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蜘蛛

目をさますと見慣れない部屋の中にいた。

ベットから起き上がるとサダさんが杖の手入れをしている。

あぁそうだダンジョンのログハウスの中だったんだ。


昨日は全員疲れ切って見張りも立てずに眠ってしまったが変な冒険者が入ってくる可能性を失念していた。

俺も着替えを済ませて部屋を出ると女性陣はもう準備も整えて朝食を作って待っていてくれていた。

どうやら俺たち以外には誰もいないので問題はないようだ。


朝食も済ませて俺の作った装備の調子を聞きながら森の探索についての打ち合わせをする。

このログハウス内にあるもののほとんどをマジックバックに入れて行くとテントやらのキャンプ道具もあってなかなかいい収穫になった。

やはりこのログハウスは宝箱だな。

みんなが外に出てから駄目元でマジックバックにしまうように念じるとログハウスが縮んでおもちゃの家のようになった。なんてことはなくそのままの状態で存在していた。

サダさんからは何アホなことしてんの??という目で見られてしまったがこれがあれば絶対快適に過ごせるんだからちょっとは夢見てもバチは当たらないだろ??


それからまた森の中を探索し始め数回の戦闘を行いつつお昼は順番にサンドイッチを頬張りながら探索をしている。

体感時間はもうわからないが、多分昼過ぎ13時ごろ?には次の階層に向かう通路を見つけた。

ただその通路の真上にある壁に今日泊まったログハウスの5倍はある蜂の巣がある。

今は働き蜂が食料調達に行っているのか巣の周りを警戒しているでかい蜂しか見当たらない。

黄色と黒のストライブが入った体は前世で見た蜂と同じなのだが、その大きさと仕事別に異なる姿が異様だ。

足が槍のように尖っているもの。剣のようになっているもの。片手に盾のように平たい足を持つもの。

蜂って顎と卵管が針になったものが主装備じゃないの?と聞きたくなるぐらい中世の騎士のような軍隊が形成されている。

前世では軍隊アリなんてのがいたけどこれは本当の意味の軍隊バチかな?

魔物としてはインペリアルビーだったか?帝国を築く蜂って覚えてる。

多種族の魔物を養殖することがある蜂で危険種として指定されているが、特定の環境下でないと生息できないと魔物図鑑に書いてあった。

湿気が多く一年を通して気温が28度前後の環境でないと生きられないらしい。

虫だけに体温調節はできないのだが、その大きさゆえに少しの温度上昇が命取りなんだそうだ。寒くなると冬眠するのだが、やはり体が大きいので一度冷えてしまうと今度発熱することがむずがしく冬眠した個体はほとんどそのまま死んでしまう。強力な力を持っているものの環境適応能力がないのが弱点の魔物だ。

ダンジョンの外であるなら討伐方法も確立しているためCランクの魔物として扱われているが、ダンジョン内であればAランクに匹敵する強さを持つ。ここの強さはそこまで大きなものとも言えないが軍隊というぐらいなので、1小隊がだいたい10匹程度で行動しているため連携攻撃が厄介な魔物と言える。

ただし近接戦闘に特化して進化したためかその毒針は退化して刺すことはできず、ごく少量の毒を飛ばすことしかできない。その毒も皮膚に触れるとちょっとビリビリしびれて氣や魔力を使いにくくさせる程度の効果しかないらしい。

こう聞くとAランクってのも眉唾なのかもしれないとも思うが、ダンジョン探索をする冒険者の大半は4人パーティーが多く、10匹を同時に相手にするのが難しい上に早く倒さないとどんどん仲間を呼んで大群と戦う羽目になると聞けば頷ける。

近接戦闘の強さはDランク冒険者ぐらいなので今の俺たちだと倒せないこともないがあの巣の大きさからしてどれだけいることか……


ダンジョンが進化して新しくなったばかりなのにもかかわらずここまで大きな巣を形成したとなればかなりの繁殖力をお持ちになるんだろう。

そう思いながら作戦を立てるが、ダンジョン内でも一様倒し方は確立しているようで巣に火を放つだけで簡単に倒せるそうだ。幸いにもうちには火の魔力を持ったイクミがいるのでサクッと倒して次の階層に行くことにした。


「火蜂」


インペリアルビーを見て思いついたのか蜂の形をした炎が10個現れると巣に向かって飛んで行く。

自分たちの仲間だとでも思っているのかなぜか攻撃してくることなく巣まで到着するとそのまま燃え上がる。

轟々と燃える蜂の巣に焦ったのかあちこちから蜂の大群が現れ巣の中えと我先に入って行くとそのまま燃えて光る粒子に変わって行く。

アホなんじゃねぇの?


「女王蜂を助けに行ってるんでしょうね。蜂系統の女王がトップとなる魔物は女王のために命を投げ出すのよ。反対に王様がトップにいるゴブリンとかは散り散りに逃げ去って新たに王になる個体が出てくることが多いの。」


俺の表情で言いたいことがわかったのかカヤ先生がそう説明してくれた。

オスの王政の魔物って力による圧政なんだろうな。簡単に部下に裏切られるんだろう。

メスの魔物はなんでだろう?よくわからんが仲間思いなんだろうか??

さっぱりわからん。


蜂のドロップ品は甲殻がほとんどてたまに毒腺と複眼がある。

甲殻は武具によく使われる素材で毒腺は調合の仕方で薬に使える。複眼は魔道具に使ったり宝石としても価値もある。

中には燃えてしまって使い物にならなさそうなものがあるが、それでも100個以上の甲殻と50個ほどの毒腺、複眼は13個あった。


回収に小一時間かかり何度か帰還した蜂と戦ったが火をつけてしまえばあっという間に殲滅することができた。

燃やせればこんなに呆気ないのか。

回収も終えて上の階層へと向かうとまた扉があるようだ。

扉を開けるとまた森が広がっていいるが、今度はボスが目の前にいた。

おおよそ5mほどの大きな蜘蛛がいた。

やっぱり入ってきた扉は閉じてしまったが、10mほど横にはその扉とは異なる扉が見える。

すぐさま近づいて見たが全く開く気配はない。

どうやらこの蜘蛛を倒さないと開かないようだ。

覚悟を決めて戦闘体制に入ると蜘蛛の方も足を広げてこちらを威嚇してくる。

蜘蛛の魔物は種類が多くややこしいのでよく観察すると黒い体に白く短い体毛が生えている。短いとは行っても10㎝ほどはある。この体毛と5mという大きさは『ゴライアスオークイーター』だろうか。

要するにオークを好んで捕食するでっかい蜘蛛の魔物だ。

オークを好むとはいえその他の獣も食べるので人間も食べようとする。毒自体は弱い陰茎毒なのだが生きたまま踊り食いをしようとする嗜虐性がある凶暴な魔物だ。

その反面その体毛は高級な衣類や防具になるし、複眼は美しい紅をして高級な装飾品にもなるそうだ。


ゆっくりとジリジリこちらに近づいてくると誰を狙おうかと物色しているようだ。

ゴライアスオークイーターはその体毛によって魔法を阻害するので魔法使いにとってはかなり戦いにくい魔物なので今回はマフユ以外には後衛がいない。

マフユはすでに弓をひきしぼり目を狙って矢を放つ。

ヒュン!!ヒュン!!

キシャーーーーー!!!


一呼吸の間に二射放ち複眼のうち二つを貫いた。

先ほど複眼が装飾品になると行ったが、今回はダンジョン内にいるので気にせずに目潰しを行う作戦だ。

目を射抜かれてジタバタと暴れ始める蜘蛛にサダさんとアカリが詰め寄るが、体毛で接近していることがわかったのか大きく後ろへ跳んで距離を取られてしまった。

ヒュン!!

キシャーーーーー!!!

距離を取った蜘蛛の目に再び矢が突き刺さる。

「3つ目なり〜〜〜♪」

距離を取ってくれる魔物はマフユに取ってはありがたいらしく生き生きと矢を放っている。

このままの勢いで全ての目を射抜くのではないか?

そう思っていると蜘蛛が糸を飛ばして木に張り付き素早い動きで飛び跳ねながら矢を避け始めた。

避けきれず当たってる矢も多いがそれでも徐々にスピードが上がって回避率も上がってきている。

木が軋み小さな枝はバキバキに折れて降ってくるので前衛陣はマフユを守るためにこちらに戻ってきた。

こちらに跳んでくる糸はイクミが火を使えば燃えるのでどうにか対処はできるがあの速度で突っ込んでこられるとタダでは済まない。蜘蛛の嗜虐性ゆえか今はまだ生きたまま食べようとしているようで1人づつ捕獲したいようだ。

焦れてくるとそうも行ってられないだろう。


マフユの矢も限りはある。俺がその辺の石やら木で大量の矢を作っては矢筒に突っ込んで入るが矢の質がそれほどよくないそろそろ襲ってくるだろう。

サダさんとアカリ、サツキが何か打ち合わせをしているようだ。

サキとカヤ先生はここの護衛に残ってくれるのだろう。

蜘蛛も焦れてきたのか動きが雑になってきている。

ピギャーーーーー!!

マフユがまた目を潰したこれで半分。どうやら等々きれたようで牙をガチガチと打ち鳴らしているし毛も逆立っているようだ。

マジおっかねぇ。

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