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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-37.ルルシアを助けに来た老人、その後(30) どっちがファンタジーだ?

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


こいつが、"ち○こ見る子"だ!! 幼くても、お前は、"ち○こ見る子"だ!!


俺の気持ちが通じたのか、ルルがキメ顔みたいのをしたのでイラっとする。


いかん、いかん、俺はジェントルだ。

いくらコイツが、ち○こ見る子であろうと、少女に……でも、この歳なら、そろそろ異性というものを意識できそうだ。

……そのあたりは、俺の世界よりもこっちの方が、厳しかったはず。


だから、イラっとするのはともかく、”ち○こ見られたことに対して遺憾の意を表明する”のは、俺的には正しい行動だ。


くそ、なんか見られると損した気分になるのだ。

俺の感覚では、子供に見せるのは、あまりよろしくない反面、あまりはっきり隠すのもよろしくないだろうと思っていたのだ。

それが、全て無駄になってしまったのだ!!


俺は、こいつが”ち○こ見る子”だと知っていれば、もっと完全(パーフェクト)ガードしたのに。

無念……


とりあえず、遺憾の意を表明する。俺の心の中で。

”拙者、まことに遺憾にて(そうろう)

凄い勢いで打電するイメージを思い浮かべる。


「あっ! ……」

俺の気持ちが通じたのか、ルルが何か閃いたようだ。

「……大ナマズ!」


なんでだよ!! 俺の遺憾の意を察っしろよ!!と思いつつも、穏やかに対応する。

なぜなら俺は紳士だからだ。


「うん、ああ、大ナマズか。……ここには居ないからな」

穏やかに返すことには成功したが、話の方向を考えずに答えてしまった。


「うん。いつか私も食べてみたい」

ああ、これは、必ず戻って来いの意味か。ルルなりの配慮なのか?


だが、実は、石で見えた記憶の中で、ルルも大ナマズ食べていた。

特に俺が何かしなくても、自動的に大ナマズを食べることになる。


森には大ナマズは居ない。

おそらくルルと一緒に、沼地の方に行くのだと思う。


あっちは、なんでも泥臭いが水産物が豊富だ。

まあ、殆どのものは旨くないが、森より食べ物の種類が豊富だ。

旨いものも、いくつかある。

小エビを干したものは、俺には貴重だった。


俺の世界では、人間が力を持ちすぎた。

自然を汚しすぎて、自然の生き物が少ない世界に変えてしまった。

汚すぎて生き物が少ない。異常事態だ。

何でもそうだが、限度がある。

あるポイントまでは増えるほど良いという状態が続くが、限度を超えるとズドーンと落ち込む。


本来生き物は、多少なりとも汚いところを好む。そして、結果として汚れを消費してしまう。

汚れを食べる生き物が居る。


俺には浄化の力がある。あれは死の力かもしれない。

細菌を殺し、見た目奇麗な水を作り出す。あの力の意味は何なのだろう?

俺は死神では無いと思う。

誰かを助けることで、自分が不幸になる種類の神様だと思っている。


死の力なのだろうか?


「奇麗過ぎるところには、生き物は多く住めないんだ」

「え?」


「ここの森も、きれいだから、沼地の方と比べると、本来は多くの人が住むのに適していない」

「本来?」

「本来というのは、元々の姿くらいの意味と思っておけば良い」

「うん。きれいだと人が多く住めないって?」


「大芋が無かったら、ここに人はたくさん住めないだろう。

 畑がそんなに広く無くても、皆食べ物に困っていない」


「うん。大芋は、神殿跡地があるところでしか育たないから、森は竜に守られてるって」


そうか。そういや、神殿跡地があるところで育つ作物だったか。

竜は案外人の役に立ってたんだなと思うが、美味くない。


「ただ、大芋で飢えないだけで、美味しいものが少ない」

「うん」


「大ナマズが居るのは、もっと泥っぽくて汚いところだな」


……………………


きれいすぎる水には生き物は少ない。”水清ければ魚棲まず”。

俺の世界、俺の国には、そんな諺もあったくらいだ。

人の生活も、きれい事だけでは、酷く生き辛いことの例えにもなっている。


現代日本では、自然が残っているのが上流部だから、上流部の方が生き物が多く感じるが、本来は上流部には少なく、下に行くほど増える。

下流部は、人間が占領して、破壊が進んでしまっただけだ。


水は、流れているところが奇麗で、停滞するところが汚れているが、池など、水が停滞している場所の方が生き物が多く生息していたりする。


現在は、池には藻が大量発生してしまうが、あれは異常な状態で、本来はそうはならない。

栄養が豊富すぎるのだ。

アオコが発生すると毒を生成することもあるので、毒を作らない藻でも大量発生させて、取り除く作業を何度も繰り返すなり、不要な栄養を取り去った方が良いのだが、コストがかかるので、放置されている。

まあ、未来の世界では、その問題を解決する方法が発明されるのかもしれないが。


奇麗な水には餌が少ない。そのため、人間の活動が生き物を増やすことも多い。

今は人間が増えすぎて悪影響の方が圧倒的に大きいが、それでも、きれいすぎて、生き物が減る現象が出始めている。


俺の住んでいた時代(2020年頃)にも、既にその現象は出始めていて、瀬戸内海はきれいになった結果、生物が減り始めてしまった。あんな、汚れの貯まりやすい内海であっても、栄養が不足するという事態が発生した。


俺の国は、島国で、大陸と呼ばれる大きな陸地からは分離されていた。

島と言っても相当大きなもので、大きな島の間の領域に、瀬戸内海と呼ばれるエリアがあった。


そのあたりは、まだ、自然が生きていて、浄化能力が高いのかもしれない


俺が住んでいたのは、俺の国の首都に近いところで、東京湾という湾に有る都市だった。

湾というのは大きな入り江のことだ。


そこはもう、きれいすぎて生き物が減ると言うことは無さそうだ。

昔は、恐ろしく浄化能力が高かったのだろう。汚れ、生活排水というのは、栄養分が多い。


昔は江戸前、東京湾で大量に魚介類が獲れる理由に、米のとぎ汁を食っているからなんて話もあったが、あれも、案外当たっているのかもしれない。


主食の米のとぎ汁が生活排水として発生する。それが、川に流れ込み、海に至る。

昔の東京湾は魚介類が豊富に捕れたようだ。

今は地形の都合さっぱり減ってしまったが。


陸と海の境界線の面積が多いほど、生き物が豊富になりやすい。

そして、潮の満ち干きの都合、緩い傾斜が多いほど、陸と海の境界が爆発的に広くなる。

陸と海の境界に住む生き物が水を浄化する。


汚れ具合のバランスが取れているときに、生き物が多くなる。


ところが、陸と海との境界をコンクリートで固めた結果、境界の面積は激減した。

広大な干潟から、今では、コンクリートの垂直面数十センチに縮小した。

その結果、浄化能力はどれだけ下がったのだろうか。


この世界に海はあるのだろうか? 気候の安定を見る限り海はあると思う。

ただし、定期的に潮の満ち干きは無いだろうから、地球ほど豊かな海岸線を持たない可能性が高そうだ。


あの潮の満ち引きが無いと、一時的に、海中に、一時的に海上に出るような領域がずっと少なくなる。


ここには、地球の月のような見上げれば昼でも見えるような巨大天体は無い。

まあ、普通だろう。衛星は存在するようだ。

他の星と別の方向に移動する天体の存在が知られている。

俺は、あれが衛星なのではないかと思っている。


俺の世界には、見上げると遠目なんか使わなくても、晴れていれば昼間でも見えるほど、大きく明るく見える月があった。

あまりにも大きいので、この月が水を引っ張る。


他の天体と比べたら圧倒的に大きく見えるが、それでも地上から見れば、空にあるとても小さなものだ。そんなものが、巨大な海を引っ張るのだ。

そのため、月の位置によって周期的に、水面が上がったり下がったりする。


そして、月には満ち欠けがあり、全て欠けた状態の新月から、欠けのない満月まで毎日少しずつ変化する。

まるで人間に日付を教えるために存在しているかのような不思議な天体が存在している。


それだけでもファンタジーみたいだが、俺の星から見ると、太陽の大きさと月の大きさは、ほぼイコールで”皆既日食”と”金冠日蝕”の両方が数年おきに見られるという、そんなアホみたいな天体が存在するという、こっちの世界よりも、むしろファンタジーに近い世界だ。


月だけじゃない。俺の世界は、ここよりよほどファンタジーな世界だった。

一棟で1000人住むような巨大な建物があり、夜も絶えない明かりの灯る街で

人々は暮らし、道には、動力を内蔵し、外から動物で牽かずとも、

自力で走り回る自動車という乗り物が走り回る。


乗り物は自動車だけでなく、鉄の軌道の上を、一度に1000人運べる乗り物が

数分おきに走り、さらに、空には巨大な飛行機が飛び交う。


そんなファンタジー世界から俺は来た。


俺の世界の人間たちは、やりすぎた。自然をずいぶんと破壊してしまった。


俺は、この世界をけっこう気に入っている。

だから、ここで死んでも良いと思っている。

俺は、ここに来る前は、俺の世界で普通に人間として死ぬつもりだった。


俺の住んでいたファンタジー世界には、たった1発で都市を壊滅できるような

兵器が有ったり、いろいろとおかしなところはあったけれど、魔法は無かったし、

人間が竜になったり神様になったりはしないと思っていた。


俺は、人間として正しく死ぬことに失敗して神様になってしまった。

俺は、科学の発達したリアルな世界だと思っていた。


でも、逆なのかもしれない。

俺は、おかしなファンタジー世界で生まれた神様だったのかもしれない。

俺の能力は浄化。奇麗な水には生き物は住めない。


俺の国で水と言えば、塩素という殺菌剤の入った水のことで、蛇口を捻れば浴びるほど出てくる。

俺の世界では、本当にその水を浴びている。その水は透明で、生物的な汚染の可能性は非常に低い。


あれは生き物が住めない水。


奇麗な水には、生き物が住めない。ある程度、汚れていた方が生き物が住みやすい。

”汚れた水には魚が住めない”そういう常識を持つ人も多いだろう。

汚くて生き物が住めないような場所を多く見る機会があるからそう見えるが、実際は汚染の問題でなく、護岸と農薬の影響が大きい。

肥料もか。


平野部のある程度広い場所を10年放置すれば、生き物の楽園に変わる。

多少汚れていても、勝手に回復する。

人間が継続的に、生き物が住めない環境を作り続けているから、それが維持されているだけだ。


世界の未開の地で、水が濁ったところはたくさんあるし、そういうところには生き物が多い。


あまりに透明、汚れの無い水というのは、生き物が生きにくい。

水が奇麗なところでは、食物連鎖の底辺が育ちにくい。

渓流がわかりやすい。

食物連鎖のピラミッドの底辺に位置する生き物は自力で泳ぐ能力はほとんど無い。

なので、食物連鎖の底辺に位置する生き物は、流れの速い渓流には少ない。

僅かに石に着いた苔と、それを食べる昆虫の幼虫程度で、十分な量の餌は無い。


それでは、渓流の魚は、何を食べているかと言うと、水に落ちた昆虫など、水中の食物連鎖から外れたものを、案外多く食べている。

渓流の水中では食物連鎖がピラミッドになっていないのに、ピラミッドの上の方に属する生物が、そこに住んでいるのだ。


というのも、渓流の魚の餌は、ハリガネムシが供給しているという説もある。

渓流の魚は、昆虫を多く食べている。その量は、偶然水に落ちる虫程度では足りない。

ところが、何故か虫は、時期が来ると水に飛び込んで死ぬ。


実は、これには寄生虫が大きくかかわっている。

ハリガネムシに寄生された昆虫は、時期が来ると水に飛び込む。それを餌として魚が食べる。


産卵のために遡上してくる鮭を熊が食べるのと同じで、ある時期、日頃は無い餌が自分からそこにやってくる。

そして、そこで暮らす生き物は、それが来ることを前提にして、生活している。


ハリガネムシ自体は、水棲の生き物で、川底の藻などに潜んでいるところを、昆虫の幼虫に食べられる。

幼虫が水棲で、成虫になると飛び立ち、高確率で他の昆虫に捕食される昆虫に寄生する。

例えば、カゲロウなどの羽虫に寄生したとしても、その虫が羽化して数日で死ぬので成虫になることができない。

なので、他の昆虫に食われるのが前提になっている。

より寿命の長い昆虫に食われると、その食べた方の昆虫に寄生し、そこで時間をかけて成虫になる。

そして、時期が来ると、宿主を水に飛び込むよう操作し、宿主が死ぬと脱出し、そこが水なら、水中で産卵する。

※脱出前に魚や蛙に食われるとそのまま死んでしまうようです。


完全肉食のカマキリがハリガネムシに寄生される確率は高く、ハリガネムシが出てくるのを見たことがある人も多いだろう……多くないか?

※写真は自粛します


秋になると、何故か路上に出てきて自殺するカマキリが多いのは、水場を探して彷徨っている姿で、近場に水場が無いから、路上に出る可能性があるように思えるのだ。秋になると急に増える。


渓流では食物連鎖のピラミッドが弱い。だから、そこで暮らせる生き物の量は多くない。


川の中流域や沼地になると、食物連鎖の底辺の生き物も生きられるようになる。ピラミッドが完成した状態で機能する。

人間が住むのにも適した場所が多い。

なので、人間が住みやすい場所と、他の生き物が住みやすい場所はけっこう一致しやすい。


人間が増えすぎると、他の生き物が住めない世界へと作り変えてしまうが、人口がそこまで多くないこの世界では、共存できていて沼地で魚介類が多く獲れる。


人口は増えすぎず、自然とのバランスが取れていた方が良いと思う。


……………………

……………………


「いつかナマズ食べさせて」

「ルルが大きくなってからだな」


「戻ってきてね。私待ってるから」



ただ、美味しく食べるには、泥を吐かせるのにちょっと時間がかかる気がした。

奇麗な水に、大ナマズ入れておくと、1日で底に泥がけっこう溜まる。

そりゃ、獲れたてを、そのまま調理したら、泥くさいはずだ。


そういえば、浄化された水の中でも、ナマズは生き続けた。

俺の浄化の力は、死の力では無いのかもしれない。

塩素のような消毒薬が入った水ではなく、山奥の湧き水のように、きれいすぎて生き物が住めない水に近いのかもしれない。


俺も、俺の身の回りの人達も、あの水を必要としていた。

少なくとも、沼地で大ナマズを美味しくいただくためには、澄んだ水が必要だ。


俺の、浄化の力は、悪いものでは無いかもしれない。


「待ってるから」

「ああ。じゃあ、そろそろ行くか」


「帰るの?」

「ガスパールにも一言声かけてから」


また、家に戻ろうとすると、ルルが妙なことを言う。


「カメラは持ってるの?」

「ん?」


ああ、凄いのを買った気がする。そんな話をしてたのか。

カメラの話なんて、そんなにたくさんしたか?


「ああ。俺の世界の話だ。まあ、持ってた。持ってなくても、(安いのなら)また買える」

「じゃあ、わたしの写真」


写真?


「今、カメラが無いけど」

「うん。帰ったらでいい」


なんだ????


ルルは何を言ってる?

俺は、いったい何を話したんだ?


おっさんは、困ったが、ルルは、凄く幸せな気持ちになった。


神様はルルが大好きで、川に流されてしまうほど見入っていた。


きっと、この神様はルルのことが大好きで、ルルの姿を写真にするのだと思った。


※ルルは、カメラを、”目で見たものを写真にする機械”だと思ってます。

 この老人の世界では、少女の裸体(肩くらいしか見えてませんが)を、

 写真に残したらまずいのですが。

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