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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
39章.俺の戻るべき世界

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39-16.パンツはチャンス、チャンスはピンチ

挿絵(By みてみん)


========


(いで)神龍(シェンロン)


ぬう。相変わらず、こんな呪文を唱えると俺が出てくると思っているようだ。

まあ、そんな呪文で呼び出されるのが俺なのだが。

実際には、俺は元からここに居る。


杉たちに俺が見えるようになるだけだ。


「おお、出たよ」


さっそく見えるようになったようだ。


「あー、栫井ー。私のお願い叶ったよ。ありがとう」


どうやら、この歴史でも、杉の願いは叶っているようだ。

杉の願いは、元々、俺が関与しなくても偶然勝手に杉の希望通りになっていてもおかしくないくらいのものだったから、叶えるのは比較的容易だった。

まあ、そのあたりについては、杉もわかっていると思うが。


栫井(かこい)くん? 私も願いを叶えてくれてありがとう。洋子のことは任せて」


今井さんも、今回もそれなりには叶っているのだろう。

とはいえ、今井さんの場合は、願いが叶ったといっても、幅がある。


今井さんが子供のころに、両親……特にお父さんがはっちゃけちゃうのを阻止して、少し慎重になってもらえば、それだけでもかなり改善するのだが、その効果が続くのは小学生まで。

小学生でも、高学年くらいになってくると、ちょっと怪しくなってくる。

親の行動で変化するのは、そのあたりまでで、中学生くらいになると、やはりかなり目立ってしまう。


中学、高校の間は俺は同級生なので、悪い虫がつかないように壁役になることができる。

俺は殴られたりとか、少々酷い目に遭うことになるが、対策はできる。

だが、その後は別々の道に進むので、俺が直接壁になることはできない。


記憶自体は無くしていても、経験は保持されるようで、あしらい方はうまくなるのだけれど、男嫌いという設定で一律男を遠ざけるしかなくなり、年を取って身体の価値が下がるまで、まともに恋愛もできないという不便な人生を送ることになる。


それでも、俺がただの人間だったときの今井さんは、ストーカー被害をまともに受けて、何度か引っ越しを余儀なくされていたから、あれと比べればマシだとは思うが、神様役の俺の力不足で申し訳ない。


最終的には頼りになる旦那さんと巡り合えるのだが、俺の力では出会いを早めたりはできなかったのだ。


まあ、今井さんは、初回の失敗の記憶があるので、それと比べてだいぶ良いと言っているのだと思うが、俺的にはちょっと申し訳ない気持ちもある。


まあでも、俺はもう去るので洋子さんを支えてほしい。


あとは、洋子さんだ。


今までも、杉と今井さんの願いを叶えることはできたが、洋子さんの願いを叶えることができなかった。


「ジン君、ありがとう。

 唯の病気の原因を取り除いてくれれば、あなたの役目は終わりです」


良かった。ついに、願いを叶えることができる。


唯ちゃんの病気の原因。それは異世界由来の性質だ。

俺の体でも心臓が破裂するという症状が出ることがあった。

俺は死んでも体を修復することができるが、唯ちゃんはたぶんできないから死んでしまう。


治すのは簡単だ。原因を取り除けばよい。


ただの人間には、こんな症状無いので病院行ってもわからないし、

仮に原因がわかっても外科手術だけで取り除けるものではない。


だから、俺が治すしかない。

なのに、俺が治療できるのは、洋子さんが望んだ時。


やっとこのときがきた。


『唯ちゃん、それは人間として生きていくには邪魔なものだから、尾骨といっしょに回収するよ』


返事が来ることは期待せずに言ったのだが、反応があった。


「尾骨?」


あ、あれ?

唯ちゃんとは会話できるのか。


『病気の原因みたいなものだと思っておいてくれたらよいと思う』


そう言って、病気のもとを回収する。


「ぎゃ、いたーい!!!」


あれ? そんなに痛いのか?


『ごめん、ごめん。でも、もう痛むことは無いから』


まだ唯ちゃんと話している途中だったが、洋子さんが話始める。


「ジン君。今までありがとう。」


最後の言葉だ。

ここに来る前から覚悟を決めていただろうから、あっさりしたものだ。


「私の願いを叶えるために使った首の骨の女の子たちの願いを叶えてあげて。」


″首の骨の女の子たちの願いを叶えてあげて″

予想はしていたが、この言葉は聞きたくなかった。


俺は、願いを叶える間だけ存在する何かでしかない。

だが、願いの内容が他の人々の願いを叶えることである場合、俺は永遠に存在し続けなければならなくなってしまう。


俺は、妻の願いを叶えるためだけに存在してきた。

そして、今日、その願いが叶った。

俺は異世界に行くことと引き換えに神様になり、異世界にも行った。


まあ、まだ後始末が残っているから異世界には行くが、異世界の女たちの願いを叶えるとなると、この先もずっと長い間働かせ続けることになる。


何よりも、おれが神様になったのは洋子さんの願いを叶えるためだ。

それが叶った以上、もう他の人間の願いを叶えるつもりはない。


「私は、あの青い服の女の子に神様を託します。

 あの子のところに行って。この石と、妻の形見を持って」


酷いな。神様に人権はない。

知ってたけど。


もちろん、却下だ。

『願いは叶えた。さらなる願いは受けられない』


そう言って、妻の形見は受け取らない。

まあ、言葉は洋子さんには聞こえないと思うが。


もちろん洋子さんは、俺が何を言ったかも理解していて、再度同じことを言う。


「私の願いを叶えるために使った首の骨の願いを叶えてあげて。

 私は、あの青い服の女の子に神様を託します。

 この石と、妻の形見を持って、あの子の……」


洋子さん……俺を開放はしてくれないのか……

まあ、わかってはいたけど。


俺は妻の願いを叶えるために神様になった。


その妻に、もう不要だからほかの女のために働けと言われたのだ。

俺の受けた心の傷は致命傷レベルだと思う。


致命傷。死ぬほどの傷。それでも俺は死ねないのだ。


まあ、こうなることは予想できた。

妻の願いを叶えるために、異世界の人たちに借りを作りすぎた。

そうなるように、仕向けたのは大鎧。俺の半身だろうということもわかっている。

だから、洋子さんが悪いわけではない。それもわかっている。


でも、俺の認識では、俺は洋子さんとの約束を守るためだけに存在していて、

洋子さんの願いが叶えば消えてしまう何かなのだ。


俺が抵抗しても、洋子さんは願いの内容を変えることはない。

それもわかっていた。

それでも、俺はそれを望んでいないという意思表示をしておきたかったのだ。


洋子さんが差し出した包みを受け取る。

この中に妻の形見が入っているはずだ。


すると、洋子さんたちがあっさりと帰っていくのが見えた。

ずいぶんとあっさりしたものだ。


少なくとも、俺はもうこの世界に留まる必要は無いと思える。

未練無しに旅立てるなら、それは良いことだと思う。


洋子さんから受け取った包みの中には、石が入っていた。

これはわかる。今回の歴史が入った石だ。


俺は、予想外のところに転移してきてしまって、今回の歴史を知らないのだ。


石の記憶を読む。


いきなり結婚したころの風景が見えた。なんと、今回の洋子さんは初婚で俺と結婚している。

今回洋子さんは穂園ほそのさんとは結婚しなかったのだ。


これは地味に嬉しい。


俺の本当の歴史では、俺は初婚だが、洋子さんは再婚だった。

その後のすべての歴史で洋子さんは穂園ほそのさんと結婚していた。

ところが、今回は結婚していないのだ。


元の人生の時から、洋子さんは再婚だったので、それが今更変わるとは思っていなかったが、

できれば双方初婚であればよかったと思ったことはある。


やりなおしたあとの歴史では、唯ちゃんは穂園ほそのさんと結婚していたときに生まれた子供なので、再婚で俺と結婚してから生まれるとすると、時期が合わせづらいからだろう。


……が、高校卒業後継続して付き合うわけではなかった。


俺はストレートで元の人生と同様にストレートで大学合格しているが、やっぱり、それまでできなかった分を取り返すかのように、ひたすらゲームをやっている。


まあ、あれは俺には必要なことだったから仕方がないのだが。


ぬぅ。高校卒業後継続して洋子さんと付き合いはじめたりはしていなかった。

相変わらずのダメっぷりに自分でがっかりだ。


洋子さんは洋子さんで、元の歴史と同じように短大に進学すると、いきなり合コンやらに連れまわされて、当時大学生の穂園ほそのさんと出会うことになる。


そういう行動は慎んで欲しかったのだが……

今回も出会ったのだが、付き合い始めてすぐに今井さんと揉めたようだ。


今までの洋子さんが穂園ほそのさんと結婚した歴史でも、今井さんは穂園ほそのさんを嫌っていたから、何かあったのか、もともと馬が合わないのかもしれない。

※おっさん鈍いからか気づいてませんが、既に洋子と付き合っているのに、

 穂園ほそのさんが今井さんに手を出したからですね。


俺の行動で洋子さんの結婚相手が変わったわけではないっぽい。

俺はこの時期いったい何をしてるのだろうか?

……いや、過去に消化できなかったゲームをクリアしまくって、ちゃんと充実した人生を送っていたのだが、ゲームやりつつでも、洋子さんと連絡とるくらいできただろうと思う。


この当時の俺は、ぜんぜんわかっていなくて、俺はそこそこの大学に行けばすべての悩みが解決すると思っていて、大学をガンダーラみたいなものだと思っていたから、そんなに無茶苦茶頑張らなくても、勝手に彼女ができたりして、それなりの人生を送ると思っていたのだ。


子供のころから、良い大学行けと言われて、やりたかったゲームも我慢して辿り着いたユートピアだと思っていたのだ。

……で、いつもは手遅れになるのだが、ちゃんと出会いのチャンスが来る。


俺の人生に再び洋子さんが登場するのはこのときか!

おおお、あのときのバーベキューに来るのか!!!!

院進学&留学組が騒いだあのときのバーベキューだ。


いきなり大自然の中でバーベキューやって、ちょっと大人になった気分だったのだが、それまでの歴史では洋子さんは来ないのだ。


久しぶりに杉と今井さんと洋子さんが揃っていた。


今までの歴史では、洋子さんはこのバーベキューには来ない。


進学組が荒れてしまって、今井さんと杉が、俺の薪のところに避難してくるが、

今回は洋子さんも居た。

洋子さんと杉は、進学組が悪酔いして騒ぎ出す前から、俺のところに邪魔しに来た。


この状況なら、俺が悪酔いすることもないと思うのだけれども、

俺はやっぱり酔い潰れて酷い目に遭ったけど、洋子さんが介抱してくれた。


あれは飲みすぎたよりも、熱射病になったのだと思う。

炎天下で焚火番してたから。

みんな炭火に行ってしまって、薪は人気がなかったから俺が火の番してたのだ。


あんなに薪の人気がないと知っていれば、薪は持って行かなかったのだろうけど、

良し悪しわからず炭と薪の両方を燃やしたら、みんな炭に行ってしまったのだ。


俺が潰れて介抱してもらったところからはじまったから、なんか、その後、

俺の立場が低くなってる気がするけれど、あれで再会してあっさり付き合い始めた。


俺は今まで何度も繰り返す歴史の中で、バーベキューで生まれる新カップルを呪ってきたが、俺があのバーベキューでリア充になる歴史が存在したのか!!!!


っていうか、あれって、そんなビッグイベントだったのか。


唯ちゃんが俺の娘として生まれている。

そして、目玉焼きにソースを出す。

なんでこれを毎回やるかな?と思う。

高校の修学旅行は、前回とほぼ同じ。修学旅行の思い出があるからわざとやるんだけど。

そういえば、洋子さんは相変わらず高校1年のときから、うちのクラスに頻繁に遊びに来ていた。

俺も洋子さんもお互いを知らない状態で、毎回あの状況になる。


俺がまだただの人間だったとき、洋子さんと結婚した。

洋子さんは再婚で、不妊症のことは自覚していた。

不妊治療は受けたけど、経済的にも精神的にもかなり厳しいものだった。

あれを知らないのだから仕方ないが、俺も洋子さんも、平凡な生活だと思ってる。


この歴史を作るために、どれだけ苦労したかを知らずに!!!!!

まあ、何も知らずに呑気に生活してほしかったんだけど。


そして、俺の病気が見つかる。

手術受けて、1回は治ったと思うが、再発する。

まあ、俺は49歳を超えて生き続けることはできないから、こうなるのは仕方がない。


再発したときは、もう切除できないので俺は、治らない病気で入院する。

そして、入院早々なぜか肺炎に罹ってあっさり死ぬ。

……で、俺が死ぬと遺骨で洋子さんが記憶を取り戻す……


なるほど。納得した。


とりあえず、ちゃんと願いを叶えることができたと思う。

洋子さんは、俺の願いも叶えたかったのだと思う。

2人の間に子供が生まれて、家族として過ごす。


この記憶は俺に対するプレゼントでもあるのだと思う。


俺は十分満たされている……から、もう成仏しても良いと思っているのだが、俺の所有権は異世界の女の子に譲渡されてしまっている。

神様は譲渡可能なのだ。しかも、世界を跨いで勝手に約束交わすという無茶なことをして。


たぶん、その無茶のペナルティーは俺のツケになっているのだ。


※ちゃんとわかってるんですね。


俺が生まれ、述べ数百年を過ごしたこの世界。

人間やめてから、すごく苦労したと思うけど、それに見合うものも手に入ったと思っている。


俺は、この世界を離れて、別の世界で神様をやらないといけない。

これは、妻の願いを叶える力を得る対価として受け入れたものだから仕方がない。

俺が行かないと、オーテルが生まれない。

オーテルは行かなくても良いと言っていたけど、俺がオーテルと会えない歴史を作りたくはないから。

オーテルは俺の可愛い娘だから。


それにしても、次に異世界に行くと、どこから始まるのだろうか?

あっちも時間が流れているのだろうか?


行った時には全ては手遅れみたいなことになっていたら、俺は人間と竜を救うどころか、世界を破壊しまくるかもしれないのだが。

そんなことになったら、成仏できん。


いつまでもここにいても仕方がないので、異世界に行こうと思う。


そのためのアイテムは入手済みだ。妻の形見。

俺が転移で持っていけるものは限られる。人間の場合は毛皮の代わりに下着を持っていける。


ところが、触れた瞬間理解する。

これは妻の形見にならない。


これ? 新品か? 新品でないとしてもほとんど使ってないやつだ。

これは持っていけない。


俺は過去に妻の形見に触れたことがあるが、悪霊がお札に触れた時くらいの勢いで転移させられそうになったのだ。


毛皮の代わりと認識されるくらい使い古したものでないと持っていけない。

竜の基準だから洋子さんが理解してなくてもしかたないのだが。


異世界に行けと言って、これを渡されても困るのだが?


ぬう。手詰まりである。


……………………


と悩む栫井(かこい)であったが、洋子はもちろん知っていた。


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