ゴライアスオークイーター
とうとうブチギレた蜘蛛がこちらに口から毒々しい液体を飛ばしてきた。
「灯篭」
ジュッ!
毒を覆うように火が現れ毒が燃えると暗紫色の煙が上がる。なんか禍々しいな。
「風切羽」
ヒューーー
サダさんの風魔法が煙が蜘蛛の方へと追いやると忌々しそうにギィギィ喚く。
「奴の毒は燃やしても煙になって効果はそのままだ。うん。むしろ燃やせば呼吸とともに毒が入ってくるから気をつけろよ。うん。」
どうやら奴の毒は熱には強いらしい。
燃えると気化して余計に厄介になるとか厄介極まりないな……
弱いとはいえ神経毒を食らっては動きが鈍るしその辺の木で盾を作ろう。
即席の毒避け用防壁を築いていると蜘蛛がこちらに突撃してくる。
サキが盾の魔石を起動させつつ蜘蛛の突進を防ごうと前に出ると同時にアカリとサダさんが左右に分かれて飛び出す。
先生は少しでも蜘蛛の勢いを削ぐために水魔法を唱え始めた。
本来魔法はイメージだけでも使える。みんな技名をつけて唱えるのは仲間との連携のために唱えている部分が大きく消してかっこいいから唱えているわけではない。それに名前があると条件付けがしやすくとっさに技名を言うだけでイメージが不安定でも魔法を発動することができるので名前を唱えるのだが、長い詠唱というのもある。
これは集中力を高めてより緻密で繊細な魔法を使うときに用いることがある。それだけ強く複雑な魔法ということだ。
「清き水の清廉なる輝きよ、悪しき魔物よりこの身をその魂を守る障壁を!アイスクリスタル!!」
ドゴゥ!!グチュ
綺麗な氷の結晶が蜘蛛の正面に現れ激しくぶつかる。
綺麗な氷の結晶ができたけど詠唱と出てくる魔法がちぐはぐだな。
先生の氷のイメージは聖水の塊なんだろうか??独特の感性を持っているんだな。
氷の盾にぶつかった蜘蛛から体液が飛び散るが、構わずマフユに向かって突撃しようと知ている。
相当頭に血が上っているのか足をばたつかせて氷の盾に何度も体をぶつけては体液を撒き散らしている。
ガンガンガン!!ゴチャ!ゴンゴン!!
キシャーーーー!!ゴチュ!
ガン!ビキ!!ピシピシピシィ
キシャーーーーーーーーーーー!!
バリン!!ガイーーン!!
何度かの突撃でとうとう氷の盾が壊れてしまったがサキの盾が蜘蛛の突撃を受け止める。
何度もぶつかるうちに力が弱まったのだろうか?
サキの小さな体で大きな巨体の蜘蛛を受け止めて見せた。
サキが盾を押し出すと左右に分かれていたサダさんとアカリが蜘蛛の足関節に刃を突き立て切り飛ばす。
どんなに固かろうが虫の関節の節は脆いようで簡単に切り落としていく。
ギィーーーーーーーー!!!!
奇声をあげて足を切り落とした2人を見ようとする蜘蛛。
それを見計らったようにサキの後ろから飛び上がり蜘蛛の眉間?どこが眉間かはわからんが頭の中心あたりに剣を突き刺すサツキ。
ゾワっと嫌な感覚がしたので咄嗟にサツキの足を引っ張りこちらに引き寄せる。
「引け!!!」
俺が叫びながら蜘蛛から一気に距離を取る。
ギィギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!
大きか声をあげでバタバタと暴れ始める蜘蛛の足元はベコベコに凹んで地形が変わりつつある。
明らかにさっきよりも力が上がっている。
ガンガンガン!!バシャン!!ゴン、グチュ!
ドタドタドタドタ
ガンガンガン!!バンバン!ドシャ!!
ギィーーーー!ガンガンガン
地面をのたうち回り周りの木にぶつかっては頭に刺さる剣が深く突き刺さっていく。
俺が咄嗟に足を引っ張ったために剣を引き抜けずに手放してしまったのだろう。頭をぶつけるたびに深く突き刺さり体液が旅出して地面を汚す。
木は蜘蛛の体当たりで軋み折れてしまっている。
もう周りが見えていないようであちこちに毒を吐き出しバタバタと暴れまわる。
マフユが隙を見ながら矢を放って目や関節を射抜いていく。
矢が刺さるたびに耳障りな奇声をあげながら激しく暴れる蜘蛛。
サダさんとアカリが遠回りしてこちらに合流する。
「よく暴れ出すとわかったな。うん。」
「なんか寒気がしたんです。」
「すごいの!さすがムツキなの!!」
サダさんとアカリに褒められるが目の前の蜘蛛が気持ち悪くあんまり嬉しくない。
サキも少し顔を青くしながらコクコクと頷いている。
サツキが蜘蛛の頭に刺さってる剣を見ながら惚けているようだ。
「せっかく……ムツキが………に………僕の………ブツブツブツ。僕の…………」
なんかブツブツ呟いてるが、せっかく新調した武器が蜘蛛の体液まみれになったのがよほどショックだったんだろう。
まぁ当然だな。さすがにあれは気持ち悪いもんな。
後でちゃんと綺麗にしてあげないといじけるかな?
すでに全ての目を潰し終え、関節にどんどん即席の矢を放っていくマフユ。
10分は経っているのにまだバタバタと暴れまわり、たまにこちらに向かって蜘蛛が石飛礫やら木片を飛ばしてくる。
まぁ狙ってではないから飛ばしてくるというよりも飛んでくるか?
飛んでくるものは全てサキが盾でさばいているがいつになったら息絶えるのだろうか??
蜘蛛の脳は潰してるはずなんだけどな。蜘蛛の魔物であの生命力だったらゴキ……やめとこう考えてはダメだ。
結局一時間も暴れ倒してやっとぐったりとした。
それでもまだ淡く光っているだけで完全に死んではいないようだ。
光ってる時点でもう助かりはしないが最後の最後で道連れにする魔物だって少なくない。
以前のオーガがそうだったのだからもう同じ失敗はしないのが俺だ!!!
完全に息絶えるまで油断なく警戒しながらゆっくりと近づいていくとサダさんが頭を落とし光る粒子となって消えてしまった。
ここでゲームならレベルとか上がるんだろうなぁなんて思うが、よく考えると防壁築いたぐらいで大して攻撃していない。あれ?俺足でまと……いやいや矢いっぱい作ったし防壁築いたから!!
役立たずではないよ!!全然役立たずじゃないよ!!
ふぅ危ない危ない。危うく騙されるところだった。誰に騙されてるのか聞かれても困るが俺は役に立っている。
よしドロップ品を回収して一様ボス部屋を一回りして上に上がっていこう。
蜘蛛の体毛と複眼を落としていったのでマジックバックにしまって一回りすると木製の宝箱を見つけた。
罠はないようなので開くと石でできたリンゴが出てきた。
鑑定して見たが『石のリンゴ』としか出てこない。説明も出ないとは一体なんなのかさっぱりわからん。
いちようマジックバックにしまっておくが『禁断の果実』と何か関係あるのだろうか??
木箱は石リンゴを取った直後に朽ち果ててしまったがまぁいいだろう。
そのまま上の階層に向かう扉へと向かうと最初に入ってきた扉と同時に光って消えた。
もちろん上がる方を通っていく。この階層はボスだけだったから逃げれない仕組みになっていたのだろうか??
ダンジョンについてはさっぱりわからん。
そう思いながら次の階層の扉の前へと進むとみんな次の戦闘のの準備とその前に軽食をとり休憩することにした。
先ほどの戦いで消耗した矢を拾い集めて錬丹術でまた矢を作ってはいるがこのままでは足りなさそうなのでそろそろちゃんと補充したいものだ。
みんなの装備の点検も終えて次の階層の扉を開く。