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緋月-スカーレット・ルナ-  作者: 白銀ダン
1.アビスゲート編
3/344

第3話 獅子と氷華

茶髪禁止の校則って学生時代はなんとも思ってませんでしたが、今思えば狂気。



 授業中にもかかわらず、三階の男子トイレの方から複数の生徒の声が微かに聞こえる。


 先週の金曜日に掃除されていたはずの男子トイレだったが、トイレットペーパーの切れ端が落ちていたり、蛇口周りがびしょ濡れだったりと、週明けだと言うのにすっかり汚くなっていた。


 内装も大概だ。壁一面にある正方形の白いタイルは老朽化で所々ひび割れており、お世辞にも綺麗に整備されているとは言えない。


 学校側も直したいのは山々だった。だが、限られた予算で学校運営を行う必要がある。校舎自体が築60年と古いおかげで、似たような個所が他にも存在するどころか、改修急務の場所が多々あった。その結果、どうしてもトイレの壁などの“些細な”修繕は後回しになってしまうのだった。


 明かりが消されたトイレの小窓から、ほんの僅かに春の光が差し込む。光芒が足元を照らす中、男子2人、女子2人がとある女子生徒を見下すように取り囲んでいた。


 (ほの)()(ひえ)()――彼女は4月になってクラスが変わってからと言うもの、同級生から執拗な嫌がらせを受けていた。その嫌がらせは次第にエスカレートして行き、既に“嫌がらせ”の域を超えていた。授業中で人が来ないのをいい事に、彼らはやりたい放題だった。


 氷華の橙みのある赤茶の髪から、幾度となく水滴がしたたり落ちる。せっかくのサイドテールが台無しだった。おまけにワイシャツは濡れ、素肌が淡く透けて見えてしまっていた。


 血が滲む青あざを付けられ、氷華は膝を折って冷たいタイルの床に横座り。首から下げた、矢じりをモチーフにしたかのような風変わりな小さなペンダントを守るように……あるいはすがるように、氷華は握り締めて訪れた艱難に一人耐え続けた。


「おいおい、どうしたんだその髪。先週と同じじゃねぇか。真っ黒に染め直して来いって言ったよなァ?」

「そ、染めるだなんて……」

「自由な校風だからって、その色はダメでしょ」


 氷華の目の前に立ちはだかる短髪の男子生徒に続いて、その隣の女子生徒達も笑いながら毒を吐く。口撃はまだまだ終わりそうになかった。


「赤茶色に染めちゃって、ムカつく。可愛い子アピール? 陰キャには似合いませ~ん」

「もしかして、学年変わったからって自分を変えようと頑張っちゃった系? そうゆーのうざいんだよねぇ~」

「こ、この髪は、元から……」


 口答えされて女子の一人が険相を露わにする。その刹那、薄汚れたタイルの床にぺたんと座り込んだ無抵抗の少女の髪をぐわっと掴んで引っ張り上げた。これには堪らず、氷華は苦悶の表情を浮かべる。頭皮の痛みを和らげるには、否が応でも立ち上がるしかなかった。


「調子乗ってんの?」


 女子生徒は湿ったサイドテールを放すと、へっぴり腰の氷華を力一杯壁に押し付けた。背中を強く打った氷華にさらなる悲劇が襲う。もう一人の女子がニヤニヤ不揃いの歯をチラつかせてそこへ加わり、成す術なく氷華は胸を揉まれた。


「言う事聞かないなら、男子に好き勝手させちゃってもいいんだけどなぁ」


 短髪の男子は、必死に耐える氷華の表情を舐め回すように眺めて満足すると、ある物をズボンのポケットから取り出した。あろう事か、犬用の首輪だった。赤い色をした絵に描いたような首輪――それを嫌がる氷華に見せつけた。


 不気味な笑みを浮かべる男子が何をしようと企んでいるかは誰が見ても分かる。女子生徒の2人は笑い声を外に出すまいと口と腹を押さえてこらえた。


「これ付けるか、揉ませるかなら、もちろん首輪だよな?」

「今日から俺らのペットだ。ちゃんと愛情たっぷり躾けたげるからなっ、ははあ」


 ――きゃはははっ! とうとう女子生徒の一人が口でせき止めていた笑いを漏らした。それにつられてもう一人の女子も笑い出す。静かなトイレに刺すような声が充満した。


「うぅ……離して……」


 皆で氷華を壁に押さえ付け、短髪の男子が手に持った赤い首輪を少女の白い首にキツくはめた。喉が圧迫されて苦しい思いをさせられた氷華だったが、嫌がりつつもそれほど抵抗しなかった。


 咳き込む氷華の姿を見て女子達がまた笑い出す。ひとしきり笑うと、今度は少女の無様な格好を見て罵声を浴びせ、またしても仲間と嘲笑う。その繰り返し……。彼ら彼女らにとっては、ちょっとしたお遊びにしか過ぎないのだった。


「いい気味ー。っ、マジでお似合いじゃん」


 4人も相手では、氷華もどうする事も出来なかった。青あざを付けられた脚は震え、氷華は全身に寒気を覚えた。いつも笑顔を絶やさない氷華だが、春の麗らかさなどどこにも感じられず、この時だけは暗い表情を隠せなかった。


(早く、終わって……!)


 壁際に追い詰められた氷華には逃げる事すら許されなかった。逃げようとすれば、彼らは逆上してさらに乱暴に振る舞う。故に、何も出来なかった。お守りのペンダントを握って祈る事しか出来なかった。


 氷華だって最初はやられっぱなしではなかった。嫌がらせがエスカレートし始めた頃は、今以上に抵抗していた。……しかし、ダメだった。状況を拒んで抜け出そうとすればするほど、彼らは暴力的になり、もっと酷い目に遭わされた。


 相手の機嫌を損ねないように大人しくしていた方がいい。それ以来、そのように氷華は思っている。ただの自論。だが、実体験に基づく自論。そうしていた時の方が遥かに痛い事はされずに済んだ。自分にはどうする事も出来ないので、半ば諦めていた面もあった。ある種の学習性無力感が氷華にそうさせていた。


 授業中の男子トイレ。助けなど来るはずがない。耐え忍ぶ事が唯一の逃げ道。氷華は目を伏して静かに待った。彼らが飽きて解放してくれるその時を……。


「罰として今日一日、ノーブラで過ごしてもらおっか」

「――ッ!?」


 小刻みに首を振る氷華をよそに、女子の提案に賛同と歓喜の声が上がる。


「ほら脱げよ。それとも、揉ませてくれんの?」

「あんた、そればっか!」


 どっちも嫌。ペンダントをひたすら握り締めて尻込みする氷華。その様子はまるで、崖っぷちに追い詰められたひ弱な小動物のようであった。言わずもがな、いじめっ子は猶予を与えてくれるほど優しくはない。どちらを取るか、氷華は選択を迫られた。


(あっ――)


 ふと気配を感じて視線を前にやると、氷華の茶色い瞳が別の生徒の姿を捉えた。出入り口の方から、ふさふさの髪型をしたガタイのいい男子生徒が入って来た。


 氷華は彼に見覚えがあった――同じクラスの男子だった。もっとも、氷華はそうなる以前から、帰宅姿を目撃したり学校の噂を聞いたりで彼の存在は知っていた。なお、その人物像は不明。直接話した事は一度も無く、学校に居る不良の1人だと言う事くらいしか知らなかった。その為、氷華が抱いたのは安堵ではなく、手に汗が滲むほどの緊張感であった。


 ワイシャツを腕まくりした男子が静かに、氷華を取り囲む4人に近づいた。


「……何してる?」


 自分達以外の誰かがすぐ側に居るとは思わず、男女4人はかなり慌てた様子で振り返る。声を掛けられた瞬間は目を見開いて分かりやすく動揺していた彼らだったが、そこに居たのが教師ではない事を知るや否や、先程までの横柄な態度を取り戻した。


 短髪の男子は氷華に付けた赤い首輪に指をかけると、ぐいぐい引っ張って、見せびらかすように皆の面前に少女を持って来た。


「ようレオ。コイツ、俺のペットになったんだ。嬉しそうだろ」

「佐々木君もやればー?」


 くすくす笑うセミロングの女子の言葉を聞き、まだ何かされるのかと氷華はビクビクさせられた。そろそろ嫌がらせも終わるかも知れないと言うタイミングでのレオの登場は、氷華にとっては悪夢そのものだった。


 目の前に差し出された哀れな少女を見て、レオが邪悪な笑みを浮かべる。


「楽しそうじゃねぇか。罪状は?」

「目立ちすぎの髪色」

「ふーん……」


 氷華の湿った髪だけでなく、全身をねっとり舐めるように見ながらレオは近づいて行く。


「確か、オレ達の学校って“自由な校風”がモットーだったよな」

「は? そいつの肩持つのかよ!?」

「いや、そうじゃねぇ」


 レオは馴れ馴れしく少女の肩を抱くと、その耳元で囁くように真意を告げた。


「お互い、好き勝手していいって事だよな?」


 氷華は絶句した。これからされるであろう事を想像して氷華の顔が青ざめる。


「少しの間、この女オレに貸してくれよ。おら来い」

「うっ……やめ、て」


 周囲の奸物に感化されたかのように、レオは赤い首輪に指をかけて氷華を強引に引っ張る。引きずられる氷華は要求を拒もうと両足で反対方向に体重をかけるも、相手の引く力には及ばなかった。


「ちょっと、どこ行くつもり?」


 氷華を連れてそのまま男子トイレから出ようとするレオだったが、女子生徒の一人に呼び止められた。その場で事を済まさずに連れ去ろうとするレオを目の当たりにすれば、僅かに芽生えた不安から、呼び止めずにはいられなかった。


 心から氷華を心配している訳ではない。“怖いもの見たさ”と言うヤツだ。本当に一線を越えるのか? 少女がどんな結末を迎えるのか? レオの口から直接聞く事で、確証を得たい。ただそれだけだった。


「人が来ない所だ……ついて来んなよ。お楽しみは二人きりで、ってな」

「あっはは、マジで!?」

「あんまり汚さないでくれよ? 俺らの大事な玩具なんだからよっ!」


 下劣なやり取りを聞いて氷華はますます暴れ始めた。こんな素性の知れない男に連れ回され、心身を穢されるのは御免だった。これなら、いつもの4人組の方がまだ生易しい。今なら甘んじて受け入れる。必死に抵抗する氷華はそんな事すら思わされた。


 廊下一帯に響くほどの冷たい笑い声が氷華の脳内をこだました。



 ◆



 無言のままレオは氷華を連れ、廊下の突き当たりの階段を下りて行った。その連れ方は終始強引。装着させられた首輪を引っ張られ、氷華は何度も階段を踏み外して落ちそうになった。その度に氷華は冷や冷やさせられた。


 窓から陽が差し込む踊り場に差し掛かると、氷華はレオの拘束を振りほどいて大声で助けを求めた。これ以上はもう何もされたくないと彼女も必死だった。


 焦ったレオはすぐに氷華を捕まえ、大音量を発する彼女の口を手で覆って塞いだ。だが、一度振り切ったとなれば、その程度で大人しくなるはずがなかった。当然ながら、氷華は暴れて逃げようともがいた。


「たすけ――っ!! んー!」

「こら静かにしろッ!」

「――誰かーッ!! っ!」


 次の瞬間、レオは力任せにひび割れた白い壁に氷華を押し付けた。肩を両手でがっしりと掴まれた氷華は目を丸くして硬直する。驚きのあまり声が出なくなった。これから何をされるのかと考えると、嫌な汗が全身から滲んで総毛立った。


 しばし互いの茶色い瞳を見つめ合うだけの時間が続いた。それでもなお、少女は警戒心丸出し。「ふーっ……」と溜め息を一つ吐き、レオは氷華を掴んだ手を放して口を開く。


「よく聞け……保健室に連れて行ってやるって言ってんだ」

「言ってない! 変な事するつもりでしょ!?」

「なんだ? そっちがお望みだったか? 怪我してんだから黙って保健室行け……!」

「行きたくない!!」


 氷華の猛反対が静かな踊り場に響く。レオは腕を組み、不満な顔を包み隠さず露わにする。


「言いなりだった割に、オレには反発するんだな」

「っ……」


 返す言葉が無く、氷華は途端に伏し目がちで申し訳なさそうにした。そのまま口をつぐんでいると、不意にレオが首に手を伸ばして来たので、思わず氷華は目をギュッと閉じる。だが、乱暴な事をされる予感は、単なる氷華の思い過ごしだった。のどを絞め付けていた物が取れ、ずっと呼吸が楽になった。


 レオは開いていた窓から趣味の悪い赤い首輪を投げ捨てると、氷華の背後に回り込む。


「ほら、行くぞ」

「え、待っ……!」


 足でブレーキをかける氷華をよそに、両肩を後ろから掴んで押してレオは進み始めた。


 どうしてそこまで拒むのかレオには分からなかった。保健室は言わずと知れた“避難所(アサイラム)”。そこ以上に安全な聖域は学校には存在しない。提案としては悪くないはず。考えるほどレオは疑問が浮かんだ。


 なんにせよ、氷華の意向を汲んでここで解放する訳には行かなかった。いじめっ子達の“玩具”を奪って来てしまった手前、自由にほっつき歩かれてもレオは困る。氷華を保健室に預けるしか選択肢は無かった。



 かくして、相変わらずジタバタもがく氷華を、レオはなんとか一階の保健室の前まで連れて来る事に成功した。


 保健室の前に着くや否や、氷華はレオから逃亡を試みた。だが、予期していたレオに手首を掴まれてあっさり捕まった。その光景は、まるで悪漢にさらわれる間際の少女。幸い、目撃者はおらず、レオは命拾いをした。


「ねぇ……! もう大丈夫だから!」

「いいから入りやがれ」


 保健室の扉を開けると、そこには白衣を着た賢者――もとい保健師が椅子に座って、何かを熱心に書いていた。


 入るまいと扉の前で踏ん張る氷華。それをどうにか動かそうと苦心するレオ。二人の攻防を聞いて、白衣の中年女性が椅子を回転させて振り返った。


「どうしたの、授業中じゃない……。あら、仄野(・・)さん? どうしたのその脚?」


 大きな目を見開いて聞いて来た。血の滲む青あざを見れば当然の反応だった。しかし、さすがはベテラン保健師と言った所か、目の付け所が違った。凡人がこの数秒のやり取りで、女子生徒の脚の生傷を見つけられるだろうか。


 経緯を一から話すのも面倒なのでレオは何も答えなかった。そもそも、質問されたのは氷華の方だ。保護者みたいに自分から事情を話すのも変だと思い、レオは当事者が意を決して説明するのを待った。


 一方の氷華だが、誰にも余計な心配はかけたくないとの思いが強く、目を逸らして黙り込み、与えられた機会を自ら傍らに捨てた。


 二人の反応が保健師をさらに不安にさせる。


 待てども居た堪れない静けさが破られない。次第にレオの眉間にしわが寄り始める。そろそろ我慢の限界だった。もう一度力強く氷華の背中を押すと、なんとか保健室に押し込む事が出来た。


「じゃ、お願いします」


 レオは椅子に座る保健師に視線を送って会釈を済ませると、その場を後にしようとした。


「やっぱりいいです……なんでもないです」


 氷華が1歩、2歩と徐々に後ずさりするので、出口を体で塞いでいたレオに当たってしまった。それでもまだ後ろに下がろうとするので、レオはその背中を軽く押して氷華を再び部屋の中央へと放り込んだ。


「レオ、君! なんでそんな意地悪するの……!?」

「うるせぇな、出歩かれるとこっちが困んだよ。日が暮れるくらい入念に診てもらえ」


 レオはそう言い残し、保健室の扉を閉めて今度こそ去って行った。逃げるタイミングを完全に失った氷華は、保健師のささやかな治療を受ける事になった。


「その怪我はどうしたの? それに、少し濡れてる……。よかったら聞かせて?」

「本当に、なんでもないです……」


 丸い回転椅子に座らされた氷華は元気の無い声色で答えた。


 何があったか彼女が心配なのは分かっていたし、原因を聞くのが保健師の務めである事も氷華は重々分かっていた。だが、話す事で生じる不幸を考えると、こんなアザは些細な怪我だった。出来る事なら、氷華は大事にせず済ませたかった。


「まぁ、無理に話さなくてもいいよ? でも、話したくなったら遠慮せず言ってね」

「……はい」

「ちょっと待ってね。消毒して絆創膏つけるから」


 そう言うと保健師の女性は体の向きを変え、机の引き出しから市販の消毒液と絆創膏を取り出した。消毒液を少し含ませたコットンで氷華の脚に出来た血の滲むアザを軽く叩き、乾いた所で絆創膏を貼りつけた。


「しみる?」

「大丈夫です」


 処置を終えた保健師は物言いたげな顔で、終始うつむき気味の氷華を見つめる。言うか言うまいか迷っていたが、一人の大人として、お節介でも言うべきだと遂に決心した。


「もうちょっとここに居てもいいよ。そのアザ、誰かにやられたんでしょ?」

「それは……」


 氷華は徐々に視線を落として行く。それ以上は言えなかった。


 本当ならば言うべきなのかも知れない。……しかし、氷華には出来なかった。第三者に話す事で報復される可能性を危惧しているのか? 違う。それは二の次だった。


 ここで喋ってしまっては――怪我を負った経緯を話せば、いじめっ子達は確実に周囲から大きな罰を受ける。それだけに留まらず、居場所を失うかも知れない。最悪、彼ら彼女らの親族も非難の標的となる。加害者が被害者になりかねない。新たな加害者、新たな被害者を生みかねない。氷華はその事を危惧していた。


 自分が真相を明かす事で誰かが攻撃され、追い詰められてしまうのであれば、詳細は伏せて闇に葬るべき……氷華の心情は大人達が想像している以上に複雑で慈悲に満ちていた。


 氷華はうなだれて黙り込んでしまった。


「もしかして……佐々木君に何かされたの……?」

「――っ、そんな訳じゃ!」


 過敏に反応しすぎて氷華は相手を驚かせてしまった。その事を詫びるような口調で、氷華は助けてくれた男子の疑いを晴らそうと試みる。


「レオ、君は……心配してくれただけです」

「……そう、分かった」


 その名を口にした時、氷華の表情が僅かにだが柔らかく変化したのを白衣の賢者は見逃さなかった。言わされている訳ではない事が分かれば、少しは肩の力が抜けた。


「で、どうする? もう少しここに居る? ベッドなら空いてるけど」


 提案を受けて氷華はどうするべきか迷った。しかし、助けてくれた彼の事を考えると、保健室から出て来て欲しくない事は確か。レオが本気だったのなら今頃、悪夢の第二ラウンドが始まって、心も身体もボロボロになっているはずだった。すぐに出歩くのは得策ではない。


「はい……そうします」


 いじめっ子達の存在を否定して拒んでいるようで不本意だったが、悩んだ末に氷華はもう少しだけその場に留まる事にした。



校則で下着の色を指定する学校があるって?

そんな事したら、男子に耐性が付かないだろ!?


2016.11.29 誤字訂正

2017.02.27 誤字訂正&補い

2022.1.15 文章改良&分割

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