだいたい、何回投げられたかの投げられ自慢になる。

聞き手は、結局、その話ばかり聞くことになる。


老人はたった一人なのに、壁のようだった。

最前列の兵から見ると、はほとんど壁、後ろからでも肩から上は見える程度で、ほとんど縦で隠れている。

その盾がほとんど壁に見える。


兵たちの並びや、老人の盾の大きさ、間合い。

何度も聞くと、頭の中に、再現画像が見えるようになる。

兵士の叫び声が頭に響き、老人が盾で薙ぎ払ったあとの戻り動作で発生する風さえも、実際に体験したことかのように感じられるほどに。


その兵が、その時、どの位置に居て、何を見て何を感じたかを調べていくので、何日か別々の兵士に状況を聞いていくと、下手な者より全方位で見えてしまう。

それでわかるのは、死角はあるということ。

一角を薙ぎ倒す間、別の場所にいる者は攻撃し放題になる角度が存在する。


そこがまた悩ましい。


テントに戻ってから、話を総合して、老人の強さの検証をする。


「撃退する方法はあると思うか?」

「考えたが、無理そうだ」、「いや、無理だろう」


即答だ。


誰でも同じことを考える。もし戦うことになったらどうするべきか。

近隣国以外で、ここに調査団を派遣できるような国は、ランデル以上の兵を集めることができる。

少なくとも数の上では。


ランデルの兵は強い。

同じ人数なら、同じ方法で攻撃しても、同じ結果かそれ以下になるだろう。


だがやり方次第でダメージを与えられることはわかっている。


「戦闘後は、かなり出血していたと言うから、当たれば少しは効く」

「それだけが救いだな」

話に聞いた範囲ではあるが、攻撃はほとんど通らなかったが、完全に囲んでいれば、攻撃全てを防がれることは無い。

老人は、戦闘後、かなりの出血をしていたと言う。


だが、それは、相手が手加減してそのレベルだ。

逃げ場を無くすために密集した状態からはじめたので、そうなった。


「密集して包囲は難しい。密集せずに戦うとどうなるだろう?」

「ああ。離れていると、どう動くのだろう?」


通常、周りを隙間なく固めたところから戦闘が始まることは無い。

遠巻きにし、槍で間合いを稼げば一度に投げ飛ばされる人数を減らすことができる。


ラハイテスの兵との戦いでは、完全包囲した状態から始まった。

攻撃範囲内に兵士が居たから、老人はその場からほぼ動かなかった。

密集して囲んだから、その場から動かなかっただけで、距離ができれば動くだろう。

どこに動いて誰を倒すか考えるくらいなら、指揮官を狙うはずだ。

そして防ぐ手はおそらく無い。


「指揮官を囮にすれば……」

「走るのも、凄く速いと言ってたな」


その老人の移動速度は、徒歩で馬の追っ手を振り切るほどだと言うから、馬で全力で逃げても捕まる可能性がある。

指揮官が全力逃走。そんな状況でうまく誘導するのは無理だろう。

※馬での追跡は”12-17.子を産む女、家族(後編)”参照

 もしかしたら、真面目に走ると、(長距離なら)馬より速いのかもしれません。


「囮も難しそうだな」

「人数で押しきるとしたら、何人必要だろう?」


密集して固める人数を増やすとどうなるか。密集すると一度に攻撃可能な人数は飽和する。

100人で囲んで無理なら1000人でも、大差無いかもしれない。

相手が疲れるのを待てばと言っても、ランデル軍との戦闘後、息も上がっていなかったという。


「疲れるのを待つのも難しいか」


「ああ、それに、疲れたら、手加減するのを諦めてしまうかもしれない」

「手加減されなかった場合の損害はどの程度か」

「手加減される状況で戦った方がマシ」


恐らく手加減しなければ、兵は一撃で戦闘継続が難しい状態になる。

手加減するにしても、もっと死なない程度に痛めつけることはできそうだ。

そんな状況であれば、兵は逃げ出すかもしれない。


「手加減する条件があるかもしれない」


なぜ手間をかけて、そこまで手加減したのかが分からない。


「やっぱり、その老人が何を考えて戦ったのかわからない」

「絶対に勝てない相手だと言うことを示したかったように思える」


老人の目的がわからない。

確かに中途半端に追い払うと、再度襲撃されるかもしれない。

その可能性は取り除いた方が良い。


だが、絶対に勝てない相手だと思わせることができれば良い。

怪我をさせずに、絶対勝てないことを理解させるのは、とても難しい。

2回、3回飛ばされて、やっとわかる。

その間に老人は散々槍を受けた。

※剣で応戦したものも居るが、ほぼ当たらなかった。


「だが、なぜだ? 当たれば無傷ではない。怪我はする」

「なぜ、そこまでして手加減したのか……だろ」


その理由が見つからない。


「わからないな。なんでそんな戦い方をしたんだ?」

「ランデルの兵が言ってたことが正解なのかもしれないな」


「あれか……確かに、他に答えが見つからない」


なぜ、自分が怪我をしてもランデル兵を無傷で帰そうとしたのか。


もちろん、ランデルの兵には直接聞いた。


ランデルの兵は、だいたいこう答える。

”神様だから”或いは、”人間が好きだから”

とは言え、それが正解にも思えた。

それだけの力があれば、もっと簡単に撃退できるのだ。


実際、戦闘後、ランデルの兵は老人に好意を持った。少なくとも興味を持った。

だから、ろくに準備も整えずに老人を追った。

戦闘が終わった時点で、老人を敵とは見なさなくなっていた。


調査員は、最初は、そんなバカなと思いつつも、何人もの兵士が同じことを言うので、戦って相手に好意を持つと言う現象が存在するのかもしれないと思い始めていた。


だが、これを国に報告すると、ますます報告内容に対する質問が増えてしまう。


聞いた話を書面にまとめると、連絡役に渡す。

報告書についての問い合わせが、毎日増えていく。


もう説明が面倒になって、”現在のところ不明、継続して調査中”と返答する。

そして、追加で調査員を出すと、その調査員もしばらくすると”現在のところ不明、継続して調査中”と返答するようになった。

※結局少し偉い人が見に来て、改善指導して帰るが何も変わらない


========


結局、その後、ランデルの兵たちは老人の配下に入る。

その話を聞くと、老人は、元から無傷で兵を手に入れたかったように見えるが、実は、老人は兵を追い払っただけで、手下にしようとはしなかった。


老人は去り、追ったのは兵の方だ。これが聞いていた話と大きく違っていた。


この調査団の知る限り、元々聞いていた話では、

”ラハイテスは戦闘で一方的に負けて、老人に降った”ことになっていた。

だったら老人が手加減した理由にも納得だ。

自分のものになる兵を無傷で手に入れたかったのだ。


ところが、戦闘後、ラハイテス率いる兵は、戦闘後ランデルに戻った。


老人は邪魔をするなと言った。


まず、老人の行動が意味不明だ。配下にする気も無いのに、無傷で帰す。意味が分からない。


ランデルの兵が、老人の配下になった経緯は、さらに謎に満ちて見えた。


なぜか、ラハイテスと兵たちは、再度、老人を追ってランデルを出ている。

老人と再戦のためではなく、老人の指揮下に入るためだ。


兵が老人に好意を持った。仮にそうだとしても、国が兵を手放すわけがない。


これがもっとずっと少ない少ない人数だったらわかるのだが、主力がごそっと抜けた。

ランデルは小国、元々無理して集めた兵。


行軍に追従できる体力を持った者の大半が、出て行ってしまったことになる。

残っているのは二軍。若しくは、体力が落ちた中年、或いは集落から出ない男性による守備隊。

※この世界には、基本男性の兵士は居ませんが、小国の場合、守備隊の要は男性です。

 (戦闘に参加した男は負けると相手のものになるというルールがあり、

  攻撃を受けにくい地域を作り出すことができます)


ランデルは、(人口の割には)守備でも強固ではあるが、利き手を奪われたくらいの打撃だ。


細かい経緯は不明だが、何かしらの取引があったと考えるのが妥当だろう。

多くの国の調査団は、そこに辿り着いていた。


取引の内容が重要だ。

とはいえ、内容はだいたい想像できる。


ラハイテスと主力の兵を差し出して、ランデルの庇護を約束させた。

それ以外に考えられる理由がない。


そして今となっては、ランデルは、一番大きな竜を自国の竜、ラハイテスを、その竜に仕える者としている。

問題はいつから、その計画が練られていたか?と言う方に興味は移っていた。


※実際には、この誤解を生むのがカタイヤの狙い。策略です

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