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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-10.ルルシアを助けに来た老人、その後(3) 呪いと捕獲

挿絵(By みてみん)


それから7期経った。


……………………


テリオス(ガスパール)は、予想外に元気に暮らしていた。

不思議なことに、一時はあれだけ進んだ老化が、あの老人に会って以降、普通に1期ごとに1期ぶんしか年を取らなくなっていた。

神様に会ったからだろうか?


神様(大鎧)に既に会ったことは、シートには、ずっと言えずにいた。


寿命の問題は、ガスパールの勘違いで済まされた。

実際に、ここまで生きたから。

ガスパールは、1期ごとに気が重くなった。役目を果たすまで、生かされている。

そんな気がしていたからだった。


あれから7期。

ルルシアもテリシアもすくすくと育ち、すっかり可愛い少女になっていた。

二人は、そっくりな姉妹だった。


だが、恐れていたことが起きてしまった。


予定通り大鎧にテリシアを捧げる儀式をしたが、受け取るはずの大鎧は現れなかったのだ。

それからというもの、テリシアは人が変わったかのように笑わなくなった。


※儀式に来なかったわけではないのですが、テーラさんととシートさんは、

 ”儀式をしたのに現れなかった”という記憶を持って生活しています。

 その結果、あんなふうに育ってしまったのです。


ガスパール(テリオス)は、直接結果を教えてもらった訳では無いが、

儀式の結果はわかってしまった。


”テリシアを大鎧の妻として捧げたのに、大鎧は受け取らなかった”

ガスパール(テリオス)は前々から、シートとテリシアには秘密があり、

竜と関係した何かがあることは知っていた。

そして、儀式の存在も知っていた。


だが、なぜ、シートが、その儀式に竜が現れると考えるのかがわからなかった。

何か確信できる理由があったはずなのだ。


だが、シートはガスパール(テリオス)が知らない情報は出さなかった。

ガスパールが調べる手助けはしたが、知っていても教えることはしなかった。


========


テリシアの儀式に竜は来なかった。

失敗の原因は、ガスパール(テリオス)にあるのかもしれない。

ガスパール(テリオス)は、そう考えていた。

思い当たることがたくさんありすぎる。


ガスパール(テリオス)は、たくさんの罪を重ねてきた。

法的なものではなく、倫理的なものだが。


石を取り戻すのに、協力してくれたカタリナ(カヤハル)と会えず、カタイヤと子を残し、

長年同僚として過ごしたキャゼリアと別れ、ここに来た。

そして、シートとの間に子を作り竜を待った。


シートは本当は、自分自身が竜の妻になるはずだったが、この子に託すと言った。

ガスパール(テリオス)は、子供に自分の負の遺産を押し付けたりはしたくなかった。

だが、竜を待つ娘に名を譲った。それがテリシアだ。


上の娘の名はルルシアだった。

キャゼリアは、本当は、ルルシアに”テリシア”の名を付けたかったのかもしれない。

”〇〇シア”の名は珍しい。

でも、キャゼリアの子に、”テリシア”の名を付けたら、同僚たちにバレてしまう可能性が高い。

ガスパール(テリオス)は、子を残すことができないはずなのだ。

なのに子供が生まれれば、貴族を欺いたことになり、重罪だった。


ルルシアとテリシア。キャゼリアとシート。

2人の娘に2人の母親。子に望むことも、まったく別々だった。


シートは、娘を竜の妻にすることを望んでいた。

そして、キャゼリアはルルシアが竜の妻になることを望んでいない。


だから、テリシアとルルシアは、一緒に暮していても、全く分けて育てていた。


ガスパール(テリオス)も、ガスパール(テリオス)が竜に会うのは、竜がテリシアを妻として迎えに来るからかもしれないと思ったのだ。

竜の妻になったところで、子は残せない。

そんなことに、自分の娘を差し出すなんてしたくない。

※"子は残せない"というのは、ガスパール(テリオス)が、そう思っているだけです。


だが、シートも、テリシア本人も、それを望むのであれば、仕方が無い。


ガスパール(テリオス)が竜に会えるのも、おそらくそれが理由なのだから。

そう考えて納得していた。


ところが、竜はルルシアを助けてしまい、テリシアのところには来なかった。

そのことは、墓場まで持って行く。



そして、不思議なことがもう一つあった。

7期前に、あれだけ老化が進んで、もう長くは無いと思っていたのに、あれから老化がほとんど止まったのだ。

あの時シートは、ガスパール(テリオス)が長生きすることを知っていたかのようだった。

ガスパール(テリオス)本人ですら、もうすぐ死ぬと思っていたのに。


シートはどうも、石の効果を知っているようだった。

シートは誰も知らないはずなのに、ガスパールが子を作ることができるのを知っていた。

そして、見た目はごまかせても、子を作ると老化が進むことも知っていた。


だが、それでも計算が合わなかったのは、ルルシアの上に、もう一人子供が居ることは知らないからだ。

石と引き換えに子を残した。


あれは回避が難しかった。いや、回避はできた。しなかっただけだ。

ガスパール(テリオス)は、カタイヤとの約束を破る気にならなかった。

だから、シートの計算が合っているなら、カタイヤとの子が居るのが正しいなら、本来ならルルシアが生まれないはずだった子供だったのかもしれない。

でも、散々世話になったキャゼリアが望むなら子を残したかった。


どこで間違ったのか、竜はテリシアではなく、ルルシアを助けに来てしまった。

おそらく、2番目の子を指定したのではないかと、ガスパール(テリオス)は考えていた。

上の子の存在を教えなかったために、さらに歯車が狂ってしまった。


このことをシートに言えなかった。

テリシアが生涯をかけて竜を待つのに、その竜の妻はルルの方だったのだ。


========


そんなある日、ガスパール(テリオス)は、妻、シートに大鎧の話を聞いてみる。

「大鎧は来なかったのか」


シートは、ガスパール(テリオス)の目を見る。

軽い気持ちで聞いたわけではなさそうなことを確認すると答える。

「ええ」


竜が人になった神様、大鎧は、テリシアのところには来なかった。


やはり、あのときルルシアが呼んでしまった。

テリシアのところに大鎧が来るように、(まじな)いがかけてあった。


その(まじな)いを、シートは(のろ)いと呼んでいた。

話を聞いた時、ガスパールは物騒だなと思ったが、森の一般的な習わしだと思っていた。


ところが、呪いの習わしは、調べても出てこなかった。

森で一般的なものでは無かったのだ。


ずっと気になっていた。そのことを聞いてみる。


「テリシアの(のろ)いって、いったい何なんだ? 大鎧と何か関係があるのか?」


「そうね……話しておくわ」


儀式が失敗したからだろうか。

今までろくに教えてくれなかったのに、あっさり話してくれるようだ。


「呪いわね……あの子に呪いがかかるんじゃ無くて、

 あの子を使って呪いをかけたの」


ガスパール(テリオス)は勘違いしていたようだ。

てっきり、テリシアに呪いがかかって、竜の妻にされるものと思っていた。

だとしたら、誰に呪いをかけたのだろう?


「いったい誰に?」


ガスパール(テリオス)が訊くと、シートはあっさり答えた。

「大鎧」


神様に呪いをかける? そんなことは考えたことも無かった。

森の神様に呪いをかけることができるのだろうか?


「どういうことだ?」


「聞きたい? とっても長い話になるけど」


遂にこの時が来た。

ガスパール(テリオス)は覚悟を決める。


「ああ、是非聞きたい」


「そう。……大鎧の半身は鎧。残りの半身は鎧を残して帰ってしまった」

「半身?」


過去に大鎧が現れ、鎧を残して行ったことは、ガスパール(テリオス)も知っていた。


だが、シートの話は、ガスパール(テリオス)の想像をはるかに超えたものだった。


……………………

……………………


大鎧は、竜が人になった神様。

この世界に鎧を置いて、どこかに去っていった。

鎧は、完全な体に戻りたがった。

鎧は、自分から半身のところに行くことはできないが、半身をおびき寄せる方法がある。


大鎧という神様は、人間の女を愛でている。


愛でる対象の女が死にそうになったとき、その神様は現れる。

だが、すぐに逃げてしまう。

ところが、愛でる女が増えると、神様はもう逃げることができなくなる。

そのときに捕まえることができるという。


神様を捕まえることが目的?


なぜそんなことを知っている? 未来は決まっている?


「君は一体、何者なんだ?」


「竜と会えたら教えてあげる」


時が満ちれば正体を明かす。つまり、ただ者ではない、何か特別なことがある。


シートは一体何者なのだ?

ガスパール(テリオス)は、自分の妻が得体の知れないものに思えた。


だが、その知識は完全なものではない。

ガスパールは、7期前に、既に大鎧に会っている。


テリシアの前に竜……大鎧が現れなかったのは、おそらく、ガスパール(テリオス)と、ルルシアが原因だ。


やはり、生まれた順番の問題かもしれない。

シートはテリシアのつもりで、2番目の子供を指定したのに、

シートの知らない上の子の存在のせいで、ルルシアが指定されてしまったのかもしれない。


もし、竜に会うのがテリシアではなく、ルルシアだとしたら?

儀式をしなければならなかったのは、ルルシアでは無いだろうか?


========


ガスパール(テリオス)は迷っていた。ルルシアを巻き込んで良いものかと。


シートが、何か特別な存在だったとしたら、

その娘のテリシアも、”生まれながらにして、何か特別な存在”である可能性がある。

だが、ルルシアはそうではない。


そこで、直接ルルシアに聞いてみることにした。


「ルルシアは、あの人が好きなのか?」

「え?」


いきなりのことなので、ガスパール(テリオス)は、この”あの人”が誰なのかが、この一言で通じるとは思っていなかった。

一言で通じてしまえば、相当なことだ。


ところが、相当なことだった。


「大きな人?」

ルルシアには、一発で通じてしまった。

なので、もう話は半分済んでしまったようなものだが、そのまま続ける。

「あの、大きな人だ」


「うん。また会える気がして」


好きで、今も待っている。

やはり、一度会ってしまえば、もうそれで運命は決まってしまうものなのかもしれない。

ガスパール(テリオス)はそう思った。


あとは、積極的に動く気が有るか確認する。


「会いたいか?」

「会えるの?」


「会ったら、妻にされてしまうかもしれない」

「いいの?」


”会ったら、妻にされてしまう”と言ったのに、返事は”いいの?”

やはり、妻になる気があるのだ。

女の子というのは、小さな頃から随分と自分の意志をしっかり持っているのだなと、ガスパールは感心した。

※普通の女の子は、そんなに小さな頃から自分の意志をしっかり持っていたりはしません。


「そうか、じゃあ行かなきゃならないな」


ガスパール(テリオス)は覚悟を決めた。

娘の運命と、ガスパール(テリオス)の寿命が決まってしまうかもしれない。


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