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撤退

オーガを倒し、みんなの背中多いかけて洞窟を抜けるとそこには陽に照らされて明るく緑生い茂る森が広がっていた。

ダンジョンの出入口が山になったのだろうか?なんて思ってみたがそんなこともなさそうだ。

なんでそう思うかって?


それは簡単な話だ。


みんなの影がいくつもできていて、陽の光のようなものがいろんな方向から当たっているのだ。

いくら異世界でもこの5年間陽の光は一つだった。いきなり4個も5個も増えるわけがない。

この陽の光は魔石か何かが強烈に発行してできてる光なんだろう。


数十秒呆然とみてしまったが、サダさんは他のダンジョンでも経験していたためか冷静に周囲の警戒をして、一匹の掌サイズのウサギを杖の先から出した刃で刺し殺しているところだった。

吸血兎とかヴァンパイラビットと言われる魔物で、その唾液には睡眠作用と鎮痛作用があるために一度噛まれたら血を吸い尽くされると言われている。このウサギは一匹あたりだいたい2㎞ほどの縄張り持っているので当分は遭遇することはなさそうだがサダさんがいなかったら俺たちは今頃……

鳥肌が立ちブルッときた。

魔物の強さ的にはDにも満たないが、危険度はBランクと言われるウサギがいるってことは難易度はあがってるのか??やっぱり下に向かった方がいいのかもしれない。

サダさんが倒した吸血兎のあわやかな朱色の毛皮を拾い一度セーフルームへと戻ることにする。


戻ってきたらすぐにサダさんから説教を受けた。

どんなに綺麗だろうと、雰囲気が変わろうと油断した瞬間に魔物に襲われることがあるダンジョンで何事か!!ということだ。当然だろう。そんなんで命を落とすとか死んでも死にきれん。

小一時間の説教の後に今度は下に向かう通路を探すために洞窟内を探索する。


マッピングしてこのフロアの大きさがだいたいわかってきた。おおよそ5㎞四方の迷路になっていると思われる。

下に向かう通路を見つけた時にはフロア全体のマッピングが終わった。

二つの隠し部屋も見つけたのだが、一つが魔物部屋でもう一つは宝物があった。

前者はスライムだらけで30枚のスライムの皮膜と3個の水魔石、4個の土魔石を手に入れた。

後者は薄汚れた木箱の中に2つの指輪が入っていた。

鑑定の結果一つは『測量の指輪』もう一つは『筆者の指輪』とでた。

効果は『測量の指輪』が装備者を中心に5メートルの範囲の測量を行い測量した結果を装備中の『筆者の指輪』に記録するというものだった。つまり一対で使えというわけだ。

オートマッピングアイテムというのは便利だ。装備者に関しては念じれば頭に地図が浮かび、その中でさらに念じたところを指輪が紙に念写するので他社との共有も可能。ただし、装備者が変わればリセットされてしまうので今回はサダさんに使ってもらいたかったのだが、灰蝙蝠のメンバーに持ってる人が2人いるので必要ないと断られてしまった。

8人なのでパーティーを割って探索することもあるので二つ持ってるのでそれ以上必要ないとのことだ。

なんでも裏技があるらしく、『筆写の指輪』のみを交換するとお互いの地図を共有できるのだそうだ。一部の冒険者にしか知られていない秘密出そうだ。脱出した際に地図をもらえれば必要ないので持ってろと言ってくれた。

俺たちの中で将来冒険者になりたい奴が装備しろと言われたので「俺には関係ないなぁ」と思ってたのだが、アカリに指輪をはめられて「冒険するの」と言われてしまった。

他のみんなもなぜか満足そうに頷いてるところを見ると今のメンバーで冒険者をしたいらしい。

ダンジョンに閉じ込められてなんかテンションがおかしくなっているのだろうか?みんなの反応になぜか嬉しくてその気になってしまいそのままこのフロアのマッピングをすることになったのだ。



俺は下の階への通路を見つけて満足げに地図を出す。

気分はもう冒険者だ!

ワクワクとドキドキが止まらない。

満足げに地図を見ながら頬が緩んでしかたない。


下の階層はなんとなく鳥肌が立つ感じで不気味なのだがそれもなんだか楽しくなってきた。

ものすごい熱気が通路から上がってきている。

多分この下も環境の異なるダンジョンとなってるんだろう。

今度は呆然と佇むことのないように警戒しながらゆっくりと下へと向かう。


うっすらと赤い光が見えてくる。

ゴポッゴポゴポ………

真っ赤に燃える石とドロドロに溶けた溶岩が吹き出してる。溶岩地帯なようだ。

通路の両端にセーフルームとは違う色のオベリスクが立っており上の階に魔物が上がらないようになっている。

溶岩地帯の広さはだいたい500mほどの空間になっているようで障害物もあまり見られない。

中央付近にはでっかい蜥蜴が横たわっていた。

よく見ると翼もあるようなので竜なんだろう。

暑いのに寒気がするよ?なんでだろう??

よく見ると次の階層に移動する通路がないんだけど………

気のせい…だ・よ・ね??

最下層とか言わない……よね?


「あれは炎龍に近い溶岩竜だな。うん。こいつがここのダンジョンマスターか?うん。倒せれば外には出れるかもな。うん。」


あ〜無理でしょ?撤退するよね?無理だもん……

え?なに?一回やってみようとか言わないよね?

そんな事いったら俺帰るよ?

調子のってごめんなさい。さっきは雰囲気に呑まれてました。

もう冷静だから冒険者になるとか言わないし……たぶん。

さあ一旦セーフルームに戻ろうじゃないか!!勇気と無謀は違うって小説の中の人たちが言ってるよ?

俺主人公じゃないから戦えないもん!!!


「倒せるの??」

「無理だな。うん。」


不安げに聞くアカリにサダさんが即答する。

よかった〜なんか倒しに行きそうな言い方しないでよ!!

さ!戻ろう戻ろう!!

早く戻ろう!!!

そう思っているとゾクリととてつもない寒気が襲う。溶岩の熱気で暑いはずなんだがなんかめっちゃ寒い。

この溶岩幻覚で雪山だと言われても信じてしまいそうなくらい寒い。

目を凝らすとギラギラした目がこちらに向いてる。


ゆっくりと顔を上げて赤黒い顔がこちらを見据えている。

うわ〜〜モン◯ンに出てきそうな顔!!

かっこいいなぁ〜〜…は、ははは……はは。

なんか口から火が漏れてるよ?

だらだら垂れてる涎。あの涎は溶岩じゃないかな?

胸のあたりがちょっと膨らんできて〜〜………


「!!!ブレスだ!逃げろ!!!!!」


サダさんが叫ぶ。必死な時は「うん。」って言わないんだなぁ〜〜なんて思っている俺の腕が誰かに引っ張られる。

汗びっしょりの手でサツキが引っ張っているようだ。サダさんはサキを抱えて走り、アカリもそれに続いている。

後衛陣も必死になって上層へ駆け上がって行く。

走っているのがわかるんだが、なんともゆっくりコマ送りのような動き。

声もゆっくりと聞こえるので何を喋っているのか理解できない。

不思議と周りの様子が手に取るようにわかるのが気持ち悪い。徐々に頭も痛くなってくるようでガンガンと響く。

死ぬ前に世界がゆっくりと進む感覚に陥ると聞いたことはあるがまさか本当に起こるなんてこれっぽっちも思っていなかった。ゆっくりと一歩一歩進んで行く中で冷静な自分が「みんなも一緒に死ぬ?ダメだ!!せめてみんなは生きて外に出てほしい!」と思う。

どうすればいい?どうすれば助かる??

もうブレスが吐き出されるのか竜の口がゆっくりと開き始めているのが目の端で確認できる。

あぁダメなのか?このままでは間に合わない!!

そう思い拳を握り締めると腰についてるサダさんからもらったマジックバックに手がぶつかる。

これをもらった時には興奮して魔鋼を大量に作ってどんだけ入るかカバンに入れて遊んだり、親にも隠していた聖銀や聖金を作ってほりこんでたっけ?魔力がBだと家が100件分は入るらしいってんで試したのはいい思い出だ。

懐かし……ん?

魔鋼って硬いし熱に強かったよな??

それに聖銀って確か熱伝導は悪かったな。ミスリルよりも若干硬くて加工によっては柔軟性もある。魔力の伝導率は変わらないけど純粋な熱や電気はほとんど通さないと昔鑑定した時に書いてあった記憶がある。本当に若干性能がいいだけなんだよなぁ。

今はそんなことはどうでもいいか。確か銀細工の特訓用にもらった銀10Kgの半分5Kgほどを調子に乗って作ってたはずだ。

魔鋼はすぐに加工できるが聖銀はかなり集中しないといけない。今は時間稼ぎのためにありったけの魔鋼を使って壁を作ろう!!

錬丹術を使いながらマジックバックの魔鋼を取り出して通路に壁を作る。

そこからはなぜかゆっくりとした時間からいつものように体が動くように戻っていた。

どんどん壁を作りながら上へと上がって行く。

ゴウ!!

地鳴りのような激しい音と揺れが体に響く。

「く!!」

みんなはこちらを見て驚いた顔をしていたが今は構ってられない。

ダーーーーン!!!

壁にブレスがぶつかったのか今度は振動で体が吹き飛ぶ。

幸か不幸かさっきの階層までみんな吹き飛ばされた。

あまり熱を通さないはずの魔鋼の壁が真っ赤に熱せられている。

50㎝は厚くしたものを何枚も作ったのにこれは半端じゃないな。

聖銀でここに壁を作ろうかとも思ったが、なんとかもう一撃は持ってくれそうなのでそのまま走ってセーフルームへ撤退することにした。

魔物を極力無視してセーフルームへと駆け込むと皆一様に地面に横たわって息を整える。


カバンの中を確認すると魔鋼は10Kgほどを残して空っぽだ。命には変えられないので仕方ないだろう。鍼としては鍉鍼以外に使い道は無いし特に問題ないな。

治療した時にもらったお小遣いで普通の鉄もアホみたいに溜め込んでるから作ろうと思えば作れるな。

確認しているとサダさんから声がかかる。


「はぁはぁふぅ〜っ、ありゃあ魔鋼か?うん。」

「そうです。あんまり見せちゃダメって言われてたけど、今は緊急時だから。」

「……そうか。うん。確かにその年だとな…うん。」

「でもサダさんの杖の芯にも使ってたんだけどわからなかった??」

「!!どうりで魔力のロスが少ないし、威力が上がってるわけだ……うん。」

「もう残りは少ないですけどせっかくなんで全員分の武器を作っちゃいますね。多分あれがダンジョンマスターだというのならここは最下層になるんだし、脱出の可能性を上げるならもう作ってしまった方がいいですよね?」

「あぁ……ありがたいがいいのか?うん。」

「宝箱から出たとでも言ってくれればいいですよ。それでバレないですよね??」

「そうだな、みんないいな??うん」

「じゃあ一日時間ください。今から作りますんで。」

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