31-5.神様の秘密を暴くのはやめてください(17) おっさんの恥ずかしい秘密 大国視点
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複数の集団が、同時に行動しているため、各集団視点の動きを投稿していきます。
そのうちの”大国視点”のお話です。
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一方で、ラハイテスと会談が叶った国も、会談の内容は、妙なものだった。
そもそも、現在のラハイテスの立場も微妙なところにある。
竜が作ったという新たな関所近くに建てられた宿舎は、ランデルから、やや離れた場所に有り、連合側から見て関所の外側にある。
ここを攻められて、関所を閉じられてしまえば、逃げ場がない。
もっと言ってしまえば、例えば、連合とデルデ側が共同で当たれば、挟み撃ちに遭う危険な場所だ。
この関所を攻められれば、必ず戦闘に巻き込まれる。
関所は容易には落ちないだろうが、関所がどうなる前に、戦いに巻き込まれる。
平時には良い場所かもしれないが、戦闘に対する備えが無さすぎる。
※良い場所に移したのではなく、とりあえず滞在できる拠点を作っただけ。
さらには立ち退きを要求されている状態で、とても、良い場所を見つけて
移動する余裕がない。
そして、連合装備の兵士とランデル装備の兵士が入り乱れている。
経緯はわかる。連合の兵士が移籍しているためだ。
無理やり移籍になれば、不満が態度に出る。ところが、そんな風には見えない。
余りものを押し付けたどころか、統制のとれた隊まで存在する(元騎士隊)。
仮に、元々士気の高い部隊であっても、こんな場所に配置されたら、兵は落ち着かないと思うが、兵たちは活気があり、士気も高く見える。
物資も豊富なのだろう。兵士たちに疲労が見えない。
この様子を連合外から見ると、連合内に強力な後ろ盾があるようにしか見えない。
ところが、会談では、強力な後ろ盾となる国の存在は明らかにされず、ランデルの立場を説明するばかり。
話を聞く限り、ハスクバハルに喧嘩を売ることができる根拠がない。
「それでは、現状通り、デルデに戻るつもりもなく、連合入りもしない方針というのですね」
「先日の会見では”多少の手違い”はありましたが、
我々は、デルデに戻りはしません。連合にも」
ラハイテスは、遺憾の意を心をいっぱいにしつつも、それを表には見せず、冷静に答える。
”多少の手違い”と言うが、実際はそう言うレベルの話では無く、スワレンが勝手に喧嘩を売ってしまった。
それを今、配下の独断だと言ってもどうにもならない。
その場でスワレンを処罰し、ハスクバハルに詫びるという手はあったが、そのタイミングは逃してしまった。
今更どうにもならないので、開き直るしかない。
まあ、当のスワレンが開き直っているのだが。
開き直れば、開き直ったで当然ながら、(開き直っていられる)根拠は何かと問われる。
「ハスクバハルは大国。ランデルが単独でどうにかなるものでしょうか?」
問われたところで、答えは無い。
なので、濁して答える。
「何かあれば、我が主が戻ったとき、それなりの行動をされるでしょう」
結局のところ、これは、その例の老人頼みと言っているだけだ。
これを聞いて、それ以上掘り下げるのは諦める。
「我らも、敵対する気はありませんので、その点、御主人にも、お伝えいただきたく」
まあ、こうは言うが、本心としては、様子見の意味である。
ランデル本国にも、探りを入れるが、”一番大きな竜”はランデルのものだとランデル本国は主張している。その上、ラハイテスは、その竜に仕える存在であるという説明をするのみ。
この会談の前後、ラハイテス配下の兵たちの様子を探る。
そこで、編成や士気の高さを知ったのだが。
このランデル軍の居留地は、人の出入りが多く、様子を探るのは簡単だった。
この兵士たちの士気の高さと、強気な態度に対して、ラハイテスのあのキレの悪い説明のギャップに、違和感を持つ。
”一番大きな竜”に仕える姫、その本人であるラハイテスは、あまり大きなことは言わないが、その割に、兵たちも、副将も、その軍自体がトルテラの配下であり、何かが起きれば一番大きな竜が来ると信じている。
そして、ハスクバハル相手に喧嘩を売ったのは、スワレンという副将で、元はダルガンイストの軍人だが、トルテラという老人に付いて移籍した。強気の根拠は、その老人の加護。
とはいえ、実際に居るところを見せることができるならともかく、なにも出なければ潰される。
故に、”何か他にも理由があるはずだ”と考えて探るも何もない。
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ランデル本国はもっと酷い。今は不在どころか、トルテラが来たことも竜が出たことも無い。
スワレンが先走った、或いは、ダルガンイストからランデルを切り離すために行った計画……にしては、ランデル本国が、”一番大きな竜”を自国の竜と宣言している。
何が真実なのかさっぱりわからない。
妙な消化不良感が漂っていたが、このタイミングで地味な大事件が起きる。
このタイミングで、トリドール暗殺未遂事件が起きた。
トルテラの庇護下にある女が襲われたというだけで、ダルガンイストが警戒態勢、ダルガノードには避難準備指示。
なんと、あのダルガンイストが、報復を恐れ、緊急事態に入ったのだ。
このダルガンイストの反応が、ランデルの強気にお墨付きを与えてしまった。
アンタッチャブルの存在。
そして、この事件をきっかけに、ようやくダルガンイストの竜の扱いが判明した。
ダルガンイストは、竜を自国の力として見せびらかしたわけではなく、ダルガンイストも竜の襲撃を恐れている。
このあたりの動きがおかしいので、調査が過熱していくことになる。
傍から見て、矛盾して見えるのも無理は無い。
結局のところ、ただでさえ中心人物であるトルテラが失踪し、舵きりが難しくて困っているところに、ダルガンイスト主催の説明会で、スワレンが喧嘩を買ってしまったことで、ダルガンイストが一気にランデル切り捨てに向かってしまった。
その判断の切り替わりの事情を知らないと、非常にわかりにくい動きだった。
ダルガンイスト最高司令のトーレバーナは、トルテラ失踪後も、ランデルとの関係は緩く継続していこうと考えていた。トルテラが帰ってくる可能性を考えると、切り捨てるのは難しかった。
ところが、ハスクバハルに喧嘩を売ってしまうと、ランデルと仲が良いと思われると、いらぬ戦いに巻き込まれる。
そのため、早くランデルを遠ざけたかったのだが、関所近くの居留地から追い出すことに失敗してしまった。ランデルの兵達が、その場所を離れたがらなかった。
そして、城下町と関所前の居留地の間の通行を止めることもできず。
トーレバーナは、頭を抱えていた。
もちろん、強引に関所を閉じることはできるが、相手がどんな手段を持っているかがわからない。
関所を竜に作らせたのはリーディアだという証言もあった。
謎の竜の使いと言うあの女も、リーディアたちと共にいることが多い。
トルテラ不在でも、竜を動かす可能性がある。
ところが、トーレバーナ失脚を狙う派閥は、なぜ関所を閉じないのかと危険を煽る。
そこに上がってきたのが、(自称)トルテラの妻たちによる、トルテラ捜索だった。
トーレバーナは、とにかく、あの老人が今どこに居るのかを探し当てて欲しかった。
喜んで、その計画に協力した。
費用は必要なだけ使って良いと言ったが、後から驚くことになる。
(驚いただけで、無駄遣いでは無いのだが)
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この時点で、ランデル(ラハイテス)は、アルバントのサジードとの会見後だったが、アルバントとランデルに直接の交易路も無く、アルバントが後ろ盾になるには弱かった。
アルバント自体は強国だが、ランデルとアルバントは勿論のこと、アルバントの属するムーンベイズとランデルも隣接していない。
アルバントが来る前にランデルをつぶしてしまえば終わってしまう。
今のところ、アルバントは外野でしかないのだ。
ところが、日が経つにつれ、だんだんと、ランデルが攻め辛くなっていく。
新しくできた関所近くに、居残っているラハイテスの軍勢は、ピンチに陥れば、トルテラが必ず助けに来ると信じていた。
根拠は、その神様は、兵たちの名を覚えているから。
ダルガンイストのあの反応と、不利な場所に居るはずの関所近くの駐留兵の強気と士気の高さが繋がって来る。
もしかしたら、本当に出るのではないか?
むしろ、身内のピンチに出てくる存在なのではないかと、不安になって来る。
”ちゅうかまん”迎撃戦でも、予定外の場面で出たのだ。
そんなものを敵に回したくない。
ここに来て、ランデルを分析する者達の評価が変化してきた。
実は本当に、どの国の後ろ盾も無く、トルテラと言う老人に守られているのではないかと。
そして、ピンチに陥ったとき、本当にアレが出るのではないかと。
もはや、ランデルを恐れて、自分から攻め込もうという国は少なくなっていた。
その老人が助けに来る可能性がどれだけあるかと言えば、少ないように思うが、もし出たら割に合わない。
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後方の、対連合情報担当も、いつもと物の流れが違うので驚く。
今、ダルガンイストが全力で物資をかき集めている。
商人に一斉に声をかけた。一気に商人がダルガンイストに集まっていくのがわかった。
この世界は、普段は、ほとんど変化が無く、災害や、戦争の情報が行き交う程度で、目新しいことはあまりない。
物の流れを見れば、何が起きるかは予想できる。
不作でも無いのに急に食料を集めだしたら、通常は侵攻準備だ。
軍を動かすには、莫大な物資が必要になる。
今現在、ダルガンイストや、その周辺の国が物資を集めている。
その数字を普通に見ると侵攻準備なのだが、視察団からの報告で、何が起きているかはわかっていた。
竜を見るために見物人が殺到し、交通が破綻し、そのに集まってきた人々の食料が足りなくなり放出した。
普通に考えて、そんなことはあり得ないのだが、視察団が現地入りしていて、その状況をある程度見ていた。
見物人が殺到し、渋滞で人々が足止めされたため、備蓄を配って使ってしまった。
そんな話は聞いても誰も信じないだろう。
だが、もう既に、世界の広い範囲までその情報は知れ渡っていた。
実際に各国の視察団がその現場を見て知っていたから。
この世界にあれだけの人が溢れるイベントが他にあるだろうかと思うほどに人が集まった、そのせいで交通が完全にマヒし、ダルガンイストや周辺の備蓄を放出する破目に陥った。
ダルガンイストは、”危ないから来るな”という案内を出した。ところが、人が集まってしまった。
過去の例が当てはまらない事件が起きている。
そして、後方組にとって嫌な情報が届く。
渋滞は結果として、街道の大幅拡大に繋がり、今後連合内の流通が改善される見込みとなった。
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急激にいろんなことが起きて、情報の価値が上がった。情報収集が重要になった。
元々、この世界でも、情報が重要であることは確かなのだが、タイミングを掴むという意味合いが大きかった。
今回は、全く異なる。新たな知識を増やすという方向だ。
今まで、おとぎ話レベルだった話が、現実になってしまったのだ。
視察団は、当初ダルガンイストの閲覧場所提供を受け、竜と”ちゅうかまん”を見に来た。
竜と”ちゅうかまん”の実在を確認するため。
もし実在した場合、どれだけの脅威になるかを調べるために。
正直なところ、あまりあてにしていなかった。
そのため、まず、正確な日程で”ちゅうかまん”が出たことに驚く。
そもそも、”ちゅうかまん”の姿を見た者がいないのだ。悪夢の足跡は知られていたが。
ちゅうかまん自体は、やはり目視できないものの、悪魔の足跡が進んでいく様を見た。
そして、竜。伝説レベルの生き物が、実際に居た。
その巨大な竜を”ちゅうかまん”と戦わせ、それを見せることができるという管理された状態に驚く。
わざわざ遠方から人を呼び寄せ、見せる意味が良くわかる。
脅しだ。ダルガンイストには竜が居て、戦争になれば竜が襲ってくるかもしれない。
ところが、ダルガンイストは竜を管理していない。
大きな爆発が起きた後、グラディオスの目撃情報が伝えられる。
近隣の者なら知っている。
【一番大きな竜・グラディオス】。圧倒的な力を持つ巨大な竜。
竜の王。竜に身分制度があるわけではない。王と認めざるを得ない、圧倒的な力を持つ竜だ。
この竜が居るから、他の竜もやってくる。
もともと、ほとんど目撃されることも無かった竜が、最近になって急に複数現れたのには理由がある。
竜たちは、ある一人の老人の指揮で動いていると言う。
近隣ではとても有名な人物だったが、遠方の国では、この老人の存在があまり重要視されていなかった。
遠方からの知らせで、急遽”ちゅうかまん迎撃戦”の視察が発生する。
主催者はダルガンイスト。
このとき、老人の名は前に出てきていなかった。
そのため、この時点では、あまりその人物に注目は集まっていなかった。
ところが、ちゅうかまんがやってくると、謎の大爆発が起き、遠方からグラディオスの目撃情報が多数寄せられる。
よくわからない女が勝利を告げに来た。
そして、その老人の名を口にした。
”トルテラ”
そんな名前の老人が居る。それ自体は知っていた。
これより少し前、ランデルがデルデを脱退した理由が、その老人を頂点とした新たな枠組みに入ったためだった。そのときの宣言に、その名が入っていた。
トルテラの名前の意味は、トート森の守り神だという。
その、森の守り神の名前が、何故か、森と仲が悪いことで知られるダルガンイストで起きた出来事でも出てくる。
名前はともかくとして、その存在自体は、以前から何度か聞く機会があった。
元々有名だったのだ。
だが、この世界の常識通り、男の老人の名はあまり重視されない。
ランデルは、現在、その老人の支配下にある。だが、その老人は行方不明。
そんな重要人物が行方不明なんてことがあるか!!と思うが、割とよくあることということが判明する。
元々よく居なくなる。見張っていても、逃げてしまう。
そして、不在でも、ダルガンイストがあれだけ恐れる。
連合内や、ダルガンイスト周辺国で、情報を集めると、だんだん状況がつかめてくる。
なぜ森の神様がダルガンイストに居るのか。
その老人は、勇者伝承の上では、先代勇者であり、先代勇者は神でもあるので、人によって、捉え方は異なり、勇者だったり神様だったりするが、重要なのは、森の神様でありながら、勇者伝承のある土地でも受け入れられているという点だ。
結局のところ、ランデルの強気も、根拠は、そのトルテラと呼ばれる老人だ。
いったい何者なのか?
実物を見たことも無い人々には、想像もつかなかった。




