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夏の終わり

作者: 天月ゆかり

 「久しぶり」

 「うん」


 こんな短い会話でも、愛おしい。

 君と会話できることがなによりも嬉しかった。


 「最近どう? ちゃんと学校行ってる?」

 「うん。行ってるよ」


 もう、鬱陶しいほど耳を劈く蝉の声は聞こえない。もう、首筋を流れ落ちる汗の線はない。

 夏にしては涼しすぎる風が、君の長くて綺麗な髪を揺らしているだろう。


 君の頬に優しく触れる。

 相変わらず、スベスベだけど、ひんやりと冷たくて、硬かった。

 

 「もう夏が終わるんだ」


 あれほど、背中にくっついて気持ち悪くてたまらなかった制服とも、しばらく顔を合わせることもないだろう。そう思うと、少し、寂しい。

 額から汗を流しながらスイカバーを齧る君とも、当分おさらばなんだ。


 ううん、君とはずっとおさらば、か。


 「やっぱり、夏の終わりは苦手かな」


 僕の言葉に答える、君の凛と透き通る声は聞こえなくて。

 代わりに、空が茜色に輝いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 儚さがひしひしと伝わってきました。 最初の会話から儚さが凄まじいです。 [一言] 夏の終わりって虚しくなりますよね。 語り手の僕は引っ越しするのかな? それとも入院。入院だとしたら、自…
[気になる点] //君の頬に優しく触れる。  相変わらず、スベスベだけど、ひんやりと冷たくて、硬かった。//  と言うところなのですが、『相変わらずスベスベだけど』と流した方が読みやすい気がしました。…
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