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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-9.ルルシアを助けに来た老人、その後(2) 妻にも言えなかった秘密

挿絵(By みてみん)

※”30-8.ルルシアを助けに来た老人、その後(1)”が長くなったので分割して、後ろを足しています。

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「ほんと、どうやって知るのかしら?」


"どうやって知るのか"つまり、シートは答えを知っているのだ。


ガスパールが知っているのは、”森には竜が人になった神様が居る”という伝承があるということ。

そして、その神様は”人間の女を愛でていて、命の危険が迫ると助けに来る”こと。


そこまでは、記録が存在する。


だが、シートは決定的なことを知らない。

謎の老人が、ルルシアの命を救った。このことをシートは知らないのだ。


そのことは秘密にしておいたほうが良い……というよりガスパールは、言えずにいたのだが。


なので、無難に答える。

竜が人になった神様の、元の竜が”一番大きな竜”。

それが、森に伝わる大鎧の伝承だ。


「森で一番有名な伝承。大鎧の伝承」


シートは、伝承の話を聞いても動じない。

つまり、単なる伝承ではないことを知っているように見える。


ガスパールとルルシアは、その伝承の神様に、既に会ってしまった。

伝承は単なる伝承ではないのだ。


シートは、現実と伝承がつながっているかのように話を続ける。


「でも、小さいかどうかは、わからないわよ。”一番大きな竜”は、どこにでも現れる。

 あなたに会うことが目的なら、家の前に現れるかもしれない」


”テリオス(ガスパール)が居る場所に現れる可能性が高い”。

テリオス(ガスパール)も、そう感じていた。

だが、その理由はわからなかった。


それこそが、テリオス(ガスパール)が一番知りたい情報だった。


「なぜ私に会うのだ??」


テリオス(ガスパール)は内心すごく驚いていた。

シートは、この場所が当たりだと言った。


その割に、あの老人と会ったのは、少し離れた場所だ。

シートの知っている情報と違ってしまっているかもしれない。


あの場所は、そう頻繁に行く場所ではなかった。

あの場所で会ったのは、ルルシアの命の危機を救いに来たからだとしか考えられなかった。


シートはこう言う。

「”大きな竜・ガスパール”は、あなたに何をしろと言ったの?」


「何をしろとは一切言わなかった。ただ、石をくれた」


竜のガスパールとは、大した話はしていない。ほとんど話ができなかった。

少しの話で分かったのは、どうやら”(竜の)ガスパールと話のできる人間の女”を探しに来ていたようだったことくらいだ。

だが、あそこは男子学校なので、女の子はいない。

”大きな竜・ガスパール”はそれを知らなかったようだった。


竜のガスパールは、女でなければならない理由を、寿命の問題だと言っていた。

だから、石の話をした。

石と寿命の関係はわからなかったが、昔話した女の竜が、再び竜に会うことと、石の話をしていたからだ。


「だったら、なぜ、竜にもう一度会うと思ったの?? 何も言わなかったのに」


確かに、何をしろとは言わなかった。

だが、気にしていたのは寿命。

「(大きな竜)ガスパールは、私の寿命を気にしていた。

 再び会わないなら気にする必要が無い」


「そしてあなたは森にやって来た。それはなぜ?」


この問いは不自然だ。森にはシートが連れて来た。


テリオスが竜は森に現れる可能性が高いことを指摘したとき、シートが竜は森に来ることを示唆した。

そして、森に行こうと誘ったから、ダルガノードの施設を離れ、森に来たのだ。


竜が森に現れるという答えを、シートが教えてくれたから、ここに来た。

森に行こうと誘ったから来た。

テリオス(ガスパール)は、そのように認識していた。


だが、そこは省いて、単純に、こう答えた。

「竜は森に来るから」


「そう。森に来てもらわないと困るから」


”森に来てもらわないと困る”。これで話がつながった。


逆だ。森に竜が来るから、テリオス(ガスパール)がここに呼ばれたのではない。

ここに竜をおびき寄せるための餌として、シートはテリオス(ガスパール)をここに連れてきた。


竜がテリオス(ガスパール)に会いに来ることを知っていた?

なぜ知っていた? そもそも、なぜ竜はテリオス(ガスパール)に会いに来る?

テリオス(ガスパール)は、竜のガスパールと会話ができた。

だが、会話ができるのに、竜のガスパールは会話で何かを伝えようとはしなかった。

その割に、テリオス(ガスパール)に石を届けた。

あれは、長生きすれば、次に竜と会ったとき話ができるとでも言っているかのように思えた。


シートは、ずっと前から知っていたのだ。

いったい何者なのだろうか?

やはり、ラグベルの生き写しとも見えるその姿にも理由があるのだろうか?

無関係なのに、ここまで似るとも思えない。


冷汗が噴き出す。


テリオス(ガスパール)は、妻の正体を正確には知らないのだ。


「私が森に来たから……大鎧が森に来るのか?」


「そうかもしれない」


”そうかもしれない”。この言葉で気付く。

言葉を濁したのではなく、シート自身も知らないと言っているように聞こえた。

逆だ。シートは、森でテリオス(ガスパール)が竜と会うことを知っているだけで、その理由は知らないのかもしれない。


「”一番大きな竜”が人間の姿で現れるのが大鎧?」


「そうよ」


「”一番大きな竜”は人間の姿で現れるのか、それとも竜の姿?」


「さあ、どっちかしら」


この反応からすると、知らないのだ。

既に”一番大きな竜”が現れた後だということを。


試しに人間の姿で現れても気付かない可能性を指摘する。


「私が最後に会う竜が人間の姿だったら、気付かないかもしれない」


「わかるわよ。

 でも、まだ少し先なんじゃないかしら。それまで元気に生きて」


やはり、シートは知らないのだ。

ガスパールは既に会っている。


既に会ってしまったのだ。

それに、テリオス(ガスパール)の寿命も、もうそう長くはない。


だが、シートにとっては、大鎧が現れる時期は明確なものだったようだ。

「まだ先?」


「テリシアを捧げるのは、7期後。森に竜が来るのは、それより後」


7期後? テリオスは、儀式が失敗したと聞いていた。

「捧げるのは7期後?」


「そうよ」


「じゃあ、前にやったのは?」


「あれは、テリシアを紹介する儀式」


儀式は1回ではなかったのだ。

もしかしたら、まだルルシアが妻になる運命は避けられるかもしれない。


次の儀式に、あの老人が現れれば良いのだ。


だが、だとしたら、いつも、神殿跡地には何をしに行っているのだろうか?

その理由を聞いてみる。

「じゃあ、いつも神殿跡地を見回りしてるのは?」


「タイミングに不確定なところがあって」

「テリシアを連れてるのは?」

「テリシアに会いに来るから」

「テリシアでないと?」

「神様は見つけてもらわないと、出てこられない」


ああ! テリシアが謎の言葉を発していたのはこれだったか。

とても小さなころから、呪文のように何かを言うことがあった。

”神様は見つけて”までは、聞き取れたのだが、呂律が回らず、”神様は見つけて”のあとが謎だったのだ。


「テリシアが時々言ってたのは、それだったのか」

「確かに、言ってたわね」


聞き取れていなかったが、ヒントは以前から有ったのだ。

神様は見つけてもらわないと出てこられない。


そして、あのとき声をかけたら、老人が現れた。

誰も居なかったのに、突然現れた。


あれは神だった。


やはり、間違ってルルシアが神様を見つけてしまっていた。


だが、テリオスには時間が無い。

「7期後か……」


「どうしたの?」


「足が悪くなった。歳だ」


「それは歳のせいじゃ無いでしょ。怪我したからでしょ」


シートは気付いていないようだ。

それは仕方がない。テリオスが持っている石の効果で見た目は若く見える。

だが、ガスパール(テリオス)は、だいぶ老化が進んでいた。


足が悪くなったのは、怪我が原因ではあるが、徐々に悪化しているのは、歳のせいだ。

見た目では廊下の進行具合がわからないのだ。


「そろそろ寿命が。

 私は特別で、見た目からはわからないかもしれないけれど、

 もうルルシアを背負うこともできない」


「足は歳のせいじゃないでしょ?」


シートは、怪我のせいだと思っているようだ。

きっかけは怪我でも年で足が悪くなってきているのも事実だ。

もう、かなり体にガタが来ている。


「若いのは、見た目だけだ」


「え?」


再度言い直す。

「見た目ほど若さは保ててないんだ」


「あと20期くらいなら生きられるんじゃないの?」


「この分だと、難しそうだな」


シートは考えるが計算が合わない。予定とも違う。


「そんな、テリシアを捧げるのは7期後、竜が来るのはその後よ」


「でも、君は見回りしている」

「あれは念の為」


念のため? 時期はわかっているのに、念のため。時期には多少のズレがあるようだ。

テリオスの寿命は、あと7期も、もたないだろう。

「7期は厳しそうだ」


それを聞いて、シートは考え込む。

「……ルルには?(どこまで伝えてある?)」


「竜と関わると不幸になるから関わらないように言ってある」


「私も、その方が良いと思う。

 そう……あと20期くらい、少なくとも10期くらいは持つと思ってた」


ガスパールは、申し訳なく思うが、その理由は明かせなかった。

「ごめん。もう長くはないと思う」


この世界の人間の男は、子を作ると、凡そ20期(10年)年を取る。

シートの知っている子供の数は2人。ルルシアとテリシア。

ところが、ガスパール(テリオス)には、もう一人子供がいる。

つまり、シートの計算と20期の誤差が出る。


だが、そのことは、墓場まで持っていくつもりでいた。


テリオス(ガスパール)は、テリシアを大鎧の妻として捧げたのに、大鎧は受け取らなかったのだと思っていた。

テリオス(ガスパール)は前々から、シートとテリシアには秘密があることを知っていた。

竜と関係した何かがある。


だが、シートはテリオス(ガスパール)が知りえない情報は出さなかった。

テリオス(ガスパール)が調べる手助けはしたが、知っていても教えることはしなかった。

※これは後にトルテラに対しても同じ対応をした


だから、正しい情報を持っていなかった。妻として身を捧げるのは7期後。

そこまで、テリオス(ガスパール)が長生きできる可能性は少ない。


ルルシアの上に、もう一人子がいること、そして、ルルシアが神様に会ってしまったこと。

この両方を言えずにいた。


お互い、深くは踏み入らない。それがこの2人の暗黙のルール。

だが、このままテリオス(ガスパール)が死んでしまえば、そのことは知られないままになってしまう。


いつか、ルルシアが話をするかもしれない。

そうすれば、神様と会ってしまったことは伝わるだろう。


テリオス(ガスパール)は、テリシアが竜の妻になると考えていたのに、竜は誤ってルルシアを助けてしまった。

そのことをシートに言えなかった。

テリシアが生涯をかけて竜を待つのに、その竜の妻はルルの方だったのだ。


竜(神)は罪なことをする。


だが、一緒だ。私も。

たくさんの女を裏切ってしまった。


テリオス(ガスパール)は、たくさんの罪を重ねてきた。

そして、それを踏み台にして3度目の竜に会ったのだ。竜が人になった神様、大鎧に。

ガスパールは、たくさんのものを踏み台にして、希望を叶えた。


今更、すべてを告白して、気を楽にして死んでいくなんて許されない。

だから、すべてを墓場まで持っていく……


それが、テリオス(ガスパール)にとって、最も自分らしい生き方、死に方だと考えていた。

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