31-2.神様の秘密を暴くのはやめてください(14) おっさんの恥ずかしい秘密 ベリクハスタ視点
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複数の集団が、同時に行動しているため、各集団視点の動きを投稿していきます。
そのうちの”ベリクハスタ”視点のお話です。
”ベリクハスタ”は、ダルガンイストから比較的近いところにある大きな国であるにも関わらず、ダルガンイストとの関わりの薄い国です(敵対もしていない)。
ただし、ベリクハスタは、ハスクバハルを含む、デルデとは敵対関係にあるため、ダルガンイストを含む、連合諸国とは共通の敵を持ち、敵の敵は味方という感じで、どちらかと言うと友好的な関係にあります。
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”スワレン”が”遠方の大国ハスクバハル”に喧嘩を売った後、各国視察団は、調査に追われる。
ランデルのような小国が、ハスクバハルと争いになった場合、勝ち目は全く無い。
トルテラと呼ばれる謎の老人が存在すれば、勝ち目があるかもしれないが、今は居ないと言われている。
ランデルには、″この状況で喧嘩を売ることができる理由”があるはずだが、それが見当たらない。
ランデル側の行動を見る限り、何かしらの理由があるはず。
そう考えるのが普通で、各国各々でそれを調べていた。
ベリクハスタも他国と同様に、その理由を調べていた。
ベリクハスタはランデルがある辺境域の国々とも交流があり、何かあれば噂は流れてくる。
ベリクハスタは辺境域の東側にあり、昔から辺境域で争いが起きた際には援助したり、亡命者の受け入れを行ってきた。
ダルガンイストからも、そう遠くないところにある。
ダルガンイストを含む連合とは、それほど親密な関係では無いものの、ベリクハスタは、デルデとは敵対関係にあるため、敵の敵は味方という関係で、連合とはどちらかと言うと味方に近い関係にあった。
ランデルは元はハスクバハルが属する同盟デルデに属していたため、ベリクハスタからは敵勢力と見做されていた。
それが急にデルデを離脱。
これは、トルテラと呼ばれる男の老人を盟主と仰ぐ新勢力を立ち上げたためだが、この老人が消息不明になった後にデルデの最大国家であるハスクバハルに対し喧嘩を売った。
多くの国の代表が集う場所で、あんなに派手にハスクバハルに泥を塗ったのだから言い逃れなどできない。ハスクバハルが報復できないような後ろ盾があるはずなのだ。
多くの国の人々がランデルがどんな後ろ盾を持って、デルデ側最大の国ハスクバハルに喧嘩を売ったのか非常に興味を持った。
そして、総力を挙げて後ろ盾を調べるが、(傍から見ると)現在一番ランデルと親密に見える”ダルガンイスト”は後ろ盾どころか、ランデルを切り離しにかかっていた。
他にそれらしい、後ろ盾は見えない。
細かなことを言えば、ランデル周辺の部族の入れ替えはある。
少々の集落の変化程度で、ハスクバハルに対抗できる理由には、まったく影響しない。
調査を進めるが何も見つからない。
あるのは単に”ラハイテス”が”トルテラ”と呼ばれる老人に仕えている。
姫の一人ラハイテスが、兵共々、老人のところに来ている。
ただそれだけだ。
そもそも、その時点で弱いのに、その”トルテラ”と呼ばれる老人は行方不明。
既に死んでいるのではないか?
そう思うが、”一番大きな竜”はトルテラが使役する竜であり、トルテラ本人であると言う話もある。
ダルガンイスト城壁下に竜が出て”ちゅうかまん”を退治するという、にわかには信じがたいイベントが行われたときも、実際に竜は出た。
”ちゅうかまん”は直接肉眼では目視できないが、”ちゅうかまん”が通った跡は目視できる。
実際に”悪魔の足跡”もできた。”ちゅうかまん”は実在する可能性が高い。
そして、それを一撃で追い払う何かが存在する。
竜は最近になって目撃される機会が極端に増えていた。
以前は伝説上の存在だったものが、実際に老人の指揮で関所を作る手伝いもしたという。
竜が実在するのはともかくとして、使役可能であるとは考えづらい。
ところが、目撃者が大量に存在するため、それが嘘だと否定するのも難しい状況にあった。
民衆も、竜が実在することを知っていた。
だから、”ちゅうかまん”退治の際に見物人があれだけ殺到したのだ。
出ることを知っていて、それを見たいと思った。それが人々が集まる動機になった。
それが、あれだけの大渋滞を巻き起こした。
”ベリクハスタ”の人々は、竜を見るためにこれだけ多くの人が殺到することさえ、想像できなかった。
連合内の一部地域では、多くの民衆が知るレベルのことを、他の国は知らなかったということになる。
そうであれば、情報を集めるのは難しくない。
現地の人間に訊けばすぐに判明する話だと思っていた。
だが、後ろ盾が見つからないまま、手掛かりも手に入らない。
そんな中、アルバントのサジードが一早く、ラハイテスと会談を行った。
何かがある。無いわけが無い。
民衆が見物に殺到し、ランデルはハスクバハルに喧嘩を売り、アルバントのサジードがラハイテスと会談を行った。
何かがある。ランデルにはなんらかの切り札が存在するはずだ。しかし、それが何なのか全くわからない。
あまりにも不気味な出来事だった。
今回の一連の事件は、とにかく情報が不足している。
一部の国は、”ちゅうかまん”退治で見た内容を報告しに視察団丸ごと帰るが、国力があり、今回の件を重大に受け止めた国では、一部を報告のため帰し、本体は残って調査を続ける国が多かった。
”ベリクハスタ”も、その一つ。”ベリクハスタ”は、辺境国の東にある国。
連合にもデルデにも属していない国だ。
※デルデはダルガンイストから見て南西方向に広がる同盟。
※熊狩りで、ラハイテスの軍勢に襲われた時に、アラクラムまで退くことを提案されていますが、アラクラムは”ベリクハスタ”の都市です。
”16-1.でかい女の竜の妻(12) 熊狩り7 軍勢迫る” 参照
”ベリクハスタ”は、連合と敵対するわけでは無いが、近い割には関わりの薄い地域だった。ただし、デルデとは仲が悪いため、連合と共通の敵を持つ。
それもあり、連合内での行動にも比較的制限が緩かった。
その割に”ベリクハスタ”の調査団の調査は難航していた。
難航してはいるが、通常とは異なる理由だった。
元はと言えば、ダルガンイストからの広報で、実物の竜を見る機会があるかもしれないと言う程度の予想で来ている団体が多い。
”ベリクハスタ”も、そのつもりだった。
ところが、そういうレベルの情報量ではない。
当初8人で来たものの、まともな調査担当は2人。
観光やら警備やら荷物持ちに連絡員といったサポートメンバーを含めて8人。
連合領に入るのは、比較的珍しいので、軽い気持ちで見に来た(ダルガノードの町に観光に来たという側面が強い)。
ところが、それは間違っていた。現在は、調査員10人、連絡員10人の規模まで拡大していた。
※人口が少ないので、20人というのは、調査に出す人数としては戦時中の戦況監視のような人数です
現在は書記官がダルガンイスト城壁外に拠点を構えているので、これを連合内に移設することを依頼していた。
外国での諜報活動になるので、慎重にやっていたが、もはや、そんなことを言っている場合ではない。
情報の争奪戦になっていた。ここで出遅れると優位に立てない。
せっかく、距離自体は近いという地の利があるのに、それを逃す手は無い。
他国が本格的に視察団を増強する前に、拠点を構えて、情報収集をする必要がある。
予算も最優先にと思うものの、本国にその重要性がなかなか伝わらない。
※国境は近いのですが、首都は遠く、方針転換には時間がかかるのです
「いくらでも情報が出てきて、処理しきれません」
「増援を呼べ、増援を。予算もだ」
今までノーマークだったことを嘆く。
「なんで、今までこんなの放置してた!!」
今まで気にしていなかっただけで、膨大な情報が存在するのだ。
城壁付近の住民に話を聞くだけでも、新情報が大量に出てくる。
城壁下は、以前から”ベリクハスタ”の人間も比較的自由に行動できた。
なのに、なぜ今まで放置していたのか。
その上、城下町の存在がある。
一部の人員を城下町に派遣したが、その第一報が届いた。
”話に聞いた以上の規模の町が実在する”
僅か2期(1年)でここまで大きくなった町。
凡その、町の大きさと、住民の数、不思議な井戸の数。学校の存在。
事実上の、独立地区であること。
それは、人伝、噂としては聞いていた。
本当に有るのだ。何故かきれいな水が出る井戸が。
これは、城壁下の井戸でも、水質の異なる井戸があることが知られているが、城下町は、周囲が泥っぽい水なので、その差が激しい。すぐ隣と、全く異なる水質の井戸があるのだ。
この清浄な水が無尽蔵に手に入る。
大渋滞で、とんでもない量の水が使われたが、水が枯れることは無かった。
井戸水が透明なのは、本当に中心の丘の周囲のみ。僅かに外れると、水はいくらでも出るが、茶色く濁った水になる。
元が沼地なので、水はいくらでも出るのだ。ただし、泥っぽい。
その清浄な水の出る丘を中心に何重にも、建物が取り囲むかのように建っている。
町の規模も大したものだが、その活気は、町の規模から想像される規模の数倍というレベルだった。
何しろ、4軍が街を囲んで配置され、そこに駐留する兵が暇な時には遊びに来る。
城下町を視察した集団は本当に驚く。
この町の活気と規模に。
これだけの急激な変化があったのに、今までノーマークだったのだ。
※この時点では、4軍が街を守っていると思っています
この町は、神様が住んでいるので、人が集まってきたと言う。
その神様は、トート森の人達は大鎧だと言い、ダルガンイストの人達は先代勇者だと言う。
だが、指している人物は一緒で、トルテラと呼ばれる巨大な尻尾のある老人だった。
少し前までは、居たのに今は居ない。
会いたいときに会えない。
この世界では、男の老人は、長生きしないと考えるのが普通だ。
長期不在となれば、既に死んでいてもおかしくない。普通はそう考える。
ところが、誰に聞いても、恐らく生きているという。
不在なのに生きていると信じている。
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手分けして情報を集めるのだが、竜の話にしても、結局同じ名前に辿り着く。
”大鎧”、”一番大きな竜”、”グラディオス”、”先代勇者”、”尻尾のある神様”。
これらは、全て同一人物を指す言葉。
”ベリクハスタ”の住民にとって身近な城壁下でも、新たな情報が手に入る。
苦労して秘密を探る必要も無く、多くの人がいろいろなことを話す。
竜はどうやら本当に”トルテラ”という老人によく懐いていて、言うことを聞くという。
ところが、この老人が曲者で、大きな尻尾を持つ。
そして、怒ると竜になるという。
巨大な老人の話は、しばらく前に”ベリクハスタ”にも届いていた。
巨人との死闘で命を落としたと伝えられていた。
巨人が出たのはベリクハスタから遠くない場所なので、実際目にした者も居た。
ただし、巨人との戦闘で、その老人は死んだと聞いていた。
その後さらに尻尾を生やして現れたと言うが、”ベリクハスタ”では、”巨人と戦った巨大な老人”と、”尻尾を生やした巨大な老人”は別人と考えられていた。
時系列的に、巨人が排除された時、老人共々死んだという話が流れ、あとから竜と関係のある男の老人が現れた。
ところが調べると、両方とも同じトルテラと呼ばれる巨大な老人に行きつく。
竜に関しても、城門下に竜が出れば、”ベリクハスタ”の関係者も必ず目撃する。
城を破壊するという恐ろしい生き物だ。
さらには、それを超える超巨大な竜の存在も確認されていた。
それこそが【一番大きな竜・グラディオス】だ。
信じられないのは、その”尻尾の生えた老人”と、巨大な竜が同一人物だと言う部分だ。
その上、その竜が、他の竜と比べても極端に巨大かつ恐ろしい存在で、尻尾の一撃で複数の竜が吹き飛ぶという。
超巨大な竜が、巨大な竜2頭を一撃で吹き飛ばしたことは、これは実際に目にした者も居る。
ちゅうかまん迎撃戦でも、”プルエクサ”が苦戦するものを一撃で撃退するなら、”グラディオス”しかいないだろうと言われていた。
実際に、爆発の前後でグラディオスが目撃されている。
VIP席で見ていた者もわかっていた。姿は見えなかったが、恐ろしいものが来たのだ。
恐ろしい気配が近付いたと思ったら、次の瞬間大爆発が起きた。
あれをやったのは、【一番大きな竜・グラディオス】
あれも、【一番大きな竜】の仕業だとすれば、不思議はないと言う反応だ。
ただし、過去に、【一番大きな竜・グラディオス】が、そのような現象を起こしたという話はない。
それでも、あの竜ならそのくらいしても不思議はない。
人々はあまり、そこに疑問を持っていなかった。
だが、そんなものに変身できる人間が居たとして、誰も恐れていないのは何故か?
さらには、トルテラと呼ばれる老人は行方不明であっても不思議に思われない。
元々よくどこかに消えると言う。
付近の住民に聞いても、こんな様子だ。
「行方が分からないのに、そこには疑問を持たないのか?」
「それが、元々居なくなることがありまして。早くお戻りいただきたいのですが」
現在不在というただそれだけ。
あんな巨大な竜を従えるだけで、その老人は脅威なのに、”一番大きな竜”の力は他の竜の力を圧倒していた。
そして、住民の反応は、怖いではなく”早く戻ってきて欲しい”。
これは、その老人を身近な存在として見てこなかった者にとっては、理解しにくかった。
その老人は、いったい何者なのか?
※勝手にハードルは上がっていきます。
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ベリクハスタには、この調査団とは別に、ダルガンイストの外交官、ダイランカラハヤ(連合名はマーガレット)が説明に行きますが、噂話が大好きな人なので、有ること無いこと好き放題話してきます。
※マーガレットさんは、ダルガンイストを含む連合の内情は話せませんが、おっさんの話を
することは止められていないので、むしろ積極的に話しています。
(情報管理に大穴が開いてますね)




