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過去

約1年ぶりの更新となりました。

本当にすみませんーー!!


これからはちょくちょく更新していきたいので

どうか応援よろしくお願いします。

「それで僕は筧の屋敷に引き取られたの」


「でも何も引っ越す前に言わなかったよね……?」


「あれは何もかも急に決まったことだったから

あーちゃんやあーちゃんのご両親に何も言えずに

町から出てちゃったからね……ごめん」


僕はあーちゃんに頭を下げた。


「いいよ。そんなのは仕方ないじゃん」


「そう?」


「うん、だから大丈夫だよ。

ーーでも屋敷に引き取られた後は……」


「屋敷で勉強三昧だよ。

元々勉強は嫌いじゃなかったから別に苦ではなかったかな。

そして中学は筑紫学園に進学したんだ」



「筑紫学園!?

筑紫学園ってあの名門校じゃん!?

そんなところに通っていたの?」



ーー筑紫学園


それは国内でも最高峰の学校である。

全国の金持ちの子息達が集まる場所であり、

学費もバカ高いが学校とは思えない設備が揃っている。


「まぁね……僕の血縁上の祖父が

"筧の人間なら筑紫学園に行って当たり前"って

ほぼ無理やり入学させられたよ」


まぁ一応試験も受けたのだが満点近かった。


「……」


「しかも入ったら入ったらで派閥争いとか

家同士のプライドの争いとか見せられたし」


「そうなの?」


「そうだよ。

彼らは小さい頃からかなり仕込まれてきているからさ

敵対グループが来てみなよ、火花バチバチだよ」


「あははは……

ゆーちゃんはどこかの派閥とかに入ったの?」


「面倒いから入ってない。

……ただ勧誘とK Iグループとコネを

作りたいやつは毎日きたけどね」


僕の周りには毎日そういう奴らばかり来た。

男子は媚びを売ってくるし、女子は色目を使ってくる。

そんなためか、あの学園では友達は1人もいなかった。

適当に話を合わして、適当に授業を受けて

帰ったら部屋で伊予や茜と話していた。


そもそも僕の場所とは実のお母さんが死んでから

どこにも無かったような気がする。

学園、家のどちらにも無かった。

……もしかしたら僕自身が作ろうとしなかった

というのもあるかもしれない。


ーーどうせ誰も僕の事を分かってくれるはずがない。


ーーどうせみんなKIグループに近寄りたいだけ


なんて1人で思い込んでいたからなのかもしれない。


「ゆーちゃん……」


「まっ、財閥の仮にでも跡取りに産まれたんだから

これぐらいは覚悟していたさ」


「でも、何で学校辞めちゃったの?」


「それはね……」


とその理由を話そうとした時、不意に気分が悪くなった。


「ゆーちゃん?」


「そ、それはね……その……うっ……」


「だ、大丈夫!?」


「大丈夫……だよ……そ、それでね……」


あーちゃんを心配させまいと懸命に言葉を紡ごうとするが

全くと言ってもいいほど言葉が出てこない。


「全然大丈夫じゃないって!! 顔が真っ青だもん!!」


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「もう良いって!! もう話さなくていいから!!」


「ご、ごめん……まだ……克服出来てな……い……」


ぎゅっ


突然あーちゃんが僕に抱き付いてきた。


「いいよ、もう無理しないで」


と僕の背中に手を回しながら言ってきた。


「あ、あーちゃん……?」


「ゆーちゃん……

ーー優希が辛いのは分かったからもう良いよ」


「……」


「優希が辞めた理由はまた別の機会に聞くよ。

だからもう話さないでいいよ」


「あーちゃん……」


「今は私に甘えて? 私なんかで優希のトラウマは克服は

無理かもしれないけどさ、ちょっとは和らぐよ」


あーちゃんはそう言っているが何故か彼女に抱きしめられた

事によって心が落ち着いてきた。

彼女の身体の暖かさが不思議と僕に安心をもたらした。


ーーまるでお母さんに抱きしめられているみたい。


僕は段々と落ち着いてきたのだが彼女は違ったらしく……


「あ、あれ……?

ーーえぇぇぇぇーー!!」


といきなり顔を赤らめ大声で叫んだ。


「ご、ご、ご、ごめん!?

なんかつい、やっちゃったよ!?

というかいきなり“優希”って呼んじゃったよ!?

す、す、す、す、すぐ離れるから!!」


あーちゃんは驚き過ぎて僕から離れようとするが

僕は彼女の背中に手を回して反対に抱きついた。


「ゆ、ゆーちゃん……?」


「ごめん」


「えっ?」


「もう少しこのままでいさせてもらえる?」


「ゆーちゃん?」


「なんかあーちゃんがいると落ち着くんだ……

だから君さえよければもう少しこのままで……」


僕が言った事に対してあーちゃんは若干驚きながらも

離れかけていた身体をもう一度僕につけてきた。


「うん、良いよ。私なんかでよければいくらでも」


「あーちゃんがいいんだ」


「うん……ならいくらでも良いよ」


と僕らはしばらく抱きついていたのであった。

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