31-4.神様の秘密を暴くのはやめてください(16) おっさんの恥ずかしい秘密 中小国視点(2)
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複数の集団が、同時に行動しているため、各集団視点の動きを投稿していきます。
そのうちの”中小規模国(国、地域、部族)”視点のお話です。
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遠方から見に来たものは、ダルガンイストの国力に驚く。
自然の地形を利用した、難攻不落の巨大な要塞に、常時1000人規模で常駐する兵力。
※実際には、要塞に常駐しているわけではなく、崖上の町に住んでいる人が
多いですが、この世界の進軍速度を考えると、即時対応可能な兵と言っても
差し支えないレベルです。
そして、城壁上には世界最大とも言われる立派な町。
そこに、さらに、今回現れた”竜”。本当に竜が戦いに参加できるとしたら大変なものだ。
なので、力を見せつけたいなら、竜を見せて脅せばよい。
にもかかわらず、ダルガンイストは、それをせず、”ちゅうかまん”迎撃を見せると言う。
そこには何か複雑な事情がある。そう見えた。
何しろ、説明の歯切れが悪い。
あの竜が、なぜ人間の指示に従っているのか、そもそも人間の指示に従っているというのも本当かどうかわからない。
ただし、人間を無視して、あそこに居るだけには見えない。
ダルガンイストの城壁の真下なのだ。
意図はわからないが、これから竜が、”ちゅうかまん”を迎撃するところを見ることができるので、見るのに適した場所を提供しますという。
竜がなぜ、”ちゅうかまん”を迎撃するのかと聞くと、そこが重要な場所だから、そこを守るために戦うと言うだけ。
”ちゅうかまん”が出まかせだとしたら、ただ竜が居ますというだけの話になる。
だったら、竜だけを見せれば良い。
ところが、近隣諸国では、”ちゅうかまん”の存在は事実として受け止められていた。
当然だ。竜は最近目撃されるようになったのに対して、”悪魔の足跡”はずっと前から、時折出現していた。
そして、年々その幅は広くなっていた。以前よりも、厄介なものになっていた。
被害国にとっては、極めて重大な問題だった。
”悪魔の足跡”の上に居て、行方不明になった者も存在する。
過去には、村を直撃したこともあるのだ。
そして、連合内でも”ダルガンイスト”と仲が悪いと言われる”トート森”をはじめとする、連合内の勢力も、予想外にまじめに見に来ていた。
中小国視点では”案外律儀に見守る陣営が多い”と見えていた。
中には、どうにも、その”ちゅうかまん”とやらが実際に出現すると信じているように見える陣営もちらほら。中小国のうちのいくつかの国では、実際に、悪魔の足跡の被害に遭っているので深刻だ。
ただし、”悪魔の足跡”が深刻な地域の者であっても、それを作り出す犯人が”ちゅうかまん”であると信じ切っているわけではなかった。
ただし、実害の大きな人達程、よくわかる。
本当に”悪魔の足跡”が新しく作られるなら、それを作り出すものが存在する。
それを”ちゅうかまん”と呼ぶのであれば、”ちゅうかまん”の存在を認め、迎撃する竜を応援する。
そして、いよいよ来襲予定が近づくと、予定通り狼煙が上がった。
これは、城壁からは良く見えた。
本当に出るのか?と疑っていると、本当に何かが迫ってきているような現象が確認できた。
何か線が迫って来る。”悪魔の足跡”が迫ってくるのを確認することができた。
”悪魔の足跡”は、以前から何本も存在するため、ダルガンイストに来る途中等に実際に見に行ったものも多かった。
あれをリアルタイムで人間の手で作り出すのは難しい。
なので、悪魔の足跡が迫ってくる様子を見れば、何かアレを作り出すものが居ることがわかる。
今まで、悪魔の足跡に手を焼いていた人々は、目撃者が居ないのは、見えないからであることを理解する。
そして、予測通りのタイミングで来た。
もちろん、タイミングが良すぎることから、この時点では自作自演を指摘する声もあったが、後日、悪魔の足跡は本物であると判断された。
(あんな速度で、その長さの悪魔の足跡を再現する方法が無いことに加え、新しくできたと考えられる特徴が大量にあるため。悪魔の足跡は雨風で風化する。新しくできたものは、新しいものの特徴がはっきり見えた)
普通なら、この時点でダルガンイストが、予定通り来たことを前面に押し立てて力を示す……はずが、どうも雲行きがおかしい。
ここに至っても、大きく喧伝する素振りは無い。
ダルガンイストの兵たちも、竜の動きを注視している。
閲覧会と言いつつ、ダルガンイスト自体が、はじめて見る出来事であり、経過を見守っている状況なのだ。
そもそも、ちゅうかまん迎撃の成否にかかわらず、元から竜と関係無い立場を表明するために、この閲覧会を開いたように見えた。
そして、徐々に悪魔の足跡は城壁に接近し、遂に、ちゅうかまんが到着すると、プルエクサと呼ばれる竜が迎撃する。
どこからともなく、大勢の人の声援が聞こえる(VIP席からは、大量の見物人が死角になっているため)。
見えないものと戦っているような動きではある。
わざわざ竜が、戦う振りをするというのも、おかしなことに思えるし、竜の重さがかかっても押し戻せない何かが居るように見える。
「見えないが、何かがあるようだな」
「はい、見えない何かを踏みつけているようですが」
見えない上に、気配もない。
竜は、立ち上がれば気配が変わるくらい、大きな気配を持つのに、相手は気配がない。
ところが、プルエクサの前足が、不自然に宙に浮いているので、あの巨体を支えるだけの何かがそこに存在することがわかる。
だが、プルエクサが押され始める。
そして謎の大爆発。
※VIP席からの様子は”29-19.神様の秘密を暴くのはやめてください(1)”参照
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"ダルガンイストは何かを隠している"。この場に居た大勢がそう思った。
”ちゅうかまん”撃退後、ダルガンイストは、起きた出来事を説明できなかった。
隠しているというよりは、その担当者は詳しく知らないように見えた。
いくら小国の監視担当でも気付く。
これだけの人を集めておいて、何も知らない担当を付けるだろうか?
そして、突如現れた”謎の女”が【一番大きな竜】が指示していること、トルテラが戻っていないことをばらしてしまう。
これでようやく話が分かってきた。
何が起きたかはよくわからないが、ダルガンイストも、何が起きたのかよく理解していない。
ダルガンイストが説明できない理由は分かった。
翌日ランデル会見が開かれたが、ランデルが、ハスクバハルに喧嘩を売った。
それでお開きになってしまったので、各国がラハイテスに会談を申し込む。
ところが、弱小国は、会談に応じてもらえない。
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会談に応じてもらえない中小国は、こう出る。実力行使だ。
”謎の女”に、直接話を聞こう……と。
この頃、アイスたちも、まだダルガンイストに滞在していた。
女たちが、ここに居る間、イグニスも、頻繁に現れた。
あの謎の女、竜の遣いは”イグニス”と呼ばれていることが判明する。
「イグニス?」、「本当にイグニスと名乗っているのか?」
※リーディアが付けた名前で、本人は名前は無いと認識しています。
ただし、イグニスと呼べば自分のことを指しているとは認識しています。
”イグニス”と言うのは火を噴く悪魔の名前で、良い名前ではない。
とはいえ、他に呼び名がわからないので、違和感を持ちつつも呼ぶ。
「イグニス殿、ご同行を。少しお話を聞きたく……」
ババっと行く手を阻む。これでは誘拐だ。
「なんじゃ、お主らは。妾は急いでおるのじゃ!」
「手荒な真似は、したくはありませんが……あだ、だだ、イグニス殿、お話を……」
「邪魔じゃ」
強引に止めようと、進路を塞ぐが、あっさり排除される。
「イグニス殿……お待ちを!!」
イグニスから話を聞き出そうと、捕獲を試みたが、並の人間では歯が立たない。
ダルガンイストの警備隊が実力で止めることができないので、数人で止めようとしても止まるわけがない。
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少人数で挑んで、失敗した団体は1つや2つでは無かった。
それらの国々は結託する。
「なんとしても、話を聞き出そう」
ランデルのような小国に対し、他の小国が手出しをするのは比較的よくあることで、トルテラの自称妻たちや、イグニスも、ランデルと同等の対象という認識を持っていた。
なので、かえって、小国の集まりの方が、直接的な、強引な手を使ってくる。
数人では歯が立たないと思うと、数国で共同して、イグニスの進路を塞ぐ。
「イグニス殿、少しで構いません、お話を」
ダルガンイストの警備が間に入る。
「大事な客人に手荒な真似は止めていただきたい」
と言っても、警備任せにできない質なのが、この2人。
小国連合に捕まったのは、イグニスだけでなく、このときはアイスも居た。
この2人は、警備が居ても居なくても、あまり気にしないタイプの人達なので、警備に任せておけずに飛び出す。
※もちろん、警備が止めてますが、描写省略
「なんじゃ、お主らは」、「何してるんだよ!」
「イグニス殿……お待ちを!! 少しで構いません、お話を」
腕自慢が、ガシッとイグニスと両手を組んで、踏ん張る。
さらに左右に1人ずつ付くが、数秒で決着がつく。
「ぐうううう、」、「なんて力だ」
「妾を甘く見るでない」
イグニスは体重で不利ではあるものの、力はある。捻りあげられて、戦意を無くす。
まあ、力でイグニスの相手になるような人間は居ない。
アイスは、力では負けそうになるが、イグニスが駆けつける。
「お主、力が弱いのう」
「俺は普通の人間だ!!」
イグニスに腕を掴まれると、力自慢の女も音を上げる。
「痛たたた」
腕が立つのを連れて再度行ったがイグニスとアイスに返り討ちに遭った。
……が、何故か話はできた。
「妾は、話をするなと言われておる。あまり変な話をするとトルテラに怒られるかもしれぬしの」
噂に聞いた話と違い、イグニスは意外に口が堅かった。
トルテラは、つい最近も、辺境の小国に熊狩りに来ていた。
大きな熊を捧げれば、竜が動くかもしれないという期待を持っていた。
だが、情報を得るきっかけが掴めない。
ところが、小国側の1人が熊の話をすると……
「トルテラ様から、熊の贈り物を受け取ったとか。その熊と言うのは……」
「熊じゃと!! あれは、妾が受け取るはずのものを、あの女が横取りしおったのじゃ!!」
イグニスが急に怒り始めるので、警備の兵は頑張って止めようとする。
「イグニス殿、勝手に話をされてはなりません」
そう言うと、イグニスの周りを警備が囲むが、小国勢もそれを邪魔するし、イグニスも従う気が無い。
そして、何故かアイスも参戦する。
「トルテラは、俺のパンツ姿が大好きなんだよ!」
「は?」「パンツ?」
いきなりパンツの自慢をされても、何の話だかさっぱりわからない。
「竜には何を捧げれば?」
注意が話に向いたところで、警備兵が割り込む。
「おやめください。これ以上続ければ、入場禁止にしますぞ!」
その一言で、中小国の面々が静かになった瞬間アイスの声が響く。
「一番大きな竜のことが知りたいなら、大鎧の書を読めばいいんだよ」
これに誰かが反応する。
「大鎧の書?」
「妾は一番大きな竜を探して居るのじゃ。どこに居るのじゃろうか」
「だから、トルテラは森の神様だから、大鎧の書はトルテラのことが書かれた本なんだよ!!」
ここまで話すと、もう、周り中から城兵が押し寄せ、小国の人々と、イグニスとアイスを強引に引き離す。
「無理やりにでも引き離せ!!」
小国連合は、次にやったら、出入り禁止というイエローカードを食らう。
話は、多少は聞くことができたものの、アイスとイグニスなので、何の話をしているのか、よくわからなかった。
※情報統制敷かれているのに、気にせず喋るのは、この2人だけ。
同時に、話が通じないのも、この2人。
とは言え、アイスは、トルテラが大鎧であり、森に大鎧の書と言う予言書が存在することは話した。
「大鎧の書というのを調べるところから始めるか……」
「下着姿を好むと言われても……」
小国の人々は、大した情報が得られなかったと思って肩を落としたが、結果的には、この情報は役に立った。
と言うのも、一番情報量の多いダルガンイストで調べ物をすると、勇者から話が始まる。
そして、いつか大鎧に辿り着く。基本的に、勇者伝承には大鎧は出ない。出ても敵としてだ。
大鎧を調べると、勇者の話は出てくる。大鎧を調べた方が筋が良い。
そもそも、大鎧はトルテラなのだ。
アイスから話を聞いた者たちは、その話の価値がわからぬまま、大鎧について調べる。
結果として、他の勢力より先に大鎧に辿り着くこととなった。




