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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-16.ルルシアを助けに来た老人、その後(9) どんぶらこ、どんぶらこと、川を流れます

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


期待が最高潮に達した状態から、一気に急降下。

ルルシアは、とても悲しくなってしまった。


それでも、頑張って話を続けようと思う。

こんなところで躓いていたら、森の神様の妻になることはできない。


それに、気づいたのだ。

自分の名前さえも忘れてしまっても、神様はルルシアに会いに来た。


つまり、この神様にとって、自分の名前を忘れても会いに来るほどルルシアと会うことが重要なのだ。

1度目はルルシアの命を救い、2度目は、おそらくルルシアを妻として迎えるために会いに来る。


と言っても、今日、妻として連れて帰るわけでは無いようだが。


でも、居なくなる前に、妻になる約束をしておかなければならない。

ルルは、さっきの悲しい気持ちを、追い払い、チャンスを待つことにする。


「名前がわからないの?」


「ちょっと複雑な事情があって、ここに来たんだと思うんだけど、

 何のためにきて、俺は自分が誰なのかわからないんだ」


何のために……ルルシアは知っている。ルルシアを妻として迎えるため。

※ルルが勝手にそう思ってるだけです


”自分が誰なのかわからない”

そして、意外な答えに辿り着いてしまう。

神様には人間の名前が付いていないから、そもそも名前が無いのではないか?


ルルシアは、この神様の名前を知っている。

※少なくとも、ルルは知っていると思っている


森の神様は、カリオ神殿跡地に住んでいる。

カリオ神殿跡地に住んでいる神様なら”カリオ様”だ。

※森、特にカリオ神殿跡地周辺では、そこに住む神様を指して”カリオ様”と呼ぶことがある


だが、この神様は、神様だと指摘されることを極端に嫌っている。

だから、その名は言わないでおく。

カリオ様と呼んだら、消えてしまうような気がしたのだ。


だから、名前を聞いた。正確には、ルルシアが何と呼べばよいか聞いた。

でも、この神様は、自分の名前を知らないと言う。


話が続かないので、簡単に思いつくことを聞いてみる。


「川のことは覚えてる?」

「川?」


名前がわからない……で、あっさり信じてくれたのか?


「この川、知ってるでしょ?」

先ほどからの行動で、この、神様が人間に化けたつもりの名無しの老人は、この川を良く知っているように見えたのだ。


「ああ、ここは良く知ってると思う。たぶん俺はこの近くに住んでたんだと思う」


この神様は、この近くに住んでいた。


「近くに住んでた?」

ルルシアの家は、周囲に誰も住んでいない孤立した場所にある。

その近くの川の近くに住んでいた。


この神様は、もしかしたら、ずいぶん前から、ルルシアの近くに住んでいるのかもしれない。


「不思議なことに、この川のことは覚えてるのに、自分の名前がわからない。なんでだろうな?」


ルルシアは、この老人は、嘘は言っていないように思った。

結果的に本当かどうかは別として、自身が本当だと思っていることを話しているように感じた。


========


ガスパールを呼んできて、ここで水浴びすることにする。

「ここなら、ルルシアにも安心だと思う。ルルを見てあげてくれるか。流れに近付かないように」


そして、老人は、川の流れに近付く。


「そこで泥を落とすのですか?」

「もう少し深くて流れの弱いところが良かったんだけどな」


「十分に気を付て」

「大丈夫?」


俺がここで水浴びする原因を作ったのが、この子なのだが。

心に引っかかるものはあるが、とりあえず、予防線を張っておく。


「ああ。まあ、とにかく、俺に何かあっても、助けようとするなよ。

 俺は流されても、自力で戻ってくるから」


「うん。わかった」

ルルシアは、神様は、どうしても、流れのある川で、泥を流したいのだと理解した。


----


名無しのおっさんは、こんなに流れのあるところで泥を落としたいわけでは無く、ルルが居るから、ルルが安全に泥を落とせる水たまりの近くで、泥を落とそうとしているだけだった。


ここは流れが速いし、急に深くなっているから危ない。

でも、さっきの場所じゃルルが危ない。


2歩ほど踏み込んだだけで、かなりの水流を感じる。


水の力と言うのは凄いものだ。


水は1立方メートルあたり1トンある。そんなものが1秒に50cmも流れたら、凄い威力だ。

滝の寸前であろうと、水の流れ自体は時速100kmとかにはならない。


速度自体はそれほどでなくても、どうにもならないほど凄い力がある。


流される危険性と言う点では、流れの速さも重要だが、水の高さの方が、さらに重要だ。

かなり流れが早くても、斜面で無ければ、足首くらいまでの水量は何とかなることが多い。

もちろん、苔の有無や、川底のコンディションの影響も大きいが。


水自体の要素としては、流れの速さよりも、深さの影響の方が、より大きい。


ある程度、流れが速い時、境目になるのが膝のあたり。

一歩踏み出したときに、ひざを超えたくらいの時、進むも戻るもできず苦戦することがある。

流れが緩ければ、股のあたりまでは行けるが、それ以上になると水流を受ける面積と浮力の関係で、自由に歩けなくなる。

流れが無ければ、胸のあたりまで来ても、少しずつ進む程度の移動は可能だが、歩くと言う感じではない。


ここの流れだと、ひざ丈は厳しい。

水流で、足の下の砂が逃げていくくらいだ。

ある程度水の流れが速いと、足の裏から砂が逃げていくような現象が起きる。


ここで水深30cmくらい、脛くらい。ここから先、急に深くなっている。

仕方が無いので、ここで我慢する。


30cmでこの泥汚れをきれいに洗う方法……

ちゃんと洗うなら、脱いで洗濯だろうが、ここはひとまず、泥を落とすだけで良い。


「ルルは危なくないようにな。完全にきれいにならなくても、とりあえず、家に入れれば良いから」


----


「うん」

家に入れる程度で良い。とは言われたものの、腰より上まで泥付いてるので、この深さではどうにもならない。

ルルシアは、服を脱いで洗濯を始める。


バシャバシャ流して気付く。洗濯が上手かったら、神様に気に入ってもらえるかもしれない。


洗濯機の無いこの世界では、洗濯は結構、重労働だ。水を吸った衣類は重い。

最終的には、洗濯は、誰もができて当たり前だが、この年齢で既に戦力になるというアピールをしたかった。


言い換えると、”できる子アピールしておこう!”と頑張った。健気に。


おっさんは、”軽く洗えば良い”と言ったつもりだったが、ルルはむしろ、洗濯できる子アピールしようと頑張った。


ルルは、凄い勢いで、見て見てアピールする。


----


そんなことは知らないおっさんは、妙な視線に気付いて、振り返る。


おっさんが振り返ると、ルルシアは裸だった。


挿絵(By みてみん)


とはいえ、見えてるのは肩とか腕だが。

「いや、そんなに本格的に……」

そこまで言いかけて、どういうわけか、ドキドキ……動悸が激しくなってきた。


落ち着け、子供だ。子供の裸は、反応したら負け。逮捕。

無反応こそが、紳士として正しい反応だ。


そうだ、こんなときは、長い名前でも呪文のように唱えて……

「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ……」

なんとか、持ち直してきた。


所詮はお子様。俺は、そんなものには反応しない。

なぜなら俺は紳士だからだ!!

※フラグが立ちました!


なんとか、持ち直す。


ところが、視線を感じたルルは、凄い良い顔でこっちを向いて洗濯できる子アピールをした。


「わたし、自分で洗濯できるから」

そう言い、キメ顔をする。


手を伸ばし、洗濯物をババーーンと見せているのだが、

キメ顔の直後、若干手の位置が下がったせいで、鎖骨の下とか脇のあたりまで見える。


名無しのおっさんは、一瞬イラっとしつつも、なんだか、頭がくらくらしてきた。

あ……あれ?

これは動悸とか、めまいとか、そういうのじゃ無い。何かがおかしい。


その瞬間思い出す。アレだ!! あの謎のリミッター!!


リミッターと言うのは、家の配電盤に付いてる電気のブレーカーみたいなものだ。

ブレーカーよりも、積極的に制限を加えるものを指すことが多いと思う。


俺が学生の頃には、マニュアル変速の50ccの原付は、各社横並びで、最高速度が90km/h程度になるような設定で売られていて、低速で走るのにはまっっっっっっっっっっったく向いていなかった。

法律で最高速度30km/hと定められている乗り物が、最高速度90km/h程度のセッティングで売られている。そして、言い訳用にリミッターが付いているのだが、ただでさえ低速で走るのに向かないバイクが、リミッタが付いてるので、ますます低速で走れない(発進の加速時にも効いてしまう)。

事実上、リミッタを外すことを前提にして売られていた。


俺についてるリミッタも、たぶん、デフォルトで、外す前提で付いてるものだと思うのだ。

俺の心が動くとき、そいつが作動して、俺は動けなくなる。


そうだ! 俺には謎のリミッタが付いてるんだった。

なんで今頃思い出す! いや、それ以前に、あんな子供相手にも働くのか!!


いや、お子様の裸は、一般的にNGだから、そのシーンが出ないように制限されているのだと思う。

確かに、そんな仕組みもあった方が良いかもしれない。

だが、その装置は、俺に付けないで、俺に裸を見せるやつの方にに取り付けるべきだと思うのだ。


子供も含めて、俺の前では裸禁止!!


まずい、ここで倒れたら、さすがに命の危機が……


とりあえず、水から上がろうとすると……平衡感覚が無くなる。

くらっとした直後、川底に手を着いた。

……が、首から水が浸入する。うわっ、冷たっ!


川の流れが、圧し掛かる。

膝の高さでも厳しい川の流れが、胴体に当たれば、もちろんこうなる。


手足がズルっと滑る。

強制横スクロールの刑だ!


”サボン!!”


次の瞬間全身水の中。あばばばばば

リミッタ発動で体が自由に動かない。

この状態で水に落ちたら、さすがに不味くないか?


子供の裸でミッション失敗……なんか、とてつもなく残念な感じだ……


そんな記憶が残ったら、俺はもう立ち直れない気持ちで、心の中がいっぱいになった。


とにかく、ルルは安全に家に戻ってくれ!! それと、俺を助けようとするなよ!

そうでないと、俺が助けた意味が無くなるから……


”あばばばばばば”


”GAME OVER”の文字が頭に浮かぶ……


俺は、あまり死ぬ気がしなかった。

ここで死んでも、日本に戻るだけで、元の俺は死なないような気がした。

ここがバーチャルな世界だとは思っていない。

日本がある、俺が住んでいたあの世界とは別の世界があるのだと思う。

俺はおそらくこの世界の住人ではない。


だから、死んでも戻るだけ。そんな気がした。


…………


ところが、そのまま流れ続ける。


…………


長げーーーよ!!!!!!

……いや、ミッション継続か?


”ザバッ……ブクブク、ゴーーーーーーー!!”


いきなり気を失ってミッション失敗とかは無いようだ。

死ぬまでは、このままミッション継続か。


まあ、子供の裸見て死んだら、たぶん、もうちょっとマシな死に方を求めて地縛霊になってしまう気はする。


俺は、”同じように、女の裸見て死ぬにしても、どうせだったら、たくさんの、大人の裸の女に囲まれて死にたい”

という気持ちでいっぱいになった。


ぬぅ。無念すぎて死ねない感じだ。


いや、裸の女は必要では無いが、いくらなんでも、もうちょっとマシな死に方をしたい。

俺は死に方には拘りがあるのだ。


”もっとマシな死に方をする!!”

そう思うと、なんだか力が漲ってきた。


おお、これが、俗に言う”火事場のバカ力”ってやつだろうか。


========


おっさんが、川に落ちる少し前に戻る。


ルルシアは、視線を感じた。


神様がこっちを見ている。

洗濯できれば、役に立つ。ルルは家事全般得意だった、テリシアよりも、母よりも。

※母シートは、あまり家事が好きではありません。


だから、洗濯している様子を見てもらおうと思った。


ところが、神様は、洗濯では無く、ルルシアの体に見とれていたように見えた。

神様は洗濯ができなくても、ルルシアのことが好きかもしれない。

きっと大好きなんだ。そう思った。


ルルは、とても嬉しくなった。


ところが、次の瞬間、神様は居なくなっていた。

こんな言葉が頭に浮かぶ。


”神様は逃げてしまう”


ところが声が。

「ぐわーーーーー」


神様は、川に落ちて、流れている。


「ああっ、流され……」

だが、何かあっても助けようとするな、そう言われた。

だから待つ。


神様はたぶん、ルルのことが大好きで、また戻ってくると思った。


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